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008_商談4

 


 リーシアというオーガ族の女の子を従者にしてしまった。

 アルビノというのか、白い女の子だ。

 プラチナブロンドに透き通るような白い肌、オーガ族なのに華奢で俺と背はそんなに変わらない。


 オーガ族は灰色系の肌で強い個体ほど色が濃くなるといわれているので、リーシアは白いからと一族から仲間外れにされていたらしい。

 彼女はある日モグリの奴隷商人に捕まり流れ流れてマダムブレンダの店に拾われた。

 しかしマダムブレンダの命令に従わないためにマダムブレンダでも手を焼いて放逐する寸前だったところに偶々俺が奴隷を探して店に現れ黒髪に黒目の俺に従うと決めたらしい。

 黒はオーガ族にとって特別な色なんだと。


「主、今日は何をするのだ?」

「護衛を雇おうと思っているから冒険者ギルドに行こうと思うんだ」

「主の護衛なら俺がするぞ!」

「ありがとうな。でもリーシアは戦闘系の職業にも就いていないしスキルもないから」

「む、しかし主を守るのは俺の使命だ!」

「じゃぁ、今日は教会に行ってリーシアの職業を決めようか」

「しかし教会が金を取るだろ」


 教会では職業に就いたり転職したりできるが、そのためには最低でも一万円の寄進を求められる。

 寄進の額は教会毎で違うというがこのハジメの町の教会は一万円で俺も支払った。


「金の心配なら必要ないよ。その程度の甲斐性はあるよ」

「ならば、主に従おう」


 冒険者ギルドで護衛依頼を出すのは教会の後で構わない。先ずはリーシアの職業だ。

 そういえばリーシアの服を買ってやらないとな。

 奴隷商店のボロボロの服を今でも着ている。【通信販売】で購入しておこう。

 どんな服が良いのだろう? 白い肌には薄いピンクのワンピースなんて良いかな?

 それともボーイッシュにジーンズとパーカー?

 む~、全然良い物が思いつかん。

 取り敢えず画面を見て良さそうなのを幾つか買って後はリーシアの趣味に任せるか。

 それに家具や雑貨も一緒に買おう。

 昨夜は急遽ベッドだけ購入したがそれ以外は何も買ってない。


 ポン、ポン、と【通信販売】で購入したダイニングセットを設置し、ソファーセットをリビングに、食器棚を購入し皿やカップなどの食器類を仕舞う。

 そしてダイニングセットのテーブルの上に服を積み上げる。


「……主、それは何なのだ?」

「ん、これは俺のスキルだ。このことは他の人には絶対に言わないようにな」

「こんなスキルがあるのか? 主の命は絶対だ。誰にも言わぬ」

「それとこの服に着替えてくれ」

「これは……奴隷の俺にこのような立派な服をくれるのか?」

「安物だよ。それからリーシアは奴隷じゃなく俺の従者ね。着替えは自分の部屋でね」


 俺の前で服を脱ぎそうになっていたリーシアに自分の部屋で着替えるように言うと何だか残念そうな顔をして部屋に向かうリーシア。


『インス、この町で高額でしかも大量に消費されるような商品って何だろう……紙とボールペンは売れるかな?』

『提案の仕方次第だと思いますが羊皮紙や木簡が使われていますので可能性はかなり高いと考えられます』

『そうか……そうだ、絹織物の反物ってどう?』

『絹織物は貴族御用達の商品なので高値で売れるでしょう』

『【通信販売】だと絹織物の反物が三万円程度から売っているけどこの町の末端価格は幾らくらい?』

『扱っている商店や買う貴族によってまったく金額が違っておりますが、五十万円から百五十万円程度で多くの取引がされています』

『ほえ~、そんなに高いの?』

『絹は貴族の洋服に使われる最高級生地ですから』


 明日にでも数本をアンブレラさんに見せて幾らで買ってくれるか確認してみよう。

 インスと商売の相談をしていると着替えたリーシアが出てくる。

 ……似合っているけど何でそれにしたんだ?……俺が渡したから何も言えんが……


「主、似合っているだろうか?」

「おぉう、似合っているぞ」

「そうか、この服は動きやすく色々な物が入れられるようになっているから気に入った」

「……それは良かった」


 某国の軍隊用迷彩服を着込んだリーシアは背丈が俺と同じくらいで女性としてはやや高いので非常に凛々しく見える。

 あ、靴も買ってやらないといかんな。

 迷彩服に合う黒い革のブーツを追加で購入し渡してやるとやや大きかったので買いなおし24センチサイズのブーツを与えると嬉しそうに履いてピョンピョンと跳ねている。

 姿はどこかの国の軍人みたいだ。


 教会に到着すると早速職業を授けてくれるマリア像の部屋に通される。

 ただ、俺は部屋の外で待つように言われたので、所在なさげに待つ。

 ほんの三分程度でリーシアとシスターが出てきたので俺は一万円を寄進してリーシアと共に教会を離れる。


「それで職業は何にしたんだ?」

「うむ、これだ」


 リーシアはステータス画面を俺に見せてくれた。



 氏名:リーシア・オーガン

 職業:アタックガーディアン・Lv1

 情報:オーガ(変異種) 女 15歳 従者

 HP:500(S)

 MP:50(E)

 筋力:90(S)

 耐久:100(S)

 魔力:10(E)

 俊敏:50(B)

 器用:20(D)

 魅力:20(D)

 幸運:5

 アクティブスキル:【百武の守り(E)】【破壊の斧(E)】

 パッシブスキル:【身体強化(E)】【斧盾術(E)】

 魔法スキル:

 ユニークスキル:【絆】

 犯罪歴:


 【百武の守り(E)】発動時、どんな攻撃を受けようともHPが減らない。発動時間は二分。終了後、再発動まで一時間。

 【破壊の斧(E)】発動時、斧による攻撃力を3倍に増幅する。スキルアーツ斧と合わせて使うことで絶大な破壊力を発揮するだろう。発動時間は十五秒。終了後、再発動まで十分。

 【斧盾術(E)】斧と盾を使った戦闘術に長ける。スキルアーツ斧とスキルアーツ盾を使うことができる。

 【絆】テイマーと契約者を結ぶ絆。テイマーは【絆】持ちの者の能力の一割を自分の能力に加算できる。【絆】による契約者のデメリットはない。


 何これ?

 そもそも『アタックガーディアン』なんて違和感ありありの職業っておかしくね?

 アタッカーなのか、ディフェンダーなのか、……おそらくどちらもなんだろうな。


『珍しい職業ですね。滅多に現れない職業で勇者や英雄級の職業です』

『マジか!』

『攻撃と防御を兼ね備えた前衛の要と言っていい職業です。攻守のどちらでも一線級で活躍が見込めます』

『これ、冒険者の護衛要るかな?』

『アタックガーディアンはマスターの護衛としてうってつけなのですが、レベルが低いのである程度育つまでは冒険者の護衛を雇っておくのも良いかと』

『そうだな、予定通り冒険者ギルドに依頼しよう。それとユニークスキルの【絆】って何?』

『【絆】はリーシアの能力の一割をマスターの能力に加算するテイマーと契約した者だけが持つスキルです。リーシアには何のデメリットもありませんし、マスターには極めて有用なスキルです』

『一割も能力が加算されるのか、凄いな。たくさんの人や魔物と契約すると俺の能力がドンドン上がるってことだよね?』

『【テイム(E)】ですと契約できるのは五者までとなります。対象者を増やすには【テイム】のランクを上げる必要があります』

『あら、でもEランクでも五者と契約できるのだから結構良いよね』


「こんな珍しい職業に就くなんてリーシアは凄いな」

「主を守る。俺の使命だ」

「頼もしいね。でも今はレベルが低いから無茶は禁物だぞ」

「うむ、分かった」


 これだけの職に就いたのだからリーシアの武器や防具をしっかり揃えてやらないといけないな。

 現代兵器はリーシアには合わないだろうからこの世界の武器や防具を揃えるか。

 そうなると金が足りるか心配だな。

 今の所持金は色々買ってしまったから四百五十万円ほどだ。良い武器や防具だと値が張りそうだから今のうちに所持金を増やすか。


「主、これからどこへ行くのだ?」

「商業ギルドに行こうと思う。その前に家に帰って準備がある」

「うむ、分かった」


 家に帰り【通信販売】で購入した絹織物をリヤカーに積み込んでいく。

 五万円と七万円の反物をリヤカーにたくさん積み込んで布を掛ければ準備は完了だ。


「リーシア、悪いけどリヤカーを引いてくれるかい?」

「任せろ!」


 俺だとヒーヒー言いながら引っ張る荷物満載のリヤカーもリーシアにかかれば軽々と引いていく。何とも頼もしい限りだ。

 商業ギルドに到着するとアンブレラさんを呼び出してもらうが今は不在だったので他の方が対応してくれることになった。


「お待たせしました。私はツルリン・ピッカリーと申します。以後、よろしくお願い致します」


 名前負けしない頭部を俺の方に傾け挨拶するピッカリーさん。笑ってはダメだ!


「グローセ・ヘンドラーと言います。よろしくお願いします」

「ヘンドラー様のことはアンブレラから伺っております。良い商品を卸していただけるとアンブレラも喜んでおりました」

「ありがとうございます。今回も商品を持ってきたのですが、見ていただけますか?」

「はい、このピッカリーが責任をもって確認いたします」


 俺はリュックサックから反物を2反取り出し机の上に置く。


「ほう、これは……絹ですかな?」

「はい、絹織物の反物です。共に三十反ずつあります。買取の見積もりをお聞きしたいと思いまして」

「……今までの商品同様に当ギルドへの専売ということでよろしいでしょうか?」

「値段次第ですよ」

「分かりました。このピッカリー、精一杯頑張らせていただきます! ははは」


 ピッカリーさんは頭をペチペチ叩きながら豪快に笑う。

 そして暫く瞑目して考えたピッカリーさんは五万円で買った反物に五五万円、七万円で買った反物には七二万円の値を付けたので、俺はそれを了承し、一連の書類と代金を受け取る。

 この際、ピッカリーさんにお勧めの武器と防具の店を聞いておいたのでリヤカーを守っていたリーシアと共に武器と防具の店に向かう。

 今回の税引後利益は二千八百七十八万五千円だ。お~バブリー。


 武器と防具は1つの店で全て揃った。

 リーシアには完全装備を買い与える。

 プレートアーマーと大盾、そして大斧、これら全ての装備を黒魔鉄という素材で統一した。つまり真っ黒なんだ。


 黒魔鉄は普通の鉄よりも倍近く重くそれなりのステータスでないと扱えないという。

 だからスレンダーなリーシアに装備できるか不安だったが全て装備した状態でリーシアはピョンピョンと跳ねたり軽々と盾や斧を振り回す。

 俺には絶対は無理だ。あの斧一つまともに持てない自信がある。


「主の防具は買わぬのか?」

「俺は体力がないから重たい防具は身に着けられないんだ」

「そうでもありませんよ。これなんかは軽いのに防御力が高いから金持ちの商人や貴族の方には人気ですよ」


 店員が勧めてきたのは七分袖のTシャツによく似たインナーだった。

 なんとミスリルを特殊な加工で糸状にした物を編み込んでいるそうで物理攻撃にも強いが何より魔法攻撃に強いそうだ。

 しかしそれだけの機能があるということは、それなりのお値段がする。


「黒魔鉄のプレートアーマー一式が七百万円、黒魔鉄の大盾が三百万円、黒魔鉄の斧が三百二十万円、ミスリル糸のインナーが八百万円ですから合計で二千百二十万円です」


 てか、インナーが一番高いのかよ!

 安全には替えられないから買うけどね。

 ルンルンと擬音がしそうな感じのリーシアと懐が一気に寒くなった俺。

 今日の儲けの多くがこの武具店に消えていった。


 冒険者ギルドに入ってもテンプレの絡まれイベントは発生せず、すんなりと護衛依頼を受け付けてくれた。


「では、Dランクの冒険者五人程度への護衛依頼を受注致します。護衛対象はグローセ・ヘンドラー様とリーシア・オーガン様。また、リーシア・オーガン様には近接戦闘の訓練を行う。期間は十日間、期間中は依頼主の家に泊まり込みとなり夜間の警備は冒険者内で交代で行う。報酬は一人二十万円。採用は応募者との面談の上で決定。冒険者ギルドへの仲介料は冒険者一人あたり四万円となります。条件はこれでよろしいでしょうか?」

「はい、それでお願いします。二日後の正午に面接ということでよろしいでしょうか?」

「はい、二日後であれば数パーティーの希望があると思われます」


 Dランクの冒険者パーティーへの護衛依頼の相場は三人のパーティーで一週間当たり三十万円以上であれば応募があるだろうと職員はいう。

 だから少し色を付けたのでギルド側も定員以上の応募があると見込んでいるようだ。

 問題は冒険者の人柄だ。人柄は粗暴なのはダメだ。

 それに誠実なのが何より重要だ。ただ、世の中そんな人間ばかりではない。

 特に冒険者というのは粗暴や粗野だというのでせめて誠実さがあることを祈ろう。

 そして冒険者たちには俺のスキルを隠すようにしないと。


 

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