083_日常の中で
コミックフラッパー様よりコミカライズしていただけることになりました。
1話は本日1月24日公開です。
楽しんでください。
コミックフラッパー様
https://comic-flapper.com/
四人娘について少し話してから自分の話をしようか。
現在、彼女たちは八人でパーティーを組んで赤の塔の攻略をがんばっていて、十九層へ到達している。
山岳エリアでランク5のアイアンゴーレム、ブラッククロー、メタルリザード、ランク6のロックリザードのような硬い魔物に苦戦をしているそうだ。
サンルーヴもかなり苦労していたのが思い出されるな。
メンバーについてだけど、四人娘は今さらなので何もいうことはないだろう。だから、他の四人について触れておくとしよう。
火魔法の使い手であるホノカ・ヒノ、闇魔法の使い手であるタケオ・オオサキ、格闘家であるアカネ・ソウハラ、そして探検家のロキの四人がパーティーに加わっている。
いずれも管理者さんによってこの世界へ送り込まれた元日本人だ。
ホノカ・ヒノ、タケオ・オオサキ、アカネ・ソウハラの三人については、以前紹介しているが、ロキは今回が初めてだろう。
ロキは戦闘力はあまりないが、宝を見つける能力に長けている。それだけではなく、罠や隠し通路の発見にも長けているので補助職として非常に役に立っているそうだ。
俺はこの八人を援助しているわけだが、最近は援助もそれほど必要なくなってきた。さすがに十九層ともなれば、そこで狩った魔物の素材を冒険者ギルドに持ち込めばいい値になるからだ。
でも、【通信販売】で取り寄せる地球の商品は八人の心のよりどころになっている。
そして俺たちだが、俺たちは現在二十四層に到達している。
この二十四層は草原、山岳、湖の複合エリアになっていて、アースエレメント、タイフーンエレメント、フレイムエレメントといったエレメント系の魔物がひしめき合っている。
これらのエレメント系の魔物はどれもランク6だけど、意外と強い。
アースエレメントは魔法が効かず物理攻撃しか受けつけないし、タイフーンエレメントは物理攻撃が効かず魔法攻撃しか受けつけないし、フレイムエレメントは物理と魔法ともに効きにくい。
そして何より、それぞれの属性攻撃がなかなか厄介だ。
「よーっし、突っ込むぞ!」
まぁ、リーシアは相変わらずなわけで、常闇の鎧から大盾を発現させてフレイムエレメントに突撃していく。
「支援します!」
セーラが水属性の魔法を発動させて支援する。
「グレネード撃ちます!」
エリーがディマコC8アサルト・カービンを撃った。
現在、【通信販売】のランクは『A』なので四段階改造ができることから、C8でもランク7下位の魔物にも有効だ。
また、C8に装備されているグレネードランチャーなら、ランク7上位でも十分に通じる威力がある。しかし、ランク6とはいえ、フレイムエレメントは物理と魔法の耐性を持っているので厄介なんだ。
セーラとエリーの支援攻撃がフレイムエレメントに炸裂すると、リーシアがフレイムエレメントに体当たりをして吹き飛ばした。
「オラオラァッ!」
黒魔鉄製の大斧を振り回してさらに追撃をしようとするが、その前にフレイムエレメントの高熱系の魔法がリーシアを襲った。
「こんなもの!」
リーシアは常闇の大盾で魔法を受け止めて灼熱の中を少しずつ前進する。いくら常闇の大盾が自己修復して自己進化するとはいえ、無茶をする。
「ワン!」
気配を消していたサンルーヴが現れフレイムエレメントに攻撃をすると、また気配を消して見えなくなった。
意識していても見えないのだからサンルーヴの隠密能力が極めて高いのがよく分かる。
俺も負けていられないと思いM16を構えるが、リーシアの攻撃を受けてフレイムエレメントが崩れ落ちた。
フレイムエレメントは倒した後、体を残さずにフレイムエレメントのクリスタルというアイテムを残す。これは他のエレメント系の魔物も同じで、各属性のクリスタルを残す。
このクリスタルは同じランク6の魔物の魔石よりも良質だということで高値で取引されているので、いい金になるのだ。
エリーはまだレベルが低いのでそこそこレベルアップするけど、リーシアたちのレベルはほとんど上がらない。ランク6ていどでは経験値が美味しくないのだ。
まぁ、ランク8やランク9と戦っていた頃のようには上がらないのは仕方がない。
もう少し上の層へいけばランク8やランク9もいると思うけど、十六層から一層当たりの広さが半端なく広くなるし、上の層にいけばいくほど広くなっていく。それに魔物の密度もかなり高いので一層当たりの攻略速度が落ちて時間がかかってしまうのだ。
戦車やアパッチを投入してもいいけど、それだと兵器の性能に依存してしまって俺たちの戦闘の勘のようなものが育たない。俺やエリーはそれでもいいけど、リーシア、セーラ、サンルーヴの三人はそれぞれの戦闘スタイルが兵器依存ではないので地道にいくことにした。
まぁ、危なくなったら戦車やアパッチを出すけどね。
赤の塔を出て家に戻った。
今、俺は孤児たちを集めている施設の一角にこじんまりとした家を建てて住んでいる。
魔物買取店のほうは部下たちに任せているし、コスメショップも同様だ。
最近は孤児たちと日本人の支援をしながら赤の塔を攻略している感じで、支援している八人の日本人も子供たちの面倒をみてくれている。
「マスター、ベーナンゼ帝国の帝都店の売り上げ実績です。それと酒類を増やしてほしいと要望がありました」
インスは家からヘンドラー商会の各店をコントロールしている。
各店には魔改造された通信機が設置してあるのでリアルタイムでテレビ会議ができるようになっているのだ。
「砂糖と胡椒は前月比22パーセントアップ、コスメは前月比37パーセントアップか。いい調子だけど、酒はどんなのがいいって?」
「寒い土地柄なのでアルコール度数の高いものが好まれるようです」
寒い国では酒が飛ぶように売れる。厳しい寒さを乗り切るためにも酒は必需品なんだろうな。
「OK、ウォッカとウイスキーを商品に加えて様子を見ようか」
「分かりました。そのように手配しておきます」
「よろしく頼んだよ」
商売のほうはインスに任せておけばなんの心配もない。
俺は窓からグラウンドを見た。
子供たちが剣や槍の訓練をしていて、元気な声が聞こえてくる。
俺の部下や従者も子供たちに混じって訓練していて、活気があるのが遠目からでもよく分かる。
「そろそろ子供を送り出すとブラハムさんが仰ってましたよ」
「あの三人だろ? よく我慢したな」
早く冒険者になりたいと反発していた三人の男の子たちがいた。
ブラハムは彼らが冒険者になってもすぐに死んでしまうと施設を出ることを許さなかったが、今では体も大きくなって体力もついたから冒険者になってもやっていけると、ブラハムは考えたのだろう。
「他に四人の子供も一緒に冒険者になると必死で魔法や剣の練習をしていましたよ」
ここから巣立っていく彼らの未来に災いが起きないことを祈るしかない。
「明日、教会へいって職業を授けていただくそうです」
冒険者には何歳でもなれるが、職業は15歳以上じゃないと授けてもらうことができない。
俺がこの世界にきた時は二十歳だったので、問題なく職業を授けてもらえたわけだ。
「皆の希望にかなった職業があるといいな」
「はい。でも職業がよくても悪くても、スキルもありますからなんとかなりますよ」
実際の話、俺も戦闘向きの職業ではなかったが、スキルのおかげでなんとかなった。
スキルは自然に発生するものもあれば、職業を授かったときに得るものもあるし、スキルスクロールのようなものから得ることもできる。
だから、職業が全てではないけど能力の成長を考えたら、ほしいと思っている職業を授かるほうがいいに決まっているのだ。
そして、七人が教会で職業を授かる日がやってきた。
ブラハムが引率して教会へいっているが、七人はいい職業に巡り合えただろうか?
なんだか自分のことのようにドキドキしてしまう。
「お館様、ブラハムさんたちがお戻りになって面会を望んでおります」
「通して」
メイドがブラハムと七人の子供を俺の部屋に誘う。
「教会はどうだったかな?」
「希望に近い職業があった。お前たちも公爵様に礼を言いなさい」
ブラハムに促されて一番体格のよい少年が前に進み出た。
この青年は以前ブラハムにコテンパンにされた三人のリーダーのバルデーだ。
出会った頃は百六十センチメートルくらいしかなかったのに、ぐんぐんと背が伸びて今では百八十センチメートル近くある。
まだ伸び盛りだから大きくなるんじゃないかな。
「公爵様のおかげで俺たち冒険者になれそうだ。感謝しているぜ」
「こら! 公爵様になんて口のききかただ!」
バルデーはブラハムに拳骨を落とされた。
「痛いな」
「公爵様、申し訳ございません。礼儀作法まで教える時間がなかったもので」
ブラハムが面目なさそうに謝ってきた。
「構わないさ。だけどな、バルデー。俺はいいが、他の貴族にはもう少し丁寧な言葉遣いをするんだぞ。それで無礼討ちになってもつまらないからな」
「分かってるって! 公爵様、ありがとうな!」
「「「「「「ありがとうございます」」」」」」
バルデーに続き、六人も頭を下げた。素直な青年に育ってくれた。
その後、七人の職業を聞いたが、なかなかいい職業を授かったようだ。よかったな。
「ブラハムもご苦労だったな。これからも子供たちを導いてやってくれ」
「はい、承知しました」
「皆も、いい職業を授かってよかったな。今日は七人の巣立ちを祝うパーティーをするぞ」
「パーティー!? 美味いものが食えるのか!」
「美味いものをたくさん用意するから、腹いっぱい食えよ!」
「「「「「「「はい!」」」」」」」
七人の旅立ちを祝してセーラとメイドたちがたくさんの料理を作っている。
インス、リーシア、サンルーヴ、エリーは手を出さない。
以前、インス、リーシア、サンルーヴの料理を食ったが、酷いものだった。特にリーシアの料理は殺人的なものだったので、それ以来料理をさせない方向に持っていっている。
エリーに関しては王女という立場だったので、城の料理人が料理を作るのが当たり前の世界で育ったこともあり、料理のりょの字も知らない。
最近、セーラに料理を習っているけど、リーシアほどではないがこちらもセンスはないようだ。
パーティーは子供たちの好きなカレーライス、ハンバーグ、から揚げ、焼きそば、スパゲティ、サンドイッチ、おにぎりを山盛りで出したけど、子供たちの食欲はすさまじく完食してくれた。
三百人からの子供たちの腹を満たすのは簡単ではないということだし、他にも俺の部下や従者も参加しているので五百人近くの食事を用意したセーラたちにも感謝しないとな。
漫画を描いてくださるのは、山珠彩貴様です。




