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旅立ちの日
風が吹く。森の葉が揺れる。しばらく沈黙が続いた。その男はリオを見ていた。その人の目がわずかに細くなる。
「……お前」
低い声。
「家族は」
「いません」
「行く場所は」
「……ありません」
正直に答える。
その男は少しだけ空を見上げた。
そして静かに言った。
「……ついてこい」
僕は顔を上げた。
「え?」
その男は背を向けては歩き出す。
振り返らない。
「弟子にするとは言ってない」
「だが、俺の側で生き残れたら考えてやる」
僕の胸がドクンと鳴る。それでも――嬉しかった。僕はすぐに走り出す。
「はい!」
その時。後ろから声がした。
「おい、灰色」
振り向く。ライルだった。
腕を組んで立っている。
赤い瞳が僕を見る。
「死ぬなよ」
少し間を置いて言う。
「もしいつか、次に会う時があるとしたら」
悔しそうに笑う。
「俺はもっと強くなってる」
僕は少し笑った。
「うん」
僕は頷き、前を見る。彼の背中。
僕は走って追いかけた。
孤児院を振り返る。
燃えた屋根、壊れた壁。そして僕が6年間いた場所。
僕は産まれてからこの場所しか知らない。胸が少し痛む。でも――止まらない。
僕はまた前を向いた。
その日、灰色の少年は孤児院を離れた。そして人生を、世界を変える旅が静かに始まった。




