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ゼニストの思い出

 日が高い時間であるにも関わらず、その廃墟は光を遮断しているかの様に暗く静かにゼニストの前にたたずんでいた。数十年の月日が流れているというのにその一角だけ時が止まっているかに思えた、そして何よりそれは彼の回想をあたかも昨日あった出来事かの様に無情なほど鮮明に、頭の中で何度も繰り返し、再演させるのであった。

 ゼニストを呼ぶ男の声が彼の追憶の邪魔をした、いや、助けられたのかも知れない。ゼニストは己が過去の重圧に耐えられるか分からなくなった。ほんの少し前までは自信があった、過去の出来事として自らの糧にしていこう、昔の自分とは違う、過去の因縁とも向き合える、と至って前向きな思考であった、しかしいざ幽隠の廃墟を前にした途端、頭が真っ白になり、無意識に繰り返し上演される過去の記憶に神経と自尊心が削られていくのであった。ゼニストは目を瞑り大きく静かに深呼吸をすると、目を開き彼の前にたたずむ彼の過去の中へと歩みを進めた。

 巨大な鋼鉄製の門が入り口を閉ざしているかのようだが、正面からではなく角度を変えて見ると人が一人通り抜けられる位の隙間が開いていた。不思議なものだ、壊されるでもなく修繕されるでもなく、それは時代の変化にも影響される事なく佇んでいるのだ。ふと扉の色合いと歪んだ形が天地が逆転しているトリックアートでも見ている様な不思議な感じがした。


 第一層は広けた空間であり、中の様子は若干ではあるが変化が見られた、壁中にある落書きはさすがに昔のままではない、数十回にもわたり上書きされてきたのであろう、色々な絵や文字が混ざり合ってこれはこれで抽象絵画的な面持を出しているかのようであった。さらに、火を消した跡があり、それを中心に手頃な岩や屑鉄などが椅子替わりに置かれている所も、昔となんら変わりない。ゼニストが懐かしさに気を取られて足元を見ていなかったせいか、空き瓶を蹴飛ばしてしまった、その音にゼニストと一緒にいた男は飛び上がる程驚いた、こんなにも気の小さい男が子供を救おうというのだからなかなか見上げたものだ、ゼニストは微笑みながら蹴飛ばした空き瓶に目をやった。ヴォッカの空き瓶だ…すると過去の情景が映画でも見ているかのように鮮明に浮かび上がってきた。


 …思い出された場面は焚火を囲う二人の少年である。ゼニストはそれが彼が何歳の時かは覚えていない、恐らく彼が十歳位の時だったはずだ、暖かく、居心地の良かった時である事は確かだ。彼の親友で兄の様な存在であったラズの幼年の顔も鮮明に覚えている。

「おい、ケヴィン、見ろよこれ」

「わぁ!ラズ、なんだいこれお酒かい?」

「ああ、ヴォッカっていうんだ、バーの親父がとろいから一本ちょろまかしてきたぜ」

「すげぇな、でもそれおいしいのかい?」

「お子様ケヴィンにはまだ早いさ」

「そんな事ないやい、僕だってお酒位飲めるやい!」

もちろん年端もいかなかった少年がヴォッカを飲める訳もない、あの喉の焼ける痛みが今起こったかの様に思い出された、幼いころの彼だけではなく、それを見て大笑いしていたラズもやはり喉を焼かれむせ返っていた、そしてその後二人の少年は腹を抱えながら大笑いしていたのだ…

 ゼニストは微笑みながら空き瓶を立て直すと周りをもう一度見渡した後に階段へ足を運んだ。


 第二層は小部屋がいくつかあるだけの階だ、幾つかある小部屋はどれも日当たりが悪い様で陰険な雰囲気を醸し出していた。男は子供が部屋に隠れていないかを丹念に調べている、ゼニストもその手伝いをする様に若干明るめの扉の無い小部屋の一つを覗いてみた。そこにあったのは煙草の消し炭と割れ散らかったガラスの破片ばかりであった。特に何もないので部屋から出ようとしたら壁に書かれた文字にゼニストは昔を思い出した。壁には『野望はでっかく!』と書いてあった。


 …あの頃のケヴィンとラズは近隣の町にも名前が知られる程のストリートギャングであった、彼が十四でラズは十六位の時だ、所属していたギャング自体はそれほど大きい訳でも危険な訳でも無かったが、ラズとケヴィンの名は完全に別扱いであった。その頃の彼らは恐喝、窃盗、空き巣、暴行、強盗、放火、なんでもありだった。思い出したのはそんな無茶苦茶をやっているある日、些細な事がきっかけでギャング同士の抗争に発展した時の事である、対立組織がマフィアの助けを求めて、ラズとケヴィン側が相当不利になった時にラズとケヴィンはこんな話をした。

「ケヴィン、俺は負けるのが嫌いだ」

「ああ、知ってるよ、お前が負けず嫌いなのは」

「だが、このままじゃ俺等が負ける、ただ負けるんじゃない、自分達じゃ何も出来ない、あの負け犬共に、あの屑共に負けるんだ!俺は嫌だ!」

「けど、相手が悪いだろ、マフィア相手じゃ下手出来ないぜ」

「だからこっちも使うんだよ」

「何を?」

「マフィアを」

「はぁ?」

「考えてもみろよ、どうせこんなちんけな組織じゃ高みにいけないだろ?ならよ、高みが望める組織に入りゃいいじゃねえか、違うか?」

「そうだろうけどよ、俺らみたいなチンピラを雇うマフィアなんてあんのか?」

「馬鹿、雇ってもらうんじゃねえ、雇わせるんだよ」

「どうやって?」

「俺に考えがあるんだ、まぁ聞けよ、どうせならよ、夢は大きくいこうぜ」

ラズの計画した案は常軌を逸していた、当時シカゴの中でも一二を争う程の強大なマフィアの幹部に直に頼みに行くというものであった、さらに手ぶらでは面白みがないという事で、そのマフィアの敵対関係にある組織の幹部を人質にして手土産にするというのだ。常人ならまず考えない、考えても実行するほど蛮勇な者などいない。しかし、この二人、やり遂げてしまったのである。ラズが綿密に計画を立てて、ケヴィンが誘拐を実行した。一番驚いた人物は手土産を渡された幹部の男であるだろう、どこぞの不良が彼の大手柄を運んできてくれたのだ、こんなに笑える事は無かったであろう、もちろんラズの要求も即座に認められたのであった…

 ゼニストは壁の字を見ながら切ない気持ちに浸っていた、あの時もしラズを引き留める事が出来ていたら、もし彼と一緒に光のある方へ進む事が出来ていたならば…後悔と哀愁で彼の胸中を一杯にしながら、彼はその部屋を後にした。


 第三層はスクラップや木材が乱雑に散らばっておりバリケードが幾つも張り巡らされているかの様な荒々しく険難な場所であった。男は再び子供が隠れそうな場所を探しにいった、ゼニストは引き寄せられる様に、自然に出来た人工物の防護柵をかいくぐりある部屋の前に来た、彼の様子は明らかに変わっていた、彼の呼吸は不規則になり、顔からは血の気が引いていた。その扉は真っ赤に錆ついていて開くかどうかも疑わしかった、というより、開いて欲しくなかった。彼はここまでくる間に色々な事を思い出しながら来た、脳もこの作業が慣れてきた所なのか、以前よりも記憶が鮮明に蘇ってくる。そして奇しくも、この扉は彼がもっとも開きたくない扉の一つである事は彼が一番よく知っていた。いっその事開けずにおこうか、とも思った、しかしそれは彼自身が許さなかった。ゼニストは錆ついたドアノブに手をかけ、ゆっくりと回し、扉を開けた、ギィギィっと嫌な音を立てながら扉がゆっくりと開き始めた、錆の臭いか何かが鼻を衝く、彼の心臓の音が口から洩れると思える程高鳴っている、扉が開いてとうとう中が見えた。

 椅子がポツリと何もない部屋に置いてある。椅子に頭が割れた男が座っている。頭が割れた男が笑っている、彼を見ながらケタケタ狂った様に笑っている。

 次の瞬間、ゼニストは激しい眩暈と吐き気に襲われた、予想はしていた、しかしこんなにはっきりと幻覚が見えるとは思いもしなかった。もちろん彼はこの幻覚で見えた男の事を知っている、そして何故男がゼニストを見ながら笑い狂っているのかも理解していた、相当恨めしかったのだろう、気が狂う程に恨めしかったに違いない。ゼニストはあの日を思い出しながらも落ち着きを取り戻そうとしていた。


 …ラズとケヴィンがマフィアに与してから二年もしないうちに組織は飛躍的に勢力を拡大した、主な理由はラズの奇抜なアイディアで組織の収入源が増えた事と狂犬の様に恐れを知らないケヴィンが中立地帯を無理やり傘下に組み込んでいったからである。ここまでくると彼らを二十歳にも満たない子供と笑う者は誰一人としていなかった。ラズは名前ばかりの幹部ではなく、名実ともに組織を担う重要な位置にまで登りあがっていた、もちろんそれを支えたのがケヴィンである。ラズの成功を羨む者や敵対組織からの攻撃を身を挺して守ってきたのがケヴィンである。それこそ二人で一人という言葉がしっくりくる名コンビであった。そんなある日、ラズはある暴挙に出た、組織内のライバルに位置する幹部を誘拐し、この部屋に監禁したのである。

「ラズ!てめぇこんな事してただですむと思うなよ!」椅子に縛られた男が叫んでる

「さあ、俺がどうなるかは分からないけど、あんたがどうなるかは分かるぜ」ラズの声が聞こえる

「そんな三流の脅しが俺に効くかよ、てめぇみたいなガキとは違うんだよ!俺になんかあってみろ、てめぇの企みなんかすぐにばれるんだよ!」男が怒鳴り散らしてる

「その事なんだけどさ、うちの商品の薬が大量になくなったの知ってる?」

「あ?何言ってんだてめぇ?」

「まぁ、聞けよ、無くなったのは昨日の夜だから、誰も知らないはずなんだよ、で、それらはどこにあると思う?」

「てめぇ!薬まで盗んだのか!」男の声が響くな、周りは誰もいないけど

「そう思うよな、でもよ、その薬が、なんと!お前の車の中からゾフィアーノ一家の死体と一緒に見つかっちまうんだよ」

「は?何を…」声が弱くなった

「分かるか?無い頭捻って考えてみろよ、お前は一家を裏切ってゾフィアーノの連中に薬を売りつけようとしたら罠にはまって連中に殺されてしまったんだよ」

「そんな話誰が信じるか!」声は大きいけど震えてるな

「馬鹿だな、だからお前の車とゾフィアーノの奴を俺等が捕まえて吐かせた、っていう話にするんだよ」

「そんな、馬鹿な話…」また弱々しくなった

「おい!入ってこい」ラズが俺を呼んだ

扉を開けるとラズが俺を見た、『なんだ、お前もやっぱり怖いんだ、よかった怖がってるのが俺だけじゃなくて、お前の声は自信たっぷりだったからてっきり怖くないんだと思っちまったよ。さっきまで笑ってた男が俺を見てから凍ってる、そうか、俺を見てじゃないんだ、この斧を見て凍ってるんだ、殺される瞬間っていうのはどんな風に感じるんだろうな、俺は初めて人を殺す今、凄く怖い、何かが崩れていくかも知れないっていう怖さだ…でもやっぱり殺される奴のほうが怖いんだろうな。』

ラズが軽く俺の肩に手を乗せた、と思うと強く肩を握ってうなずいた。『男が震えながら何か喋ってる、何を言ってるんだろう?涙の流れる目で俺を見て何かを言っている、だめだ、何も考えるな、ただ斧を振り上げて、力一杯振り下ろすだけを考えよう…』振り上げて、振り下ろす!

形容しがたい実に不快な手ごたえと音がケヴィンの精神を襲い恐怖で手が震えだした、その恐怖を振り払うかのように何度も何度も斧でその恐怖のもとを断ち切ろうと繰り返し繰り返し斧を振り下ろした、ラズが彼を止めるまで無我夢中でその作業を繰り返した。ケヴィンの目は何かに憑りつかれた様に、男の変わり果てた顔へと向けられた、そしてその顔はケヴィンを見ながらケタケタ笑っていた。その瞬間ケヴィンは吐き気を催し部屋から逃げ出す様に出ていった…

 ゼニストは彼が初めて人を殺した時の事をここまで鮮明に思い出した事は無かった、恐らく精神を守る為に出来るだけ考えない様に一種の防壁がかかっていたのであろう、もちろんこの殺人を忘れた事などない、しかし初めの殺人も他の数度に渡る殺人の数の一つになっていた。精神的に苦しめられたのは初めの殺人だけである、その他は特に苦しめらる事は無かった、不思議なものだ、もっとも覚えていなくてはならない事が記憶の奥底で出来るだけ考えない様になっていたのだ。ゼニストは何もない部屋の中に入ると、椅子のあった場所まで来て片膝をついて頭を下げた。彼が部屋を出る時に振り返って見てもやはり何もないただの部屋があるだけであった。


 とうとう第四層に来た、吸い込まれるようにゼニストは大きな部屋に入っていった、そこは木箱の破片が荒々しく散らばっているだけで、その他にはなんの変哲もない部屋であった。しかしゼニストにはその部屋が全ての始まりであり、ケヴィンにとっては全てが終わった場所であった。彼はとうとうここに来た、ゼニストは再びあの日の事を思い出してしまった。

 あの日、ケヴィンはラズに呼び出されてここに来た、木箱が積み上げられた部屋にラズは落ち着いている振りをして彼を待っていた、しかしケヴィンにはラズの事ならなんでも分かっている、いや、ラズもケヴィンの事ならなんでも分かっていたはずなので、落ち着く振りの意味の無さも理解していたはずだ。しかも、その日のラズはいつもの自信に溢れた彼と違い下向きにぼそぼそと小さな声で喋るのでケヴィンは親友の心配をした、そんな些細な感情すら思い出される…

「どうしたラズ、元気ないな?」

「あぁ、まずい事になった…」

あんなに弱々しいラズの声など聞いた事が無かった、それに驚いて声が出なかった。

「あの件がな、ばれそうなんだ…」

ケヴィンは冷や汗が出てきた、あの件という事だけですぐに分かった、あの幹部殺害の件だ、それ以外に一家に対してやましい事などない。

「なんでだよ!みんな今まで信じてたじゃないか!」

「ずっと疑っていたらしい、だから信じた振りをしながら調べていたらしいんだ…」

体中を冷や汗でびっしょりにしながらケヴィンは崩れ落ちそうになりながらラズに聞いた

「どうすんだよ、何か考えがあるんだろ?」

「ああ…」

か細い声を漏らした瞬間のラズの顔を一生忘れる事は出来ないだろう、あの普段は気丈で自信溢れるラズが、顔からは血の気が引き、口元を今にも泣きそうなくらい震わせて、後悔と罪悪感に苛まれながらも、涙をたっぷり浮かべる目には強い意志がある、そんな複雑な顔だった。

「どうす…」全てを喋る前にケヴィンは激しい耳鳴りと体から力が抜ける感覚がした…

それが銃声であった事と自分が撃たれた事を理解する時間は無かった、周りの木箱が崩れ落ち、銃を持った三人の男達がケヴィンに向けて発砲してきた。自己防衛がかかったケヴィンの動きは人のそれでは無かった、即座に彼からもっとも近くにいた男へ野獣の如く飛びかかると同時に喉を掴みそのまま喉元を引き千切ると、銃を奪い後方に構えた男に銃を乱射しながら飛び退いた、この間に数発撃たれているが痛みなど一切覚えていない、二人目を倒すと最後の男に飛びかかり押し倒すと全力で相手の顔の形が変わるまで殴り続けた。部屋が静かになると息を荒げながらゆっくり立ち上がり、銃で撃たれた場所を手で覆いながら敵の全滅を確認した。

『一人…二人…三人…よし…全員倒した…』

”パンッ”という一発の銃声が彼の耳に入った、それと同時に彼は床に崩れ落ちて、薄れていく意識の中で

『あぁ、そうだ、敵は…四人だったんだよな…お前を数えてなかったよ…お前を敵としてなんか数えらるかよ…』

そして彼は意識を失った。


 その瞬間、男の声と少女の叫び声がゼニストを現実に連れ戻した、急いで部屋を出ると隣の部屋に泣きながらうずくまっている七歳位の女の子とその子をかばう様に座り込んでいる男がいた、男の腕からは血が流れている。

「あいつ狂ってる!俺の腕に噛みつきやがった!しかも…」

そこまで言うと男の目は部屋の中心へ向けられた、そこには蠢くなにかがいた、座り込んで何かをしているようだ、その何かの周りは一面真っ赤である、ゼニストは男に少女を連れて部屋を出る事を促すと、その何かに近づいた。それは何かを食べている様だった、そのなにかはゼニストに気がついたらしくゆっくり振り返った。真っ赤に染まった顔だが紛れもなく人間の男であった、ゼニストはさらに近いた、その瞬間男はゼニストに飛びかかった、間一髪で避けるとゼニストは両手を挙げ戦う意思が無い事を表わした、その時である、ふと足元を見るとこの男が食べていたものに目がついた…それは子供だった、ゼニストは叫び声をあげながら飛びのいた。激しい嫌悪と吐き気に襲われたゼニストはよろめきながら目の前のおぞましい光景を茫然と眺めるしか出来なかった、そんな放心状態のゼニストに狂人は飛びつき噛みついた、腕の肉を噛み千切られながらもゼニストは反対の腕で殴り返した、この狂人にダメージは無いようであった、悪夢を見ているかの状況で何かが狂人の頭を強打した、先ほど少女と避難した男が鉄パイプを持って戻ってきて殴り倒したのである、その後その男は鉄パイプで何度も倒れた狂人の頭を殴打した、それこそ狂気が彼に乗り移ったかのように繰り返し繰り返し殴り続けた、ゼニストは彼に自分自身を投影したかのような妙な感覚を覚えた、その後動かなくなった体をいまだに殴り続けている男の肩をゼニストが軽く手を添えると男は泣きながらその場に崩れ落ちた。

「人を殺しちまった…」と弱々しい声で男は呟いた。

それを聞くとゼニストは男の立ち上がるのに手を貸し、歩く事もままならない男に肩を貸しながらその部屋を後にした。

 その後ゼニストは少女と男を連れて病院へ向かった、意外な事に病院内は似た様な怪我人で溢れかえっていた、それだからかも知れないが、流れ作業の荒治療であったが存外早く治療を受ける事が出来た、彼は腕の他特に問題は無かったが、男は精神的にも肉体的にも相当参っていたし、熱もあるという事で入院する事になった。少女は相当のショックを受けたらしく、あれ以来喋るどころか食べる事も水を飲む事もしないので落ち着くまでは病院が面倒を見る事になった。長い一日が終わり、ようやくゼニストが部屋へ戻ったのはすっかり日も沈んだ頃になってしまっていた。

何かを食べようかとも思ったが食欲もない、なによりも疲れていたのでそのまま眠る事にした。


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