夫をドラゴンに殺された友人と、夫をカンガルーに殺された私
私にはとても仲の良い寡婦の友人がいる
私も彼女も共に夫を亡くした寡婦だ。
私達の亡くなった夫同士も、とても仲が良かった。
なので私達は家族ぐるみの付き合い。
夫達が亡くなった今でもそれは変わらない
私達の夫は同じ日に亡くなった。
ある時、凶悪なドラゴンが街の側までやってきた。
夫達は街の住民と共にドラゴン退治。
「退治は無理でも、追い払ってみせる」
と意気揚々で出発した。
人間達とドラゴン。
小競り合いの末にドラゴンは去っていた。
その過程で少数の死者が出た。
友人の夫はドラゴンと戦い殺される。
友人の夫の死は悲しまれ、労られた。
私の夫も死んだそうな。
私の夫はドラゴンとの戦闘開始前に死んだと聞かされた。
空飛ぶドラゴンと人間達の戦いに驚いたカンガルーが興奮して暴走。
私の夫は暴走したカンガルーと戦った。
私の夫はカンガルーとの戦闘で亡くなったと聞かされた。
夫の死体は帰ってこなかった。
夫や他の死者の死体をくわえて、ドラゴンは満足して去っていたそうだ。
夫達の死体はドラゴンに食べられるのだろう
そのおかげで町にドラゴンは来なかった。
一応、形の上では私の夫にもドラゴンとの戦闘で亡くなった名誉の戦死が適用された。
が……
なんだろう?
私の夫。
ドラゴンに驚いたカンガルーと戦って戦死ってなんだろう?
なんじゃそりゃ?
夫らしいと言うか……
良くミスをする間の抜けた夫だった。
私ですら夫の死亡に哀しみつつ、死因には笑いそうになる。
夫のお葬式をした。
死体も遺骨も無いお葬式。
隣の家も同じ日にお葬式をしている。
私の夫と同じく、死体はドラゴンがくわえていって無い、お葬式。
ドラゴンに殺された隣の夫の葬式には沢山の人が訪れていた。
私の夫のお葬式には、殆ど人がいない。
私の夫は以前からアホすぎて親族からもハブられていたが……
まさか葬式にも来ないほど親族から嫌われていたとは思わなかった。
ほんの僅かな弔問客も、悲しむよりも笑っていた。
「アイツらしい」
ってさ。
死因が死因だし、しょうがない。
それに夫の知人になる様な人は変わり者の人達だ。
弔い方法も独特でも仕方が無い。
変わり者の夫。
その知人に常識を望んではいけない。
それでも
「誰か私の夫の死を、
悲しんではくれませんか?」
そもそも夫の葬式には人が集まらない。
そんな事は、初めからわかっていた。
じゃあ、どうしてわざわざ葬式をしたのかというと……
絶望を楽しんでいます。
変わり者の夫を持った私も変わり者。
アホな理由で死んだ夫。
葬式にも殆ど人が集まらず、誰からも惜しまれず悲しまれることの無い夫。
そんな夫だったと確信する為に葬式をした。
わざわざ隣のドラゴンと戦って死んだ隣人の旦那と同じ日に葬式をした。
お隣さんの旦那との格差を、まざまざと感じるようなお葬式。
私、絶望を楽しんでいます。
私の夫にも良い所は沢山あった。
善良な人ではあった。
アホで他人に迷惑かけまくっていたけど。
隣の夫を亡くした奥さんは、沢山の人に隣の夫の死を惜しまれ哀しまれています。
私の夫とは正反対に。
私と隣の奥さんには差はあんまり無い。
でも隣の夫と私の夫には大きな差があった
女の人生は夫次第で大きく変わるんだなぁ
ドラゴンに殺された夫とカンガルーに殺された夫。
残された妻のイメージや待遇も段違い。
ドラゴンに殺された男の妻
と
カンガルーに殺された男の妻
まるで別の階級かの様。
別に隣の奥さんが羨ましい訳でもない。
隣の夫が欲しかった訳でも無い。
ただ……
隣に比べれば出来の悪い夫でも、私は夫の事が好きでした。
だから……
「誰か、誰か
私の夫の死を哀しんでくれませんか?」
そう想うくらいには
私は夫を愛していたのです。
だから……
「誰か夫の死を私と悲しんでくれませんか」
つい口に出したら思わず泣いてしまった。
それが死んだと思われてた夫が帰ってくる3日前の話である。
「いや〜。カンガルーに殴られて気絶してた。目が覚めたらドラゴンの口の中。
本当に参ったね。
びびってドラゴンの口の中で漏らしたら、ドラゴンの奴め。
俺を吐き出して捨ててやんの」
あっけらかんと馬鹿な事を言う馬鹿夫。
やっぱり私の夫は馬鹿野郎。
馬鹿な理由で命を落としたと言われ、馬鹿な理由で帰ってきた大馬鹿野郎。
「私の絶望と哀しみを返せ。
この馬鹿野郎」
そう言って、私は愛しい馬鹿な夫の胸元に飛び込んだ。




