死んでから異世界転生するまでの話
遅くなりました、申し訳ないです。
……どこだここ。
気がついたら俺は雲の上にいた。しかも正座している。多分夢だろう、うん。
目の前にはガラスのテーブルがあり、その上にはご丁寧にお茶まで用意されている。
湯気を立てて、美味しそうな香りがちょうど喉が渇いていた俺の鼻をくすぐる。いただきます。ズズッうまい。
「やあ、目が覚めたみたいね」
しかし、煎茶をガラスのテーブルに置くって、和と洋が無茶苦茶だな。誰だよこんなことしたやつ。
「ちょっと、無視しないでよ!分かったわ、テーブル直すから無視しないで!」
あ、テーブルがちゃぶ台に変わった。囲炉裏も出てきた。雲の上に囲炉裏ってシュールだな。
それにしても、お茶菓子が無いのが残念だな。
煎餅とか食べながらこのお茶を飲んだら最高だろうな。
「あの、聞いてくれません?お茶菓子も出すからさ……」
あ、醤油煎餅。バリッボリボリごくん。うまい。
あと、さっきからなんかうるさいな。誰だよ、人がせっかくティータイムを楽しんでるのに。
「私よ!神様よ、私!?」
神様?なんでこんなとこに神様が…あ、そうか。雲の上ってことは、もしかしてここ天界か?
「そうよ!あなた、トラックに轢かれて死んだじゃない!」
……忘れてた。
すっかり忘れてお茶を楽しんでた。って言うかさっきから俺の心を読むなし。
「つまりここって天国?」
「そんなわけないでしょ。この世界では、人は何も無い、無の世界に入って仏になるの。何も無いから欲もない。
欲がなければ悩むことも不満もない。それが一番幸せだと言うのがこの世界の理だからね」
「ふーん。じゃあ俺ってこの後その無の世界に行くことになるの?」
「通例だとそうなるわね」
それはつまらないな。
「他に選択肢は無いの?」
「そうね、あなたは不慮の事故で亡くなったんだし、私が特別措置を取ってあげないこともないわ。例えば、異世界t……」
「よしそれに決めた」
「まだ最後まで言ってない!それにもっとよく考えた方が……」
「だって死んだんだろ?俺」
「……随分と達観してるわね」
「だって、別に元の世界に未練とかないし、まだ17だよ?」
事実、俺は部活も勉強も中の下ぐらいで大した取り柄もない。
友達もそれほど多くないし、親友と呼べる人もいない。
趣味といえば漫画を読むことぐらいか……とにかくそのぐらい、俺の人生はつまらなかった。
未練がないというのも分かるだろ? そこの神様とやら。
それにしても出来すぎた夢だな、と薄ぼんやり思いながら、俺は神様の次の言葉を待った。
「……分かったわ。じゃあちょっとまってね。確かこの辺に……
あった!これが、異世界に持っていけるもの一覧ね。この中から好きなものを1つだけ持っていけるわ」
ほう、そんなものがあるのか。どれどれ、聖剣エクスカリバー、魔剣グラム、妖刀ムラマサ…剣ばっか。
あ、銃もある。なになに、ミニガン…いきなり火薬くさいのきたな。
「あのー、転生する世界ってどんな所?」
「そうね、色々と発展途上だけど、剣術あり魔法ありの緑が豊かでモンスターも豊かな……」
「ファンタジー系ね、了解」
「ひどい!」
ちょっとしょぼくれてしまった神様は放っておいて、何にしよう…ん?「神の加護」?
「この「神の加護」って?」
「ああ、それはあなたがもし向こうの世界で困った事が起こったりした時に、私たちが……」
「バックアップしてくれるのね、了解。じゃあそれにするわ」
「まだ途中なのに!……まあいいわ。
では、中村 修矢君。あなたを)「神の加護」と共に、新たなる世界に導きます。
初期アイテムとして、3000金、駆け出し冒険者の服。そして、「神の加護」の特典である、「神威の剣」、「神武の防具」を差し上げます」
おお、強そう。
「ありがとうございます」
「いえいえ、これも仕事ですから。転生する際、副作用で記憶が飛ぶことがありますが、一時的なものなので安心してくださいね。では、中村 修矢君。良い人生を!
今度は死なないでくださいね!」
記憶が飛ぶかもしれないのか。まあ戻るならいっか。
「はい、じゃあ行ってきます」
俺がそう言うと、神様は俺の方に手をかざした。その瞬間俺の意識は途絶えた。
続きは来週に出す予定