縄文のばぶちゃん
時は縄文時代。
場所は三内丸山。
1人の2才の女の子がいた。
名前は「ばぶ」。
親が馬鹿だった。
生まれたときに「ばぶーばぶー」と泣いたから、「ばぶ」という名前が付いた。
とんでもない親だ。
「ばぶ」という名前は母親が付けた。
母親の名前は「たー」。
父親の名前は「とうと。」
母親が馬鹿だった。
ばぶちゃんは今日もはいはいをしていた。
白い布で出来たおむつをしている。
今日のばぶちゃんは目が輝いていた。
父親は狩りに出掛けていた。
母親は料理に夢中だ。
ばぶちゃんはどんどんはいはいをする。
栗畑まではいはいをした。
ばぶちゃんは言った。
「ばぶー。」
ばぶちゃんは木に寄りかかった。
木がしなった。
木が元に戻った。
「ばぶー。」
ばぶちゃんが叫んだ。
ばぶちゃんは凄い勢いで転がった。
ばぶちゃんはどんどん転がる。
堀を超えて村の外までばぶちゃんは転がった。
ばぶちゃんは言った。
「ばぶー。」
ばぶちゃんの目は輝いていた。
ばぶちゃんはまだはいはいをした。
ばぶちゃんは木の原理を覚えた。
ばぶちゃんはまた木に寄りかかった。
木がしなった。
木が元に戻った。
「ばぶー。」
ばぶちゃんが叫んだ。
ばぶちゃんはまた転がった。
ばぶちゃんは丘を下って転がって行く。
ばぶちゃんは森に転がって行った。
「ばぶー。」
ばぶちゃんは叫んだ。
森には狩人が沢山いた。
猪を狩っていた。
ばぶちゃんの目は輝いていた。
ばぶちゃんは大きな猪を見つけた。
ばぶちゃんは木に寄りかかった。
木がしなった。
木が元に戻った。
「ばぶー。」
ばぶちゃんは叫んだ。
ばぶちゃんは凄い勢いで転がった。
ばぶちゃんは大きな猪にぶつかった。
大きな猪がばぶちゃんに頭突きを食らわせた。
「ばぶー。」
ばぶちゃんは叫んだ。
ばぶちゃんは宙に浮いた。
狩人の中に父親がいた。
「ばぶが飛んでる。」
父親は叫んだ。
「ばぶが落ちる。」
父親は叫んだ。
ばぶちゃんは大きな広葉樹の上に落ちた。
ガサガサ音を立てて落ちてくる。
ばぶちゃんは着地した。
ばぶちゃんは二足で立っていた。
ばぶちゃんは叫んだ。
「ばぶー。」
ばぶちゃんの目は輝いていた。
父親が叫んだ。
「ばぶが立った。ばぶが立った。」
父親は泣いた。
「たーに見せてやりたい。」
父親は言った。
「ばぶ、ばぶ、歩いてごらん。」
父親は言った。
ばぶちゃんの目は輝いていた。
「ばぶー。」
ばぶちゃんは叫んだ。
ばぶちゃんは両足でジャンプしながら父親に近づいてきた。
「ばぶ、それは違うぞ。なんでそんなこと出来るんだ。」
父親は焦った。
ばぶちゃんは言った。
「ばぶー。」
ばぶちゃんのはいはいの応用だった。
ばぶちゃんは少しだけ頭が良かった。
ばぶちゃんは言った。
「ばぶー。」
ばぶちゃんは両足でジャンプしながら捕まえられた猪に近づいた。
「ばぶー。」
ばぶちゃんは叫んだ。
ばぶちゃんは捕まえられた猪に寄りかかった。
「何やってるんだお前。」
父親が叫んだ。
父親はばぶちゃんを引っ張った。
ばぶちゃんは自分から転がった。
「ばぶごろん。」
ばぶちゃんが言った。
「喋った。」
父親が叫んだ。
「ごろんごろん。たー。」
ばぶちゃんは言った。
父親は困った。
「お母さんのところに行きたいのか、ばぶ。」
父親は言った。
ばぶちゃんの目は輝いていた。
ばぶちゃんは立ち上がった。
両足でジャンプしながら村に向かって行った。
「家に帰るんだな、ばぶ。」
父親は泣いていた。
ばぶちゃんは言った。
「ばぶー。」
ばぶちゃんはおならをした。
「ぶー。」
ばぶちゃんは言った。
ばぶちゃんのジャンプの幅が広がった。
ばぶちゃんはおならをした。
「ぶー。」
ばぶちゃんは言った。
ばぶちゃんは家に着いた。
もう夕方だった。
母親の料理は出来上がっていた。
ばぶちゃんは言った。
「たー。」
ばぶちゃんはおならをしながらジャンプした。
母親が振り向いた。
「なんなのよあんた、なんなのよあんた。」
母親は焦って叫んだ。
「この化け物娘。」
そう言って母親はばぶちゃんにいがぐりを投げた。
ばぶちゃんのおなかにいがぐりが当たった。
「ぶー。」
ばぶちゃんは叫んだ。
ばぶちゃんはたくさんうんこをした。
おむつの隙間からうんこが出てくる。
「ぶー。」
ばぶちゃんはおならをしながら叫んだ。
ばぶちゃんは直立不動の仁王立ちだ。
「なんなのよあんた、なんなのよあんた。」
母親はどんどんいがぐりを投げる。
ばぶちゃんのおなかにいがぐりがどんどん当たる。
「ばぶー。」
ばぶちゃんは叫びながらジャンプをした。
家の中にうんこをまきちらすばぶちゃん。
焦る母親。
父親が帰ってきた。
「なんだこりゃあ。」
父親は叫んだ。
「悲しいよ。」
父親は言った。
「ばぶ、やめてくれ。」
父親が言った。
ばぶちゃんがジャンプ運動を止めた。
ばぶちゃんの目は輝いていた。
「とうと。くり。」
ばぶちゃんが言った。
父親は焦って剥いた栗をひとつ渡した。
ばぶちゃんは手でつかんで食べた。
ばぶちゃんは叫んだ。
「ぶー。」
ばぶちゃんは何度もおならをした。
「それはやめろばぶ。」
父親が叫ぶ。
ばぶちゃんのおならは止まらない。
「栗をやるよ。今日のお前の夕飯だ。」
父親はそう言いながら剥いた栗をばぶちゃんにどんどんあげた。
ばぶちゃんはどんどん食べる。
ばぶちゃんの目は輝いていた。
「ばぶー。りょこう。」
ばぶちゃんはそう言いながらジャンプで家を出ていった。
夜だった。
父親と母親は呆然自失だった。
「旅に出るのか、ばぶ。」
父親が言った。
ばぶちゃんは旅に出た。
11年後。
ばぶちゃんが帰ってきた。
素っ裸だった。
ばぶちゃんは言った。
「ばぶー。帰ってきたばぶー。」
父親と母親は泣いた。
ばぶちゃんは言った。
「これは挨拶だばぶー。」
ばぶちゃんはジャンプをしながらまた旅に出た。
その時だった。
村の長老が家の前でばぶちゃんを殴った。
「服ぐらい着ろ、この馬鹿。」
長老は言った。
ばぶちゃんは倒れた。
ばぶちゃんははいはいを始めた。
長老は言った。
「お前は2才からやり直しだ。」
ばぶちゃんは言った。
「やる。」
母親が言った。
「おならが治ったんですよ。」
長老が言った。
「何言ってんだ馬鹿。これ見ろよ。」
父親が言った。
「なんとか普通の子供にしてください。」
長老は言った。
「わかった。これからはずっと託児所だ。」
ばぶちゃんの目は輝いていた。
ばぶちゃんは託児所でしょっちゅうジャンプ歩きをした。
なかなか治らなかった。
言葉も片言だった。
治療には3年かかった。
「治ったぞ。」
長老が家にばぶちゃんを連れてきた。
「私治ったの。」
ばぶちゃんは言った。
「よかった。よかった。」
父親は泣いた。
「何よ、何よ。」
母親は栗を投げまくった。
「やめて。」
ばぶちゃんは言った。
ばぶちゃんの目が輝いてきた。
「ぶー。」
ばぶちゃんは言った。
おならをした。
「これ、まだだな。とんでもない病気だ。」
長老が言った。
ばぶちゃんはまた託児所に連れていかれた。
こんなことがばぶちゃんの一生には何度も繰り返された。
ばぶちゃんはよく「ぶー。」と言っておならをした。
これだけは最後まで治らなかった。
おわり。