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伝説の魔物と裏切り(ライル視点)

今日はついてない。

ほんの少し、からかってやるつもりだった。

いつものように、暇つぶしに灰色のあいつを笑って少しおちょくってやろうと思っただけだった。


「取り返せるもんなら取り返してみろよ!」


銀色のペンダントを指先で揺らしながら、あいつを見下ろす。

灰色の瞳のあいつは、いつも弱々しい顔をしていたが、珍しく怒っていた。


「返してよ!」


「はっ、やだね。お前みたいな灰色にこんな綺麗なもん似合わねぇだろ」


リオが悔しそうに拳を握る。


「ほら、取りに来いよ」


火の魔法を指先に灯す。指先の炎がゆらゆらと揺れる。


「……」  

 

リオは何もできない。それが面白かった。


そうしてあいつから取り上げたペンダントをどこに隠してやろうか考えているところで、孤児院の高い塀に登り、隠し場所を考えているところだった。

ペンダントは今日中には返すつもりだった。


なのに――


遠くで空を覆う巨大な影。

地面を揺らす咆哮。次々と木々がなぎ倒される。


「……なんだよ、あれ」


遠くの空を見上げたまま、ライルは呟いた。


本でしか見たことのない魔物が、巨大な翼を広げて空を旋回していた。


塀の上にいた俺だけがその存在に気づいていた。


「……嘘だろ」

ライルの手から銀色のペンダントが落ちそうになる。

次の瞬間。その影はみるみる近づき、孤児院のすぐそばに着陸した。


―――ドォォォォン!!


着陸の衝撃で地面が揺れた。

ライルもその衝撃で孤児院の中に吹き飛ばされたが、吹き飛ばされた瞬間に自分の魔力で地面に叩きつけられないようにしたので幸い大したことはなかった。


他の子供たちは何が起こったかわからず恐怖で叫んでいる。


なんだよ、あれ。あんなもの、見たことがない。

すぐに逃げたい。でも、俺は今日に限ってあいつが大事にしているペンダントを持っている。

本当についてない。


あいつがペンダントを大事にしていたことくらい、知っていた。


「...ちっ」


リオを探す。あいつにすぐに渡してドラゴンがくるまえに1秒でも早く逃げるんだ。


しかし当たり前だがそんな時間はないに等しかった。ドラゴンはすぐに孤児院にやってきて、院長が作ったシールドを壊そうと躍起になっていた。


ーそうしているうちに目の前に、ドラゴンの前で呆然と立ち尽くすリオがいた。


「リオ、!危ない!」


ライルは舌打ちした。

「...くそっ、なんで俺が」


ライルは歯を食いしばった。

巨大なドラゴンの姿は圧倒的だった。

足が震える。

それでも...今、逃げるわけにはいかなかった。

いや、逃げられなかったというのが正しいが。

  

震える手を握りしめる。赤い瞳が強く光る。

炎が手のひらに集まる。

ライルはドラゴンを睨んだ。

逃げたいけど...

逃げたいけど...


「...でも、ここでこんな奴を見捨てて逃げたら」

「俺は貴族様にはなれねぇだろ....!」


ライルは両手を突き出し詠唱した。

その瞬間、空気が熱を帯びる。そして火が生まれる。

普通の子供ではありえないほどの魔力。


最初に小さな炎が出たかと思うと次の瞬間。


ゴォォォオ!!


巨大な火柱が立ち上がった。

ライルの周りが赤く、紅く燃える。


ライルが叫ぶ。


「燃えろぉおおお!」


火の渦がドラゴンへ向かって走る。

きっと同年代なら誰も出せないほどの魔法。


天才。


それは本当だった。

炎がドラゴンに直撃し、爆発する。


炎がドラゴンを包み、一瞬動きが止まった。

ライルは息を荒げながら笑う。


「はっ...どうだよ...」


しかし炎は消えた。

ドラゴンはほとんど傷ついていたかった。


巨大な瞳がライルを見下ろす。


その瞬間。恐怖が背筋を走る。


「え」


ドラゴンが咆哮した。


「グォオオオオオ!」


衝撃波で空気が爆発する。

同時にライルの身体が吹き飛んだ。


「ぐっ....!」


地面を転がり瓦礫に叩きつけられる。

息が出来ない。立てない。

ドラゴンの巨大な爪がゆっくり持ち上がる。

リオが近くで必死に魔法を出そうとしているが、それも無意味に等しい。


「...くそ...」


ライルの瞳が悔しさで揺れる。

その時だった。


...風が止んだ。


そして空から雷が落ち、ドラゴンを直撃した。


ドォオオオオン!!


大地が揺れる。

ライルはドラゴンの前に1人の男が漂着したのを遠のく意識の中で見た。

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