表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/2

出会いは突然って聞きました

君たちはもしもある日突然知らない人からメールが送られてきたらどうするだろうか。

まぁ当然詐欺扱いして無視するのが当然だろう。

実際僕でもそうするだろう。

しかし何故か僕は開いてしまったんだ。

…結果、詐欺よりひどい結果になるとは思ってもなかったが。





僕は夢を見ているのだろうか、それとも単についに馬鹿になったんだろうか。

樹木に体をあずけ、ため息をつく。

ここまで生きていられるのはこのマップを熟知しているからに他ならない。

画面上で軽々と狩りまくっていた怪物共がウロウロしているこの森でむしろ1度もタゲられていないのは奇跡だろう。奇跡だ。

しかしギャンブルは続けていればいつか負けるものだ。

そのうち僕はあのなんとも形容しづらいバケモノに八つ裂きにされて死んでしまうんだ、と思ってみてもどうも現実味は湧かない。

「確か街は…こっち。取り敢えず行くか」

特になにか宛があるわけでもないが取り敢えずここよりは居心地が良いだろう、と思い至り僕は頭の中に広げたマップに従って歩を進める。

しかしハプニングはどこにでも付き物のようで。

パキ、と足元から大きめの音。

そしてピタリ、と止まる周囲の足音。

…迂闊だった。ゲームとリアルは大きく違うんだった。


「あああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!」

過去何度目かの絶叫と共に僕は森を駆け抜ける。

走ればそれなりに音は出るが目的地までの時間は縮まる。

ただ問題は僕の体力。長年のニート生活によって結果にコミットした僕の体は太ってこそいないと思うが筋肉と呼べるものはほとんど存在せず少し走るだけで脇腹が痛む始末。

「くっそ…もう…だ…め………」

走り過ぎで途切れ途切れになる声と共に僕は倒れこみ、後ろの光景を目にする。

ミノタウロスによく似ている魔物…ゲームでは確かロウゴブリンだったろうか。小鬼と呼ぶには大きすぎるその図体を見上げ、ふっと笑う。

どうせ街に行っても身寄りも金銭もない、野垂れ死ぬかここでひっそりと殺されるかの違いだ。…むしろここまでよく頑張ったな、僕。

自分に賞賛の言葉を送り、目を瞑り、その時を待った。

…シャリィン、と耳元で透き通るような音があった。

その後、一瞬の沈黙。

気付けば頬を撫でていた生暖かい風はいつの間にか小型のナイフを無数に突き立てられたかのようなチクチクとした緊張感に変わっており、目を開けた瞬間飛び込んできたのは変わり果てたミノタ…ゴブリンと…白髪の少女だった。




「…………無事でしたか?ティスの森で一人で、しかも武器も無しの民間人とは…。

ある意味Sランク級のボスモンスターよりもレアですよ」

ため息混じりにそう言う彼女は僕を一瞥し、続ける。

「怪我はないようですね。驚きました。…ところでどのような要件で小鬼達を引き連れて街へ向かおうと?」

…よく喋るなこの女の子。

「…逃げてたんだよ」

「はい?」

「逃げてたんだ」

「…………ふむ」

何かを考え込むようにその少女は息を吐く。

見た目16歳…高校1年生だろうか。

この子ももしかして僕と同じようにアレフコッドに連れてこられた…?

いや、と僕はその考えを捨てる。

どう見てもあの子は馴染み過ぎている。

生まれも育ちもこの世界だということで間違いは無いだろう。

「分かりました。」

不意に少女がこちらを向く。

透き通るような青い目がとても印象的だ。

「ティスの森で人間と出会うなどほとんど無い事例で少し混乱はしましたが…貴方は周辺の村の住民でしょう?折角ですし送り届けますよ」

「え…で、でも…」

「なんですか?遠慮はいりませんよ」

僕に住んでいた村など存在しない。

近くの村へ送り届けてもらっても衛兵や住民達に怪しまれることはほぼ確実。

…はっきり言って詰んでる。

「…こ、この森に探し物があるんだ!」

…我ながら迷案過ぎる。

「さ、探し物?」

「あぁ、あまり言いたくないからきかないでくれ。ただこの森からまだ出るわけには…」

苦し過ぎる言い訳、流石にこんなもので騙されるような人間がいるわけ………

「だ、大丈夫ですか!?それはそれは…私も実はこの森にまだ用があって帰るわけには行かず…」

あった。




(表面上)目的が重なった僕らはそんなこんなで共に行動することに。

少女は腰に短刀と長刀を1本ずつ、まるで剣道の二刀流のように使う。

護身用に、と僕にも同じような短刀を渡してくれたのだが正直普通に生きててそんなものを使うことなど無かったので身がすくんでしまう。

「探し物、とやらについて詮索はしませんし私の予定に付き合わせるつもりもありませんが…しかし共に行動していた方が何かと安全です。」

と言われたので僕は大人しく彼女へ付き従っている。

方角がわからない故に時間の判断すらできないが徐々に心なしか暗くなっているから夜が近いのでは無いだろうか。

そうなると確か出現モンスターのレベルもそれなりに上がってくるので帰り道が心配だ____________________



そこで僕の意識は途絶えた。

唐突の終わりでしたが近いうちに出す3話に繋がります。まだしばらくお付き合いください。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ