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ひきこもり上等だけど、芽生え始めた疑問。

寝室のドアの傍まで兄を見送ると、リチェの額に触れるだけの年相応っぽいキスをして、綺麗な姿勢のまま、上半身だけ振り返り手を振りながら颯爽と去っていく。

後ろ姿迄キラキラしている隙のない兄の姿に、芹花の知識がじわっとしみだしてきて、あの姿勢の良さは体幹を鍛えてるんだろうなと思う。

体幹のしっかりした6歳。

流石お兄様!そこに痺れる憧れる!


「リオ様、ベッドに戻りますか?」

 兄の後ろ姿をいつまでも眺めているリオルーチェのタイミングを見計らって、専属侍女のシェリが、目の前に膝をついて手を伸ばしてきた。


さっきまでピアノを演奏していた器用な手をとって、いつものように首に手を回して抱き上げて貰った。

甘やかされていると思うかもしれないが、3歳の身体では、一人で上り下りできない程の大きさの豪華なベッドなので仕方ない。

しがみ付くと、ミルクの様な少し甘い匂いがするシェリは、10代後半くらいの亜麻色の髪と目をした美少女で、優しいから大好き。


リオルーチェの身体は多分弱い。

ベッドに横になる時、さっきのダンスごっこの後遺症なのか、少し筋肉がきしんだ。

そして、この身体は、すごく睡眠を欲する。

眠るとあったかくなって少しずつ何かが修復されていくようで、……おやすみなさい。



……。

そしてまた、紅い花で繋がれた夢をみる……。


……芹花には丸くなって眠る癖があった。

自我が芽生え、死にたくないと、色々考える様になったころからの癖だ。

「ないぞうはれつ」が怖いから。


新聞の死因で「ないぞうはれつ」がよく出てきたから、辞書をめくった。

だから「ないぞう」と「はれつ」の意味は解った。

でも解らなかったから辞書をくれた母に聞いた。


「どうして車にはねられると、内臓が破裂するの?」

 幼児にありがちななんで?どうして?にこれも含まれるのだろうか?

母は、父が絡まないと割と普通の人だったので、うとまず答えてくれた。


「強い衝撃を受けると内側で破裂するのよ。ほら、お腹の所、骨が無いでしょ?」

 それを聞いた芹花は焦った。

切り傷なら縫えば良いかもしれないけど、破裂したら元通りには戻らない、死んでしまうしかない。

眠っている間に父にお腹を踏まれたら、「ないぞうはれつ」できっと死んでしまうと。

大人でも毎日のように誰か死んでしまうのなら、3歳の芹花などいつ殺されてもおかしくない。

その日から芹花は身体を伸ばして眠る事が出来なくなった。

お腹を守る様に丸くなって、どこがお腹か解らない様に頭まで布団をかぶって眠る様になった。



リオルーチェは、芹花の夢を見ていると気が付いていた。

……私は大丈夫。

どんなことがあっても、お兄様が守ってくれるから。

だから、怖くない。



どのくらい眠ったのか、目が覚めたら、シェリが身支度の準備をしてくれた。

といっても究極の深窓の姫君とでもいうのか、リオはこの部屋から三つ先の部屋を超えて外に出た事が無い。

今日も、きっとそうなのだろう。

いつも通り、顔を洗って、夜着から、昼用のちょっと重いワンピースに着替えるだけだ。


「……?」

 今まで何も疑問に思った事無かったけど、芹花の記憶がちょこちょこ入ってくるようになって、芽生えだした違和感に今一つ気がついてしまった。


お兄様の瞳は美しいエメラルドの緑。

シェリは亜麻色。

お父様は光り輝くサファイアの青。

お母様は金色の瞳。


……では、私は?

忘れているのではない。

知らないのだ。

私は、私の瞳の色も、自分がどんな顔をしているのかも知らない。

鏡を見た事が無いんだわ。


……。

もしかして、ものすごい不細工で、気を使われているのかしら?

そう言えば、侍女もシェリだけで、シェリがお休みの時には、お兄様付きの、クレアとシオンのどちらかが来てくれるだけで、お姫様ってもっと騎士とか従僕とか……。

芹花の読んでた小説の知識が湧きあがってくる。

私の知らない物語やゲームの悪役令嬢になるにも兄様しか年頃のイケメンが居ないわ!


全然不満はないのよ。

結婚とか怖くて無理だし、一生この部屋から出るなって言うのなら願ったりかなったりよ!

むしろ、婚約者とか、結婚が王女の義務とか言われたら号泣待ったなしだわ!

でも何だかおかしくないかしら?

この状況……。


「……できました。」

 考え込んでいる間に、シェリが顔を拭いて、着替えをさせてくれたので、取りあえず朝食代わりのカットフルーツでも食べながら、これまでの事を振り返ってみようと思います。

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