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016_旅立ち

 


 赤の塔の街へ出発するまでに世話になった人たちに挨拶を済ます。

 特にアンブレラさんには世話になっていたので感謝の意を込めて極上のワインを贈った。


「ヘンドラー様が旅立たれると寂しくなりますね」

「機会がありましたらまたこの町に寄らせてもらいますよ」


 商人ギルドでは他にも世話になった人も多いので色々回った。

 一応、冒険者ギルドのゴウリキーさんにも挨拶をしておく。

 そんな感じで一週間ほどすごし旅立つ日となり、旅立つ俺たちを見送るためにアンブレラさんや俺の護衛をしてくれた『アルスの剛腕』のエブリ、ライラ、ウィットニーの3人が集まってくれた。

 そして何故か地球人の脳筋3娘も来てくれたが、彼女たちには挨拶してないのだけど?


「旅のご無事をお祈りしております」

「アンブレラさん、お世話になりました。またこのハジメの町に来る機会がありましたら寄らせていただきます」


 がっちり握手をし別れを惜しむ俺とアンブレラさん。


「グローセさん、あたしたちもいつか赤の塔の街に行くからその時はまた美味しい料理を作ってくださいね!」

「うん、グローセさんの料理は最高!」

「美味しい!」

「ははは、了解したよ。エブリ、ライラ、ウィットニー、お世話になりましたね」


 3人は俺というよりは俺の作る料理が食べられなくなるのが悲しいようだ。


「お兄さん、必ず追いかける!」

「うん、私たちからは逃げられないよ!」

「薄情!」

「君たちとはそんなに親しくないけど、わざわざ来てくれてありがとうね」

「必ずお兄さんの化けの皮をはがす!」

「なんか私が悪者のように言うのは止めてくれるかな?」


 そんな感じで俺たちはハジメの町とそこに住む人たちに別れを告げ、旅立ったのだ。


「しかし最初に聞いた時には驚いたけど、本当に駅馬車を使わないのですね」

「まぁね、ちょっと考えがあるのでハジメの町から離れたら教えるよ」

「主が何をするのか、楽しみだ」

「ワオン」


 2時間ほど歩き幾つかの馬車に追い越された頃、街道の脇で休憩をする。【通信販売】で購入したキャンプ用のアルミの机に日差し除けのパラソルと椅子をセットし、同じく【通信販売】で購入した紅茶とショートケーキを出してリーシアとセーラに、サンルーヴには未調理のカモを1羽分丸ごとを与える。


「む、美味い!」

「本当に! この白いお菓子はとても甘いのですが、この赤い果物の酸味が程よくマッチしていますね。それにこのお茶も美味しいです」

「それはショートケーキっていうお菓子で、お茶の方はダージリンというお茶だね」

「ガウガウ!(バリボリ)」

「サンルーヴも美味いか、良かったよ」


 ブラッドウルフのサンルーヴには焼いてない方が良いかなと思い生のままのカモを丸ごと1羽与えたが気に入ったようで何よりだ。骨までバリボリと噛み砕いて食べている。

 ユックリ休んでそろそろ移動を再開しようかとう時間になったので俺はここで秘密兵器を出す。


「何ですか、これは?」

「馬車、では……ないな?」

「ワオン?」

「これはトラックという乗り物だよ」


 そう、俺は【通信販売】で売られていた中古のトラックで4WDのダブルキャブを購入した。残念ながら新車は売っていなかったので中古を購入したが、それでも230万円もした。

 本当は戦車とかほしかったけどさすがに戦車は出品されてなかったし、もし出品されていたとしても金額的に買えそうにないと思うので装甲車とか欲しいなぁ~と思っていたんだが、中古の乗用車やトラックしか出品がなかった。


「トラック?」

「何だそれは?」

「ワオン?」

「良いから乗って。あ、サンルーヴは悪いけど荷台に乗ってくれ」


 こうして2人と1匹を乗せてトラックは走り出す。道がアスファルトなどで舗装されていない土の道なので高速走行は無理だが30Km/h程度の徐行よりやや速い程度の速度なら揺れはあるけど走れる。乗り物酔いには注意を!

 意外とリーシアとセーラ、それに荷台のサンルーヴは乗り物酔いはしなかった。ただ、俺が少し酔った。何故運転手の俺が酔うのだ?


「凄いですね、このトラックという乗り物は。馬も牛も居ないのにどうやって動くのですか?」

「うむ、摩訶不思議だ」

「これはエンジンという動力を積んでいるんだ。細かいことは私も知らないので上手く説明できないけどね」


 俺の調べたところ、馬車の平均速度は2頭引きの駅馬車で15Km/hも速度は出ていない。先ほど前方に見えた駅馬車を付かず離れず尾行して速度を計ったから間違いないと思う。

 つまり俺たちは駅馬車の倍の速度を出せるし、出そうと思えば更に速度を上げることができる。

 駅馬車は朝から夕方まで何度も休憩が必要で駅馬車が1日に8時間程走るとして、15Km/hで走ると120Kmを進めることになる。実際には毎日8時間も走るとは思えないので取り敢えず1日に進む距離を100Kmほどと考えると10日の道のりってことは赤の塔の街までハジメの町から1000Kmほどだと考えられる。

 まぁ、1日8時間走る事もあれば6時間の時もあるだろうから1000Kmも離れていないとは思う。つまり俺たちが30Km/hで8時間走れば4日から5日ほどで目的の赤の塔の街に到着できる計算だ。


「駅馬車は1日に2つから3つの町や村に立ち寄ります。夜は魔物が活発に動きますので運航しません」

「そうすると私たちも早めに宿をとったほうが良いかな?」

「魔物除けを使えば野営もできます。私たち冒険者は野営には慣れていますので構いませんよ?」


 野営用に魔道具のテントも購入しているけど宿に泊まれるならその方が良い。好き好んで野営なんかしないさ。


「うむ、どんどん進み暗くなれば野営すればいい」


 何だか野営する方向で話が進んでいますが?


「いや、危険だし野営はできるだけ避けるべきだと思う」

「大丈夫ですよ、こっちにはサンルーヴも居るから大概の魔物は近寄ってきたら分かるだろうし」

「うむ、やはり旅は野営だ!」


 何でそこまで野営をしたがるのか俺には理解できないが、数の暴力で野営に決定した。おかしいな、彼女たちは俺の従者なのに。

 その夜はリーシアとセーラが交代で見張りをすることになった。俺はほぼ1日中運転していたので見張りは免除だ。サンルーヴもいるし大丈夫だと思うけど、この世界で初めての野営なので少し緊張する。なんて思っていた俺が馬鹿だった。


 翌朝朝日が昇り起き出した俺がテントの外に出ると滅茶苦茶焦った。目の前に魔物の死体の山があったのだ。

 リーシアとセーラに聞いたら夜中にサンルーヴが周辺の魔物を狩っていたそうで、魔物除けを焚くまでもない状態だったそうだ。昼間はトラックの荷台で寝ているだけなので夜中元気なんだね。


 魔物の死体を【通信販売】で売ってから朝食を作る。カセットコンロでお湯を沸かしコーンポタージュスープを温め、ガスバーナーでチーズを溶かしパンに載せその上にハムを置く。


「野営なのにこんなに美味しい朝食を食べられることに感謝です!」

「主の作った食事は何でも美味い!」

「ガウガウ!」


 イノシシ肉のブロックに齧り付くサンルーヴが嬉しそうに食べている。ブロック肉から血が滴っているのでサンルーヴの口の周りは血だらけで少し引いてしまった。


 トラックの燃料となるガソリンも【通信販売】で買える。これによってトラックを長く使えるし、エンジンオイルも念のために交換しておいた。

 この世界では車検は必要ないが整備不良で動かなくなるのは困るのでできる範囲で自分でメンテナンスをする。とはいってもオイル交換程度しかできないけどね。


 オイル交換や燃料補給をしていたので少し出発が遅くなったが、赤の塔の街に向けて出発した。

 リーシアやセーラが運転させてほしいと言ってきたので運転の仕方を教える。幸いオートマチック車なのでアクセルとブレーキ、そしてバックや駐車する時にはパーキングにしてサイドブレーキをする程度の簡単な説明だけで運転はできた。


「わ~、走りました! 凄いですね、本当にアクセルを踏むだけで走りますよ!」

「速度メーターの30Km/hを維持してね。あまり速度を上げると道の凹凸の対処ができなくなるから」

「分かりました!」


 セーラに1時間運転させたら今度はリーシアだ。リーシアも直ぐに運転を覚えてしまったので、今後は3人で交代で運転し助手席に座った人は運転手の補助をし、後部座席に座った人は夜の見張りに備えて昼寝することにした。

 この世界では運転免許は要らないよね?


 

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