悪女(私)なんかの親友で彼女はきっと不幸ですわ。
続編を書きました。読み終わったら感想ください。
天使のような外見、お姫様のような生活、私を溺愛する親。産まれた時から甘やかされ、世界の中心は私だと本気で思っていましたの。
そんな愚かしい 私には葵という名前の親友がいる。大好きで可愛くて、世界で一番愛してる私の親友の話をしよう。
きっかけは、5歳になる私の誕生日だった。
何が欲しい?なんでもあげるよと、言った父と母に私は無邪気にいった。
「友達が欲しいの!」
当時の私は(今もそう)宮之城ということで、下手に近づけれないと親は子供たちを私から避けだしていた。
まだ、媚の売り方も知らない子供がお嬢様を傷つけてしまってはダメだと思ったのでしょう。
それが、凄くスゴく寂しくて、私は自分と同じ位の友達が欲しいと父と母に願った。
「うん、いいよ。由利亜の欲しいものは何でもあげるよ」
「ありがとう!お父様!」
そして、訪れた誕生日パーティーで、葵と出会った。
パーティーでは、華やかさに欠け、少し浮いている女の子と目が合い、こういった。
「こんにちは、私の名前は葵です。友達になってくれませんか?」
この時の喜びは、言葉では表しきれない。
恐れているか、まるで人形のようにしか話さない取り巻き以外の子が、話しかけてくれた。それが物凄く嬉しくて仕方がない。
「あ!!……えと、私のにゃまえは由利亜でしゅわ!!ユリって呼びなしゃい!」
余りの嬉しさに私は噛みまくってしまった。
いや、だって初めて同世代の女の子に話しかけられてしまったんですもの。仕方ないでしょ!?
葵はクスリと笑ってから了承した。
「うん、よろしくね」
こうして、プレゼントとして表れた葵は私の友達になった。
一緒に遊園地にいったり、一緒に泊まったり、一緒に遊んだり、本当に本当に嬉しくて仕方がなかった。
葵は人との距離感が本当に上手くて、器用な女の子でしたの。
私の意見を全肯定しながらも、取り巻きのように過剰に媚びず、話上手で聞き上手、私の親にも気に入られ……
当然のことながら、葵は沢山の友達がいましたわ。
私には、それが堪らなく嫌だった。
だって、葵の友達は私だけですのよ?なんで皆と仲良くするの?
だから、少しだけ意地悪をした。
数多くいる葵の友達の仲で、一番仲のよかったマユという女の家を潰した。
すぐに葵は気がつき、私のところへときた。
「ユリちゃん……マユちゃんをどうしたの?」
「私が潰したんですの……何か問題あります?」
「ふーん……そっか」
それだけでしたわ。
とても仲が良かったのに、本当にどうでもよさげだった。
その当時の私は愚かしくも、喜び、感動していましたの。
あぁ、これが友情なのだと、葵と私は親友で、そんな女のことなんてどうでもよかったのだと。
本当に、愚かしすぎます。
善悪の感覚に欠け、それは友情での許しなのではなく、葵は単に諦めていただけだという事にも気づかない哀れな女の子でしたわ。
その愚かさに気づいたのは、私が中学の時だった。
本当に他愛のないきっかけだったんですの。
私は単に、今日は習い事がないから一緒に帰ろうと思って、葵の教室に行っただけでしたわ。
「葵ちゃんはさ~なんで宮之城さんなんかと一緒にいられんの?」
教室のドアを開ける前に聞こえた、そんな言葉。
会話を聞いてみると、本当に他愛ない会話で、純粋な興味といった感じだ。
「だってさ~宮之城さんて、超我が儘で超キレるじゃん?なんで葵ちゃんはさ、一緒にいられるの?」
なんて失礼な女!そんなの、葵と私は友達だからに決まってるでしょ!
不躾なその女に、私は怒りをもった。
その女の家を潰してやろうとさえ思う程だったが…
「私は宮之城のお嬢様の……プレゼントだから」
一瞬、世界が崩壊した。
今、葵はなんて言ったのだろうか?どうか、聞き間違いであってほしい。
「親に、絶対に逆らうな。けれど、単なる取り巻きにはなるな……って言われ続けて……うん、ユリの親にもそう言われて……」
もう、限界だった。
私は気づかれないように、自分の車に乗って、家に帰った。
いつもと変わらないように、必死で笑顔を張り付け、自分の部屋のベッドに寝転がり……
「うぅ……グスっ……ヒック……」
声を殺して泣いた。
怒りなんかより、悲しみが多かった。そして、悔しさが多かった。葵に対してじゃない。私に対して。
何もかも許されてると思った、世界の中心は私だと思っていた。愚かしすぎる私に対しての悔しさと怒りが出てくる。
結局、その日の涙は誰にもいうことはなかった。
「葵は、本当に私が好きですの?」
「世界で一番好きだよ。親友だと思ってる」
そんなことをスラスラいえる彼女は、嘘をついてるように見えませんでしたわ。
「私と一緒にいて楽しいの?」
「楽しいよ」
「私と一緒にいて嬉しいですの?」
「嬉しすぎるよ」
でも、絶対にその言葉は嘘ですの。
私なんかといて、楽しい筈がないですし、嬉しいはずかないですし、幸せなはずなんてないですもの。
可愛くて、世渡り上手で聞き手上手で話し上手で、私なんか居なければ、私がこんなにも独占欲が強くなければ皆の人気者で輪の中心のあの子が……
私みたいな外見だけの我が儘女、本当は嫌に決まってますわ。
この関係は葵が器用だから、成り立っている。
その事実に気がついた時には、葵への依存と独占欲が取り返しのつかないことになってた。
高校に入ってから私は、逆ハーレム作ったり、イジメをした。思えば、葵から離れたかったのでしょう。解放してあげたかったのでしょう。
えぇ、えぇ、結局私は葵から離れることなんて出来ませんでしたわよ。葵もうんざりしたでしょうね、こんな私が離れてくれなくて。
でも、美しい男たちに愛され、ストレス発散でイジメをしていた私は、心に余裕を持てた為か、葵への異常なまでの独占欲は薄れることは出来ましたの。
まぁ結局、私の行動には罰が下されましたけれどね。
「イジメはよくないことだよ!」
ある日突然、転校生の女の子がそういって私の行動を咎めていましたわ。その行為は正義そのもの。
洗脳はよくないことだと、素晴らしい正論で私が作ったハーレムを壊してくれやがりましたわ。
結果、私は孤立しましたわよ。
取り巻きは離れていきましたし、ハーレム要員も洗脳が溶けてしまいましたもの。
でも、葵は私の傍を離れませんでしたわ。
今度こそ見限られると思ったのに、葵はどうでもいいと一蹴にしたのですの。
まぁ、そんな感じで私は孤立しながらも、葵と一緒ならそれでもいいと思ったのだけれど……
「宮之城さん、皆に謝って!!」
いきなり転校生の真理亜さんが、私のところに来てそういい放ちました。
宮之城ということで、処分を受けてない私は不当だと、ならばせめて皆に謝れと、そういいましたの。
気がつけば360度、人に囲まれ、謝れ謝れの大合唱。
転校生は真のハッピーエンドだのなんだの訳の分からないことを言ってるのが気になりますけど……
あぁ、こんなにも私は人に恨まれることをしたのですわね……
それを、スゴく理解しましたわ。
葵の姿は、人間の壁で見えない。葵、葵、葵はどこにいるのでしょう?あぁ、葵が見えない…お願いよ……
「助けて……葵…」
もう本当に愚かしすぎる。こんな時にさえ、葵に助けを呼ぶだなんて……
掠れすぎて、息にも聞こえる誰にも聞こえない声を私は無意識に出していた。
「助けてよ……葵…!」
そう呟いたその瞬間、イスが飛んできた。
「テェメェエエラァァアア!!!私の親友に何してんだボォォケェエエ!!!」
見れば、葵の姿があった。
殺気だち、人を殺しそうな程キレている葵。
人間の壁をぶち壊し、私を背に星条さんを睨み付けている。
アレは……葵なの?
「うっ……何って、皆に悪いことをしたから謝りなさいって…!!」
いきなりキレた葵の剣幕に星条さんは立ちすくむが、正しいのは自分だとばかりに胸をはった。
「それに、葵ちゃんだってうんざりしてたんじゃないの?宮之城さんの会社が親の傘下だから一緒にいただけでしょ?」
グサリと、私の心を深く抉る言葉。
そう、葵は元々は私の誕生日プレゼントとして表れた女の子。
「嫌なことだって会ったでしょ?本当は最低な子だって気づいてたでしょ?」
知ってますわよ。私が最低なくらい、葵だって気づいてますわよ。けれど、でも、改めて言われると苦しいですわ。
自覚してても、私は確認してしまう。
「そう……なの?」
弱々しく、放った私の言葉を聞いた葵は目に涙を浮かばせて……
ブチッ…
キレた。
「そうだよ!ユリは最低だよ!!金持ちのお嬢様で見た目が可愛いからって甘やかされて育てられて!世界の中心は自分だと本気で信じる程にバカだったし!独占欲で私の彼氏や友達は取るし!その癖自分は逆ハーレム作るし!本当に最低最悪な女だよ!!最初に会ったのだって、ほぼ打算的に親に仕組まれただけだわ!!
で、それがどうした!?」
私の醜い部分、嫌な部分を理解し、知っていながら、それがどうしたという葵。
星条さんはそれに苛立ったのか、激昂した。
「それがって……だから!!葵ちゃんも嫌だったんでしょ!?不幸だったんでしょ!?それに、宮之城さんは悪いことしたんだから謝るべきなんだよ!!なんで助けようとするの!?」
「確かにユリは悪女だと思うよ。謝ってすむなら謝るべきだよ。けどさ、こんなの正義じゃねーよ、正論じゃないよ。私からしたら、親友を泣かそうとする悪だ。
ユリが助けを求めてるんだから、助けるよ私は」
そう吐き捨て後、葵は私を立ち上げさせ、腰の抜けている私をお姫様抱っこして教室を出ていきましたわ。
「もう大丈夫だよ」
葵は、裏庭のベンチに私を座らせた。
落ち着き、冷静になった私はポロポロと涙が溢れてしまっている。
本当に、私は悪いことをしたんですのね。あんなに恨まれてたんですのね…あぁ、私は悪女ですわ……
「葵、アナタは……私なんかといて、本当に不幸じゃなかった?」
涙を拭って、私は葵にきく。
だって、こんなことをさせてしまったんですもの。後悔しているのかもしれませんから……
でも、葵はキョトンとしたあと、笑顔でいった。なんの迷いもなく、何の後悔もなく、スッパリといったのだ。
「私はユリの親友で、めちゃくちゃ幸せだよ」
「本当の本当にですの?」
「うん、本当だよ」
そして、彼女は話だした。
「私ね、最初は父の命令で宮之城の娘と友達になれって言われたんだ。純粋な友情と不純な命令でこっちも悩んでた。
これは本当に友情なのかな?って、単に父に虐待レベルで命令されたからなのかな?って……実際に、ユリの悪いところは殆ど理解してた」
けれど、と彼女は続ける。
「でも、それでもやっぱり、ユリがどんなに悪女といわれても、どんなに悪だと言われても……私はユリの親友で幸せなんだ」
その言葉を聞いた私は涙腺が崩壊した。
「ごめんなざぁぁいい!!ごべぇんなざいぃ!うぇぇええん!我儘でごめんなさい!迷惑ばかりかけてごめんなざい!ごめんさい……ごめんなさい…」
ずっと言いたかった言葉。ずっと謝りたかった言葉。
謝ったことなんて無かった、謝り方なんて分からなかった。
気かつけば葵も涙を流していた。
私の体を抱き寄せ、背中に手を回し、ポンポンと叩いて、また泣いてる。
私たちは、長年の色々な隔たりや誤解や思いを溶かすかのように、ずっとずっと、泣いていた。