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048_新婚旅行1

 


 伯爵となることが決まったので思わぬ副産物として俺の所有している土地には治外法権が適用されるそうだ。

 貴族の権利の中に土地占有の優越権というものがある。

 貴族の所有している土地や建物には領主や代官でも簡単に立ち入れないというものだ。

 簡単に言えば、その土地は貴族の領地なのだという。

 だから孤児院用に購入してあった土地にもこの治外法権が適用される。


 整地の終わった孤児院用の土地を眺める。

 右横にはリーシア、左横にはセーラ、そして俺の腰に抱き着くようにサンルーヴがいる。

 更に数メートル後方には日本人少女三人組がいる。


「さて、やるか」


 ストレージには【通信販売】で購入した学校が収納されている。

 既にインスによる魔改造もほどこされており教室だけではなく、居住空間としても快適になっている。

 その学校を目の前にドンと設置する。


 小型とは言え、学校の校舎だから普通の建物に比べれば大きいし、三階建てなので部屋数もかなり多い。

 三階は全て居住空間で各部屋の中には二段ベッドがそれぞれ十五台設置されている。

 洗濯などの共有空間を除き横に十部屋あるのでこれだけで三百人が寝ることができる。

 二階にも居住空間はあるが、五部屋のみなので都合四百五十人が寝ることができる。

 そして二階の他の部屋は食堂だったり職員の居住空間となっている。

 一階は保健室以外は全て教室になっている。


「凄いな……さすが、主だ!」

「マンションの時は知らないうちに建っていましたが、いざ見てしまうと納得するというか……グローセさんが反則級だということがよく分かります」

「かっこい~ワン」


 後方では三人娘もヒソヒソと話している。

 まぁ、三人娘には俺のスキルのことを話してあるので問題はない。

 問題はないが、化け物言うな!

 支援を取り止めるぞ!


 さて、もう一つ設置するものがある。

 学校の校舎と対になるもの、それは体育館だ。

 言わなくても分かっているだろうが、この体育館も魔改造が施されている。


「ここで結婚披露宴をしよう!」

「本当か!?」

「良いのですか?」

「ワン?」


 俺はこの体育館やこの敷地で披露宴を開こうと動く。

 早速、役所でリーシア、サンルーヴ、セーラの三人を妻にする手続きをする。

 神前で結婚式をする風習はないらしく、貴族の間で結婚を報告する披露宴的な風習がある程度のこの世界。

 だから披露宴は盛大にやってやろうと思う。幸い、俺には贅沢ができるだけの資金がある。

 可愛い嫁たちを皆に見せびらかしてやるのだ!


 こうして親しくなった人たちに祝ってもらうために披露宴を開催した。

 勿論、料理は厳選した。

 リーシア、サンルーヴ、セーラのウェディングドレスも豪華絢爛、三人によく似合っている。


「三人とも綺麗だ」


 俺の前には豪華絢爛なウェディングドレスにも負けない三人の妻が並んでいる。


「リーシアはどんな風にも負けないオークの木のように力強く俺を支えてほしい」

「任せろ!」


 相変わらず男らしい。俺よりもよっぽど男らしい彼女のためにオークの木を庭に植えよう。


「サンルーヴはジャスミンの花のように俺を癒しで包んでほしい」

「わかったワン」


 サンルーブはその見た目が小さく可憐な少女だし、いつも俺に癒しを与えてくれる存在だ。だから記念にジャスミンの花を植えよう。


「セーラにはカトレアの花のように自分の信じる道を進んで俺を導いてほしい」

「グローセさんの道しるべとなれるように努力します」


 美しく、そして俺たちの中で最も常識人であるセーラは王道を行く賢者のようだ。だからカトレアの花を記念に植えよう。


「皆、今日は集まってくれてありがとう。俺は三人を幸せにしたいと思う。だけど、こんなに美しく才知に溢れる三人を妻にできた俺は彼女たちよりも幸せになってしまった」


 皆の笑いが起こる。

 それを手で制し、話を続ける。


「俺はここで誓う。俺が生きている間、俺は彼女たちを愛し続ける!」

「俺も主を愛すぞ!」

「サンルーヴも!」

「私もグローセさんに負けない愛情を!」


 こうして披露宴は食事タイムに入っていく。

 立食形式で和洋中、地球の各地域の料理を用意している。

 シャンパンやワインなどのアルコール類だけではなく、オレンジジュースやウーロン茶などのノンアルコール飲料も多く取り揃えている。


「おお、ヘンドラー殿、このワインは美味いな!」


 頬を赤くした酔っ払ったザカライア伯爵がワインを手に嬉しそうに近づいてきた。

 ザカライア伯爵はワイン愛好家らしく、その手に持ったグラスに注がれているワインは【通信販売】の購入金額が40万円もした高級ワインだ。

 それをガバガバ飲むザカライア伯爵は本当に嬉しそうだ。


「喜んでいただけて良かったです。伯爵」

「ははは、ヘンドラー殿も伯爵なのだ、そう堅くならずとも良いぞ」

「いえ、伯爵になるのは決まっておりますが、まだ叙爵されたわけではありませんので」

「堅いの~、それよりもこのワインを定期的に購入したいのだが―――――」

「父上、こんなところでそのような話をするなど無粋ですぞ!」


 良いところにきてくれたムーセル君に呑兵衛伯爵は連れていかれた。


「グローセさん、リーシアさん、サンルーヴさん、セーラさん、おめでとうございます!」

「「「「「おめでとうございます!」」」」」


 腕が再生したアンナをはじめ、カンナ、イズナ、レッジーナ、インディー、フィナの冒険者組の六人が祝ってくれる。


「皆、有難う。アンナは腕の方はどうだ?」

「はい、やっと感覚が戻ってきました」


 腕は再生したが、その腕で剣を握っても以前のように剣を振るにはそれなりの時間がかかる。

 だから今のアンナはリハビリをする毎日だ。


「そうか、無理せずゆっくり慣らしていくんだぞ」

「ありがとうございます」

「皆も飲んで、食って、楽しんでくれ」

「「「「「はい!」」」」」


 冒険者組の六人の次はルルとデイジーを始めとする従業員一同が祝ってくれた。

 俺が王都に行っている間はルルが代理をしてくれるし、ムーセル君や他の従業員もしっかりしているので大丈夫だ。


「リーシアさん、サンルーヴさん、セーラさん、とってもお綺麗です!」

「ありがとう、ルル」

「ありがとワン」

「ルルさんが結婚する時も盛大に祝いましょうね」


 皆が三人を褒めてくれる。

 三人が褒められると俺も嬉しい。

 次はキャサリンさんとグラガスさんが祝ってくれた。


「グローセちゃんもこれで妻帯者かぁ~。ねぇ、私も「結構です!」……ウンモウ!」

「ははは、キャサリンは相変わらずだな」

「グラガスさんはキャサリンさんと古いのですか?」

「ああ、腐れ縁だ。若いころはキャサリンも冒険者だったから俺とあと二人とパーティーを組んでいたんだ」

「へ~キャサリンさんは冒険者だったのですか?」


 このゴッツイ体格を見れば物理的に強いと思っていたけど、冒険者だったとは驚きだ。


「しかし何で商人ギルドの重鎮に?」

「こいつは昔からチャラチャラした服が好きでな、お陰でパーティーを抜けて店を始める始末だ」

「そんな昔の話は良いじゃない。それよりも飲みましょう!」


 大ジョッキにウィスキーをストレートで注いでグラガスさんに渡すキャサリンさん。

 そして同じ物をキャサリンさんも持ち俺たちと乾杯をしてゴクゴクと一気飲みする。

 そのウィスキーのアルコール度は46度ですよ……それを一気飲みするとはこの二人、人間じゃない!?

 俺にはできない飲み方をしてもケロッとしている二人を見て商人ギルドと冒険者ギルドの重鎮の本当の実力を見た気がする。


「お兄さん、綺麗なお嫁さんたちをもらえてよかったですね」

「おう、三人も来てくれてありがとうな」

「同郷のお兄さんの結婚式なんだから出席するなって言われても出席するよ!」

「三人ともとても綺麗」


 この元脳筋三人娘には俺が日本人だと話している。

 そして引きこもりのカズミ・ウエムラに紹介すると何とこの三人と知り合いだったのだ。

 まさかこんなところで会えるとは思っていなかったようで、四人は泣いて喜んでいた。

 本当は四人でパーティーを組み活動したかったらしいが、カズミ・ウエムラは戦闘スキルを持っていないので冒険者にはならなかった。

 しかし三人が冒険者として活動するための支援をカズミ・ウエムラがしていくことになった。

 そんなわけで三人は俺のマンションに住み着いている。


「おめでとう」

「ブラハムも妻を迎えたらどうだ?」

「そうだな、三人を見ていると妻を再び娶るのも良いかと思えてくる」


 ブラハムはセッコイ・ネットーリ子爵の罪が暴かれたことで盗賊になった背景が明確となり罪を許され奴隷から解放されている。

 ただ、貴族としての身分は回復できなかった。

 情状酌量はあるが盗賊だった事実もあり難しいとのことだ。

 そんなブラハムだが、俺の試作エリクサーを飲んだので足の古傷も癒え再び冒険者として活動ができる。

 しかしブラハムは俺の家臣となってくれた。

 冒険者で実績をあげれば再び貴族にもなれるだろうに、ブラハムは俺に恩を返したいというのだ。

 俺は大したことをしていないので尻がむずかゆいが、素直にブラハムを受け入れることにした。


 披露宴の翌日、俺たちは王都に旅立った。

 これが俺たちの新婚旅行になる。だから王都だけではなく他の名所にも寄りたいと思う。


 96式装輪装甲車(クーガー)に乗り込んだ俺たちは舗装もされていない道を王都に向けて走らせる。

 この96式装輪装甲車(クーガー)は二台目で、一台目はあのスタンピードで多くの魔物を撥ね飛ばしたこともあり装甲がボコボコになっていた。

 修理もできたが、【通信販売】の金額を稼ぐために二台目を購入したのだ。

 当然、魔改造をしたのだが、その際に居住空間の向上をインスに頼んだことで出来上がってきたのがこの二代目96式装輪装甲車(クーガー)だ。

 軍用車両なのに物凄く良い居住性を実現しており、キッチン、ダイニング、バス、トイレ、そして二台のキングサイズベッドを連結した巨大なベッドまである。

 どう考えてもオカシイ空間になっているのでインスに聞いてみたら『【時空魔法】によって空間を拡張しております』と仰っております。インスさんステキ!


 運転は皆で交代でする。

 だから夜も走れるけど、夜は三人とイチャイチャするのだ。

 悪路でも96式装輪装甲車(クーガー)をガンガン走らせ二日目には王都の近くに到着した。

 予定ではあと十日後に俺の叙爵式が行われるので、それまでは王都見物をしようと思う。

 なんて思っていた時もありました。


「これが王都のダンジョンか、腕が鳴るな!」


 そう、俺は新妻たちに連れられ王都の近くにあるダンジョンにきていた。

 これ新婚旅行なんだけど……


 

作者の別の作品のことで申し訳ありませんが、

『チートあるけどまったり暮らしたい 領地の発展ながめてたいのに』(2巻)が

本日、5月11日に発売されましたので、お手に取って頂けますと嬉しいです。

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