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032_赤の塔11層

 


 赤の塔の10層はランク3の魔物が闊歩するフロアとなる。

 本来はこの10層から現れ出すウルドラゴが以前6層に現れてパーティーが壊滅寸前にまで追い込まれていたが、こういうことは通常では起きない。そう、通常ならば起きないがそれが起きる可能性がある。

 それはダンジョンが造り出す魔物と冒険者が討伐する魔物の数のバランスが前者に傾いた時に起こる氾濫だ。

 SWGでも氾濫の発生イベントがあり多くのプレイヤーたちがレイド戦に精を出していた。まぁ、今の状況では氾濫があるか分からないのだが。


 この赤の塔が紅蓮のダンジョンと同じなのは理解している。

 地図屋で購入したガイドブックにある10層と11層を繋ぐ階段前にはエリアボスである魔物がおり、この魔物を倒さないと11層への階段が使えないのだ。

 SWGでもこのエリアボスは存在し多くのプレイヤーの屍を築いてきたが、それも解放されていたエリアの最上階である30層に到達したグローセにとっては雑魚キャラでしかなかった。

 しかしこれはゲームではなく現実なのでリスクをできるだけ下げる必要がある。


「って、もう行くのかよ!」

「エリアボスはすぐそこに居るのだ、行くぞ主!」

「サンルーヴ、気配を消して最初の一撃は急所を最大の攻撃でお願いしますね」

「わかったワン」


 こいつら相変わらず『がんがんいこうぜ』状態だ。俺としては『いのちだいじに』で行きたいのだがな。

 仕方がないのでサンルーヴに【時空魔法】のヘイストをかけることにする。


 エリアボスを視認した。向こうも俺たちを感じたようでプレッシャーが増した感じがする。

 ファーストアタックはセーラの魔法だ。大きな象の魔物であるクレイジーエレファンタスのどてっ腹に炎の槍が命中する。

 日本の動物園で見たことがある象よりも二回りは大きいと思われる大きな体をしているので攻撃を当てるのは難しくない。しかしその分、分厚い皮と脂肪が魔法攻撃を難なく受け止めダメージはそれほどないようだ。


「パオオォォォォンッ!」


 セーラの魔法攻撃に怒ったクレイジーエレファンタスが雄叫びを上げドスドスと音を立てて俺たちに向かって駆け出す。

 この突進の恐ろしいところは鼻の付根付近から生える4本の立派な牙だ。あの突進から繰り出される牙の一撃は俺の体を串刺しにして余りある威力があるだろう。

 ガシャーーンッ。

 その突進を大盾で受け止めるリーシアも大概だ。

 そしてそこに俺が【時空魔法】のスロウをクレイジーエレファンタスにかける。これでクレイジーエレファンタスの動きが遅くなるので味方の援護になるだろう。


「フレアボム!」


 そこに先ほどのファイアランスよりも攻撃力の高い爆発系の魔法を放つセーラ。ドガーンと大きな音を立ててクレイジーエレファンタスの後ろ足の付根付近で爆発が起きる。


「パオルゥゥゥゥ」


 フレアボムが効いたようでクレイジーエレファンタスが悲鳴のような鳴き声を上げ1歩・2歩下がるのを見逃さないのはリーシアだ。

 右手に持った斧を牙の1つに打ち付けると、何と牙をポッキリと折ってしまった。


 更に後退したクレイジーエレファンタスにいつの間にか近付いていたサンルーヴが攻撃をしかけた。クレイジーエレファンタスは首を深々と切り裂かれ分厚い皮の下にある肉が見え大量の血を流す。

 この攻撃に怒り狂ったクレイジーエレファンタスの皮膚の色がグレーからレッドに変わる。SWGだとこの変化が起こると残りHPが3割となった証拠で、ここからがこのクレイジーエレファンタスの本領発揮となる。

 高かった防御力が更に高くなり、攻撃もバーサーカーの如く敵を倒すか自分が倒れるまで止まることがないのだ。

 長い鼻を振り回し、大きな体を有効に使い圧力をかける。

 しかしリーシアはそれを尽く受け止め斧で反撃までする。


「パオォォォォォォンッ!」

「なめるな!」


 力と力のぶつかり合いだ。だがリーシアがクレイジーエレファンタスに押し負けることはなく、そこにセーラのフレアボムが再びさく裂し後ろ足を完全に使い物にならない状態にすると、サンルーヴが先ほどとは逆の首筋を切り裂く。

 そして止めに俺のMP7改が連射モードで火を噴く!

 ダッダッダッ!ダッダッダッ!

 スドーーン。

 クレイジーエレファンタスが地に倒れ伏した。ここでHPを確認すると0になっていたのでクレイジーエレファンタスを倒したのを確信した。


「思ったよりも大したことなかったな」


 いや、それはリーシアが半端ないからだぞ。


「ええ、あのダンジョンのリッチに比べると物足りない感じがします」


 いや、リッチはダンジョンボスだから!


「やったワン」


 うん、うん、サンルーヴは可愛いね。戦場だけど癒されるわ~。


「これ美味しいワンか?」


 前言撤回!食うのが前提かよ!


 俺たちは休憩もせずに11層へと足を踏み入れた。

 11層からは今までの草原タイプと打って変わって山岳タイプのフロアーとなる。

 SWGの頃にはこの山岳タイプに苦労したことを思い出す。


「なにかいるワン」

「敵ですか?」

「わからないワン」


 ガイドブックもそうだがSWGでもこのフロアで出てくるのは……

 スガーーンッ。

 これだよな、はぁ~。


「ロックゴーレムか!?」


 そう、この山岳タイプではゴーレム祭りなんだよ。

 しかもゴーレムは物理も魔法も耐性があり非常に硬いのだ。ここで面白いのは鍛冶師や山師の【掘削】というスキルがあると意外と楽に倒せるのだがその職業には俺たちは就いていない。


 すぐに遊撃態勢を整えたリーシアたちだが、ここで思いがけないことが起きた。

 接近してくるロックゴーレムにリーシアがシールドバッシュを叩き込むとロックゴーレムが粉々になってしまったのだ。

 確かに粉砕できそうな気がするけどそれでいいのか!?


 その後、リーシアのシールドバッシュによる無双が繰り返されたことで順調に進む俺たち。

 ちなみに、短剣によるサンルーヴの攻撃はダメージが通りにくかったし、俺のMP7改でも致命傷となる大ダメージは無理だった。魔法では風系はもう散々な状態でセーラも辟易していたけど、フレアボムはそれなりにダメージが通った。

 だから一番効率が良いリーシアの力押しシールドバッシュでこの11層は押し切った。






 店に帰り今日買い取った魔物をあっという間にストレージに回収する。

 そして夕食の準備をルルと共に行う。

 今日の夕食はコーンポタージュ、海藻サラダ、黒毛和牛のサーロインステーキと付け合わせにフライドポテトとニンジンのグラッセ、主食は米とパンのどちらでもOK、デザートにフルーツタルトを用意した。


「いただきます!」

『いただきます』


 俺に続き皆が合唱する。

 黒毛和牛のサーロインステーキはそれぞれの希望を聞き大きさを変えている。

 100gと小さめの肉はデイジーとルルの店員コンビとセーラの3人。

 150gの標準サイズはカンナとイズナの魔法使い双子コンビ。

 300gはブラハム、アンナ、レッジーナ、インディー、フィナの冒険者前衛組の5人。

 500gはリーシアとサンルーヴの2人だ。

 サンルーヴはあの小さな体で500gをペロッと平らげ更におかわりを要求する始末だ。

 俺はというと標準的な150gをしっかりと頂きました。


「このサーロインステーキは美味いな。以前食べたフィレという赤身の多い肉も良いが俺はこのサーロインステーキの方が好きだぞ、主」

「私は少し脂が多い気がしますので赤身の方が好きです」

「どっちもおいしいワン!」

「あんたたちは相変わらずだね。こんな美味い肉や料理を食えるのは領主様でも難しいんじゃないかと思うけどね」


 アンナの言う通りだと思う。この世界の食糧事情からすればこれだけの料理を用意するのは難しいと思う。俺には【通信販売】があるのでいつでもどこでも地球の美味しい食材や料理を食べることができるのでこの世界でも不満はないが、他の転移者は不便や不満があるのではないだろうか。


 

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