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059_テンションが上がるとヒャッハーと言ってしまう

11月21日に書籍が発売となります。

お手に取って頂けると嬉しいです。

 


 四人娘のミホが盾を構えてグリーンスネークの突進を止めると、カナミが放った矢がグリーンスネークの首に刺さった。いや、どこが首でどこが胴体なのか分からないけどさ。


 痛みで首を上げたグリーンスネークに更にアサミの槍が突き刺さる。

 彼女たちの胴体よりも太いグリーンスネークが暴れまくり、尻尾がミホを薙ぎ払おうと飛んでくるが、ミホは見事にその尻尾を受け止めた。

 そして持っていた剣でグリーンスネークに斬りつけるが、暴れているので剣は浅く斬りつけた程度だ。


 グリーンスネークはランク3の魔物だけど、ヘビ型の魔物との戦闘が初めてらしく彼女たちは攻めあぐねていた。

 特にカズミはヘビが苦手らしく、青い顔をして後方でガクブルしている。俺も嫌いだけどね。

 それでもミホたちに補助魔法をかけていたのだから、褒めてやってもいいだろう。


「ていっ!」

「やぁっ!」

「はぁぁぁっ!」

 ミホ、アサミ、カナミの三人が集中的に首のあたりを狙って攻撃して、首を切断した。

 ヘビの魔物だけあって、首がなくなった胴体がしばらく動いているのを見てカズミがリバースしていた。可哀想だけど、こういった光景はこれからも続くので慣れてもらうしかない。


「ミホ、お前は体が小さいから完全に受けるよりも、受け流すんだ!」

 盾職の先輩であるリーシアがミホにダメ出しをしている。

 リーシアの言う通り、四人の中で一番背が低いミホは154㎝だったはずだ。

 日本人としても比較的小柄の方に入ると思う。

 この世界はヨーロッパ系や中東系の容姿の人が多いので、大柄な人が多い。

 だからミホは子供扱いされることが多く、結構不満を言っていたりする。


 ミホたち四人が魔物と戦闘をして、俺たちはそれを見守りながら、ダンジョンの奥へ進んでいく。

 出てくる魔物がヘビばかりなので、対ヘビ戦は結構慣れてきていると思うが、カズミは相変わらず青い顔をしている。

 ランク3の魔物はいいけど、ランク4になると被弾することが多くなるので、カズミの回復魔法の頻度が上がっている。

 しかし、カズミはマナ向上神薬で大幅ブーストをしているので、MPの上限値が五万も上がっているから、簡単にはMP切れにならない。

 マナ向上神薬を市販したら物凄い値がつくだろう。売らないけどね。


「せっかくの鎧と盾だ、有効につかうんだ!」

 そう言ってリーシアは青色地に紫色のまだらが毒々しいダンガーバイパーにショルダータックルをして、空中に浮いたダンガーバイパーを盾で叩き落とした。

 リーシアにとっては鎧と盾も武器になるようです。

「すっごーい!」

 そりゃ普通の人はそんな使い方しないから、リーシアの考え方は凄いよね。

 でも、それはリーシアだからできることであって、ミホがやっても成功するとは限らないからね。

 むしろ、体の小さいミホでは厳しい戦い方じゃないかな?


 ドーン。

 ミホのショルダータックルを受けてグリーンスネークが弾き飛ばされた。

「……」

 盾で打ち落とすことはできなかったけど、小柄なミホがショルダータックルして巨体のグリーンスネークが弾き飛ぶっておかしくないか? いや、それを言うなら、細長い体型のヘビをどうやってショルダータックルで弾き飛ばせるんだよ!?

「まだまだ!」

「はい!」

 脳筋師弟の脳筋ライフ……。この二人は基本的な部分で似ているのかもしれない。

 しかし、ミホは聖騎士になるのをかなり考え込んでいたようだけど、脳筋に磨きがかかっているんじゃないか?


 脳筋師弟の猛特訓は続き、ミホ以外の三人はかなりお疲れだ。

 俺もついていくだけで疲れる。長く歩いたから疲れたのではなく、脳筋師弟の暑苦しさに当てられてしまったようだ。


「おーい。そろそろ休憩にするぞー」

 たまらず休憩タイムを挟むことにした。しかし精神的な疲れを感じていたのはおれだけではなく、アサミ、カナミ、カズミの三人も俺の声に嬉しそうにしたので、俺と同じ気持ちだったのだろう。

「セーラ、お茶の用意を頼めるかい」

「はい、任せてください」

「せーら、くっきーも~ワン」

「はいはい」

 マジックポーチからテーブルセットやお茶などを取り出しているセーラにサンルーヴがまとわりついておねだりをしている。ほほ笑む美女と嬉しそうな美幼女の図は心和むな。脳筋師弟のプレートアーマーコンビには期待できない心の安らぎを感じるよ。


 うーむ、よく考えたら俺以外は全員女性だ。はたから見たらハーレムだな。

 まぁ、四人も妻がいるのでハーレムなのは間違いないのだが、インスがいないのが寂しいな。


「よし、休憩もしたし、行くぞ!」

「「「「はい!」」」」

 三十分ほどお茶とお菓子を楽しんだ後、リーシアが気合を入れると、四人娘も力強く返事をした。

 俺とセーラで後片づけをして、リーシアに率いられた四人娘たちの後を追った。

 リーシアもそうだが、サンルーヴもまるでピクニックのように鼻歌まじりで、とても楽しそうだ。

 俺は左手にセーラ、右手にサンルーヴと手を繋いで進んだ。出てくる魔物は四人娘が倒すので、俺たちは本当にピクニックになってしまっている。

 唯一、リーシアだけは四人娘に指示を与えているので、お仕事をしているといった感じだ。


「はぁぁぁっ!」

 ミホが青紫色の体をしたヘビの魔物の突進を盾でいなして剣を振ると、ヘビの魔物の50センチはある太い胴体の半分ほどを切り裂いた。

「たーーーっ!」

 アサミの槍が太い胴体を貫いた。アサミは槍をそのままに一本背負いの要領でヘビの魔物を投げ飛ばしてしまった。空中に投げ出されたヘビの魔物に矢が三本刺さると、その部分が燃え上がった。

 ヘビの魔物は部分的に燃え上がり、地面に叩きつけられた衝撃よりも火の方が嫌なのか、とても苦しそうに火を消そうともがいている。

「ヒャッハーーーッ! これでトドメだ!」

 ミホが盾を大きく持ち上げて飛び上がると、もがき苦しむヘビの魔物の頭へ自分の体重が乗った盾を叩きつけた。

 ガンという音とともにヘビの魔物の頭が地面にめり込んだ。この盾攻撃によってヘビの魔物は息絶えてしまったのだ。

 ミホはやっぱりリーシアの弟子であり、脳筋だ。

 てか、「ヒャッハーーーッ!」はないだろ。お前はどこの世紀末野郎だよ。


「っしゃーーー! ランク5の魔物を倒したぞーーーっ!」

 俺たちは五層に降り立っている。

 ミホたちが倒したヘビの魔物はランク5だった。一層からこの四層まではランク3からランク4の魔物しか出てこなかったが、この五層で初めてランク5の魔物に遭遇したのだ。

 俺たちが最初に遭遇したランク5の魔物と言えば、リッチを思い出す。死にそうになりながら倒した記憶が今でも鮮明に残っている。

 俺たちはランク5の魔物を死にそうになってやっとの思いで倒したけど、この四人娘は致命傷と言えるような傷もない。ただ、余裕があるわけでもないようで、盾職のミホはこまめに回復魔法をかけてもらっているし、アサミも少しは回復魔法のお世話になっている。

 それだけミホが安定して魔物をひきつけて、カズミによるダメージコントロールが上手くいった証なんだろう。こいつら化けやがった!


「お兄さんのおかげだよ! ありがとう!」

 ミホが言葉少なげに礼を言ってきた。殊勝なことを言うじゃないか。

「お兄さん勝ったよ! 戦闘するごとに強くなるのが実感できました。ありがとうございます!」

 続いてアサミも礼を言ってきた。とても嬉しそうで何よりだ。

「ありがとう」

 カナミはあまり喋らないが、目に涙を浮かべているので、嬉しさを堪えているようだ。

「オーナー、ありがとうございます。私たちが強くなれたのもオーナーが従者にしてくださったおかげです」

 カズミは三人と何度も抱き合いながら喜び、俺にも何度も頭を下げて礼を言った。

 もう分かったとおもうけど、彼女たち四人は俺の従者になった。俺の【テイム(S)】の効果で従者となった四人娘は能力が底上げされているのだ。

 テイムが初期ランクの(E)だった時は能力の底上げ効果はなかったが、(D)になった時には能力の底上げ効果が現れた。今では(S)なので、その効果はとても大きいと言えるが、これは俺に対する忠誠心も関係してくるので、一律でどれだけ上がるとは言いにくい。

 それでも、ランク5の魔物を余裕で倒せるほどにはなっているのだから、効果が高いのは言うまでもないだろう。


 四人娘はダンジョンの中を順調に進んだ。ランク5の魔物を余裕で倒せるとは言え、時々は被弾してミホが毒に侵されることもあったが、カズミが毒を中和して回復させるので大きな怪我にはつながっていない。

 大人しくて自分の主張をしないカズミには戦闘は無理じゃないかと、最初の頃は思っていたが、適切なタイミングで適切な補助や回復を行える姿を見せられては、考えを改めなければいけないと思った。

 人は変われると言うが、カズミがここまでのセンスを見せるとは思っていなかったよ。


 

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