もしもUMAが部屋にいたら パート1
もしもUMAが部屋にいたら。 パート1
まず、この匂いだ。
異臭。
この場所にふさわしくない、湿気交じりの、土臭い匂いが鼻をつく。
そう……、かすかだが、強い匂い。
ヤツの体自体は、それほど大きくないのかもしれない。或いは、この部屋に侵入して、まだそれほど時間が経っていないのか……。
生き物が物陰に隠れるのは、自分の身を守るためか、或いは……。
或いは獲物を捕食するため。
「どうすればいい?」
まず、今一番考えなければならないこと――、それはこの足。
ジーンズから無防備にさらしているこの素足。もし、ヤツがこのベッドの下に潜んでいるとした場合。
「その場合は……」
早く足をベッドの上に上げるんだ!
畜生……、動かない。動かないよー!
畜生……怖い。怖いよー!
「落ち着け、落ち着くんだ!」
そう、相手に隙を与えないように、足を上げようとするから、動かないんだ。
ヒザを伸ばすようにすれば……。
「動く……、動くぞ、こっ、これなら」
シューーーーッ!
次の瞬間、まるでヘビが細くて長い舌を覗かせながら相手を威嚇するような音が足元から聞こえた。
「ぐわぁっ!」
悲鳴を上げるつもりはなかったが、思わず口から漏れた声は、口からでたというよりかは、肺からもれたという感じだった。
間一髪。
ボクは両足をまっすぐ伸ばし、時計と反対周りに腰を回転させて、どうにか素足を「ヤツ」から救い出した。
「畜生!スリッパを履いて来るんだった!」
だがボクのおかれている状況は、まるで改善されていない。
なぜなら……。
『ヤツ』はまだ、ボクの真下に潜んで、いるのだから……。
おわり……、或いはつづく
前後の設定は語らずに、シチュエーションだけで登場人物の心理状態だけにスポットを当てる試みです。UMAについては僕の憧れですから、今後もぜひ書いていきたいです。