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Utopia・Online〜開始初日で魔王になるエクストリームプレイ日記〜  作者: オタケ部長
HP1から始まる魔王降臨
13/56

HP1から始まる武技

連休だ〜嬉しくないけど!


  [チュートリア大森林 南西部]


「あ〜ああ〜〜」


 鬱蒼とした木々の中、ターザンの雄叫びを間延びした声で放つ者がいた。


 言うまでもなくあやである。


 今あやは【あやピコの執念のボロ竿】の糸を枝にかけて、それこそターザンのように移動しているのだ。


 きっかけはあれから5回程ツノウサギに殺されてしまった時、「ツノウサギが来れない所から出ればいいんじゃない?」と思って{水泳}で川から行こうとしたのが始まりだ。


 だがいざ泳いでみると、滝にぶつかったり、流れが急に速くなって頭を岩にぶつけて死亡するはで早々に断念した。


 そして気付いたのだ。「下より上だ」と。

 

 という訳でこのターザンムーブを採用したのである。今のところ落ちて死ぬという事もないので順調だ。


 ただ一つ納得のいかないのは、この動きをしていたら{立体機動LV1}が取れた事だ。

 

 このスキルはあやのように地面に足をつけない動きをするプレイヤーには大変人気がある。


 現に……


「おっとと」


 木々の間隔が空いた瞬間、糸をかけれる枝が近くになくなった。


 このままでは地面に真っ逆さ。だが、


「“天歩”!」

 

 あやの視界の端にある、HPバーの上のあやのレベルが表示されている円にあるメーターが少し減ったと思うと、足元に波紋が広がり、あやは空中を一歩進んだ。


 そしてそのまま糸が近くにある枝に引っかかって、またあやはターザンする。


 {立体機動LV1}武技(アーツ)“天歩”。


 その名前の通り空中に足場を作ることができる武技(アーツ)だ。


 このゲームには、武術系は武技(アーツ)。魔法系は呪文(スペル)。生産系は技術(テクニック)というふうに、スキルとはまた違ったコマンドがある。


 それらの共通点はレベルが表示される円に重なるようにメーターがついているのだが、それが大なり小なり減少することだ。


 このメーターは『スタミナゲージ』といい、プレイヤーの連続して出せる武技(アーツ)などに制限をかけるためのものだが、すぐに回復する上、呪文(スペル)もスタミナよりMPの方を多く消費するので、それこそ戦況を一転させるような大技を使うか、全力疾走するかしなければ枯渇はしない。


 ただこれらのコマンドを使うと、CT(クールタイム)も発生するので、スタミナとCTをうまく管理するのがプロゲーマーの一歩だとるーじゅは言っていたが………


(私にはちょっと難しいかな………)


 ちなみに{立体機動LV1}は大変有用なスキルなのだが……あや的には微妙だ。『立体機動』というのは、こう………某巨人と戦う漫画のようにビュンビュンするもののことだろう。断じてターザンムーブのことではない……はずだ。

 

 ちなみにあやはその漫画を全巻揃えている。


「あっ、みっけ!」


 あやが【ブルースライムLV2】がぽよぽよしているのを見つけた。


 短剣を取り出し、糸を枝から外すと、落ちた勢いのままブルースライムに短剣を突き刺した。


 ――ザグッ!


「キュゥゥ!?」


 いきなりの察知範囲外からの攻撃に、ブルースライムは即死した。


「イェーイ」


 やはりきちんと倒せると嬉しいものがある。


『プレイヤー【あやピコ】のLVがUPしました』

『{短剣術}スキルを修得しました』

『{不意打ち}スキルを修得しました』


「おっ、やっと{短剣術}獲れた」


 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 ◇スキル{短剣術LV1}

  短剣で戦う人の基本的なスキル。様々な派生がある。

 修得条件―五回以上短剣を使って(エネミー)を倒す。

 使用可能武技(アーツ)―“スラッシュ”

 ◇スキル{不意打ち}

  相手に気づかれずに攻撃した時にダメージ量1.2倍。

 修得条件―不意打ちをすること。

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「へー“スラッシュ”は攻撃力と攻撃範囲がちょこっと上がった上で斬撃を放つのか〜…………ん?」


 あやが武技(アーツ)の説明文を読んでいると、どこからか何かが近づいてくる音がした。


「「「キュキュゥゥ!!」」」


 その何かは【ブルースライムLV3】。しかも三体。

 

「わ、わわ!?」


 この状況は非常にまずい。


 あやはたとえブルースライムといえど、三体同時に相手取る立ち回りはできないし、手に入れたばかりの武技(アーツ)は使ってすらいない。


「「「キュー!」」」


 しかも三体同時に“体当たり”を仕掛けてきた。


「っ!“スラッシュ”!」


 あやが武技(アーツ)を使い、短剣が1匹のブルースライムを切り捨てる。


 だがあと二体。“スラッシュ”はCTに入り使えない。


(せっかくここまで来たのに、死に戻りなんて嫌だ!)


 なんせ、ここまで来るのに小一時間かかったのだ。しかもあやの場合は一撃が致命傷になるので慎重に慎重を重ねてここまで来たのだ。


 その全てが無に帰る。


 そう思ったあやは、“スラッシュ”を放った方とは別の腕を振り抜いた。


 そう、【あやピコの執念のボロ竿】を持った腕を。


 さて、覚えているだろうか?この【あやピコの執念のボロ竿】には{必中}がついているのを。


 そして、通常【竿】系のアイテムは振ることによって発動する。


 あとは、分かるな?


 【あやピコの執念のボロ竿】は、主人を守るため、敵対者に牙を剥く!


 ――ヒュヒュン!


 まず、1匹目のブルースライムに針が突き刺さったあと、若干あやの方に向かっていた針が不自然に直角に曲がり、もう1匹のブルースライムを刈り取った。


 ブルースライム達は光の粒になって消えた。


「へっ?」


『プレイヤー【あやピコ】のLVがUPしました』

『条件を満たしました。{釣り}スキルが{戦釣技(せんちょうぎ)}スキルに進化しました』


「うお!?」


 あっさりと消えたブルースライム達に驚いていると、不意にインフォが届いた。


 慌ててあやは手に入れ……進化した謎のスキルの解説を読む。


 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 ◇スキル{戦釣技(せんちょうぎ)LV1}

  時に漁師は海の魚とも戦わなくてはいけない。釣り竿片

 手に海の猛獣と対峙する姿はまさしく海の男と言えるだろ

 う!

 修得条件―釣り竿を使い、(エネミー)を倒す。

 使用可能武技(アーツ)―“一本釣り”

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「私女なんですけどぉ!?」

 しかもここは森である。大森林である。


 大森林で少女が海の男の(スキル)とはどういうことなのだろうか?


「MPいっぱいあるのに全然使わない……」


 次は魔法系のスキルを手に入れたいとあやは思った。


 


 

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