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009_風雲急を告げる前

 


 冒険者の護衛を雇うまではあまり家の外には出ないようにし、その間は【通信販売】で色々な商品を購入した。

 購入した商品はいずれもこの世界では珍しい商品なので売ればそれなりの金額になるのは容易に想像できる。


 俺が家の中で商品を揃えている間、リーシアはプレートアーマーを着込んで大盾と斧を振り回し訓練と称して暴れまわっている。

 おかげで平だった庭にいくつも穴ができていた。

 朝から晩まで庭で跳び跳ねていたこともあってなのかリーシアのレベルが上がっていたのでもしかしたらと自分のステータスを確認したら俺もレベルが上がっていたのには驚いた。

 レベルアップの時はアナウンスはないらしい。



 氏名:グローセ・ヘンドラー

 職業:テイマー・Lv3

 情報:ヒューマン 男 20歳

 HP:174(C)

 MP:550(EX)

 筋力:38(C)

 耐久:33(C)

 魔力:28(C)

 俊敏:33(C)

 器用:172(S)

 魅力:142(S)

 幸運:100

 アクティブスキル:【鑑定(S)】【偽装(B)】【魔道具作成(E)】【テイム(E)】

 パッシブスキル:

 魔法スキル:【時空魔法(E)】

 ユニークスキル:【通信販売(E)】【ナビゲーター】

 犯罪歴:



 器用と魅力も凄いがMPの成長が半端ない!恐るべし『EX』成長!



 氏名:リーシア・オーガン

 職業:アタックガーディアン・Lv3

 情報:オーガ(変異種) 女 15歳 従者

 HP:900(S)

 MP:56(E)

 筋力:162(S)

 耐久:172(S)

 魔力:12(E)

 俊敏:66(B)

 器用:24(D)

 魅力:24(D)

 幸運:5

 アクティブスキル:【百武の守り(E)】【破壊の斧(E)】

 パッシブスキル:【身体強化(D)】【斧盾術(D)】

 魔法スキル:

 ユニークスキル:【絆】

 犯罪歴:



 リーシアもスッゲー伸びだ。伊達に成長『S』ではないな。

 しかも【身体強化】と【斧盾術】がEからDにランクアップしてるし。


『リーシアのスキルランクが上がるの早くない?』

『あれだけ激しく訓練しているので、スキルへの経験値も多いようです』

『確かに俺では十分も持たない運動量だもんな』


 気持ちを切り替え用意した商品を確認する。

 俺が用意した商品はアンブレラさんから頼まれていた白砂糖の五百キログラムと赤ワインにワイングラスだ。

 この世界では酒類はあっても粗悪品が多いとインスが言っていたので赤ワインを商品に追加した。

 ここが日本なら酒類を販売するのに色々面倒らしいがこの世界では商人ギルドに登録していれば問題ないらしい。


 そしてワインとくればワインを入れるグラスが必要だ。

 金属製のカップにワインを入れて飲む? 木製? 構わないけどせっかくなので綺麗なワインレッドが映えるグラスを用意すれば商品価値は更に上がるだろう。

 抱き合わせで販売することで付加価値を与えるんだ。


 夕方になって訓練を終えた汗だくのリーシアに風呂に入るように促す。


「奴隷の俺に風呂など不要だ」

「俺が嫌なんだよ。俺の傍に居るのなら清潔にしてくれ。それにリーシアは奴隷じゃなくて従者な」

「む、……分かった。風呂に入る」


 リーシアが風呂に入っている間に購入したカウカウの肉を料理していく。

 コンソメのカウカウ肉スープにカウカウ肉のステーキ、そしてフワフワのホテルパンをテーブルの上に並べていく。

 並べ終えると丁度リーシアが風呂から上がってきたのだが、その恰好はTシャツ一枚でその下には何も着ていないのが分かった。

 こうして見るとリーシアはスレンダーなモデル体型の美人なのでガン見してしまう。


「って、そんな恰好で出てきてはいけません!」

「何故だ? 主に貰った服だぞ?」

「ちゃんと下着を着けてパジャマを着なさい!」

「良いではないか?」


 リーシアはTシャツの裾から見えそうな部分を気にもせずくるっと回ったりする。

 く、いかん! 俺の理性が!


「ちゃんと着ないのなら今日の夕飯はなしだ!」

「なっ! それはダメだ! 主の作るご飯は美味いのだ!」


 俺の言葉を聞いて自室に着替えに走るリーシア。

 俺が用意する飯が相当気に入ったらしい。リーシアを操るには胃袋を掴んでおけば良さそうだ。


 着替えたリーシアと夕飯を摂るとリーシアは涙を流しながら食べていた。

 美味いとは思うが泣くほどでもないだろうと思ってしまう。

 しかしこの世界ではあまり美味い食事にはありつけないので、リーシアの反応は多少大げさな気もするが納得はできる。

 その後、後片付けはリーシアの担当なので洗い物を任せ、俺も風呂に入りベッドに潜り込む。

 娯楽もないので日が暮れると寝るしかすることがない。

 だから日が昇る頃には自然と目が覚めるのでこの世界にきて俺は早起きになった。


「で、何でリーシアが俺のベッドの中に居るんだ?」

「主の夜伽を」

「要らんわっ!」

「主は俺を抱きたくないのか?」

「今はまだいらんっ!」


 いや、本当はウェルカムなんだけど何か気まずいのでそういうことはもっとね、うん、そうなんだよ。


「ふむ、『今はまだ』か、分かった、時間を掛けよう」

「えっ!」


 リーシアが何か俺の言質の揚げ足を取っていますが?


「明日またくる」


 ……そんな言葉を残してリーシアが部屋を出ていく。寝る前に疲れる。


 冒険者ギルドとの約束の日になった。

 リーシアは朝御飯を摂ると朝練に向かった。

 俺はこれまでの出納帳を付けてみた。

 絹織物のお陰で実入りも大きかったのが嬉しいが、支出も多く特に武具の購入金額が大きかった。

 武具に関しては俺の財力で買える範囲で最高の物を用意した。

 武具をケチったから怪我をしたとか死んだとかでは本末転倒であり面白くない。生き残るための防具なんだから。


「そろそろ冒険者ギルドに行こうか」

「了解だ」


 早めの昼御飯を摂って冒険者ギルドに向かう。

 冒険者ギルドに入り受付嬢に用件を伝えると既に冒険者は集まっていると言われ別室に通される。

 俺は正午丁度に冒険者ギルドに入ったが、これに遅れてくるようでは採用は無いと思っていたがどの冒険者も時間の前に集まっていたようだ。


 十五帖ほどの部屋に応接セットが置かれているので奥のソファーに座って冒険者を待つ。

 面談はパーティーの場合はパーティー単位で、個人の場合は個人で時間を取る。

 最初に入ってきたのは男2人、女3人のパーティーだった。

 リーダーは俺やリーシアよりも大柄な大剣を担いだ女だ。


「あたしらは『暁の雷鳴』だ。全員Dランクの冒険者になる。あたしがリーダーで剣士のキンバリー、メンバーは向こうからスカウトのアイシャ、魔法使いのルミナス、盾使いのボルゴン、神官のクイットだ」


 ギルドからの情報によれば『暁の雷鳴』はもうすぐCランクに昇格ができる実力者であるという。

 言葉遣いがやや粗暴だが冒険者であればそんなものだろうと思うので言葉遣いよりは人柄を優先しようと思う。


「『暁の雷鳴』のアピールポイントは?」

「そうさね、あたしらのパーティーはバランス良い構成だし大概のことは卒なくできる自信はあるよ」


 色々質問をするが答えるのはリーダーのキンバリーだ。

 他の四人は一切答えないので盾使いのボルゴンに質問を投げかけてみた。


「ボルゴンさんに質問ですが、これまで護衛の依頼は何度経験していますか?」

「……」

「すまないね、ボルゴンは口数が少ないんだ。代わりにあたしが答えるよ」

「あ、いえ、ではルミナスさんが答えてください」

「……」

「四回だよ。全員四回だ」


 どうも変だ。本当はしたくなかったが【鑑定(S)】で確認をするとキンバリー以外は全員奴隷だった。

 つまり四人はキンバリーの奴隷ということになる。


『奴隷でも冒険者登録はできるの?』

『はい、できます』


「分かりました。結果は全員の面談後にお伝えします」


 その後二パーティーと個人五人の面談を行った。

 採用は『アルスの剛腕』の三人とセーラという冒険者にした。

 『アルスの剛腕』はレンジャーと魔導師と騎士の若い女性の三人組だ。

 実力や実績、そしてパーティー構成のどれを取っても『暁の雷鳴』の方が上だが、『暁の雷鳴』は奴隷には発言を許していないようだった。

 そこから奴隷の扱いが悪いのではと思われるので採用は見送った。

 個人での採用も女性だったが決して意識して女性ばかりを採用したわけではない。

 俺の採用基準は人柄なので人柄を見て決めたと断言する! 断言するんだ!


「では、明日の朝に私の家にきてください」


 彼女たち三人と一人は冒険者ギルドから依頼書を貰って帰っていった。

 そして面談で落とされた冒険者は俺に文句を言ってくるが、そんなことをすれば冒険者ギルドが乗り出してくる。


「キンバリーさん、そのようなことをすれば評価が悪くなりますよ」

「ちっ、分かったよ」


 職員に指摘され分かったとはいっても納得はしていない。

 手は出してこなかったのでリーシアも静観をしていた。空気が読める子は好きだ。


 翌朝、日の出後直ぐに四人が家にきた。

 ちょっと早いだろ、と思ったがこの世界では朝という時間的約束は日の出後直ぐのことらしい。

 一応起きていたので良いが着替えもしていない。


「いらっしゃい。すまないけど今着替えようと思っていたんだ、リビングで少し待っててくれるかな?」


 俺は『アルスの剛腕』の三人と一人をリビングに迎え入れる。

 リーシアは既に庭で朝練をしているので放置だ。

 着替えた俺は四人にレモン汁を数滴垂らした紅茶に少し砂糖を混ぜて差し出す。


「改めて自己紹介をします。私は『アルスの剛腕』のリーダーでレンジャーのエブリと言います」


 赤色の髪の毛をショートカットにした小麦色の肌の活発そうなエブリ。


「私は『アルスの剛腕』のライラ。魔導師よ」


 金髪にエメラルドグリーンの瞳のライラは少し神経質そうな感じの魔導師だ。


「ウィットニー。騎士」


 青い髪の毛で三人の中では最も小柄ながらメイルアーマーを装着している少女。

 昨日も思ったがウィットニーは無口だ。


「最後は私ですね。私はソロのDランク冒険者のセーラ。狩人で索敵は得意です」


 ショートボウというのか、彼女はやや小さめの弓を使う狩人だ。

 髪の毛は茶髪で視線が鋭い。

 四人ともまだ十代の少女のようだが、確か十五歳で成人となる世界らしいので成人女性として扱った方が良いのだろうか?


「私はグローセ・ヘンドラーです。グローセって呼んでくださいね。今は商人をしています。外の騒々しいのはリーシア、私の従者です」


 窓越しのリーシアへ視線を向けて溜息を吐く。


「さぁ、冷めないうちにどうぞ」


 四人は俺の出したレモンティーを口に含む。


『美味しい!』


 四人が口を揃えて美味しいと言ってくれる。嬉しくなる。


「そういえばこれから朝食なんですが、皆さんは食べましたか?」


 顔を見合わせる少女たち。全員が首を横に振る。

 だから彼女たちの分も朝食を用意することにした。

 メニューはコッペパンとスクランブルエッグ、それからカリカリベーコンとコーンポタージュ、そしてフレッシュ野菜と海藻のサラダだ。


「すまないが、誰か外のリーシアを呼んできてくれないか」

「ああ、私が行こう」


 エブリがソファから立ち上がりリーシアを呼びにいく。

 朝食は料理というほどのメニューではないので直ぐに用意ができる。


「悪いけどテーブルに並べてくれるかな」


 残った三人には食事を運んでもらう。

 エブリとリーシアが家の中に入ってくると席に着いてもらう。リーシアは俺の横に座る。


「お口に合えば良いけど、パンやコーンポタージュはお代わりもあるから」


 最初に俺がコーンポタージュに口を付ける。熱い!

 口の中を少し火傷してしまった。そんな俺を見て笑いが零れる。

 皆が思い思いに朝食に口を付ける。


『っ!美味しい!』


 大した物ではないが四人が嬉しいことを言ってくれる。


「それは嬉しいね。ドンドン食べてくれ」

「主の料理は最高だ!」

「このサラダの上に載っている歯ごたえのある物は何ですか?」


 エブリがフォークで海藻を持ち上げて何かと聞いてくる。


「それは海藻だよ」

「海藻?」

「海で取れる野菜みたいな物だよ。乾燥させると日持ちがするし、水に浸ければそうやって食べられるんだ。それに美容に良いと言われているよ」

「美容っ!」

「へ~海ですか、ここは内地だから海の物なんか手に入らないから一生お目にかかれないような物ですね。グローセさんは毎日こんな貴重な物を食べているんですか?」


 エブリと話していたら魔導師のライラが美容に反応した。

 そして俺と話しているエブリの海藻を横からこっそり取っていた。


「毎日ではないですよ。今日はそれなりに特別ですね」

「あら、私たちのために?」

「まぁ、歓迎の意味を込めてってところでしょうか」


 全然そんなことを考えていませんでしたけどね。


「このコーンポタージュというスープも初めて口にしましたけど非常に美味しいですね」

「それはトウモロコシという食物の実から作るんですよ。コーンポタージュはほぼ毎日食べてますね」


 セーラがコーンポタージュの濃厚な味を気に入ったようだ。

 俺も好きで日本では朝はパン食だったので毎日インスタントのコーンポタージュとパンを食べていた。


「ベーコン、美味しい」

「それは豚という動物の肉を燻製にした物だね。木のチップで燻して香りを付けてあるから味だけじゃなく香りも良いんだよ」


 無口なウィットニーが嬉しそうにベーコンをカプカプと食べる。

 朝食は彼女たちに好評だった。どれも美味しいと言い、コッペパンやコーンポタージュは用意してあった全てが食い尽くされた。


「満腹だよ、満足、満足」


 四人がお腹をさすりながら食後のコーヒーを飲んでいる。

 満腹でもコーヒーのお代わりが出るんだね。


 

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