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Utopia・Online〜開始初日で魔王になるエクストリームプレイ日記〜  作者: オタケ部長
HP1から始まる魔王降臨
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HP1から始まる【執念のボロ竿】

スイカうまい。

『{加工}スキルがUPしました』

『{加工}スキルがUPしました。新たに技術(テクニック)“研磨”を修得しました』

『{木工}スキルを修得しました』


「で、できた〜……」


 あの後3回ほど死亡し、ようやく【木の棒】を釣り竿のように加工することができた。


 その過程で{加工LV1}が{加工LV3}になり、{木工LV1}を修得することができた。


「えっと……“研磨”!」


 {加工LV3}技術(テクニック)“研磨”。


 表面を滑らかにすることにより、品質と耐久値を向上させることができる技だ。もっともそれの効果は微々たるものだが。


 次に先端の方に【初心者裁縫師セット】に入っていた【長針】を使って糸を通し(この作業で2回ほど死んだ)、3mほどの糸がついた釣り竿と呼べるものになった。


「あとは針だけど……ハァァァ……」


 あやはるーじゅからもらった【ツノウサギの角】を取り出し、長いため息をついた。


 ただの【木の棒】を加工するだけで100回も死んだのだ。それより硬いものを加工すれば一体どれだけの手間が掛かるか……。


 試しに短剣を押し当てるが、表面に僅かな傷が付いただけで、これを釣り針の形にできるとは到底思えなかった。


「針だけ売ってないかな……」


 あやは【安らぎの小川】の流れが緩やかな所を覗き込む。

 {釣り}の影響か、なんとなくそこにいる魚の気配を感じることができる。


「私の悠々自適釣りライフが……餌を結んでたら釣れないかな……ん?」


 あやが糸を手に持って、先っぽの方に目を向けると……付けた覚えのない釣り針が付いていた。しかもその釣り針は金属特有の光沢を放っている。


 いや、それどころか……


「黒!?」


 そう黒い。元は茶色い木の釣り竿が見事に真っ黒になっている。


 しかも、いかにも“呪われている”と言うのかドス黒い(もや)も醸し出している。


「どうしたどうしたどうした!?」


 あやは慌てて釣り竿の詳細を確認する。


 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 【あやピコの執念のボロ竿】レア度★★★★☆品質 劣

 プレイヤー【あやピコ】が魂を削り、執念を込めて作り上げたボロ竿。その執念は獲物を畏怖させ、狙った獲物を逃すことがない。

 {装備者固定【あやピコ】}{不壊}{威圧}{必中}

 {捕食吸収}

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「説明が物騒!」


 【あやピコの執念のボロ竿】って何だ。{装備者固定}と{不壊}は分かるが、{威圧}に{必中}、{捕食吸収}なんてスキル、釣り竿に必要があるのだろうか。そもそも何故アイテムに自分の名前が入っているのか。


 そんな疑問があやの脳内を埋め尽くす。


 実はこれ《魂心クオリティ》システムという、運営が用意した隠し要素である。


 先の説明で、生産活動で失敗すると自傷ダメージが入るという話はしただろう。高難易度のアイテムを作る過程であやのように死亡する場合もある。


 それらのダメージ量や死亡回数に応じて強力なアイテム《魂器》を作り出すことができる。血を、命を削って己の最高の作品を作り出す。故に《魂心クオリティ》。


 材料とスキルレベルが低いせいで死亡回数にしては性能は控えめだが、それでも強力なことには違いない。


「{必中}ってことは必ず魚が釣れるってことかな?でも{捕食吸収}で食べられちゃうかもしれないし……。あっ、まず餌がない!」


 少し掘ったらミミズとか出てこないだろうか。そんなことを考えたあやは【安らぎの小川】を出る。


 だがそこで突然の【ツノウサギLV5】!“突進”!


「あ」

 ――ドゴ!

 {不屈}発動!2回目の“突進”!

 ――バギィ!


 あやは光の粒になって消えた。


『プレイヤー【あやピコ】が死亡しました。15秒後リスポーンします』


「やめよう」


 15秒後。復活したあやの第一声はそれだった。


 少なくともるーじゅが居ないと戦闘にもならない。

 頼りきりなのは申し訳ないが、るーじゅが帰ってくるまでここにいるしかない。


「しかし2時間以上何もしないのもな〜。{料理}の方は釣った魚で色々と試してから【ツノウサギの肉】使いたいし。でも餌がないから魚が釣れない……ゔぅあぁぁ…」


 思わずゾンビのような呻き声をあげながら拳大の石が並んだ河原にも関わらずゴロゴロし始める。


 ゴロゴロ……


 ゴロゴロ……


 そして横に置いた【あやピコの執念のボロ竿】を手に取って、


「{必中}ってあるんだから餌付けないでも釣れないかな…なんて……」


 次の瞬間、


 ――ビクン!


「えっ、ちょっ――」


 一瞬脈を打ったかと思うと、あやを引きずりながら川に向かった。


「痛たた……えぇ!?」


 立ち上がったあやが見たのは、川の水面を縦横無尽に駆け回る糸だった。


 まるで、というか間違いなく獲物を探しているように見える。


 そして、ある一点で止まると、今度はさっきまで立たなかった水しぶきと共に動き回る。魚にヒットしたらしい。


「わわわわ!」


 慌てて【あやピコの執念のボロ竿】を引き上げる。


 そこには、


 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 【カワンナ】レア度☆☆☆☆☆品質 普通 鮮度 良

 比較的よく食べられる川魚。小骨が少なく、鱗も気にならないほど薄いため調理は簡単。身はふっくらとしているが、味が薄いため調味料は多めに必要。

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「つ、釣れた〜!」


 初めて釣った魚に思わず表情を和らげる。その顔は満面の笑みが浮かんでいる。


 ――フルフル♪


 【あやピコの執念のボロ竿】もまるで「褒めて褒めて〜」と言わんばかりに竿を揺らしている。


「釣れた……けど…」


 だが途端にその表情を曇らせた。


 ボロ竿も「?」と首を傾げるかのように竿を曲げる。


「これ絶対……釣りって言わない!」


 ――ビィィィン!?


 ボロ竿は曲がっていた竿をビィィィンと伸ばした。今にも「ガーン」という効果音が聞こえてきそうだ。


 あやの初釣りは、餌なし投げなし待ちなしの超ハイテク(ハイマジカル?)な釣りとなった。



    【あやピコ】 LV2

 HP-2

 MP-100

 

《ステータス》ステータスポイント7

 攻撃力-10(+5)

 防御力-10(+5)

 敏捷値-10

 器用さ-10

 精神力-10

 知力-10

 運-10


《スキル》 SP11

{調合LV2}{加工LV3}{裁縫LV1}{鑑定LV1}{魔力操作LV1}{料理LV1}{演奏LV1}{水泳LV1}{釣りLV1}{サバイバルLV1}{採取LV1}{木工LV1}

《エクストラスキル》-{不屈}{死に急ぎ}

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