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086_タイタン(亜種)

 


 タイタンの鎧をボロボロにしてやり、肌がむき出しになった部分をたくさん作った。

「セーラ、撃てる最大の魔法攻撃を頼む! 皆、一気に畳みかけるぞ!」

 タイタンには【超再生(S)】があるので一気にHPを削らないとすぐに回復する。

「承知しました、グローセさん!」

「主、任せておけ!」

「わかったワン!」

「撃ち抜きますわ、旦那様」

『インス、タイタンのHPが10万を切ったら1万毎に教えてくれ』

『承知しました。マスター』


 俺はレミントンM870を連射してタイタンの体に、何度も風穴を開けた。

 それはエリーも同じで、ヘカートIIはレミントンM870と同じようにタイタンに穴を開けていく。

 タイタンは体に穴が開くたびに悲鳴をあげるが、がんばってリーシアを攻撃している。これで鎧が再生したらシャレにならないが、鎧が再生することはなさそうだ。

 鎧さえなければタイタンもそれほど硬いわけではないので、このまま一気に押し切れるか?


「主! 戦いは楽しいな!」

 いやいやいや、戦いは楽しくないぞ!

「そ、そうか……?」

「大盾越しにタイタンの攻撃を受けた時の骨がきしむような感覚が、生きていると実感させてくれるぞ!」

 リーシアはMか……。たしかに夜もどちらかというと受けなんだけどさ……。

「け、怪我をしないようにしてくれよ……」

「分かっているぞ!」

 本当に分かっているのだろうか?


『マスター、タイタンのHPが10万を切りました』

『やっとか、さすがに時間がかかったな』

 俺たちの総攻撃を食らって数分も持ちこたえる奴なんて滅多にいない。それが今、俺たちの目の前にいるわけだ。


「皆さん、魔法を撃ちます!」

 セーラの魔法構築が終わったようだ。俺はタイタンの攻撃に合わせてレミントンM870を撃ってリーシアの後退を支援した。

「セーラ、いいぞ! 一気にぶちのめせ!」

「はい!」

 サンルーヴはすでに離れているだろうと思ったら、いつの間にか俺の横にいた!?


 俺たちの後退に合わせて天から光の柱が下りてきた……。

「え、何これ?」

 その光がタイタンを包み込むと、土ばかりの地面が燃え上がった。草も木もないのに、土が燃えるってどれだけの熱量を持っているんだ!?

 その余波は100メートル以上離れた俺たちも襲い、肌を刺すような痛みと髪の毛がチリチリと焼ける感じがした。


「主!」

 俺はサンルーヴを抱きかかえ、大盾を構えて余波に耐えるリーシアの後ろに入った。

「リーシア、悪いな」

「主を護るのが俺の役目だ!」

「あついワン」

「サンルーヴ、もう少しだからな。がまんだぞ」

「ワン」


 数十秒の間、俺たちは余波に焼かれたが、タイタンはあの高熱の光の柱に全身を焼かれているんだよな。

 考えただけでも恐ろしい光景だ。

 光の柱が筋を引いて消えていくと、地面は大きく抉れマグマのように赤く蠢いていて……。

 タイタンはうずくまっているのか、真っ黒な炭のようなものがあるだけだ。

『マスター、まだHPが200ほど残っています』

『了解!』

 しかし、あれを食らってまだ生きているのかよ。


「エリー、とどめを!」

「はい!」

 返事があったすぐ後に炭タイタンの真ん中に穴が開き、タイタンが崩れ落ちた。

『HP0を確認しました。お疲れ様でした』

『おう、お疲れ』

「皆、お疲れ。タイタン討伐は完了だ!」

 俺たちは激闘を振り返って、皆で抱き合った。

 ただ、セーラはMPのほとんどを使ったため、エリクサーを飲んで回復したが少し疲労の色が濃かったので、今日は帰ることにした。


 ドロップアイテムはメタルタイタンのインゴットとスキルスクロールだった。

 スキルスクロールが出たのは俺も驚いたが、メタルタイタンはタイタン戦のドロップアイテムだ。

 SWG内のメタルタイタンは希少な金属で、メタルタイタンで造った武器や防具は最後まで使えるものだった。

 ただ、この世界にきてからは聞いたことがないので、このメタルタイタンを武器や防具に鍛えてくれる鍛冶師がいるかが問題だ。いなければ俺が造るつもりだけど、これだけの金属を俺が鍛えることができるか疑問がある。


 赤の塔の町の家に戻った翌日、俺たちは鍛冶師を探すことにした。そういう場合、やっぱりこの人に聞くのが一番だろう。

「棟梁、最高の鍛冶師を紹介してください!」

 職人ギルドを仕切る棟梁に聞けば鍛冶師を紹介してくれると思うんだ。

「なんだいきなり?」

「はい、希少な金属を手に入れたので、それでリーシアの大斧を造ってくれる鍛冶師を探しているのです」

 メタルタイタンを手に入れたら最初にリーシアの大斧を造ってやろうと思っていた。

「ほう、希少な金属だと? 今、持っているのか?」

 俺はマジックバッグからメタルタイタンのインゴットを取り出して棟梁に渡した。


「な、な、な、なんじゃこりゃぁぁぁっ!?」

 棟梁が叫んでぶっ倒れた。

 棟梁はぶっ倒れながらもメタルタイタンを離すことなく、握りしめて宙を睨んでいた。

「棟梁!?」

 お弟子さんたちが棟梁に駆け寄って抱き起こした。

 俺も起こしてあげようとしたけど、お弟子さんの動きがとても速かったんだ。


「ふーふーふー。……おい、お前! ダダンを呼んでこい!」

 血走った目をして助け起こしたお弟子さんの襟首をつかんでそう命令すると、お弟子さんは走っていった。

「坊主! この金属をどこで手にいれた!?」

「どこって、赤の塔ですけど?」

「坊主、これが何か、当然知っているのだろうな?」

 もちろん知っていますよ。知っていてタイタンをポップさせたのですから。


「そんなに慌てないでください。それが何か知っていて最高の鍛冶師を紹介してほしいと、棟梁にお願いにあがったわけですから」

「むむむ、坊主には本当に驚かされるぞ! こんな伝説の金属を持ち込みやがって!」

 なんだか嬉しそうですね。それにメタルタイタンは伝説の金属なんだね? 棟梁はその伝説の金属に熱い視線を送っている。ドワーフの血がたぎっているのかな?


「棟梁!? ダダンさんを連れてきました!」

 お弟子さんが連れてきたのは棟梁と同じドワーフだった。鍛冶師っていえばドワーフっていう先入観があるけど、ゴブリンも意外と手先が器用なので鍛冶師が多いと聞いている。

「ドラガイ、俺は忙しいんだぞ! つまらん話ならぶっ飛ばすからな!」

 いつも棟梁って呼ぶから忘れそうになるけど、ドラガイというのは棟梁の名前だ。


「がははは! ダダンよ、そんな口が利けるのも今のうちだぞ!」

「用件を早く言え!」

 棟梁は鼻の穴を大きくしてダダンさんから見えないように隠していたメタルタイタンをダダンさんの前に出した。

「なんだ、黒魔鉄のインゴ……」

 メタルタイタンを見たダダンさんはそれがなんだという感じだったけど、顔がドンドン青ざめていく。

「め、め、め、め、め、め、め、め」

 ラッツ●スターの歌か? 顔を黒く塗ってみる? まぁ、「め」をこんなに連発していないけどね。


「めぇぇぇっ!?」

 ダダンさんが羊のような叫び声をあげてぶっ倒れた。ドワーフだからか、それともメタルタイタンの希少価値を知っているからなのか、大げさな二人だ。

「ここここ」

 ぶっ倒れたダダンさんが、今度は鶏のマネをしだした。

「こんなところになんでメタルタイタンがあるんじゃ!?」

 ダダンさんがガバッと飛び起きて棟梁が持っているメタルタイタンに飛びついた。

 漫才を見ているようで、これはこれで楽しい。


「がーっははは! 見たか! これがメタルタイタンだ!」

 それ棟梁のじゃなくて俺のなんですけど?

「ドラガイがなんでメタルタイタンを持っているだよ!?」

「これはそっちの若いのが持ってきたものだ」

 ダダンさんが俺を見る。充血した目をこれでもかというくらいに見開いて見てくるんですが……。


「あ、あんた……もしかして、ヘンドラー公爵か?」

「あ、はい。グローセ・ヘンドラーといいます。遺憾ながら公爵なんて爵位を持っています」

「なんじゃその自己紹介は? 変な奴だな。俺はダダンっていうしがない鍛冶師だ、よろしくな公爵様」

「よろしくお願いします、ダダンさん。それから俺のことはグローセと呼んでください」

「おう。なら、遠慮なくグローセって呼ばせてもらうぜ」


 お互いに自己紹介も終わったので、メタルタイタンでリーシアの大斧を造ってほしいとダダンさんに頼んだ。

「おう! 任せろ! このダダン、一生に一度の仕事をしてやるぜ!」

 ダダンさんは嬉々としてメタルタイタンを持って帰っていった。報酬の話は何もしていない。いいのだろうか?


「棟梁、いい人を紹介していただき、ありがとうございます。このお礼はいつものやつで」

「おう、いつものやつで頼むぜ! がははは」

 いつものやつというのは、酒である。

 てか、ことあるごとに俺の家にきて飲んでいくから、報酬の前払いをしている気がするのは俺だけだろうか?


 

コミカライズ3話更新されています。

コミカライズも読んでくださいね。

(毎月24日更新予定)

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