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緑色の光がちらちらしている。三角形の椅子に座って未来人になったような気分になる。映画の中の未来人だ。昔の人からしたら本物の未来人は私である。黄身だけを最後に残して目玉焼きを食べたりソフトクリームをコーンの下から食べたりするみたいなのは多分昔から変わっていない。目玉焼きとかソフトクリームができたときからそういうことをする人はいたに違いない。新しいおもちゃがほしいという気分になっている。新しいおもちゃで遊んで新しい気分になりたい。ネガティブからポジティブへ。十度二十度三十度。口角が上がってきた。無理矢理にでも笑おうとする人は奇人ではなくむしろ常識人なのだろう。私も人と会うときはなるべく笑顔を心がけている。無意識のうちにできる習慣づいたビジネスマナーの一つ。偉そうな人にも笑顔で応じるととりあえず文句は言われない。偉そうな人は常に相手の常識チェックをしていてそこから外れた振る舞いを見つけると即座に反応できるよう高度に訓練されているヒューマノイドインターフェイス婆婆爺型エネルギー体お化け。体力の尽きぬ内はこの恨み晴らさずに居ておくべきか、という義務感。義務感の持ちどころがわからなくて自分では仕事が見つけられなくて暴走しているかわいそうなロボット兵団。なんとか善いことができるようにプログラミングしてあげられないものかしらとしずかちゃんが言う。うっせえブス。黙ってろ、調子乗ってんじゃねーぞ。のび太がしずかちゃんのこめかみに銃口を突きつけて幾度となく実弾を発射する。用意されていた多すぎる量の血糊が大量に噴き出し仕方ないからのび太の顔面にバケツで返り血を浴びせる。低予算映画の高度な表現力が世界を震撼させる。笑いながらのび太は立っている。カメラマンは笑いをこらえている。音声さんに注意をされるが現場は爆笑の渦一歩手前で完全な内輪ノリである。帰り際になって役者は全員浮かない顔をしている。くだらない撮影に付き合わされる程の恥辱はない。どうせ売れない役者のくせに。プライドは高い。だから売れねーんだよてめえはよー。居酒屋で喧嘩になる。殴り合うまではいかないくらいのチクチク刺し合うような愚痴をこぼし合うだけの喧嘩。ヒロイン役の子は昔は可愛かったはずだった。まだ十分若いはずだがここ一、二年ですっかりなんでもないような女になってしまった。アイドルになればよかったかもしれないと最近では思っている。将来性が無いとかすぐに飽きられてしまうとかが不安で役者の道に決めたけど成功した子たちを見ているとそんなことは関係がないんだなと思い知らされる。もしかしたら私の才能はアイドル向きだったのかも、とか、そんなわけないのにな、とか考えながら梅酒を飲んでいる。未だに甘いお酒しか飲めない。日本酒とかワインとか、ビールは飲めるけどおいしいと思えない。成長できていないと感じる。こんなくだらないことでも。関係がないことは分かっている。美人が日本酒を飲むというのはさぞかし絵になるだろうなと思う。人気があれば必然的に仕事が増えてその中でどんどん磨かれていく。若いうちの苦労は買ってでもしろっていう言葉にホントそうだよって頷ける側の人間になりたかった。ほんとそうだよ私もね……若い頃は……それがあって今の私が……。




