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崩壊した世界でみんなで楽しく生きていく〜サバイバル〜  作者: 伊右衛門


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覚醒編1

○手当ての終わったオレは戦場に戻った。

優子さんは支部で待機してもらっている。


大型の変異体はほとんど倒しているので残っているのはゴブリンぐらいだ。

腰が砕けたようになっている優子さんが来る必要は無いだろう。

優子さんが腰砕けになったのはオレの責任だしね。


怪我の手当てをして戻ってきたオレを見た香織さんは

「優子さんは妊娠してるんですからやり過ぎてはいけませんよ」

そう言ってオレの腕を軽くつねった。

・・・全部、バレているね。


オレが火を着けた妖精もどきの巣は真っ黒に焦げている。

既に火は消えているので、みんなで冷めるのを待っているようだ。


「どんな感じ?」

妖精もどきの巣を見張っているマスターに確認する。

「内部までかなりの高温になった筈だから全滅してると思うわ」

既に太陽は中天に差し掛かっている。

オレが火を着けたのは夜明けぐらいだから4~5時間は経過している。

うん、これなら大丈夫だろう。


冷めるのを待って手斧で妖精もどきの巣を崩して、内部を確認する。

巣の内部は蜂の巣というより蟻の巣のようだ。

六角形の構造物は無く縦横に道が延びている。

「おっ!居た」

道が膨らんだ小部屋の中で妖精もどきが息絶えている。

「ほい」

こんがり焼けた妖精もどきの死体を後ろで待っている玲子に渡す。

ごくりっ

妖精もどきの死体を見た玲子が喉を鳴らす。

「・・・食うなよ」

「食べないよ!」

そう言っているが玲子の目は妖精もどきから離れない。

まぁ、気持ちは分かる。こんがり焼けていてなんとなく旨そうに見えるんだよな。


巣の内部から次々と妖精もどきの死体が見つかる。

ざっと50体ってとこか。

さらに奥を調べると一際体の大きな個体が見つかった。

死体を引きずり出すとこれまでの妖精もどきと違って下半身が異様に膨らんでいる。

病的な肥満のように膨らんだ下半身で足が埋まってしまっている。

これが女王なのだろう。


その後も巣を調べてみたが他に女王はいないみたいだ。

一個の巣に一体の女王が棲んでいるようだ。

「気持ち悪いわねぇ」

マスターがトレイに置かれた女王の死体を枝でつついている。

巣の一番奥に居た女王はそれほど焦げていない。

どうやら、焼け死んだのでは無く窒息したようだ。

意図した訳では無いがおかげでかなりきれいな死体が手に入った。

これならさとるさんへのお土産(ワイロ)として使えるだろう。

「マスター、死体をあまり傷付けないで」


巣から全ての死体を回収して支部に戻る事にする。

支部に戻る途中で戦場後を通ったが変異体の姿は見えない。

やはり大きな群れが形成された事と妖精もどきは関係あるようだ。

「わぁ、明るいとこで見るとすごいね」

「今まで見た事無い変異体が多いわね」

玲子とマスターが変異体の死体を確認している。

「そっちの燃えた変異体は体から油を出すみたいだ」

槍で有効活用出来そうな変異体を示す。

「これは?」

玲子が頭を咬み潰した死体を持ってきた。

「結構、旨かった」

オレがそう答えると興味を示した玲子がかぶりつこうとしてマスターに止められた。

「ばっちいから止めなさい!」

「え~、お腹空いた」

玲子が不満を言うが、結局マスターが支部でご飯を作ってくれる事になり玲子も納得した。

問答無用でかぶりつこうとするとは度胸のある奴だな。

玲子を見ながら苦笑して支部に帰る。


支部に戻ったオレたちは今後の事を町の代表者たちと話し合う。

「大型の変異体は全て倒されました。残っていた小型の変異体もほとんどが逃げ去りました」

支部長である田中さんの言葉を聞いた代表者たちが安堵のため息をもらす。

「あれほどの変異体に囲まれた時は全滅も覚悟しました」

「ギルドの皆さんには深く感謝します」

大規模な群れに囲まれたが町への被害はほとんど無く、避難してきた近隣の集落の人たちも近日中に集落に戻れるだろう。

多少、残っていたゴブリンなどはあの巣を焼いている間に逃げていった。あの妖精もどきがこの騒動の原因である事は間違いないようだ。


オレも戦闘に対する欲求不満がとりあえずは解消された。

町にも大きな被害は無かったし、めでたし、めでたしだな。


オレはそう考えたのだが、そう上手くはならなかった。

町の代表者が帰ってギルドメンバーだけになった支部では重苦しい空気が漂っている。

本部に伝令に出ていた佐藤くんがさとるさんからの手紙を携えて戻ってきたのだ。

その手紙にはウイルスの変異に対する懸念が書かれていた。


手紙を読んでいた田中さんは最初の数枚と最後の数枚以外を机の上に置き、ため息をついた。

「・・・真ん中はほとんど妖精もどきに対するレポートだな」

オレたちの視線に気付いた田中さんが説明してくれた。

「ちょっと失礼」

一言断ってから机に置かれたさとるさんからの手紙を読ませてもらう。

ーうん、完全に趣味の領域だな、これは。

手紙には解剖された妖精もどきの詳細なスケッチやどのように奴等が発生したのかに対するさとるさんの考察、奴等の飛行に関しての疑問がびっしりと書かれている。

「この反重力飛行ってなんなの?」

隣からレポート(これは手紙じゃなくレポートだね)を覗き込んだマスターが疑問を口にする。

妖精もどきを解剖したさとるさんは奴等が飛行する事は不可能だと結論づけている。

翅の面積や飛行に必要な筋肉不足、重すぎる重量から妖精もどきが飛行するのは物理的に不可能みたいだ。

しかし、妖精もどきは間違いなく飛んでいた。

それでさとるさんは妖精もどきが体内で一種の重力軽減ホルモンを作り出しているのではないか?と考えたようだ。

それ以外にも妖精もどきは蜂か蟻から発生、進化した変異体でフェロモンを使いコミュニケーションを取り、他の変異体を操っている可能性が書かれている。

「大喜びしてるな、さとるさん」

レポート全体から狂気じみた喜びが迸り、ちょっと怖い。

レポートの最後には生きた妖精もどきを送る事まで希望している。


「・・・完全に暴走してますね」

オレからレポートを受け取った香織さんが苦笑している。

「私たちが来るの妖精もどきを見る前で良かったね」

妖精もどきを見た後だとさとるさんまで増援に来たかもしれないな。

増援というより標本採取の向きが強いだろうが。


「大事なのはこちらの数枚に書かれている内容だ」

20枚以上の手紙で大事なのが最初と最後の数枚なのか・・・

さとるさんらしいな。


田中さんが手紙の大事な部分を説明してくれる。

ウイルスが人間以外にも感染する事は妖精もどきの存在によってほぼ証明された。

「問題なのはすでに感染している我々がどうなるかだ」

一度、感染しているオレたちが再感染する可能性は低いがゼロでは無い。

変異型ウイルスは抗体を持った人間でも感染する可能性があるそうだ。

「それじゃオレたちも危険なの?」

もう一回、あの激痛を味わうのは勘弁してほしい。

「それだけでは無く、動物にも感染している可能性が高いそうだな」

ウイルスに感染した動物がどんな変異をするかはさとるさんにも全く予想がつかないそうだ。

「もしかしたらすっごく大きな猪とかも出るかな?」

前向きな肉食系女子である玲子は瞳をきらきら輝かせている。

でも、それは楽しみだな。

「大きな猪じゃなく大きなヌートリアも嬉しいけどな」

ヌートリアは小さい事だけが難点だからね。

「それもいいね!」

「だろ!」

明るく騒ぐオレと玲子を見てマスターが苦笑する。

「肉食系人間はお気楽でいいわね」

まぁ、変異して毒を持つ生き物も出るかもしれないがそれは食ってみないと分かんないから心配しても無駄だろう。


「今後は狩りの際にも充分注意してくれ!」

田中さんが騒ぐオレたちの頭を叩く。

オレと玲子がわいわい騒いだので重苦しかった空気も少しは軽くなったようだ。



暗く考えれば切りが無い。

変異していく世界を楽しんだ方がお得だろう。




次回は夜に投稿予定です



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