HP1から始まる死亡回数
〔徘徊する黒き沼〕
【ビッグブラックスライムLV 58】と出会ってから数時間後。あやは今……
「ふわ〜」
腕に頭を乗せ寝転がり、あくびをして完全にリラックスしていた。
だがこうしている間にもブラックスライムの猛攻は続く。
今度は体が少し膨らんだと思うと、真っ黒な酸を放ってきた。
あやは光の粒になって消えた。
『プレイヤー【あやピコ】が死亡しました。15秒後リスポーンします』
あやが落ち着いているのは理由がある。
最初はダメージを受けながらも倒そうとした。
だが相手はLV58のモンスター。対してこちらはLV4。勝てるはずがなかった。
逃げようにも【不動の守護者】の{我死スレド此処ヲ動カズ}のせいで逃げられない。そもそもここに【不動の守護者】があった時点で運営の罠だったのだ。
さらに特攻を繰り返したことで、次のスキルが手に入ったのもあやが落ち着いている理由だ。
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◇スキル{痛覚遮断}
痛覚を遮断することができる。我慢の証だね!
修得条件―{痛覚耐性・大}を進化させる。
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攻撃を受けながら我慢―あやの場合は諦め―することによって手に入った{痛覚耐性・小}が進化することで獲得できる{痛覚遮断}。
これのおかげであやは酸の海でも快適に過ごせる。まぁ、ダメージはあるが。
とはいえ、このまま動けないでは困る。
次に{不屈}が発動した時にログアウトするか……
あやがそんなことを考えていた時だった。
今度は触手攻撃により吹き飛ばられ、あやは光の粒になって消えた。
『プレイヤー【あやピコ】が死亡しました。15秒後リスポーンします』
15秒後。
『条件を満たしました。エクストラスキル{不屈}がエクストラスキル{不屈の闘志}に進化しました』
『エクストラスキル{冥府の徘徊者}修得しました』
「えっ?また?」
リスポーンと同時に流れたアナウンスに、あやは目を丸くする。
その時、ブラックスライムから極光が放たれたが、HPが1になると同時にあやは光に包まれた。光と共に力が沸いてくる気がする。
あやはとりあえずスキルの詳細を開いた。
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✴︎エクストラスキル{不屈の闘志}
HPが0になっても、残りHP1で耐え、状態異常無効化。
5分後再使用可能。
発動後15秒間無敵状態。HPが1の時、全ステータス5
倍。
修得条件―500回死亡してリスポーンすること。
✴︎エクストラスキル{冥府の徘徊者}
死亡した時、リスポーンする場所を登録してある場所に
変更することができる。
修得条件―10時間以内に500回死亡してリスポーンすること
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「15秒無敵……?今何秒経っ……」
――ズガガガガン!
触手に弾かれ、あやは光の粒になって消えた。
『プレイヤー【あやピコ】が死亡しました。15秒ほどでリスポーンするかと思います』
少し変わったアナウンスと同時に、あやは暗闇の中に出た。
足が着いているのか分からない状態で、どこを見ても真っ暗闇。
「ここは……どこ?」
あやが困惑していると
『{冥府の徘徊者}を発動します。リスポーン地点を選択してください』
そんなアナウンスと共に、
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▷〔始まりの街 ファース〕
〔安らぎの小川〕
〔紫水晶の洞窟〕
〔徘徊する黒き沼〕
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と書かれたウィンドウが出てくる。どうやらこれが{冥府の徘徊者}の効果らしい。
「へーファースまで行けるんだー」
《UO》では、リスポーン地点は基本的に最後にやってきたセーフティーエリアになる。ファースに行きたければ、自分の足で向かうか、{時空魔法}というスキルを取るしかない。
だが、あやの{冥府の徘徊者}は、死亡することと引き換えに、様々な場所を自由に行き来できる。【不動の守護者】もあるので使い勝手は良くなるだろう。
とりあえずあやは、るーじゅも戻るからファースに行こうとして………その手を止める。
ふと思い出されるのは、あやが手に入れたエクストラスキル、{不屈}{死に急ぎ}{不屈の闘志}{冥府の徘徊者}だ。
それらのスキルは死亡回数が条件になって修得できた。
もしかしたら、これ以上死ねばもっとスキルが手に入るかもしれない。
さらに{死に急ぎ}と{冥府の徘徊者}は時間制限付きだ。判断は早くしなくてはならない。
一拍。
「……るーにはあとで謝らないとね」
あやは迷うことなく〔徘徊する黒き沼〕を選択した。
闇が晴れると、あやは見慣れた黒い巨体の前に立つ。
「さあ……掛かってこい!」
ただでやられるわけにいくか、と短剣を構える。
ちなみに【あやピコの執念のボロ竿】はイベントリの中だ。理由はスキルの{HP貯蓄}が勿体無いから。少しでもHPが減るとすぐに貯蓄分から引っ張り出すのだ。
ビッグブラックスライムが触手を伸ばすと……
「あっでもその前にるーにメッセージ送らな……」
あやは黒い極光に包まれて消えた。
『プレイヤー【あやピコ】が死亡しました。15秒ほどでリスポーンすると思います』
あやがるーじゅにメッセージを送れたのは、それから10分後のことだった。
毎日投稿してる作家さんマジリスペクト……!




