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055_赤の塔10層から11層

 


「そういえば、四人は最初のステータス決めの時、ポイントってどれだけあったんだ?」

 インスに聞いても答えてもらえない。だったら本人に聞けばいいと、聞いてみた。


「私は八百ポイントだったかな?」

 黒髪双剣士のミホ・イナバが答えた。

「私は八百五十かな」

 同じく黒髪の魔闘槍士のアサミ・タナカも答える。

「九百」

 金髪エルフの弓魔導師のカナミ・サンジョウは相変わらず口数が少ない。

「私は七百五十でした」

 黒髪の引きこもり錬金術師のカズミ・ウエムラも答える。


 四人は当時のことを思い出すそぶりもなく答えてくれた。

 こうして聞くと七百五十から九百と比較的近いポイント数だった。

 さて、ここで問題です。俺のポイントはいくつだったでしょう~か?

「お兄さんはいくつだったの?」

 俺のポイントは二千五百。彼女たちのポイントの三倍近いポイント数だ。

 これを正直に答えてもいいものだろうか?

 俺は構わないが、彼女たちがその差に愕然としないだろうか?


『インス、何で俺のポイントはあんなに高かったんだ?』

『申し訳ありません。ポイント付与の基準はお答えできません』

『また、権限だね? じゃぁ、俺より多いポイントを持っていた人はいるの?』

『申し訳ありません。これもお答えができません』

『仕方がないか……』


「俺は皆よりちょっとだけ多いかな」

「ちょっと? じゃぁ千くらい?」

「まぁね」

 不平等感を持たれても嫌だし取り敢えず濁しておこう。


「じゃぁ、お兄さんはスキルに極振りですか? それとも能力の方?」

 ミホの質問にはある程度答えてもいいかな。

「幸運とスキルかな」

「うわ~幸運値に振るなんてお兄さん勇者だよね」

「ほんと、さすがに幸運値には振れなかったな~、消費も多かったし~」

 ミホとアサミが感想を述べる。

 確かにMPは一あげるのに一ポイント消費、幸運以外の能力は一上げるのに二ポイントを消費した。

 それに対して幸運は一上げるのに七ポイントも使ったし、他の能力とは違い百が上限だ。

 これで幸運の要素が弱いシステムなら泣いていただろう。しかし、俺の運はいいと今は実感している。


 四人とステータス決めの時の話をしていると魔物が現れた。

 ここは十層なのでランク3の魔物ばかりだ。


 さすがと言うべきか四人はウルドラゴを一蹴する。

 今の四人にはランク3のウルドラゴでは相手にならないようだ。

 数回の戦いを見てそう確信する。


「今の四人なら十層の魔物は相手にならないね」

「嬉しいこと言ってくれるね~お兄さん」

「ならちゃちゃっと十層を踏破しますかね!」

「力、ついた」

「だけど、十層にはボスがいるって聞きました。強いですよね?」

 イケイケなのは相変わらずの三人を諫めるカズミ。

 しかし三人も以前のように周りが見えないわけではないので、戦闘が安定している。


「ボスはクレイジーエレファンタスという象の魔物だ。硬いだけの木偶の坊だ」

 リーシアがボスの情報を教えてあげるが、どうもリーシアは説明が下手でいけない。

「硬くてスピードもそこそこあります。何よりパワーが凄いですね。攻撃は全て肉弾戦なので牙や鼻、それに突進には気をつけてください」

 リーシアの主観ではなく、一般的な情報を四人に与えるのはセーラの役目だ。

「「「「はい!」」」」


 更に数回の戦闘を行いクレイジーエレファンタスと対峙する。

「ほえ~デカいね。って言ってもお兄さんが倒したアースドラゴンほどじゃないけど」

「うん、このくらいなら何とかなりそうだね」

「殺ってやるよ」

「大丈夫かな……」

 イケイケ三人とブレーキ役のカズミ。


 戦端はカナミの弓での攻撃だ。

 カナミの矢はクレイジーエレファンタスの耳の後ろ、首に突き刺さる。

 不意を突かれてクレイジーエレファンタスが叫び声をあげる。

 そこにミホとアサミの二人が走り寄っていく。

 その二人にカズミが聖なる守りを付与する。

 聖なる守りは【神聖魔法(D)】で扱える魔法で、一定のダメージを無効化する。

 更に防御力を上げる『屈強』も付与していく。


「はぁぁぁぁっ!」

 アサミの槍がクレイジーエレファンタスの鼻と交差した。クレイジーエレファンタスは器用に鼻を使いアサミの槍を受け止めたのだ。

 そしてアサミの隙を見つけては槍に鼻を巻きつけようとした。


「こっちもいるんだよ!」

 アサミに気を取られていたクレイジーエレファンタスの左前脚をミホが双剣で切りつけた。

 ザックリと切り裂かれたクレイジーエレファンタスの左前脚から血が飛び散る。

 ミスリルの双剣なのでクレイジーエレファンタス相手でもしっかりと傷を与えることができるようだ。

 クレイジーエレファンタスは左前脚から伝わる苦痛に雄たけびをあげた。


「何吠えているんですか!?」

 目の前にいるアサミを無視して雄たけびをあげたのでこちらにも隙ができた。

 アサミは容赦なくミスリルの魔槍を突き出してクレイジーエレファンタスの右目を抉った。


 溜まらずといった感じで鼻を振り回し、体を大きく動かして暴れるクレイジーエレファンタスにズサッ、ズサッとカナミの放った矢が突き刺さった。

 更にはカズミによって放たれたホーリーランスがダメージを与える。


 ミホがトンと地面を蹴ってクレイジーエレファンタスの背中に飛び乗り、剣を突き刺したと同時にアサミの槍、カナミの矢、カズミのホーリーランスが次々に命中する。

 これに怒ったクレイジーエレファンタスは巨大な体を激しく動かしミホを振り落とすと、着地の時に少し体勢を崩したミホに体当たりをする。


「きゃっ!?」

 ミホが弾き飛ばされる。

「「「ミホ!?」」」

 クレイジーエレファンタスも十層を守るボスとしての誇りがあるのか、最後の足搔きなのか、ミホを踏みつぶそうとする。

 しかしアサミがそれを黙って見ているわけはない。

 渾身の踏み込みから突き出したミスリルの魔槍はアサミ自身が付与した火を纏い左前脚を捉える。

 ドカンと大きな爆発音と共にクレイジーエレファンタスの左前脚が消失する。

 左前脚がなくなったクレイジーエレファンタスは体勢を崩し前のめりに倒れる。


「サンキュー、アサミ!」

「オーライ!」

「皆、畳みかけるよ!」

「「「おーっ!」」」

 動きが制限されたクレイジーエレファンタスに総攻撃が始まった。

 こうなるともう大勢は決し、クレイジーエレファンタスは暫くして息絶えた。


「お疲れ~」

「大したことなかったよ~」

「そんなこと言って聖なる守りがなかったらヤバかったくせに~」

「うんうん」

「危なかったよね」

「ちょ、アンタたちねぇ~」

 四人はボスを倒してホッとしたのか漫才を始めた。


「お~い、いつまで漫才をしているんだ。行くぞ~」

「「「「は~い」」」」

 本当なら今頃高校に通って受験勉強をしている時期の女子高生四人。

 こうやってテンションを保たないと精神的に厳しいのだろう。

 まぁ、雰囲気が悪いよりは楽しくやってくれた方が良いけど、俺は修学旅行の引率の先生になった気分だ。


「十一層はゴーレムがメインだ。硬いからな」

 一応、注意をしておく。

 多分、ゴーレム相手だとかなり苦戦するだろう。


「うわ~かた~い」

「土のゴーレムのくせに硬いよ~」

 ミホとアサミが声に出したようにゴーレムは硬い。

 カナミの矢も刺さりはするが、かなり浅い。

 カズミは完全に補助に徹したようで、ホーリーランスは撃っていない。

 ゴーレムは魔法耐性が高いので無駄な魔力を使わないようにしているのだ。


「ご主人様、サンルーヴは戦わないワンか?」

「そうだよ。俺たちはミホたちを見守るのが今の仕事なの」

「それは分かるが、体が鈍るから俺も戦いたいぞ!」

「グローセさん、ミスリルゴーレムは戦うのですか?」

「お、久しぶりにミスリルの野郎をぶちのめすか!」

「今の彼女たちだとミスリルゴーレムは厳しいと思うから、なしかな」

 欲求不満のリーシア、散歩のつもりのサンルーヴ、引率先生のセーラ。

 時々、四人娘の戦いの邪魔をしようとして出てくる魔物をリーシアが殴り飛ばしてフラストレーションを発散させる。


 十一層から地形が山岳地帯になっているので山登りもある。

 体力のないカズミは息を荒くして登る。

「お兄さん、ここら辺で休憩いいかな?」

 ミホが休憩を提案してくる。

 カズミの様子を見ての判断だろう。


「OK~休憩にしようか」

 俺はストレージから大きなテーブルセットを取り出す。

 その上に昼食とジュースを並べていく。

「お兄さん、これは反則だよ……」

「私もそうおもいま~す」

「お兄さんだから納得」

「あ、ありがとうございます。オーナー」

 四人娘はダンジョン内でしっかりと休めて、ちゃんとした食事が摂れると大喜びだ。

「安全エリアじゃないから軽食のみだけどな」

 嬉しそうに食事をする四人娘と妻たちを見るに、俺は可愛い妻たちがいて幸せだなと思った。


 

更新予定は活動報告で行っています。

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