マンション編8
そんなことを考えていると、寝室の片付けが終わったのか、北村さんが出てきた。
「大丈夫ですか?」
「はい、片付けられました」
ん?北村さん、服が変わっている。ついでに着替えたようだ。
「それじゃ、オレの部屋で食事にしましょうか?と、いっても、たいしたものはありませんが」
「ありがとうございます」
北村さんと自室に戻ると、オレはカセットコンロでお湯を沸かし、パックのご飯とレトルトのカレーを温める。
レトルト食品は、一人暮らしの強い味方なので、オレの部屋にはまだ予備がある。それから、探索した各部屋からも食料品を発見したので、オレと北村さんだけなら、一ヶ月ぐらいは持つと思う。
ん~、食事のルールを決めておいた方がいいかもしれない。
北村さんってお腹が減っても、遠慮してオレに言ってくれないような気がする。
オレは、ご飯が温まる間に北村さんと相談して、食事のルールを考える。
北村さんは、食料をできるだけ節約する為、食事は1日1回を主張している。オレは1日2回を提案する。こんな状況だし食事はできるだけ、きちんとして、体力を確保しておきたい。救助がくるなら、それまで食料が持つように節約するべきだろうが、正直、救助が来るとは思えない。
結局、北村さんが、オレの提案を受け入れてくれた。
最初に接触したのが、北村さんで良かったと思う。北村さんはこんな状況なのにかなり冷静だ。オレ自身、あまり感情的な人間が得意じゃないので助かる。
それに、今のオレの外見は正直かなり怖いと思うのに、普通に接してくれるのもありがたい。
簡単な食事をしながら、今後のことを相談する。ひとまず、明日中にこのマンションの安全確認を終わらせてしまおう。北村さんには、安全を確認した部屋から使えそうな物資や食料を調べてもらう。
それ以降は、北村さんと相談しながら、決めていこうと思う。自分だけだと、どうしても、視野が狭くなる。北村さんは、冷静なので相談しやすい。
食事の片付けも終わりといっても捨てるだけなのだが、北村さんが持ってきてくれた日本茶を飲む。こんな状況なのに、ほっこりしてしまう。
オレ一人の時は、ただの栄養補給だったのに、北村さんと一緒だと、ちゃんと食事をした感覚がある。
いい人で良かった。単純だな、オレ。まだ、北村さんと会って、半日程度なのに。でも、北村さんがいい人なのは間違いないと思う。
食後、お互いのことを話す。その時にオレも変異していることを話す。
ん?言ってなかったっけ?そう言えば、見たら分かると思い、ちゃんとは言ってなかったな。
なんか、北村さんが少しむくれている。なんで?変異している方が安全性は高いと思うけど?北村さんは、むくれると、頬を膨らますのではなく、少し、口を尖らすようだ。
なんか、かわいいな。年上の人なのに。
●立花くんと話し合い、私は立花くんの隣の部屋に移動することにする。
立花くんは、私のベッドやクローゼットを軽々と運んでくれた。私は、私物や軽い物を運ぶ。ちょっと、男性には見せにくい物もあるから。
結局、ほとんど、立花くんが一人でやってくれた引っ越し作業は、2時間もかからずに終了した。部屋のレイアウトが同じなので、自分の部屋と同じ位置に家具を配置してもらう。
持ってきていない荷物もあるので、少し違和感があるけど、最上階だし、隣には立花くんがいるので、4階の自分の部屋より安心できそうだ。
私が部屋を片付けようとすると、立花くんが気を遣って出ていこうとするので待ってもらう。この部屋が安全なのは、わかっているけど一人になるのは、まだ少し怖い。
私物も寝室に片付け、カーテンを取り付ける。電気は使えないけど、やはり、外から丸見えなのは落ち着かない。
部屋を片付けていると、少し汗をかく。
お風呂に入りたいけど、水は貴重だしがまんするしかないよね。こっそり、自分の匂いを確かめる。大丈夫。臭くないよね。
でも、かなりの間、お風呂に入っていない。部屋にいる時は、できるだけ濡れタオルでがんばってた。こんな状況では、お風呂に入りたいなんてわがままは言えない。
がまんしよう。
立花くんはダイニングでおとなしく待ってくれている。その間に汗をかいたシャツだけ、着替える。
立花くんと会えて本当に幸運だった。
あのまま、一人ではいずれ私は死んでいただろう。まだまだ、私も立花くんも安心できる状況ではないけど、事態は好転していると思う。立花くんと二人、がんばっていこう。私がどの程度、役にたつのかは不明だけど。
部屋から出ると、ダイニングの床に腕組みした立花くんが座っている。立花くん、何を考えているんだろう。
たぶん、これからのこと。
立花くんは、少し年下だけど、冷静に考えてくれるので、ありがたいと思う。私もがんばろう。
部屋から私が出てきたのに気がついた、立花くんは食事にしようと言ってくれた。お腹が減っていたので素直に嬉しい。
私と立花くんは食事の用意ができるまでの間に、これからの食事のルールを話し合う。
私は、できるだけ食料を節約しようと考えたけど、立花くんは、健康を維持する方が優先だと考えているようだ。
こんな状況だし、その考えも解るので食事は1日2回にすることに決まった。
朝と夜の2回。電気が使えないので太陽の昇っている間が、私たちの活動時間となる。十分だろう。
その間に、食事ができたので二人で食べる。食事しながら、立花くんと今後のことを話し合う。
まずは、このマンションの安全確認をすることに決まった。立花くんが、4階から下の部屋を調べる間、私は4階から上の部屋から使えそうな物資を集める。がんばろう。
食後、部屋から持ってきた、緑茶を二人で飲む。
立花くんと、お互いのことを話し合う。その会話の中で、立花くんも変異しているのを知った。早く言っておいてくれたら、寝室ショックを受けないですんだのに!いや、私が悪いんだけどね。立花くんは、外見が変わっているので、言わなくても、分かると思ったみたいだ。まぁ、たしかに冷静になって考えれば、分かるけど。
ちょっとだけ私がすねていると、立花くんがそんな私を優しい目で見ているのに気がついた。
年下なのに、身体が大きいからか、立花くんは変に包容力がある。
たしかに、変異している方がゴブリンになる可能性が減るから、安心といえば安心できる。
私が病院で見た限りでは、ゴブリンになる人は、人からゴブリンに一気に変わっていた。私や立花くんがゴブリンになる可能性は低いのだろう。私や立花くんみたいな変異をした人を見たことがないので、確実ではないけど。
そろそろ、日が沈む時間なので、私は隣の部屋に移動しようとする。でも、廊下に出るのが、ちょっと怖い。




