084_タイタン(亜種)
赤の塔の二十四層を進むと、俺の記憶の中にある『スマート・ワールド・ゲート』の隠しエリアに入った。
「グローセさん、ここになにかあるのですか?」
「ここは隠しエリアだよ」
「隠しエリア?」
セーラの質問に答えると、リーシアがガバッと俺の肩を掴んだ。
「主、それはミスリルゴーレムのようなものがいるということか!?」
「正解。リーシアは勘がいいな」
頭を撫でてやる。
「むむむ、もっと撫でてもらいたいが、強い奴とも戦いたい。どうすればいいんだ!?」
そうかそうか、撫でられたいか。ほれほれ。
「ご主人様、サンルーヴも撫でてワン」
「おう、こうか?」
「わぅん~」
右手でリーシアの頭を撫でて、左手でサンルーヴの頭を撫でる。
リーシアの細い髪の毛と、サンルーヴの癖のある髪の毛を力加減を変えて撫でるのは意外と難しいことなんだよね。
でも、こういう時間ってのが大事で、俺にとっては心休まる至福の時なのだ。
「旦那様、エリーも撫でてほしいのです」
「よろしかったら、私もお願いします」
エリーとセーラもか。よし、おいで。
四人の頭を撫でていたら結構な時間が経ってしまったが、これは必要経費ならぬ必要時間だ。
「この隠しエリアについて説明するけど、ここにはある条件をクリアするとタイタンという魔物がポップするんだ」
「「タイタン!?」」
セーラとエリーが驚いて声をあげた。
「二人はタイタンを知っているのか?」
そう聞くとエリーが代表して説明をしだした。
「タイタンは物語の中に出てくる魔物です。体長が20メートル以上もあって皮膚が鉄のように硬い巨人だと物語では語られています」
「そんな物語があったんだな。だいたいその認識で間違っていないよ。タイタンはドラゴンくらい強いと思ってくれていい。多分、カオスドラゴンくらい強いはずだよ」
カオスドラゴンはランク8の魔物なので、タイタンもランク8だと思っていいだろう。
「ただ、これはあくまでも俺の記憶の中のことなので、もしかしたら違った魔物が現れるかもしれないし、何も起きないかもしれない。何があってもいいように準備だけはしておこう」
「おう! 俺に任せておけ!」
「わかったワン」
「大賢者に相応しい対処をします」
「旦那様にいただいた、このヘカートIIがあればどんな敵も撃ち抜いてみせます!」
四人が頼もしいぜ!
「それじゃぁ、俺はタイタンをポップさせるから、後衛のセーラとエリーはあの岩場の上に陣取ってくれ」
「「はい!」」
「サンルーヴは気配を消して潜んでいて」
「わかったワン」
「リーシアは俺と一緒にいくぞ」
「任せてろ!」
タイタンの隠しエリアは西部劇の場面で出てくるようななんとかキャニオン的なエリアになっている。
谷底が広くて切り立った崖が数十キロメートルは続いていそうな感じのエリアだ。
エリーが大事そうに抱えていた魔改造されたヘカートIIなら一発で仕留めることができるかもしれないけど、俺の知っているタイタンが出てくるとは限らない。
「皆、準備はいいか?」
「こちらセーラ、準備完了です」
「こちらエリー、準備完了です」
「ごしゅじんさま、だいじょうぶワン!」
インカムを通して三人の声が聞こえてくる。
そして俺の目の前に仁王立ちするリーシアが親指を立てている。
「主! ばっちこい!」
リーシアは男前の笑顔である。
「ポップさせるぞ!」
俺はミスリルのインゴットとアースエレメントのクリスタル、タイフーンエレメントのクリスタル、フレイムエレメントのクリスタル、ウォータエレメントのクリスタルを地面においた。
SWGの設定だとタイタンの主食がミスリルで、四属性のクリスタルがおかずらしい。
遠くのほうから地響きが聞こえてきて、谷底に乾いた土煙があがっている。
どうやらここまではSWGと同じ設定のままのようだ。
土煙がどんどん近づいてくるとともに地響きもすごく、震動が伝わってくる。
「リーシア、頼んだぞ」
「おうよ!」
俺はリーシアより少し下がって新しい武器を構える。
今回俺がチョイスしたのはレミントンM870だ。俗にショットガンといわれる銃になる。
ショットガンというと散弾銃を頭に浮かべると思うけど、ショットガンでもスラッグ弾という弾が一発しか入っていない弾があるのだ。
ショットガンの口径は大きいのでこのスラッグ弾だとかなり威力が高くなる。ただ、ショットガンの射程は短いので散弾でもスラッグ弾でもそれは変わらない。
それなら対物ライフルのバレットM82A1を使えばいいじゃないかと思うだろうが、それだとエリーと被るんだよね。
「ん? これは……?」
タイタンは全身に鎧をまとっていて、俺の記憶にあるタイタンとは違っていた。
それでも、体長は20メートルくらいあるので、概ねはおなじだ。
この外見の差がなんなのか、確かめるのに俺たち自身の命をかけることになる。
「気をつけろ、俺の記憶にあるタイタンより強そうだ!」
四人の返事がインカムから聞こえてくる。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
情報:タイタン(亜種) ランク不明 12761歳
HP:2,000,000
MP:10,000
筋力:500,000
耐久:500,000
魔力:1,000
俊敏:100,000
器用:100,000
魅力:1,000
幸運:70
アクティブスキル:【硬化(S)】【パワーアップ(S)】【鉄壁(S)】
パッシブスキル:【超再生(S)】【屈強(S)】【耐久強化(S)】【筋力強化(S)】【格闘(SS)】
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
タイタンの亜種で、なおかつランクが『不明』かよ!
ステータスのどこを見ても脳筋臭がプンプン漂ってくるよ。
「セーラ、撃ちます!」
その声と共にタイタンの顔面に爆発が起こり、タイタンが後ずさりした。
「エリー、撃ちます!」
次はエリーのヘカートIIにより狙撃で右足の太ももにあたったが、金属鎧が大きく変形したが貫通しなかった。
「硬いです!?」
エリーが驚愕の声をあげる。
「俺もいくぞ!」
リーシアがタイタンの左足に黒魔鉄の大斧を打ち込んだ。
金属同士が当たるような甲高い音がして、大斧が大きく弾かれた。
「主、硬いぞ!」
そう言いながらもリーシアの顔は嬉しそうだ。
俺もレミントンM870を構えて撃つ!
スラッグ弾はタイタンに当たり鎧が少しへこんだが貫通しない。
ヘカートIIよりへこみが小さい気がするので、ヘカートIIよりやや威力がおちるか? それとも当たりどころが悪かったかな?
だけど、へこむってことはまったく効果がないわけではない!
「エリー、同じ場所に狙いを集中してくれ」
「やってみます!」
へこむんだから、何度も同じ場所に命中させれば、いつか破壊できるはずだ!
いや、それより戦車をだすか!?
「主、戦車はなしだぞ! これは俺たちが倒すんだ!」
なぜ俺の考えていることが分かるのか!?
「リーシアさんの言う通りですよ、グローセさん。戦車やアパッチに頼ってばかりでは私たちは強くなれませんから!」
「ワンワン!」
リーシア、セーラ、サンルーヴから自力で戦うという強い意志を感じた。
「私は旦那様の武器がなければ何もできないので、旦那様の意思に従います」
エリーはヘカートIIを使っている時点で俺に頼っていると考えたようだが、それは違うと思う。
ヘカートIIだって扱いが決して簡単なわけじゃないのにエリーはしっかりと使っている。エリーは俺の嫁なんだから俺の力を使うのは悪いことじゃないと思うんだ。
だけど、リーシアたちの考えも分かる……。
「分かった。戦車は出さないけど、危なくなったら出すからな」
「主、戦車なんて出させないぞ!」
「さすがはグローセさんです」
「ワオン!」
「了解しました、旦那様」
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