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サバイバル  作者: 伊右衛門


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交流編2

○オレたちは難しい顔で会議室に集まっている。


「まさか、ここまで過剰な反応をするとは思いませんでした」

さとるさんがため息をつく。

オレたちは各地に集落を発見してそれぞれに一時的な人々の受け入れを要請した。

そして、すべての集落が受け入れを了承してくれたはずだったのだが・・・


もっとも、大きな集落から一部の人の受け入れを拒否されてしまったのだ。

「すいません。私が最初にきちんと確認するべきでした」

優子さんが頭を下げる。


「優子くんの責任ではない!問題は受け入れを拒否した方じゃ!」

珍しく大先生が声を荒げる。

「優子さんは悪くないよ」

オレは優子さんの頭を撫でる。

「どんな感じでしたか?」

今回、その集落にはさとるさんと優子さんが住人を送って行った。

「ひどいものでしたよ。人間は受け入れるが化け物はダメだそうです」

さとるさんが苦笑する。

化け物ね。

もちろん、その化け物にはさとるさんも入っているのだろう。

「私も変異してるもん」

自分の耳を触りながら、優子さんがしょげかえる。優子さんは変異している自分に対して普通に接してくれたので変異の事はあまり気にしなかった。

う~ん、優子さんとさとるさんやオレとは変異の方向性がちょっと違うからね。

「気にしないでください。そういった事もあるとは思っていましたから」

さとるさんも優子さんを慰める。まぁ、オレたちの感覚では変異していて当たり前だからなぁ。


「しかし、100名の住人をどうするかが問題ですな」

田中さんが難しい顔で考え込む。

変異した人が拒否されたので住人は全員、基地に戻ってきている。

「あちらは人間は受け入れると言ってくれたんですが・・・」

しかし、住人たちが怖がってしまい基地に戻る事を希望したのだ。

自分が変異していた事も関係しているのだろうが、白いドラゴニュートの町では変異した者も受け入れていた。

あのドラゴニュートのほとんど唯一の美点だろう。

これまでの隣人を拒否する人を信用するのは難しいだろうよぁ。


「う~ん、もしかしてあの獅子男ってそこの集落出身なのかなぁ?」

「どうしてですか?」

ポツリと呟いたオレの言葉に香織さんが反応する。

「もし、優子さんや香織さんを傷つけたらオレは500人ぐらいの集落なら皆殺しに出来ると思うんだ」

「み、皆殺しか」

オレの言葉に田中さんがちょっと引く。

一気に全員を殺す事は出来なくても時間をかければ全員を殺す事は不可能ではないと思う。

オレに可能ならあの獅子男にも出来るんじゃないかな?

確認してないけど、獅子の頭なら夜目も効くだろうし、むしろ、オレより可能性が高いかもしれない。

でも、あいつはここに逃げてきていた。

「住人が多すぎたので殲滅したくとも出来なかったという事か」

そうなんじゃないかな?


「でも、あいつなら殲滅出来なくても絶対に報復はしてると思うよ」

「それで警戒してるのかしら?」

マスターの言葉にうなずく。

「例えそうであっても外見だけで人を化け物などと言う者は信じるに値せん!」

「まぁ、まぁ、ギルド長落ち着いてください」

さとるさんがエキサイトする大先生をなだめる。


「ここや他の集落で受け入れる事は出来ないかね?」

落ち着いた大先生が美咲ちゃんに確認する。

「もう一度確認しますが、ぎりぎりなんとかなると思います」

たくさん集落を発見しといて良かった。

他の集落では変異した者もすでに受け入れてくれているので大丈夫だろう。

「受け入れてくれる集落には礼代わりに出来るだけ塩を送るとするか」

塩はどこの集落でも大人気だったから喜んでもらえるね。


「さとるさん、そこの集落にオレたちみたいに変異した人っていましたか?」

大集落はここから2週間ほど移動した距離にある。

今回、発見された集落でもっとも基地から離れた所にある集落だ。


「住民全員を確認した訳ではありませんが、そのような人の姿は見えませんでした」

「私も見なかったよ」

う~ん、やっぱりかぁ。

「真人くんの懸念は分かりますが、確認するのは難しいでしょう」

さとるさんにはオレの不安が分かったようだ。

「どういう事です?」

「もしかしたらその集落・・・変異した人を殺してるんじゃないですか?」

オレの言葉に一同が息を飲む。

「・・・つまり、大きく変異した者を始末しとるという事か」

田中さんが厳しい顔でつぶやく。

受け入れを拒否してるぐらいならいいが、2000人もの住民の中に変異した人がいないのは不自然に感じる。

「・・・可能性はあります。変異は選択できませんから」

彼らの周辺にも大きな変異をした者はいただろう。

それが現在一人もいないとなると・・・

集落でこっそり殺害されている可能性があるんじゃないかな?

もちろん、たまたま変異した人がいないだけなのかもしれないけど。

だが、もしそんな事をしているとしたら・・・


「我々、ギルドが大きな力を持てば対抗出来るでしょうが、今は何も出来ないでしょう」

沈痛な面持ちでさとるさんが首を振る。

「我々、ギルドが人々にとって有益で頼りになる存在にならなくてはいけません」

そして、そのギルドでは変異者を受け入れ、活動している。

そのギルドに頼るという事は変異者を受け入れるという事だ。

「もちろん、理不尽な暴力に対抗するだけの武力が前提条件ですけどね」

力無き正義は無力なりって事か。

まぁ、オレたちは正義って訳じゃないけどね。

ギルドが強大な組織になればなるほど変異者を変異者ってだけで差別したり攻撃するのは難しくなる。

それもギルド設立の目的のひとつだ。

そんな集落が増えると息苦しくなるのでそうならないようにがんばろう。


「優子さん、ほら、元気だして」

部屋でオレは膝の上に乗せた優子さんを後ろから抱きしめる。

せっかく見つけた集落がちょっと変な集落だったので優子さんは落ち込んでしまった。

う~ん、優子さんは見つけただけでなんの責任も無いんだけどなぁ。

そんな集落を早期に発見出来たメリットの方が大きいと思うんだけど。

受け入れを拒否された人たちも自分を庇ってくれた優子さんに感謝こそすれ誰も怒ったりしてなかったよ。

「うん、頭では分かってるけどちょっともやもやしちゃって」

この問題はもやもやするよね。

「私、もっともっとがんばるね」

そうだね。

その大集落が変異者を殺害してるかどうかは不明だが、オレたちががんばればそんな変な集落も減るだろう。

ファンタジーなんかではオレたちみたいな変異者って亜人とか言われて差別されてたりするけど、ギルドが大きくなればそんな事も防ぐ事が出来る。


「・・・あの、真人、なにか当たってるんだけど?」

そりゃ、優子さんをだっこしてればそうなるよ。

「えっと、ちょっと久しぶりになるけど真人、大丈夫?か、香織も一緒の方がよくない?」

「今日は優子さんを慰めてくださいって香織さん、言ってたよ」

「えっと、真人、ちゃんとだめって言ったら止まってくれる?」

「う~ん、ちょっと自信ないなぁ」

「わ、私、香織呼んでくる!」

膝の上で優子さんがじたばた暴れはじめる。

「じょうだん。大丈夫だよ」

暴れる優子さんをそっと抱きしめる。

「ほんとに?」

「もちろんですよ。やだな〜」

オレの笑顔を見た優子さんが、何故か、また、じたばた暴れ出したがそんな事で逃げられる訳が無い。


では、オレが理性的な男である事を証明しよう。



「・・・みんなに聞こえたかな?」

少なくとも隣には聞こえただろうなぁ。

オレがそう言うと優子さんは真っ赤になって抱きついてきた。

「明日、どんな顔してみんなに会えばいいのぉ?」

まぁ、いいじゃない。

「ほら、優子さん、風邪ひくよ」

オレに抱きついてずれた毛布を直す。

「・・・優子!」

優子さんがぷいっとそっぽを向く。

「いや、でも、優子さんって言い馴れてるから」

「ん~っ!じゃあ、二人の時だけでいいから優子って呼んで!」

優子さんはそっぽを向いたまま、要求する。

「あ~、優子、風邪引くからこっちにおいで」

「うんっ!」

優子さんがいそいそとオレに抱きつく。

ほんとうにかわいいなぁ、この生き物は。

オレたちは満ち足りた気分でそのまま眠りについた。


あの時の声が聞こえていたかどうかは確認していないので不明だ。

「もう、真人ちゃんったら~、優子!だって」

隣でマスターがなにか意味不明な事を言っているが、確認していないのでなにを言っているかは全く不明だ!



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