第十四話 修行のはじまり(3)
小枝の先は、指先ほどの細さしかない。
「その炎を消すな」
ヴァルクは続けた。
「大きくもするな」
僕は思わず聞き返す。
「え……?」
ヴァルクは淡々と言った。
「炎の大きさは、この小枝の先と同じだそれ以上でも、それ以下でもない」
「……」
僕は言葉を失う。
そんな細かいこと、できるわけがない。ヴァルクはさらに続けた。
「そして炎は揺らすな」
「……え?」
「風が吹いてもだ」
僕は思わず空を見た。森の中は常に風が吹いている。
「む、無理です!」
思わず声が出た。ヴァルクはまったく表情を変えない。
「できるまでやれ」
「え」
「それが終わるまで次には進まない」
ヴァルクは家の中に入って行った。僕はヴァルクから渡された小枝を見つめる。細い枝の先。ここに炎を灯す。しかも揺らさない。そんなこと――
「……」
でも。僕は小さく息を吸う。
「……火」
ボッ
炎が出たが、一瞬で枝ごと燃えた。
「あぁっ」
僕は少しの休憩を挟みながら根気よく続けた。
火を出す。消える。また出す。失敗。また失敗。
小枝は何本も燃え尽きた。
ヴァルクが家から出てきて口を開いた。
「今日はここまでだ」
空はすでに夕焼けだった。家に戻ると体がどっと疲れた。夕飯を食べて、お風呂に入って、僕は部屋に戻る。ベッドに座ると静かになった。窓の外では森が揺れている。
「……疲れた」
今日は上手くできなかった。でも嫌じゃない。むしろ少し楽しい。わくわくが止まらない。
魔法を操るのはやっぱり難しい。ライルは自分の魔法を簡単に操っていた。ライルはやっぱり凄かったんだな。
僕は深い眠りについた。




