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069_木々のダンジョン1

本作品の2巻の発売が決まりました。

来月(5月)発売予定です。

皆さんの応援のおかげです。ありがとうございます。

活動報告で情報を随時出していきますので、確認いただければと思います。

 


 港を出航してガレオン船が大海へと進んでいく。

 入り江を出たガレオン船が俺の背丈よりも高い波を乗り越えて進むその雄姿に逞しさを感じる。

「サラエ、あとは頼んだよ」

「努力します。ご主人様」

 俺たちはガレオン船を見送ってから、商館をあとにした。


 一応、デルバルト王国へ帰るので、女将軍にも挨拶をしてこのアスタリカ公国から出た。

 最近、女将軍が俺に色目を使ってくると思っているのは、俺の思い過ごしだろうか?

 最初の印象はお互いにあまりいいものではなかったけど、どうなんだろうか?

『ケイニーさんは間違いなくマスターを男性として意識していますよ』

『やっぱり。でも、なんで?』

『クラーケン討伐のマスターの雄姿を見ていたからです。マスターは格好いいですから』

『そんなに格好いいとは思わないけどな……』

『私のマスターなのですから、格好いいのです!』

『あ、うん……ありがとう。インス』

 ここまで言われると、本当に格好いいのかと思ってしまう。


 96式装輪装甲車(クーガー)を走らせる。

 来るときは山を越えてきたが、今回は南下して山を迂回するルートを通ることにした。

 アスタリカ公国を出て、水の国に入ってすぐのことだった。

 見つけてしまったのだ……。

 何を見つけたのかって? 分からないの? あれだよ、あれ。


「主、いくぞ!」

「はいはい」

 俺たちは小さめの湖の畔にあるダンジョンを見つけてしまったのだ。

 見つけたといっても、ダンジョンのそばには町ができていて、そのダンジョンには多くの冒険者とおぼしき武装集団が入っていっている。

 ルビーのレベル上げをするつもりだったからいいけど、まずは情報収集をしたい。


『マスター、そのダンジョンは踏破済みのダンジョンです。地元では木々のダンジョンと呼ばれている植物型の魔物が多いダンジョンです』

『なんでそんな情報を知っているの?』

『情報収集は大事ですから、王都で集められるダンジョンの情報は集めておきました』

 インス、優秀すぎじゃね!?

『いつもありがとう。愛してるよ』

『マスター……。私もマスターを愛しています』

 王都にいったらインスを必ず連れて帰ろう。

 国王や貴族が邪魔してきたら、俺の怒りをぶつけてやる。

 その結果、デルバルト王国にいることができなくなっても構わない。


「主、何をもたもたしているのだ。早くいくぞ!」

「リーシアは相変わらずだな」

 俺はリーシアに引っ張られながらダンジョンの入り口に並んだ。

 リーシアは革鎧から常闇の鎧に装備を変更しているので、威圧感が半端ない。

 最近のリーシアはレベルが上がっていることで、常闇の鎧も成長しているので、醸し出す雰囲気が凄いのだ。

 だから、周囲にいる冒険者も俺たちを遠巻きに眺めている。


「あれ……もしかして日本人?」

 不意にかけられた声。日本人という言葉に俺の肩は少し跳ねた。

 振り返り、声の主を見ると……いかにも日本人といった顔の男性三人と女性三人が立っていた。

 そのいで立ちからは冒険者だというのが、窺い知れた。

 男性の二人は金属鎧を身にまとった重装備で、女性二人はローブと杖の魔法使い系装備、そして男性一人女性一人は革鎧で、斥候と弓術士系の職業といった感じだ。


 重装備で大盾と片手剣を装備した男性が俺たちの方に進み出てきた。

「あんた日本人だろ?」

 四十前後だと思うけど、深いシワが特徴の日本人顔の男性だ。

 あの三人娘にも最初はそうだったが、俺はこういう不躾な奴には厳しい。

 人に話しかける時は、最初に相手の都合を聞き、名乗りをあげるのが当然だと俺は思っている。

 俺の知り合いでもなんでもない彼らに、唐突に話しかけられる筋合いはないのだ。


「………」

「なんだ、喋れないのか?」

 俺の目の前にきて俺を見下ろす男性は百九十センチメートルはあるだろう。

「はて、どこかでお会いしましたか? 申し訳ありませんが、初対面だと思いますが?」

「あんっ!?」

 睨まれてしまった。

 強面の大男に睨まれると怖いが、冒険者ギルドの支部長とかキャサリンさんの方がよっぽど怖い。

「初対面の方なら自分から名乗り、こちらの都合を聞くのが礼儀ですよ」

「てめぇ、なめてんのかっ!?」

 怒鳴られてしましました。

 まぁいいや、こういう礼儀を知らない人に何を言っても馬の耳に念仏だし、相手にしているだけ時間の無駄だ。


「主、ぶちのめすか?」

 リーシアが暴れさせろという雰囲気を醸し出して、俺と大男の間に入ってきた。

「なんだ、嬢ちゃんは?」

「主に近づくな。下がれ雑魚が」

「っ!?」

 リーシアが大男を挑発するように、笑みをうかべた。

 大男の名前はサキオ・ハヤブサ。職業は大盾士・Lv72。

 能力は高いがリーシアに比べると、大したことはない。


「嬢ちゃん、ふざけてんじゃねぇぞ!」

 サキオ・ハヤブサが拳を大きく振りかぶる。

 仲間だと思われる五人は止めようともしない。それだけで俺がこいつらと親しくする意味もないだろう。

 ここら辺では大きな顔をしていられるだけの力はあるだろうが、リーシアの敵にはなれない六人だ。


 サキオ・ハヤブサが拳を振り下ろした。

「っ!?」

「なんだ? 何かしたのか?」

 リーシアはサキオ・ハヤブサの拳を受け止めることもせず、顔面で受けた。

「ば、馬鹿な!?」

「なら、今度は俺の番だな!」

 リーシアがサキオ・ハヤブサの顔面を殴ると、サキオ・ハヤブサは空中で錐もみして地面に大げさに倒れた。

 地面に倒れているサキオ・ハヤブサを見ると、白目を剥いてピクピク痙攣して気絶をしている。

 リーシアはそのサキオ・ハヤブサを蹴り上げて空中に浮かせると、落ちてきたところを片手で受け止めた。

「なんだつまらんな。もっと歯ごたえのある奴はいないのか?」

 リーシアとまともに殴り合えるやつなんて滅多にいないと思います。


「「「「「サキオさん!?」」」」」

「なんというか、お粗末ですね」

 セーラが辛らつだ。だけど、俺もそう思う。

「ごしゅじんさま、はやくつよいまものかろうワン」

「そうだな。リーシア、そんなのは捨てておけ。いくぞ」

 俺はサンルーヴの頭を撫でながらリーシアに声をかけた。

「うむ、もっと歯ごたえがある魔物がいるといいのだがな」

 そう言うと、リーシアはサキオ・ハヤブサを投げ捨てた。

 サキオ・ハヤブサは何度か地面でバウンドして止まった。

 周囲の冒険者はリーシアの容赦のなさに引き気味だが、サキオ・ハヤブサの仲間の五人はリーシアを睨んでいる。


「仲間がやられたのだ、やり返す奴はいないのか?」

 ダンジョンへ入ると言うのに、挑発するなよ。

 だけど五人ともリーシアの実力が今ので分かったのか、動かなかった。

 それがいい。大人しくすれば痛い目を見なくていいし、何よりサンルーヴが早くダンジョンに入りたそうにしている。

 ここでサンルーヴを怒らせたら、リーシアだけの時とは被害状況が大きく変わっただろう。


「リーシア、いくぞ」

 もう一度リーシアを呼んで、俺はダンジョンの中に入っていった。

 なんで地球から転移した人は常識というか、人として当たり前の礼儀というものがないのかな?

 三人娘の時は皆若そうだったからまだ理解できるけど、今回の六人はそれなりの年齢なのだから、礼儀を弁えていていいと思うんだけどな。

 サキオ・ハヤブサにいたってはおっさんの域だったし、他の五人も二十代後半だった。

 敬語を使えとまではいわないが、礼儀は弁えてほしいものだ。

 まさか年齢詐欺か? 十歳児が二十代後半や四十代の姿でこの世界に転移してきたのか? まさかね?


 さて、ダンジョンの中に入ると森だった。

 インスの話では植物系の魔物が多く出現するダンジョンだと言っていたので、それを知らないとただの木なのか魔物なのか分からないだろう。

 しかし、俺には【サーチ】があるし、サンルーヴもいる。俺たちに死角はないと思う。


 しばらく森の中を進むと魔物が現れた!

「なんだあれは?」

「ガイド本によれば、シッタケというランク1のキノコの魔物です。干して食べるとなかなか美味しいらしいです」

 シイタケじゃん!?

 てか、見た目もシイタケを大きくした感じで、某スーパーな兄弟のゲームで出てくるキノコに似ている。

「このダンジョンではルビーに戦闘は任せたから。いってこい」

「がんばるっピー!」

 俺の肩に止まっていたルビーが羽ばたいて飛んでいった。


 ルビーの攻撃手段はそれほど多くないので、どうやって戦うのかと思って見守る。

 予想通り、ルビーは火をまとった羽根を飛ばしてシッタケを攻撃した。

 赤々と燃える羽根が乱れ飛んでいく様はとても美しい。

 これは【炎の羽ばたき(C)】というスキルだ。

 シッタケは燃える羽根に刺されたり、まとわりつかれて何もできずに燃えてしまう。

「ご主人様、終わったっピー」

「ご苦労さん」

「しかし、あれでは……」

 セーラが眉間にシワを寄せた。

 まぁ、乾燥どころか、炭になったシッタケはさすがに食べられそうにないからな。


「ごめんっピー」

「気にするな。相手が弱すぎただけだ」

 リーシアがルビーを慰める。

 やり過ぎの先輩だからルビーの気持ちが分かるのかな?


 それからもルビーは無双を続けた。

 まぁ、ランク1やランク2の魔物がルビーに勝てるわけないのだ。

 ルビーは俺の肩に乗るほどの大きさしかないけど、これでもランク5なんだよね。

 あと、森フィールドなのでルビーの【炎の羽ばたき(C)】で森が延焼するかと思ったけど、それは思い過ごしだった。

 木は切ることもできるけど、火事になるようなことはなかった。

 多分、瑞々しい木々なので火が燃え移りにくいのだろう。


 俺たちは二層、三層、四層と進み、五層に到達した。

 森の中を歩くのは意外と大変で、五層に到達した頃にはダンジョンに入って十時間くらい経っていた。

「ここら辺で野宿だな」

 俺は森の中の比較的広いスペースに96式装輪装甲車(クーガー)を出した。

「セーラは料理を頼むよ」

「任せてください」


 セーラは96式装輪装甲車(クーガー)内のキッチンで料理を始めた。

「リーシアは魔物除けの設置」

「任せろ」

 リーシアは大斧を肩に担いで歩いていく。

「サンルーヴとルビーは周辺の警戒ね」

「わかったワン」

「任せてっピー」

 サンルーヴとルビーは二人して楽しそうに周辺の警戒に向かった。


 

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