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081_ダンジョンマスター

 


 管理者さんのダンジョンを踏破した俺だったが、ここで問題が1つあった。

「マスター、ダンジョンマスターとしてこのダンジョンを管理しなければなりません」

「はい? ……このダンジョンを俺が管理するの?」

「主、それなら高ランクの魔物と戦わせろ! 戦車もいいが、体が鈍ってしまうぞ」

「あ、旦那様、私も自分の力を確認したいです」

「レベルが上がりましたのでどういうことができるのか、確認するのも大事なことですね」

「たたかうワン!」

「ルビーも確認したいっピー!」

「あー、分かった。インスどうすればいいんだ?」

 インスの美しい顔を見て質問する。


「最初に知っておいていただきたいのが、ダンジョンマスターはこのダンジョンのラスボスになります」

 ダンジョンマスターなんだから、今までの経験でそれは理解できる。

「……俺はここにずっといなければいけないのか?」

「いいえ、ダンジョンマスターの権限を一部与えた存在を配置することで、マスターはダンジョン外で自由に行動できます」

 よかった。ダンジョンに缶詰めなんかになったら、商売や赤の塔の攻略に支障が出るどころの話じゃないからな。

「はい、まずはダンジョン運営の方針を決めましょう。初心者育成的なダンジョンにすることもできますし、超高難度のダンジョンにすることもできます。どのようにしますか?」

 そうだな……。よし、こうしよう!


「ダンジョンを四つのランクに分けようと思う。初心者育成も兼ねた層、中堅冒険者に美味しい層、上級冒険者に美味しい層、超高難度の層。できるかな?」

「問題ありません。魔物やドロップアイテムの配置をそのようにすればいいのですから。それでは、次は階層ですが、今は十層ですが、増やすことも減らすこともできます。四つのランクであれば、一層と二層を初心者用、三層と四層を中堅冒険者用、五層と六層を上級冒険者用、七層と八層を超高難度、九層をリーシアさんたちの訓練用の超超高難度層、十層をダンジョンマスターであるマスターの代理を置く層にすればいいと思います。いかがでしょうか?」

 さすがインスだ、しっかりと俺の意図を汲み取ってくれるね。


「それでいいよ」

「次はマスターの代理となる存在ですが、二つの案があります。一つはスキルの【ダンジョンマスター】を使って代理になる魔物を作成します。この場合、高ランクの魔物になればなるほどダンジョンのエネルギーを消費しますので、他の魔物やドロップアイテムの配置に影響が出ることになります」

「エネルギー?」

「言い換えますと、ダンジョンポイントのようなものだと思ってください」

「あぁ、なるほど……。もう一つの案は?」

「マスターの【使い魔(S)】で召喚した使い魔にダンジョンマスターの権限を与えるのです」

「ルビー?」

「ッピ!?」

「今のマスターなら、ルビー以外にも高ランクの使い魔を多く召喚できます」

 それならわざわざダンジョンポイントを消費する必要はないな。


「それならダンジョンの管理を任せる使い魔を召喚しよう。他はない?」

「ダンジョンに配置する魔物の種類をどうするか、ドロップアイテムの配置やドロップ率をどうするか、ダンジョンの形状をどうするかなど色々決めなければいけません」

「OK! ちゃちゃっと決めてしまおう!」

 まず、ダンジョンは初心者エリアは草原と湖にして、中堅冒険者エリアは森と山、上級冒険者エリアは砂漠と岩山、超高難度エリアは火山と海、リーシアたちの訓練用である九層はフィールドが切り替わるようにして、十層は何もない空間にすることにした。

 ダンジョンは人が入れば入るほどエネルギー(ダンジョンポイント)が溜まるそうなので、人を呼ぶために初心者エリアには薬草などを多く配置して、気軽に薬草採取ができるようにする。

 中堅冒険者エリアには金になるアイテム、上級冒険者エリアには希少な武器や防具を配置することにした。

 超高難度エリアからはアイテムを一切配置しない。

 人を呼び込むには上級冒険者エリアまでを厚遇すれば十分で、それ以上の層は実力を試すためのエリアにしたのだ。

 配置する魔物については、初心者エリアに獣系、中堅冒険者エリアに獣系と鳥系、上級冒険者エリアにゴーレム系と地中を移動できる魔物、超高難度エリアはなんでもあり、リーシアたちの訓練用エリアは要望があった魔物を配置する。


 そんなこんなを決めて、最後にダンジョンマスターの代理をしてもらう使い魔を召喚することにした。

「とはいっても、どんな使い魔がいいのかな?」

「十層が『無』のエリアですから、それに対応できる使い魔がいいと思います」

「無のエリアに対応ねぇ……。ノーフォームドラゴンのようなものかな?」

「二番煎じですが、そういう系統だと思います」

 二番煎じって、たしかにそうだけど……。

「それなら、スライムでどうだ!?」

「ノーフォームドラゴンに似ていますが、いいのではないでしょうか?」

 インス、厳しいよ……。


 俺はスライムを召喚することにした。もちろん、ただのスライムのわけがない。

「無の空間でも行動できて、極悪で、最悪で、最凶のスライムよ、出てこいやーっ!」

「「「「「「………」」」」」」

 インス、リーシア、セーラ、サンルーヴ、エリー、ルビーの視線が痛い。

 そして、魔法陣の中から現れたのは七色に輝く手の平サイズのスライムだった。

 俺はその虹色のスライムを手の平の上に乗せてみる。ひんやりとしているけどムニムニで触り心地がとてもいい。


「マスター。そのスライム、可愛いですね」

「プニプニして気持ちいいですね、グローセさん」

「主! こんなのが強いのか!?」

「きれいワン」

「スライムにしては小さいですね、旦那様」

「ルビーの後輩っピー!」

 皆の感想には俺も同意だ。


「マスター、この子に名前をつけてあげてください」

 インスがそう言うと、スライムがプルルンと嬉しそうにした。

「そうだな、虹色なのでありきたりだけどレインボウでいいかな?」

 すると、スライムがプルプルと震え出して光ると、俺の手の上から飛び降りて大きくなっていく……。

 レインボウは虹色の髪の毛と虹色の瞳をした少女になってしまった。

「ご主人様、レインボウだよ! よろしくね!」

 ルビーも最初から喋っていたし喋るのには驚かないけどさぁ……。

 なんで皆小さい女の子になるわけ? 決して俺の趣味ではないからな!


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 氏名:レインボウ

 情報:グラトニースライムサバト ランク8 女 0歳 グローセの使い魔

 HP:200,000

 MP:200,000

 筋力:50,000

 耐久:140,000

 魔力:140,000

 俊敏:140,000

 器用:140,000

 魅力:145,000

 幸運:70

 アクティブスキル:【飛行(A)】【捕食(A)】【伸縮自在】【形状自在】【強酸弾(A)】

 パッシブスキル:【魔力吸収(A)】【魔法威力上昇(A)】【物理攻撃無効】【魔法攻撃耐性(A)】【HP高速回復(A)】

 ユニークスキル:【四属性魔法(A)】【情報共有】【人化】


【捕食(A)】捕食したもののスキルをランクEで覚えることができる。

【伸縮自在】大きさを自由自在に変えることができる。

【形状自在】形があるものであれば、どんな形にもなれる。

【強酸弾(A)】強酸の球を射出する。

【魔力吸収(A)】魔法攻撃を受けた時にその魔力を吸収できる。

【魔法威力上昇(A)】魔法攻撃の威力が上昇する。

【四属性魔法(A)】火、水、風、土の四属性を操る。


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 普通にルビーと同じくらいに強い! 『HP』が低いけど『耐久』は高いし【物理攻撃無効】があるから物理攻撃でダメージを与えることはできないだろう。

 それに、【魔法攻撃耐性(A)】と【魔力吸収(A)】があるから魔法ダメージもほとんど無効化するだろう。

 おまけに【HP高速回復(A)】があるからちょっとしたダメージは一瞬で回復してしまうという鉄壁さだ。

 ダンジョンマスターの代理に相応しい能力だ!


「レインボウはダンジョンマスターの代理としてこのダンジョンの管理をしてもらうから」

「任しておいてよ! ご主人様の代わりにしっかりとダンジョンを護るからね!」

 仕草が女の子っぽくてとても可愛いけど、中身はえげつない能力の持ち主なんだよな……。

 まぁ、俺の周りにいる女性陣は皆そうなんだけどさ。


 ▽▽▽


 ダンジョンを出ると、俺たちの周りに人が集まってきた。

「ヘンドラー伯爵。首尾は!?」

 えらい剣幕だと思ったら筆頭大臣だった。

「これは閣下、何日ぶりでしょうか?」

「ふ、二日ですぞ! それより、ダンジョンのほうはどうなりましたか!?」

 結果が聞きたくてうずうずしているようだね。


「ダンジョンは沈静化しました。今までとは魔物の配置とかも変わっていますが、一層や二層にランク5やそれ以上の魔物がいるようなことはありませんので、安心してください」

「「「おおおぉぉぉっ!」」」

 俺の言葉を聞いた周囲の人たちから歓声があがった。

 筆頭大臣も歓喜の表情をして、俺にお礼を何度も言ってきた。


「ギルドマスターはいるか!?」

「ここに」

「早速、冒険者を送ってダンジョンの調査と確認をしてくれ」

「承知しました」

「ヘンドラー伯爵は某と共に城へお願いいたす」

「妻たちも一緒にいいですか?」

 ルビーはすでに送還しているので、今はインス、リーシア、セーラ、サンルーヴ、エリーの5人がいる。

「問題ござらん。馬車を用意しているので、それで―――」

「あ、馬車はいりません。自前のものがあるので」

 俺は周囲の人をどかして、96式装輪装甲車(クーガー)を出した。


「こ、これは……噂には聞いていたが……」

 筆頭大臣がなにかブツブツ言っているけど、構わず96式装輪装甲車(クーガー)に乗り込む。

 いまさら96式装輪装甲車(クーガー)を隠す必要もないし、堂々と乗ってやろう。

「閣下、先に城へいってますよ」

「え、あ、某も乗せてくださらないか!?」

 俺はインスたちを見た。みんな頷いたので、いいと思う。

「いいですよ。後部ハッチから入ってください」

「感謝する!」

【サーチ(S)】の筆頭大臣のマークが黄色から青に変わっている。現金な人だ。


 筆頭大臣は城に早馬を出して、なんやかんやしてから後部ハッチから96式装輪装甲車(クーガー)に乗り込んできた。

「なっ!? これは……」

 96式装輪装甲車(クーガー)の内装は居住空間優先の改造が施されているので、とても居心地がいい空間になっている。

「これはいったい……」

「筆頭大臣閣下、そういうものは詮索しないほうがよろしいですよ」

 インスがにこやかな表情で筆頭大臣を脅していますよ。

「そ、そうですな……」

「筆頭大臣、グローセ・ヘンドラーという方の力の一部です。貴方もよく考えて我が夫へ接することです」

「姫様……。ご教示痛み入ります」

 なんだか筆頭大臣が借りてきた猫のように小さくなっている。


 リーシアの運転で町中を走って城へ向かった。途中、早馬と思われる馬を追い越した気がしたが、気にしない。

 城に到着するとすぐに国王の執務室に通された。筆頭大臣がいると話が早くていいね。

 執務室には王妃もいて、エリーが王妃に帰還の挨拶をする。国王は完全に無視されているな。


「現在、冒険者ギルドにダンジョン内の調査をさせています。明日には報告がくるものと」

 筆頭大臣はエリーに無視された国王へ報告をしたが、国王はエリーのほうをチラチラ見て捨てられた子犬のような目をしている。可愛くないから!


 国王と王妃から労いの言葉をもらった俺たちは屋敷に帰ることにしたが、国王がエリーを呼び止めた。

「か、帰ってこぬか?」

 このおっさん何を言っているのやら……。

 これはあれだな、『娘が好きすぎて仕方がない症候群』、略して『娘大好き』だ。

「何を言っているのですか? 私はヘンドラー家に嫁にいった身です。帰ってきたら離縁されたことになるじゃないですか!」

「うっ……。そうじゃが……」

 エリーは最後まで国王に冷たい視線を向けていた。

 俺に助けてもらったのに頭も下げないのを怒っているようだ。

 でも、国王って簡単に頭を下げたらいけないんじゃないかなと俺は思うよ。もちろん、俺の考えと感情は別だからね。


「父上はまず旦那様に感謝するべきです。そのうえで旦那様から受けた恩をどのように返すか考えるべきでしょう」

 感謝はいいけど、恩を返すのはいらないよ。残金の200億円をしっかりと払ってもらえばいいんだから。契約にないことは不要だし面倒になるからさ。

「エリー、今回は国と商人の取り引きなわけで、俺は残金さえしっかりと支払ってもらえば問題ないからね。恩なんて考えは不要だよ」

「ならば感謝だけはするべきでしょう。父上はそこのところをどうお思いですか?」

「た、たしかに……。分かった。ヘンドラー伯爵、こたびのこと、王都を救ってくれたことを感謝する。この通りだ」

 国王は頭を下げた。

 謁見の間では簡単に頭を下げることはできないだろうが、国王の部屋ならそれもできるわけだな。

「それでいいのです。今後は旦那様にいらぬちょっかいを出す貴族が現れないように、しっかりと目を光らせてくださいね」

「わ、分かっておる……」

「うふふふ。エリー、そろそろ許してあげてちょうだい。陛下も反省していますから」

「母上はお父様に甘いのです! ですから、あのような者が騎士団を私物化するのですよ!」

 騎士団長のことだね。エリーはかなり騎士団長を嫌っている。

 騎士団を解体して最初から作りたいくらいの気持ちだそうだ。

 そのことに関しては俺に白羽の矢が立たないことを祈ろう。


 翌日、冒険者ギルドから報告を受けたらしく、また城に呼び出された。

 今度は謁見の間で国王からお褒めの言葉をいただいたが、昨日の情けない姿を見ているので国王の威厳は全然感じなかった。

 貴族たちもかなり痛い目を見たのか、シュンとして何も言ってこなかった。


「今回の報酬とは別に、ヘンドラー伯爵を公爵に陞爵させるものとする」

 なんか余計な褒美がついてきた。伯爵だって要らないのに公爵ってなんだよ。

 公爵は貴族だけど、王族の一員でもある。エリーを妻にしたから公爵にしたんだろうけど、俺には王位継承権はない。

 くれると言われても拒否するけどエリーには王位継承権があるし、エリーに子供ができたらその子にも王位継承権が発生するらしい。

 国王にしてみたら俺に貴族位の中で最も高位の公爵の位を贈って、エリーにゴマをすっているんだと思う。

 娘大好き親バカというか、娘離れができないというか、本当に迷惑な話だ。

 そんな感じでしばらくパーティーだとか、なんやかんやあって王都に留まっていた。


「さて、帰るか!」

 俺の言葉にインス、リーシア、セーラ、サンルーヴ、エリーの5人が元気よく返事をしてくれた。

 王都でやることは終わったので、赤の塔の町に帰るのだ。


 

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