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第六話 雷の魔導士(後半)

怖い。

でも――

目の前の男は

まったく動じていなかった。

その男は剣を肩に担ぎ、ドラゴンを見上げる。


ドラゴンからは異様な魔力が溢れ出し、さらに怒り狂っていた。

ドラゴンが突進する。

巨大な牙。振り下ろされる爪。普通の人なら一瞬で潰される。


でも。その人の姿が消えた。


次の瞬間。


バチィィィィ!!


雷鳴と共にドラゴンの背中にその男が立っていた。


「遅い」


手にしていた剣に雷が集まりバチバチと空気が弾ける。それと同時に雷が天へと昇る。

そして――落ちた。


「雷閃」


ズドォォォォォォォン!!!


天から落ちた巨大な雷が同時に振り下ろされた剣と共にドラゴンを引き裂く。

光が森を白く染めた。轟音。衝撃。

風がすべてを吹き飛ばす。


ドラゴンの体が大きく揺れ、紫色の瞳は正気を取り戻したのか、一瞬だけ金色に染まり、こちらをチラリと見たように感じた。


そして低い声で唸る。


「……グ……」


ドラゴンは地面に倒れていた。巨大な体が動かない。静寂が戻る。


その男の人は剣を下ろし、ゆっくり振り返る。

そして、僕を見た。

すると男の表情が一瞬、驚きに変わる。

その人はゆっくり僕のほうに歩き、僕の前で止まった。

しばらく黙ったかと思うと僕に問いかける。


「...名前は?」


僕は少し戸惑って答えた。


「……リオ」


その男は頷く。


「そうか、いい名前だな。」




ドラゴンが倒れたあと、さっきまで燃えていた孤児院はところどころ黒く焦げている。

屋根は崩れ、壁も半分壊れていた。煙の匂いが漂い、逃げた他の子供たちの泣き声が遠くからかすかに聞こえる。


僕はまだ信じられなかった。

あの巨大な魔物が――本当に倒れたのか。

目の前には、ドラゴンの巨大な体。


僕は恐る恐るその男の前で立ち尽くしていた。その時。


「……リオ」


後ろから声がした。

振り向くと、ライルがいた。

服はボロボロで、顔も煤だらけだ。でも立っていた。


「ライル……」


僕は少し驚く。ライルはしばらく黙っていた。

そして地面を見たまま言う。


「……ほらよ」


僕に何かを投げた。空中でキラリと光るそれを僕は慌てて受け取った。それは―銀色のペンダント。


「……!」


僕は目を見開いた。ライルはそっぽを向いたまま言う。


「別にいらねぇし」

「もうからかう気もねぇ」


ぶっきらぼうな声。でも、さっきまでとは違っていた。僕はペンダントを握りしめる。胸の奥が熱くなる。僕はライルに駆け寄って小さくお礼を言う。


「……ありがとう」


ライルは少しだけ眉をひそめた。


「礼なんていらねぇよ。もともと、俺が悪かった。....ごめん。」


そして男の方を見る。


「……あの人、すげぇな」


僕も見る。男はドラゴンを見ていた。何事もなかったような姿でそのドラゴンを観察しているようだった。

ライルは悔しそうに笑った。


「俺の火魔法、全然効かなかった」


拳を握る。


「くそ……」


その声には悔しさが滲んでいた。僕はしばらく迷った。でも――胸の奥にあった言葉を、どうしても言いたくなった。僕はその男に近づく。


「……あの」


男が振り向いた。

紫の瞳。静かな視線。

僕は少し震えながら言った。


「僕……」


言葉が詰まる。でも、セレナ院長の言葉を思い出す。――強くなりなさい。


僕は顔を上げた。


「僕、強くなりたいんです」


男は黙っている。僕は続けた。


「今日……何もできませんでした」

「魔法も弱くて……」


拳を握る。


「でも、逃げたくない」


胸が熱くなる。


「だから……」


僕は深く頭を下げた。


「弟子にしてください」



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