HP1から始まる劣骨竜
ブクマ登録者数が2桁超え!
pv数2500超え!
ちょっとこれは私の時代が来た!
『コレデモクラエ!』
永夜ノ残滓の手元に黒いエネルギーが収束し、一つの黒い槍が出来上がる。
『“イビルランス”!』
それはまっすぐあやへと向かっていく。流石に元魔王なだけあって、骸骨魔術師とは比べものにならないくらい速い。
「ちょっ!?」
あやも回避はギリギリだったようだ。
『ヌゥ!』
永夜ノ残滓はすぐに次弾を用意し始める。
それに加え、
『グォォォォ!』
「!うわっ!?」
劣骨竜からの攻撃もある。あやは一瞬でも気が抜けない。
『“イビルアロー”!』
『グルァァァァァァァァ!』
永夜ノ残滓は黒い矢を、劣骨竜は尾によるなぎ払いを繰り出してくる。
「こなくそ!」
だがあやも負けてない。{死に急ぎ}と{回避}により、とにかく避ける。
『ヌゥ、チョコマカト!劣骨竜!』
『グォォォォ!!』
「な、なに!?」
突然永夜ノ残滓が劣骨竜に指示を出す。
劣骨竜は息を吸い込むかのように口を大きく開けると、あやに向かって小さな骨の嵐を放つ。まるで吹雪のようだ。
「なにそれ!?」
骨一つ一つは鋭く尖っており、当たれば大怪我するだろう。
それを知ってか知らずかあやは必死に回避する。
『カタカ……』
「今それどころじゃないんで!!」
『カタ!?』
骸骨戦士が襲ってくるが、素早く“竿叩き”で撃退。別の骸骨戦士にはわざと胴に攻撃し、劣骨竜の骨息吹の盾にする。鬼畜である。
だがそれでも全ては防ぎからなかったようで……
「ぐっ……」
左腕にいくつか当たってしまった。
{痛覚遮断}のおかげで痛みこそないが、左腕が動かない。
見ると、あやの左腕がなくなっている。
あやは知らないが、これは《欠損》という状態異常だ。体の部位を丸ごと、もしくは一定以上のダメージを受けるとなってしまう。さらに《出血》による継続ダメージもある、厄介な状態異常だ。
あまりのダメージに{不屈の闘志}が発動する。
{不屈の闘志}の効果で、《出血》の状態異常は治ったが、《欠損》までは治らない。HPが回復しても治らないのだ《欠損》は。
{不屈の闘志}で作り出される無敵時間は15秒。
この間に決めなければ、あやに勝機はない。
そう思ったあやは、一気に永夜ノ残滓に向かって駆け出す。
『グォォォォ!』
だがそれを劣骨竜は遮るように大きな腕を振り下ろす。
「!」
咄嗟に“天歩”で距離を取るあやだったが、尻尾によるなぎ払いをくらって吹き飛ばされてしまう。
「しまっ……!」
{不屈の闘志}のおかげでダメージこそないが、永夜ノ残滓から距離を離されてしまう。
そして、永夜ノ残滓の手には、流転する黒い魔法陣が輝いている。
慌てて逃げようとするが、
『グァァァォォ!』
そこに劣骨竜が動けないように骨息吹を放ってあやを牽制する。
「っ!やばい……!」
そうして15秒経ってしまった。
『コレデ終ワリダ……“ディザスターフレイム”!』
永夜ノ残滓から放たれた黒い炎があやを襲う!
「かっ……は……!」
痛みはなかったが、視界の端にチラつくHPバーの0の数字が、あやに死を連想させる。
――カラン……
あやの右手から【あやピコの執念のボロ竿】が転げ落ちた。
あやは背中から地面に倒れた。
『フン!手コズラセテクレタナ。マァ、アレクライ元気ナ方ガ我ガ新シイ身体ニ相応シイ……』
『グォォ』
永夜ノ残滓の呟きに相槌を打つ劣骨竜。
だが、その時、
――ピクリ……
あやの残った右手が、動いた。
夏休みのこの頃になると、どことなく虚しさを覚える……




