088_30層
メタルタイタンの亜種からドロップしたスキルスクロールは【ド根性】というもので、この【ド根性】はHPが50パーセントを切ると筋力と耐久が倍になるというものだ。しかも、即死無効の効果まであるので、迷わずリーシアに使ってもらった。
俺の【通信販売(A)】では売っていないレアなスキルの【ド根性】を得られたのは嬉しいことだ。これによってリーシアが即死で死ぬことがなくなったのも大きい。俺の心配の種が一つ減ったよ。
赤の塔探索については、しばらくメタルタイタン祭りをして個々の戦闘力を上げることにした。
ただ、メタルタイタンを何度ポップさせても鎧を着た亜種ではなく、俺が知っているSWGのメタルタイタンしか出てこなかった。
まあ、それはいい。それはいいんだが、あの鎧を着たメタルタイタンの亜種より弱いんだ。
皆がメタルタイタンとそれぞれ10回以上戦ったと思うけど、一番変わったのはエリーだと思う。エリーはライフルだけではなく、銃剣を使い始めたのだ。つまり、接近戦も対応可能になっている。
エリーには【王家の武(S)】があるので、どんな武器でも使いこなせる。ただ、それでもメタルタイタンと接近戦で戦うのは危ないので、【直感】というスキルを使ってもらった。この【直感】は危険を感じることができるというスキルなので、接近戦に不慣れなエリーには丁度いいスキルだろう。
ちなみにリーシアやサンルーヴは元々接近戦のためか、スキルの【直感】がなくても野生の勘的なものがあって、危険には敏感だ。
戦闘力を上げた俺たちは、赤の塔を奥へ進むことにした。
25層も21層から続く草原、山岳、湖のフィールドで、アースエレメント、タイフーンエレメント、フレイムエレメント、ウォータエレメントが出てくるようだ。
すでに各種エレメントは俺たちの敵ではない。皆、タイマンで戦っても勝てるほどになっている。それほどメタルタイタン相手の特訓は有用だったのだ。
26層に入った。フィールドは変わらずで、各種エレメントの他にアースドラゴンが現れたけど、メタルタイタンより弱いので大したことはない。
27層を経て28層に入ると、魔物の配置が変わって、アースドラゴン、タイフーンドラゴン、フレイムドラゴン、ウォータドラゴンが闊歩していた。
各種ドラゴンは各種エレメントよりは強いが、メタルタイタンよりは弱い。そのていどの魔物を倒して進むのはそれほど難しいことではない。
29層はカオスドラゴンが増えた。さすがにカオスドラゴンになるとメタルタイタン並みに硬い鱗と皮、そして範囲攻撃のブレスがあって、面倒な相手だ。それでも俺たちはカオスドラゴンを倒して進んだ。
そして30層、SWGだとこの30層が最上階になる。しかし、SWGとは微妙に違う赤の塔なので、最上階とは限らない。あの管理者さんなら100層にしていても俺は驚かない。
30層も草原、山岳、湖のフィールドなのは変わらない。しかし各属性ドラゴンがいなくなって、カオスドラゴンだけが出てくる。
そして30層の最奥ではボスとしてエターナルドラゴンが陣取っていた。
メタルタイタンとカオスドラゴンはランク8だが、エターナルドラゴンのランクは10だった。
まるでカモノハシのような愛嬌のある顔なのに、体は恐竜のTレックス、そして三対六枚の羽を持っている。
顔が顔だけにあまり威圧感はないが、それでもメタルタイタンを超える大きさなので山のように大きい。
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情報:エターナルドラゴン ランク10 年齢不詳
HP:5,500,000
MP:4,000,000
筋力:1,000,000
耐久:1,000,000
魔力:1,000,000
俊敏:1,000,000
器用:1,000,000
魅力:1,000,000
幸運:80
アクティブスキル:【レインボウブレス(S)】【破壊のブレス(S)】【高速飛行(S)】
パッシブスキル:【超再生(S)】【耐久強化(S)】【筋力強化(S)】【竜の怒り(S)】【竜の威厳(S)】【言語理解(S)】
魔法スキル:【重力魔法(S)】
ユニークスキル:【即死ブレス(S)】
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なんだかブレス系のスキルが多い。しかも、ユニークスキルに【即死ブレス(S)】まである。
リーシアに【ド根性】を覚えさせておいてよかった。セーラ、エリー、ルビー、そして俺は遠距離攻撃すればいいし、あとはサンルーヴが【即死ブレス(S)】の範囲に入らなければいい。サンルーヴなら大丈夫だろう。
スキルの中では【重力魔法(S)】がとても気になる。【重力魔法(S)】は俺もほしかったんだけど考えた結果、【時空魔法】を取得した。ストレージや転移がとても便利なので【時空魔法】にしてよかったと思っているし、後悔などない。
『マスター、エターナルドラゴンを倒したら、【重力魔法】と【言語理解】を取得します』
『うん、頼むよ』
インスに任せておけばいい感じに対応してくれるだろう。
「おい、主。準備はいいか」
「俺はOKだ。皆はいいか?」
サンルーヴ、セーラ、エリー、ルビーが頷く。
「よし、【即死ブレス】には気をつけてくれよ。特にサンルーヴは耐性がないからな」
「わかったワン」
セーラとエリーは岩山の上。俺は別の岩山の上に陣取り、サンルーヴは姿を隠し、ルビーは空を飛び、リーシアは悠々と歩いてエターナルドラゴンに近づいていく。
「こちらセーラ、準備完了です」
「こちらエリー、準備完了です」
「いいワン」
「大丈夫っピー」
「こちらグローセ、準備完了」
「よっしゃーっ! いくぞ!」
歩いていたリーシアが走り出すと、エターナルドラゴンも巨大な体を起こして、リーシアを迎え撃とうとする。
エターナルドラゴンの体はメタルタイタンよりも大きく、質量を考えればリーシアが突っ込んでも返り討ちにあうのが普通だ。だが、うちのリーシアは圧倒的な質量差をものともしない。本当に常識外れな娘だ。
リーシアが常闇の鎧から盾を発生させる。今までの戦いのおかげで、常闇の鎧ももらった時に比べてかなり強化されている。
自己修復や形態進化は本当に素晴らしい能力だ。
常闇の盾とメタルタイタンの大斧を構えたリーシアの後姿は凛々しく見える。
本当は俺が最前線に立てばいいんだが、俺はチキン野郎だから魔物とガチンコで殴り合うのは苦手なんだ。そんな俺に代わって魔物と殴り合ってくれるリーシアには本当に感謝している。
「リーシア、【ド根性】があるからといって、あまり無理をするなよ」
「ははは! この俺が無理などするわけないだろ!」
いや、一番無理しそうだから言っているんだよ。
「頼もしい言葉だけど、リーシアに何かあったら俺は悲しくてたまらない。だから、無理はするなよ」
「主は心配性だな! だが、俺は大丈夫だ」
リーシアは悠然とエターナルドラゴンに向けて歩いていく。
そうだな、俺はリーシアを信じて前衛を任せればいいんだ。
「ふー。セーラ、最大火力を打ち込んでくれ」
「了解しました」
俺はセーラにファーストアタックを任せ、バレットM82A1を構える。
「撃ちます!」
セーラの合図と共に、エターナルドラゴンの巨体を包む爆発が起きた。
爆風が俺のところまで届く。リーシアとサンルーヴは大丈夫だろうか?
次第に視界が開けていくと、体中に傷を負ったエターナルドラゴンの姿が見えた。
「リーシア、サンルーヴ。無事か!?」
「ザッ、問題ない」
「ザザッ、だいじょうぶワン」
ほっと胸を撫で下ろす。
「よし、総攻撃だ!」
俺のその指示で、了解とばかりエリーのヘカートIIが火を吹きエターナルドラゴンの額に穴を開けた。
俺も負けてはいられないと、バレットM82A1のスコープを覗きトリガーを引く。
ドンッと肩に衝撃があり弾丸はエターナルドラゴンの右目に命中した。
俺とエリーの攻撃をエターナルドラゴンはかなり嫌がって暴れる。
こうして、エターナルドラゴンとの戦端の幕が切って落とされたのである。




