085_タイタン(亜種)
戦車に頼らない戦いをするのが決まったら、今度はタイタンとどうやって戦うかだ。
この場合、リーシアにタイタンを引きつけてもらい皆でダメージを与えるしかないけど、リーシアが倒れたら終わりだから俺はセーラに指示を出す。
「セーラは攻撃よりもリーシアのダメージコントロールを頼む!」
「分かりました!」
この戦いはリーシアがいかにタイタンを引きつけておけるかにかかっているから、セーラによるリーシアのダメージコントロールが生命線になる。
それに先ほどの先制攻撃で顔面が爆発したにもかかわらずタイタンのHPはほとんど減っていない。いくら兜で守られているからってセーラの魔法をまともに受けてこれでは、シャレにならない。
硬すぎるが、ヘカートIIやレミントンM870でも鎧は変形したんだから、やってやれないわけがないはずだ。セーラには悪いが、サンルーヴとエリー、そして俺がタイタンのHPを削る!
「サンルーヴも攻撃が効かなくても同じ場所に攻撃を集中してくれ」
「わかったワン」
サンルーヴにはスキルの【鉄斬り(S)】があるが、さすがにタイタンの鎧を斬るのは難しいようだ。
だけどサンルーヴなら同じ場所を1ミリも違わず攻撃できるはずだから、がんばってくれ。
俺もエリーとは別の場所をレミントンM870を構えて集中的に攻撃する。
俺の場合、射程が短いのでタイタンの巨体を見上げる位置にいる。迫力ありすぎだろ。
ちょっとした小山を見上げる感じになるが、俺が狙うのはタイタンの左足の脛だ。エリーが右足の太ももを狙っているのでどっちが先に鎧を破壊するか競争だな!
ポンプアクションを繰り返し何度もスラッグ弾を脛に打ち込む。
レミントンM870の装弾数は六発プラス一の七発で、これで七発撃ったのでスラッグ弾を込めなおしてまた左足の脛の鎧を変形させていく。
すると、タイタンが俺を邪魔と思ったのか、ターゲットをリーシアから俺に向けてきた。ヘイトを上げすぎたようだ。
「主、やるな!」
別にやりたくてやっているわけじゃないから!
タイタンが俺を踏みつぶそうと足を上げたところで、スラッグ弾を二発連射して足の裏を撃つとタイタンは体勢を崩して尻もちをついた。
ドスンという轟音と土埃が巻き上がって土が目に入って痛い。
俺はタイタンから距離をとってスラッグ弾を込めなおす。最大七発しか装弾できないので、意外と面倒だな。
まぁ、戦いが長期化しなければなんの問題もないわけだけど、今回は長期化した戦いなんだよね。
『インス、目が痛い。ゴーグルを買っておいてくれるかい』
『承知しました』
心の中でインスに買い物を頼む。
倒れているタイタンの上に飛び乗ったリーシアがタイタンの顔に大斧を叩きこんだ。
タイタンは嫌がる素振りを見せてリーシアを払い落そうとするが、今度はサンルーヴが右腕の肩を狙って現れた。
サンルーヴは右腕の肩に攻撃を集中しているので、タイタンの鎧の肩部には薄っすらと線がついている。
タイタンが再び立ち上がって、リーシアを攻撃する。
巨大な足でけられたリーシアが地面を削りながら数メートル後方へ圧されるが、リーシアはしっかりとタイタンの攻撃を受け止めているのでダメージは少ない。
ダメージは少ないが、蓄積すればリーシアのHPが減っていく。
セーラが上手く回復をするが、リーシア自身も俺が作ったエリクサーの劣化版を飲んで回復してセーラにヘイトがいかないようにしている。
今度リーシアに回復魔法を覚えさせようかな。そうすれば、エリクサーを飲まなくても自分で回復できるので、ヘイトの固定に役立つと思う。
真っ黒装備のリーシアが自力回復魔法を使うと、暗黒騎士が聖騎士のように聖の魔法を使う感じで違和感半端ないな。
面白そうだからリーシアに聞いてみよう。
『マスター提案があります』
『提案? 何かな?』
『スラッグ弾に【時空魔法(A)】の加速を付与してみてください』
『加速……。分かった、やってみる!』
インスの提案に従って俺はスラッグ弾に加速を付与して、撃った。
すると、タイタンの鎧にヒビが入って一部が砕けた。
「おぉっ! やったぞ!」
「さすがは旦那様です!」
「うむ、さすがは主だ!」
「ごしゅじんさま、すごいワン!」
「グローセさん、今、レミントンM870に魔法を付与しましたか?」
おっと、さすがは大賢者のセーラだ。俺がこっそりかけた加速を見抜いていたか。
「インスのアドバイスでスラッグ弾に加速をかけたんだ」
「旦那様、私のヘカートIIの弾にも加速をお願いします!」
「分かった。リーシア、タイタンを頼んだぞ」
「任せておけ!」
俺はエリーのそばに転移して、マガジンに込められた弾に加速を付与してあげた。
「ありがとうございます!」
エリーはヘカートIIを構えて引き金を引いた。
するとタイタンの右足の太ももの鎧が砕けて粉々になった。
「すごいです! これでタイタンも怖くありません!」
エリーがいるここからタイタンまではおよそ500メートルくらいあるので、数十メートルから見るタイタンに比べれば全然怖くないけどね。そういう問題じゃないよね、ははは。
「それじゃぁ、俺もいってくるね」
「お気をつけて」
エリーが俺の頬に口づけをしてくれた。なんだか勇気が湧いてきてタイタンなんて大したことない気がしてきた!
『【王女の威厳】がランクAになっていますので、その付随効果ですね』
『鼓舞の効果があるってこと?』
『その通りです。ただし、対象は限定的のようなので、マスターにしか効果がないようです』
『俺限定の鼓舞効果か……』
エリーの鼓舞を受けて俺はタイタンの数十メートル手前に転移した。
「お前は俺が倒す!」
「主、気合入っているな!?」
「リーシア、俺に任せておけ!」
なんだか普段のリーシアのようになってしまったが、まぁいい。
レミントンM870を構えて撃つと、今度は腹部に命中して鎧に大きなヒビが入った。
同じところに再び命中させると、鎧は砕け散ってタイタンの腹部が露わになる。
「主に負けてられないぜ!」
リーシアが脛に開いている穴からタイタンに直接大斧を叩きこむと、タイタンは悲鳴のような声をあげて後ずさった。
弁慶の泣きどころだからね、HPが減るとかは関係なくタイタンでも痛いようだ。
俺とエリーで鎧を破壊していくとそれに触発されたのか、タイタンの肩の辺りで数人のサンルーヴが見えたと思ったら鎧が砕けた。
「おぉっ! サンルーヴ、やったな!」
「やったワン!」
コツを掴んだのか、サンルーヴも圧倒的なスピードによる攻撃でタイタンの頑丈な鎧を破壊していく。
「くそ! 俺だって!」
リーシアがやけくそ気味に【万斧撃(S)】を放ったが、これは鎧を破壊するまでいたっていない。
「ムカつくぅぅぅっ!」
現在のリーシアの筋力は33万近い、そこにステータスでは見えないが【絆】によって俺のステータスの一割である16万が加算されるので、合計で49万くらいの筋力値になる。
タイタンの耐久値が50万なのでほぼ同じ値になるので、本来であれば鎧を破壊してもいいだろう。
しかし、タイタンにはパッシブスキルに【屈強(S)】と【耐久強化(S)】があり、アクティブスキルに【硬化(S)】と【鉄壁(S)】があるので、防御力はかなり高くなっている。
その防御力の壁をリーシアの【破壊の斧(S)】【破壊の極意(B)】【万斧撃(S)】が抜けなかったようだ。
【破壊の極意(B)】のランクがもう少し高かったら違った結果になっていたかもしれない。
「リーシアさんの仇は私がとります!」
エリーのヘカートIIが火を噴き、タイタンの太ももに穴を開けた。
「俺は死んでない!」
リーシアは死んでいないので、仇という表現は正しくないだろう。
しかし、それで火がついたのか、リーシアの攻撃がクリーンヒットしたのか、大斧を叩きつけたところの鎧が砕け散った。
それと同時にリーシアの大斧も粉々に砕けたけど……。
「うがぁぁぁっ! 俺の大斧がっ!」
大斧が砕け散ったことに怒ったリーシアがタイタンを殴りだした。
「あ、おい、リーシア。これを使え」
俺は予備の大斧をストレージから取り出してリーシアに放り投げた。
「主、愛してるぞ!」
大斧を受け取ったリーシアから告白されてしまった。知っていたけどさ。
「お、おぅ……俺もだ……」
本日コミカライズ2話が更新です。
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