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042_商売とデート

 


 裁判騒動の後の方が俺的に大変だった。


 先ずは俺への賠償問題が持ち上がる。

 無実の罪と言うか、完全な冤罪が分かっていて拘束されていた以上、それなりに補償をする話が持ち上がったのだ。

 商人ギルドのキャサリンさんと国の代理人としてザカライア伯爵、そして俺の三者で話し合った結果、2億円が支払われることになった。

 2億円って、高過ぎるんじゃねぇ?と言うかもしれないけど、過去の実績として半月あれば10億円程度の商品を卸せる俺に対して2億円でも少ないほどだとキャサリンさんは言っていた。


 次は直接俺に関係ないが、代官が更迭された。

 ネットーリ子爵の悪事を放置し、(あまつさ)え協力的な行動をとっていたと断罪された形だ。

 新しい代官が赴任するまでの少しの間はザカライア伯爵の部下が代官代理として赤の塔の街を預かることになった。

 それだけではなく、ネットーリに協力的だった文官・武官も多くが処罰の対象となって結構上の方は大変だったらしい。


 そして俺に直接関係することでは、17日も拘束されていたので俺の商品が不足しており、不足している商品を大量に卸すことになったのだ。

 商品は【通信販売】で購入して直接ストレージ内に収納するので負担を感じないが、商品を商人ギルドに持っていく度にリヤカーを引いたりウエストポーチ型のアイテムポーチに商品を移し替えるのが面倒だ。


『それでしたらアイテムポーチから出すふりをしてストレージから出せばよろしいと思います』

『……そんなこと考え付かなかったよ……インス、すげ~』

『ありがとうございます』


 それでも問題は残る。

 俺というか今はセーラがアイテムポーチを持っているのは皆が知っているが、そのアイテムポーチの容量は大したことない。だからアイテムポーチから大量の商品を取り出すと絶対に怪しまれると思うんだよな~。


『でしたら以前マスターが作成したマジックバッグを一般販売してはどうですか?』

『っ!……忘れていたよ。そういえばマジックバッグを作ったは良いけどストレージ内に仕舞い込んだままだった……さすがはインス!』

『マスターの補佐役ですから!』


 そんなわけで早速、死蔵していたマジックバッグをルルの店に卸す商品に紛れ込ませる。品質が良いのでかなり高額になるが、買いたい人は幾らでもいるだろう。

 後は中身が空だけどマジックバッグを肩から掛ければ、良し準備完了!


「グローセさん、今日は私も付いていきます」

「いくワン」

「僕もいくっピー」

「ん? どうした? ギルドに行くだけだぞ」

「このところ忙しくて一緒に居られる時間が少ないので……」

「そうだワン」


 ああ、そうだな。日に何度も商人ギルドとルルの店に足を運んでいるので護衛のリーシアはともかく、サンルーヴとセーラはあまり一緒に居られなかった。


「分かったよ、一緒に行こう。今回で最後だから納品が終わったら寄り道でもしてゆっくりしようか」

「本当ですか!?」

「やったワン!」

「何だ今日で最後なのか?」

「ああ、最後だ。このマジックバッグに全部入れてあるからね」

「俺が持とう」


 リーシアは断る俺からマジックバッグをひったくるように取り上げる。

 どうも荷物を持つのは彼女の役割だと思っているようだ。


 道中、孤児と思われる幼い子供たちが路上で物乞いのようなことをしている。奴隷にしてもそうだが、こういう光景は見ていて気分の良いものではない。

 何とかしてやりたいが、俺に何ができるのか……


『マスター、あまり深刻に考えないでください。孤児は世界中に大量にいるのです。この街に居る孤児を助けても何の解決にはなりません』

『そんなことは分かっているんだ。分かっているけど、あんな小さな子供が飢えて明日をも知れない生活をしていると思うと居た堪れないんだ。何か俺にできることは無いかと考えるのは仕方がないだろう』

『……では孤児たちをマスターの配下にすればよろしいでしょう。能力次第で冒険者や商人などに育てマスターの勢力を築くのです! そうすれば孤児たちをマスターが保護する理由ができ、マスターの気も少しは晴れるでしょう』

『……インスは頭が良いというか、知恵が回るというか、その案、採用! 頼りにしているよ!』

『ありがとうございます!』


 先ずは商人ギルドに商品を卸し、赤の塔の街内で大きな敷地を確保してそこに孤児院を造るか……いや、マンションに空き部屋がまだあるから……むむむ、どうしようかな。


「セーラ、頼みがあるのだけど」

「はい、何でしょうか?」

「実はかくかくしかじか……なわけなんだ」

「分かりました! グローセさんが商談をしている間に手配しておきます!」

「うん、お願いね!」


 そうこうしているうちに商人ギルドに到着する。

 受付でキャサリンさんとの面会を申し入れて受付嬢の指示の通りに俺とリーシアは裏の倉庫街へ行く。

 セーラとサンルーヴは別行動だ。


「グローセちゃん、まってたわよん♡」

「キャサリンさん、こんにちは」


 早速リーシアが持っているマジックバッグを受け取り商品を取り出すふりをする。

 その間、キャサリンさんと目が合ったのだが、パチクリとウィンクをしてきた。勘弁してくれ。

 指定された場所に商品を出す。大量の商品に商人ギルドが誇る最大規模の倉庫が1棟埋まるほどの商品が積み上げられる。


「ありがとうね~これで何とかなるわ~♪」


 キャサリンさんの部下が手際よく商品と数量を確認する。

 何故か俺に抱きついて礼を言うキャサリンさん。せ、背骨が折れる~。肋骨が悲鳴をあげている~。しぬ~。


「キャサリン殿、主を放してくれ、主は俺のだぞ!」

「あら、やだ~、ちょっと分けてちょうだいな~♪」


 キャサリンさんの抱擁という名のベアハッグから解放された俺は地面にへたり込む。本当に死ぬかと思った。

 リーシアとキャサリンさんが睨み合っている。中間点でバチバチと音がしている感じだ。

 そこにキャサリンさんの部下が売買証明書と代金を持ってきた。

 今回の代金は過去にないほどの大金となった。

 大きな倉庫に商品を山積みにしたので分かっていたが、ずっしりと重い皮の袋に入ったミスリル貨(100万円硬貨)がギッシリだ。しかもその皮袋が22袋……1袋にミスリル貨が100枚入っているので、1袋で1億円。それが22袋で21億8千万円ですよ。

 俺もこれだけ多くのミスリル貨を見たのは初めてだよ。

 ミスリル貨の詰まった皮袋をマジックバッグに仕舞うふりをしてストレージに仕舞う。

 そこにセーラたちがやってきたので首尾を確認する。


「今の屋敷の近くではありませんが、歩いて20分ほどのところに20000平方メートルの土地を取得する段取りになっています」


 土地は街の中心街からかなり離れていることからこれだけの広さを確保することができたそうだ。


「あら、土地を購入するのかしら?」

「ええ、ちょっと考えていることがありますので、土地が必要なのです」

「グローセちゃんのためだから私からも口利きしておくわ♡」

「ありがとうございます」


 こうして大商(おおあきな)いが終わった。

 ルルの店に行き売買証明書と代金を渡すとルルの手が震えていた。

 俺の取り分を差し引きルルの店の粗利は店の奥に据え付けた大金庫に仕舞い込んだ。

 そして俺は皆を連れてデートに洒落こむ。


 最初のデート場所はリーシアから要望があった武器と防具屋だ……デートコースとして疑問がないわけではないが、リーシアはとても嬉しそうに展示されている武器や防具を見て回る。


「主、俺はこれが気に入ったのだが、どうだろうか?」

「……似合うと思うよ」


 リーシアは大きな黒い斧を俺に見せる。

 これデートだよね?

 リーシアが何時も使う武器は黒魔鉄の大斧。

 敵と最も近いところで殴り合うように斧を振るうリーシアの戦闘スタイルは斧には厳しい環境なのかも知れない。

 てか、リーシアの斧は刃こぼれや変形が激しく斧の消費が激しいのだ。


 次はセーラの要望で本屋に行く。

 色々な本をたくさん買い込むセーラ。本屋の店主もビックリしていた。


「グローセさん、今度ミスリルゴーレムに拘束系魔法を試してみますので、よろしくお願いしますね」

「う、うん。頑張れよ」


 買った本の多くは魔法関係の本だが、その本の中に料理の本が1冊混ざっていたのを俺はしっかりと見ている。

 最近はセーラが女子力を上げようと努力をしているのを俺は知っている。


 最後はサンルーヴの要望をきく。

 サンルーヴは俺の料理が食べたいと言うので家に帰り料理を作る。

 サンルーヴの大好物は肉、特に霜降り牛が大好きなのでA5等級のサーロインを購入して火を通し過ぎないように焼く。

 付け合わせにフライドポテトとブロッコリー。そしてミートソースのスパゲッティとオニオンスープを出す。


「おにくおいしいワン!」

「そうか、良かったよ」

「このオニオンスープは丁度良い味で美味しいです」

「セーラだってすぐに作れるよ」

「本当ですか!? 頑張ります!」


 リーシアは無言……と言うか、肉を頬張っており喋れない。彼女も肉好きな肉食系女子なのだ。


 

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