嫌悪deプロローグ
「なんて嫌な女だ。」
生意気そうにガムを噛む目の前の存在に対して、私はハッキリとそう言い放った。
好き勝手に伸びた髪の毛に無理矢理カールをつけた頭は、傷んだ部分が浮いて間抜けている。とても醜い。
「まるで、」
言いかけた言葉に眉間に皺を寄せながらも、何も言わないでいる。私は、彼女に腹が立って仕方がなかった。
血色の悪さを隠すように重ねたリップ。アイホール全体を覆い光るシャドウ。少しハネ気味のアイラインに、火照りを演出させるプラムチーク。目に映るそれら全ては、さらに私を嫌悪させる。
ガムを飲み込んで、彼女は笑った。
「「自分自身を全て見せることが正しいなんて誰が言ったの?」」
まるで、何かに勝ち誇ったように。
「「 偽り と 嘘 は、別物よ。 」」
その言葉を耳にして、私はなんだか空っぽになった。燃え盛る炎が、一滴の水で消された。うまく表現できないが、そんな感じだ。
何も言えずに彼女を見つめる。先ほどの態度が幻であったかのように、お得意の無表情で二つ目のガムを噛んでいた。そこから汲み取れる真理は…。
考えてはみたものの、バカバカしくなって、噛み飽きたガムを飲み込む。
いつだって朝は来る。なんだかとても良い天気だ。
憂鬱さを纏わせて、今日も一日、私の人生が始まる。