表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/93

018_死者の迷宮2

 


 ハイゴーストとグールを瞬殺してしまった俺たちの目の前に現れた階段と木の箱。木の箱って、こういう場合は宝箱じゃないの? 何このリンゴの箱のような木箱は。


「罠は無いようです。開けますよ?」


 セーラが俺たちに断って木箱の蓋を外し中を確認する。木箱の中に入っていたのは折れた剣と本が一冊だった。


「折れてますよね?」

「折れてるな」

「折れているね」

「ガウ」


 宝箱ではないけどボスを倒して現れた箱の中身が折れた剣っておかしいだろ!

 取り敢えず折れた剣はストレージの肥やしになることが決定だ。そして折れた剣と一緒に入っていた本だが、これはスキルスクロールだと分かった。


「スキルスクロールは適性がある者が読めば魔法やスキルを覚えるという物ですね」

「魔法やスキルか、このスキルスクロールはどんな魔法やスキルを覚えることができるのかな?」

「アイテムを【鑑定】できる人が居ないと何とも言えません」


 あ、そういえば俺【鑑定】もってたわ。



 種類:魔物鑑定のスキルスクロール

 説明:適性がある者が読むことでスキル【魔物鑑定】を覚えることができる。



 魔物用の鑑定スキルなんだよな?


『ねぇ、インス。【魔物鑑定】ってどんなスキルなの?』

『魔物の種族やランク、それに所持スキルが分かるスキルです。マスターがお持ちの【鑑定】に比べますと対象範囲が魔物だけと狭いですが良い点は魔物の弱点が分かることです』

『おお、魔物の弱点が分かるのは良いね』

『戦闘の補助として有用なスキルです』


「これは【魔物鑑定】のスキルスクロールだね」

「【魔物鑑定】ですか?」

「初めて聞くスキルだ」

「ガウ?」

「スキル名からすれば魔物限定の鑑定系スキルのようですね。売ればそれなりに高値が付くと思います」


 有用なスキルだから売るよりは自分たちで使った方が良いだろう。最有力は斥候職のセーラだな。


「これはセーラが使ってくれ。どうやら魔物の弱点も分かるようだから斥候職のセーラが使うのが良いと思う」

「良いのですか?」


 斥候職のセーラが索敵して見つけた魔物の情報を皆に教えればそれだけで戦闘のアドバンテージになるから問題ない。リーシアも異論はないし、サンルーヴは言うまでもない。とは言え適性がないと覚えることはできないので試してみたのだが、しっかりと覚えることができスキルスクロールはキラキラとエフェクトを発生させ、その光がセーラの胸の中に入っていった。

 思わずセーラの胸を凝視してしまったが、不可抗力だ!


 階段を下りると地下1階と全然変わらない石の通路が現れ、俺たちはそのまま先に進む。俺は行きたくないのだけど無理矢理連れていかれる。

 地下2階ではハイゴーストが普通に現れるが俺の魔法で瞬殺する。俺って意外と強いかも?

 他に現れる魔物はグールハンターやグールソードマンなどのグールよりも上位の魔物だ。グール系はセーラが見つけ主にリーシアとサンルーヴが瞬殺するので意外と進む速度は速い。

 セーラたちのペースでダンジョンを探索しているが、レベルが上がって体力も上がっているせいかそれなりに付いていける。


「そこの角を曲がるとグールウィザードが居ます。風魔法を持っているグールです。数は3。弱点はありません」

「あれ? グールなのに弱点がないの? 火属性が弱点じゃないの?」


 今までに出てきたグールにグールハンターやグールソードマンは火属性が弱点だった。まぁ、物理が有効なのでリーシアやサンルーヴに瞬殺されていたけど。


「どうもグールウィザードは他のグール系とは違い弱点がないようです」

「無い物は仕方がないか。それと魔法を使う魔物とは初めて戦うけどどうやって戦えばいいのかな?」

「奇襲からの接近戦がいいでしょう」

「それなら俺とサンルーヴに任せてもらおう」


 そう言うとリーシアとサンルーヴがグールウィザードに駆けていく。

 リーシアたちを見止めたグールウィザードたちは詠唱を始めるが、その瞬間にセーラの矢が1体のグールウィザードの口に突き刺さる。そしてグールウィザードの詠唱が終わる前に接敵したリーシアとサンルーヴによって一瞬で頭部と胴体が離れたグールウィザードが2体。

 最後に口に矢が刺さり詠唱ができないグールウィザードを俺がMP7の連射で頭部を破壊する。


 順調に進み地下2階のボス部屋に到達した。

 少し休憩して扉を開け中を見るが何も居ない。そのまま中に入ると扉は閉まる。地下1階のボス部屋でも扉は勝手に閉まったしダンジョンのボス部屋の扉は戦闘が終わるかボスを倒すか10分以上経過しなければ開かない仕組みだと聞いているので特に驚くことはない。

 だが問題は扉がしまり出てきたボスだ。ボス部屋の中央に現れたのボスは黒いマントのような黒衣を(なび)かせ大きな鎌と頭部の髑髏(ドクロ)が特徴のアンデッド系の魔物だ。


「な、リッチです! ランク5の化け物です!」


 ランク5、それはスタンピードの時にウルフ系魔物を率いていたジェネラルウルフよりも上のランク、つまりあのジェネラルウルフよりも更に強い魔物ってことだ。


「く、10分、10分持たせ扉のロックが解除されたら速攻で撤退を!」


 どうやら俺たちは生命の危機に瀕しているようだ。

 リーシアが大盾を構えリッチと俺の間に陣取りセーラとサンルーヴは遊撃態勢を取る。


『インス、俺はどうしたら良いんだろうか?』

『先ずはリッチの情報を確認し、セーラに弱点を確認させてください』


「セーラ、弱点を確認してくれ!」

「は、はい! ……聖属性です!」


 聖属性なんて俺たちの誰も持ってないよ!


 情報:リッチ ランク5 1歳

 HP:10000

 MP:500000

 筋力:1000

 耐久:1000

 魔力:7000

 俊敏:500

 器用:500

 魅力:100

 幸運:1

 アクティブスキル:【魔力操作(B)】

 パッシブスキル:【物理耐性(B)】【鎌術(B)】

 魔法スキル:【死霊魔術(B)】

 ユニークスキル:【ダンジョンマスター】



 えーっと、これって完全に死亡フラグだよね? 何あのMP? HPも高いけどMPの値が異常じゃね? そして魔力が異常なほど高い。これがランク5の魔物かよ!

 それに【ダンジョンマスター】ってことはこのリッチがラスボスかよ。もっと深い階層に現れろよな。


「【物理耐性】を持っているからリーシアは防御に徹してくれ! サンルーヴはスピードを活かしてアイツを翻弄してくれ! セーラは時間を計ってくれ!」

「「「了解!(ワオン!)」」」


 とは言ったものの勝つどころか生き残る目途も立たないぞ。考えろ、扉のロックが解除されるまで10分持たせる方法を。


 俺が考えている間にリッチがスーっと動きリーシアにあっと言う間に接敵すると剥き出しの骨の手に持っている大鎌を振るう。

 大盾を素早く構えその大鎌を受けるリーシア。そしてそのまま大盾を押し出しリッチの体勢を崩すと斧をリッチに叩きつけるが、その斧はリッチの体をすり抜けてしまった。

 どうやら【物理耐性】が効いているようだ。


「魔法的攻撃以外は効かないか……」

「そうなるとリーシアさんやサンルーヴではどうにもできませんよ?」

「……はぁ、やってみるか」


 炎の杖を取り出す。


『インス、炎の杖に込めても大丈夫なMPはどれくらい?』

『破損しない程度ならば50ほどです。100ほどまでなら3割ほどの破損率、200ほどならほぼ100%の確率で破損します』

『50のMPを込めた魔法であのリッチにどの程度のダメージが入る?』

『凡そ10程度のHPを削れると思われます』

『はぁ? ……何でそんなダメージしか出ないの?』

『リッチの魔力が高いので魔法抵抗が大きいのです』

『そんなのありかよ……なら、リッチを倒すにはどれだけのMPを込めれば良いんだ?』

『MP800であれば一発で倒せるでしょう』

『へ? MP50でHP10しか削れないのにMP800ならHP10000も削れるの?』

『MPは多く込めれば込めるほど加速度的に威力が上昇します』

『そうか、800のMPなら今の俺なら全然込められるし、やれそうだ!』

『但し、この狭い空間でそれだけのMPを込めた魔法を発動させた場合、魔法の威力が大きいのでリーシアたちもそうですがマスターもタダでは済まないと考えられます』

『……詰んだ?』

『……』


 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ