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Utopia・Online〜開始初日で魔王になるエクストリームプレイ日記〜  作者: オタケ部長
HP1から始まる魔王降臨
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HP1から始まる【ポーションキャンディ】


「う〜ん、いい匂い」


 運営があやに注目しているのも知らず、あやは釣った【カワンナ】で{料理}していた。


 先程まで【ビーカー】が置かれていた岩の上には、【アルコールランプ】よりは火力があるがゲーム内時間一日に30分しか使えない【小型コンロ】と、焼いた【カワンナ】が入った【フライパン】が置いてある。どちらも【見習い料理人セット】に入っていたものだ。ちなみに【カワンナ】を捌く過程で6回、焼く過程で7回死んだ。


 その他にも【大皿】や【フォーク】などの食器類や、【塩瓶】に【胡椒瓶】、【砂糖瓶】などの調味料も入っている。


『{料理}スキルがUPしました』


 しばらくして料理が出来上がったらしい。


 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 【カワンナの塩胡椒焼き】レア度☆☆☆☆☆ 品質 良

 【カワンナ】を塩と胡椒で焼いた一皿。しっかりと味がついて、初心者にしては上出来。熱いうちにどうぞ!

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「いっただきます!」


 あやは早速【カワンナの塩胡椒焼き】に喰いついた。


「お、美味しい……るーにも作ってあげよ」


 説明にもあるように身はふっくら、小骨も少なく食べやすい。


「味は塩と胡椒の味だけど……」


 ただ【カワンナ】本来の味がしない。ただひたすら塩と胡椒の味だけしかしない。


 この料理は【塩瓶】と【胡椒瓶】の一日に使える量を使い切ってしまうため、それ以外の料理のレパートリーが減ってしまう。少し作るのは控えた方が良さそうだ。【ツノウサギの肉】を使った料理が作れない。


 ダシを取るなどの調理法もしてみたいが、鍋がないので諦めるしかない。


「ごちそうさま〜」


 手を合わせて空になった皿を満足そうに見つめる。


 ちなみに使った道具は【料理鞄】というアイテムの中に入れておけば自動洗浄されるらしい。そこはゲーム仕様ということだろう。


 ――ガリガリ……


「?」


 あやが食器類を【料理鞄】に収納していると、ふと何かを削るような音が聞こえてきた。


 岩の陰に目を向けると……


 ――フルフル♪


 機嫌良さそうに竿を揺らしている【あやピコの執念のボロ竿】がいた。


 糸の先には【ジェルポーション】の入った【ビーカー】に入っている。音の発生源はここらしい。


 【ビーカー】を覗くと、{捕食吸収}で中身を(むさぼ)る針があった。


「ちょっ、それピーマン30個分以上の苦味がするんじゃ……えっ?」


 慌てて針と【ビーカー】を離すと、【ビーカー】の中身が少しも動きがない。液体なら水面が揺れるなどの変化があるはずなのに、だ。


 中身をちゃんと見ると固形化している。表面は{捕食吸収}によってボロボロだが、どろっとした青緑色は綺麗な若葉色になっている。


 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 【ポーションキャンディⅠ】レア度★☆☆☆☆ 品質 普通

 【ポーションⅠ】が特殊な工程を挟み、固形化したもの。味が少しマイルドになり、子供でも食べれる。舐めている間HPを回復する。

 継続回復(+HP10/S MAX150)

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 完全に別モノになったらしい。“特殊な工程”とは、【ブルースライムジェル】と【ポーションⅠ】を煮詰め、冷やし固めたことだ。【薬師のレシピ帳】にもそう書いてある。


 だがあやにとって重要なのはそこではない。


 『味が少しマイルドになり、子供でも食べれる』。


 『子供でも食べれる』。


 この一点に尽きる。


 えっ、ほんとに子供でも食べれるの?でも説明には少しとあるし、ピーマン30個分が20個分になっただけかもしれないし……でも……


 ――ピョーン、ピョーン!


 【あやピコの執念のボロ竿】はまるで「もっともっとー!」と言わんばかりに跳ねている。


 この子もこんなに欲しそうにはしてるんだし……でももし違ったらピーマン20個分……いやでも……いやしかし…!


 そんなあやの苦悩は3分続いた。


「食べなきゃ何も始まらないよね……」


 ゴクリ……!


 この緊張感は、小学生の頃に初めて炭酸を飲んだ時に似ている。ちなみに今は普通に炭酸が好きだ。


 そう。あの時みたいにまた好きになれるかもしれない!小学3年生の、あの夏の日のように!

 

 あやは意を決して欠片を口に放り込んだ。


「ーー!?」


 ……違う。これはピーマン20個分なんかじゃない!


 これは……これはぁ!


「抹茶味だ……」


 そう。抹茶味のキャンディだー!


 何をどうやったらピーマン30個分が抹茶味になるのかは謎だが、そんなのどうでもいい。


 抹茶味なのには変わりないのだから。


 しかもこれに継続回復効果があるのはかなり美味しい。売りに出せば、継続回復しつつ美味しいアイテムなど引く手数多だろう。


「これはもっと量産しないとなぁ……」


 だが手持ちの【ブルースライムジェル】はもう無い。でも一人では無理だ。なので……。


 あやは無言で未だに跳ね続ける【あやピコの執念のボロ竿】に向き直る。


「ねえ、君。これの材料集めを手伝ってくれないかなぁ…。

そうすれば……」


 ボロ竿は首を傾げるかのように竿を曲げる。


「この【ビーカー】に残ってる分の飴全部あげよう」


 ――ビィィィィィィンン!!


 それはまるでビシッと敬礼をする一人の軍人のようであった。今にも「了解であります!すぐ行きましょうすぐ!」と言っているようである。


「よし、行こう」

 ――ピョーン、ピョーン♪


 一人と一本は【安らぎの小川】を出る。


 だがそこで突然のツノウサギ!“突進”!

 ――バギィ!

 {不屈}発動!も一つ“突進”!

 ――ドゴン!

 あやは光の粒になって消えた。


『プレイヤー【あやピコ】が死亡しました。15秒後リスポーンします』


 やっぱダメかもしれない。

 

前回は電池危なかった……

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