挨拶周り その5
「新聞ならいりません」
「新聞屋さんじゃありません」
というか同じ所に住んでいるのだからインターフォンにモニターがついていることくらい知ってるんだけど。
わざと言ってることくらい知ってるんだぞという思いを込めて睨み付けると含み笑いの大屋さんが出てきた。
「あー。ごめんごめん。見間違えたてへぺろ」
棒読みな上に語尾がうざいよ。
「というかさっきの隣の部屋との会話マジウケたんですけど」
心を込めてギャル男くんって言ってやろうか・・・・・・。
「聞こえてたなら止めてくださいよ。ていうか聞こえたんですか!?」
うっわ。恥ずかしい。
「うん。このアパート壁薄いからさー。彼氏とか連れ込んじゃダメだよ?」
「連れ込みませんよ」
「またまたー。そんなこと言って彼氏いるんでしょ??」
「いませんよ」
こんなに人のプライベートに踏み込んでくる大屋さん嫌だ。早く家に帰りたいわー。
「ふーん。まぁまぁ。怒らせたお詫びにコーヒーでもご馳走するからさ。部屋に入っていいよ」
家に帰りたい。帰らせてくれ。お願いだ。
10分くらい押し問答して負けた私は大屋さんの部屋に入ることになった。あぁ。
うん。おかしいな。私の部屋も柊さんの部屋もワンルームと言うのに正しいと言える部屋だったのに大屋さんの部屋だけ部屋の広さは半分なんだけどなぜか部屋がもう一つあるぞ。
入って左側にはテレビ。真ん中にテーブル。右側にソファー。正面は壁とドア。
白黒で落ち着いた感じになってる。うん。部屋狭いけど。
ソファーの幅しか部屋がない。びっくり。
「奥に何があるか気になる??」
本格的なコーヒー(挽くところは手伝わされた)はいい匂いがするなぁ。
「彼女とかじゃないんですから聞きませんよ」
「えー。そんな聞いてよ」
この人面倒臭い。
「じゃーん」
わざわざドアを開けて見せてくれた部屋の中は段ボールだらけだった。
謎い。面倒い。
「中身は漫画だったり小説だったりゲームソフトだったりとまぁオタクルームなわけなのだよ」
漫画と小説の割合が分かんないけどこれ床抜けないか心配になる量だよ。
「引いた?ねぇ引いた?」
なんでそんなにか弱い乙女みたいに言うんですか。
「引きませんよ。うちは兄、姉二人ともオタクなんです。だから別に―」
「そっかー。良かった!僕嬉しい」
もう帰っていいかな。
その日、私が家に帰える事が出来たのは日が暮れてからだった。
こんな文章になったのも、大屋さんがこんなキャラになっちゃったのもすべて大屋さんが悪い。