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035_人材登用とチート!

 


「人材を登用したい!」

「あらやだ、唐突だわね。乙女の部屋に入ってきて早々そんなことを言うものではないわよ。先ずはいつも美しいねとか、いつも綺麗だねとか、いつも可愛いねとか、挨拶をして場を温めてから本題に入るものよ♡」


 早朝から商業ギルドのキャサリンさんを訪ねる。てか、その要望には応えることはできません!

 朝一から胃もたれしそうな容姿のキャサリンさん。人材が欲しいのでこういった話は彼……彼女……に頼むのが一番だろう。


「はぁ、まぁ良いわ♪ ちょっと待っててね~♡」


 溜息を吐いて部屋を出ていったキャサリンさんは暫くして一冊のファイルを持って帰ってきた。


「それで~どんな人材が何人欲しいのかしら?」

「希望は5人以上、最低でも3人、計算ができて誠実ならば問題ありません」

「ん~、容姿や年齢は特に希望は無いわね?」

「客を怖がらせる容姿の方は却下です。それと多少の力仕事はありますが基本は軽作業か店員ですのでこの職務に耐えられない方は避けてください」


 キャサリンさんは俺の希望を聞いて持ってきた厚めのファイルのページをペラペラとめくる。

 その眼差しはいつものキャサリンさんではなく、商業ギルドの副ギルド長の目だ。

 そして何人かめぼしい人材を見つけたようだ。


「そうねぇ~明日のお昼に来てくれるかしら。めぼしい子たちを集めておくから面接して決めてちょうだい」

「ありがとうございます。人材の件はそれでお願い致します」

「ふ~ん、人材の件ねぇ~。ということは他にも話があるのかしら?」

「はい、今日はいつもとは違う商品を持ってきましたので、見てもらいたいと思います」


 取り出したのはA4コピー用紙の束とボールペンだ。

 そしてそのコピー用紙を一枚手元に寄せボールペンでスラスラと文字を書く。幸いこの世界の言語は何故か書けるのでキャサリンさんにも読めるように『紙とペンを買ってください』と書いた。


「これは!」


 いつものオネェキャラではなく、オッサンに戻ったキャサリンさんの野太い声が響く。

 コピー用紙を手に取り繁々と眺め、軽く折り曲げたりさすったりと紙にとても興味を持ったようだ。そして一通り紙を触り倒すと今度はボールペンを手に取る。


「そのペンは既にインクが中に入っていますのでそのインクがなくなるまで使えます。インクを着け直す手間がなくなりますね」

「……どれほど書けるのかしら?」

「ハッキリとは言えませんが、少なくともこの紙一杯に多くの文字を書いてもインクはなくなりません」

「そんなに……」


 今、商業ギルドが使っているのは羊皮紙で、羊以外の動物や魔物の皮を使った物でも羊皮紙と言われている。

 羊皮紙はA3サイズの大きさで安い物でも一般人が購入する金額は1枚800円ほどするが、商業ギルドであればそこまで高くはないだろう。

 だが、俺がキャサリンさんに見せたコピー用紙は1枚1・2円で仕入れているのでこれを50円で商業ギルドに売っても売り上げは少ないがかなり黒字だ。しかも大量消費が見込める商業ギルドであればスケールメリットで儲けが出せる。

 更にボールペンはこの世界で一般的に使われている羽根ペンとインクという組み合わせを使うよりも遥に使い勝手が良いのは言うまでもない。

 地球でもつけペンにインクをつけて使う人もいるが、ほんの僅かなのだ。


「どれだけ用意できて、お代は幾らかしら?」


 真剣な眼差しのキャサリンさん。いつものキャサリンさんも違う意味で怖かったが、今のキャサリンさんの視線は商売人の真剣な視線で俺を射貫くような怖さがある。


「紙は取り敢えず1万枚を用意できます。ご要望があれば継続的に卸すことは可能です。値段は1枚50円です。ペンは500本用意ができ、1本1000円でどうですか?」


 売り上げ的には今まで卸していた商品のほうが遥かに良いのだが、俺の考えは売り上げや儲けではない。

 言うならば経済侵略を仕掛けているのだ。

 俺が卸す商品が無くなると商業ギルドだけではなく、市場自体が困る。そういった状況を作ろうと思っている。

 何故このような考えに至ったかと言えば、今俺たちを取り巻く状況の中でブラハムを狙う貴族が一番厄介な存在なので、その貴族が俺たちに手を出しにくい状況を作っているのだ。だからこのような経済侵略を仕掛けている。

 俺のこんな考えをキャサリンさんが見抜いた場合には彼……彼女を敵に回してしまうかもしれないが、打てる手は打っておこうと思っている。


 実際のところは既に俺による経済侵略は進んでいる。

 砂糖や胡椒に始まり塩や各種香辛料も卸しているし、それらを使った料理のレシピも最近は無償で配布している。

 経済侵略だけではなく、料理やお菓子を俺が卸した物で作るので俺が卸す物が不足したら市民から不満が出るだろう。

 一度受け入れて常態化してしまうと、以前の状態に戻るのが難しくなる。

 美味しい料理やお菓子、そして便利なアイテム。これらを供給する俺への依存をこの街の人々が、そしてこの国の人々がすることで、俺を簡単に排除できなくなる状況を作っておく。


「そんなに安いの? もっと高くても売れるわよ、これ」

「それでも十分利益がでますから大丈夫ですよ」

「今言った数は全部いただくわ♪ いつ卸せるの?」

「明日の面接の前にでもお持ちしますよ」

「良いわよ~、決まりね♡」


 後は卸すアイテム数を増やしてこの街の経済活動の生命線を裏で握ってしまえば……取り敢えず計画の第一段階は上手くいった。

 今日はこの後は家に帰り【魔道具作成】スキルで製作に励もう。そしてスピードブーツ以外にも作れるアイテムを増やし作ったアイテムを販売しよう。

 買取店はあのままで他に店を出さないとな……いや、ルルとデイジーに店を出させ俺は資金援助とその店に商品を卸してもいいな。

 うん、そうやって市民の生活に深く根付く店をプロデュースしよう。


 ルルは雑貨屋を(いとな)みたいと言っていたし、デイジーはレストランだったな。

 先ずは雑貨屋とレストランに出資してこの街に深く日本文化を根付かせてやろう。

 よし、今はまだ店を開けているので後から二人に相談しよう。


 先ずは俺のスキルである【魔道具作成】で久しぶりにスピードブーツの作成をしようと思う。

 先ずは【通信販売】でブーツを購入する。そしてウルフ系の革とブーツを素材として【時空魔法】のヘイストを付与する。



 種類:スピードブーツ(国宝級)

 説明:俊敏値を倍化する。



 ん? 国宝級……どういうこと? もしかしてやってしまった?

 以前に幾つか作っているのでイメージは問題ないと思っていたけど出来上がったスピードブーツは以前の物よりも遥に高性能だった。


 インスにこの国宝級について聞くと【鑑定(S)】にインスの基礎知識を追加したことで見えるようになったアイテムの等級だそうだ。こっそり嬉しいバージョンアップをしてくれる。

 等級としては、低級<中級<上級<特級<国宝級<伝説級<神級とあり、神級が最高ランクだそうで一般的に流通している物の多くは低級か中級で稀に上級や特級もあるが、国宝級のアイテムはまず無いらしい。

 うん、やってしまった感が否めない。

 だからこれはサンルーヴに履いてもらい、もう少し等級が下の、できれば上級あたりのスピードブーツを作ろうとイメージをする。



 種類:スピードブーツ(上級)

 説明:俊敏値を30%底上げする。


 種類:スピードブーツ(特級)

 説明:俊敏値を50%底上げする。



 上級のスピードブーツを9足、特級のスピードブーツを1足を製作したところでインスのアナウンスが頭に響く。


『マスター、【時空魔法】のランクが『C』から『B』にランクアップしました』

『やったね!しかしもう『B』までランクアップしちゃったんだ!?』

『【通信販売】でストレージ内の物を売ったり、購入した物を直接収納することから【時空魔法】の使用頻度は多いのでランクアップに必要な経験値が溜まりやすいのです』

『なるほど。で、どんな魔法が使えるのか、全て教えてくれないかな?』


 実を言うと今までのランクアップについては知らないうちに上がっていたので、最近はインスにスキルのランクアップや職業のレベルアップがあったら教えてほしいと頼んでおいた。

 お陰で最近はランクアップやレベルアップがその場で分かるのだ。

 しかし、これまでスルーしていたランクアップで使えるようになった魔法を俺は認識さえしていないのだ。だからインスに説明を求める。


『了解です、マスター。ランクEではヘイスト、スロー、ストレージ。ランクDでは転移門、ストップ。ランクCでは異空間、時空結界。ランクBでは瞬間移動、リバース。となります』

『う~ん、転移門は以前聞いたしストップは分かるとして、異空間、時空結界、瞬間移動、リバースの説明を頼むよ』

『はい、マスター。異空間は異空間にマスターが創造した任意の世界を作り出します。この異空間に入れるのはマスター及びマスターの許可がある者のみとなります』

『お~良いねぇ~』

『時空結界はその名の通り時空属性の結界を形成します。時空属性は他の属性の干渉を受けにくいので非常に強固な結界です』

『これも良いねぇ~』

『瞬間移動はマスターから見える範囲に瞬時に移動ができます。戦闘時の回避や奇襲攻撃などに使える使い勝手の良い魔法です』

『うん、うん、やっぱ【時空魔法】を選んでおいて良かったよ』

『最後にリバースですが、これは対象の時間を巻き戻す魔法です。人間に使えば卵子まで巻き戻すことができますし、剣などの武器に使えば新品にすることもできます。但し、質量的に不足していますとその質量を補うためにMPを膨大に消費しますので注意が必要です』

『チートだよね!』

『チートです……マスターのスキルは【通信販売】を始め、【時空魔法】、【魂喰い】、【サーチ】、【精密射撃】などチートのオンパレードですよ?』

『いや、俺にとって一番のチートは【ナビゲーターα(インス)】だし!』

『あ、ありがとうございますっ!』


 チートなスキルたちをインスに突きつけられた俺は再びマジックアイテムの作成をし出す。

 次に作るのはマジックバッグに決めている。

 マジックバッグの素材はランク4のデススパイダーの糸から作られた布、ランク4の魔物から得られる無属性の魔石、ランク4の魔物の薄めの革、そして俺のように【時空魔法】や【空間魔法】による収納系魔法の付与だ。

 因みに【時空魔法】なら空間拡張以外に時間停止の効果を得ることもできるが、【空間魔法】では空間拡張のみとなる。


 デススパイダーの布、ランク4の魔物の薄めの革、ランク4の無属性の魔石、の3つは【通信販売】で購入ができる。

 今の【通信販売】はランクがCなのでランク4までの魔物の素材が入手できるのだ!

 材料は【通信販売】で購入できるので資金があればどれだけでも用意ができる。

 後はこれらの素材でどの様な形のマジックバッグを作るかだ。

 先ずはセーラに使ってもらっているウエストポーチをイメージする。あれぐらいの方が使いやすいからな。

 デススパイダーの布が内側、ランク4の魔物であるデスサーペントの鞣革が外側、そして無属性の魔石は粉にして全体に満遍なく吸収されるイメージをする。

 そして最後にストレージを付与するイメージを加える……とても綺麗な光を発し、その光が止むと作業台の上にはウエストポーチが鎮座していた。

 形に関してはイメージ通りで良い感じだ。後は性能だ。【鑑定】!



 種類:マジックバッグ(伝説級)

 説明:時間経過停止と内容量を拡張したウエストポーチ。内容量は1立方キロメートル。



 あれ? マジックバッグ? マジックポーチじゃないの?……まぁ、良いや。

 しかしやってしまった感が半端ない。売りに出すにはちょっとヤバい性能だと思う。だって伝説級なんだもん!

 でも3人のマジックバッグはこれくらいじゃないとね!

 だから同等の物を3つ作り、後は上級になるように生産する。


 種類:マジックバッグ(上級)

 説明:時間経過停止と内容量を拡張したウエストポーチ。内容量は100立方メートル。


 

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