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サバイバル  作者: 伊右衛門


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対立編5

○基地の医務室でオレはさとるさんから両手の治療を受けている。

白いドラゴニュートを殴り頭を握りつぶした為にオレの両手は傷だらけだ。

角ごと頭を殴った為に拳には数ヵ所穴が空き、頭を握りつぶした掌は割れた鱗がガラス片のように刺さっている。

さとるさんが刺さった鱗を丁寧に除去し、穴は消毒して縫い合わせてくれた。

「もう!ちょっと目を離すとバカな事するんだから!ちゃんと聞いてる!?」

さとるさんをサポートし手当てを手伝ってくれていた優子さんがオレの頭を後ろからポカポカ叩く。

は~い、反省してます。


「えへへ、香織ですよ。香織!」

「香織もへらへらしない!」

優子さんの隣に立つ香織さんの顔はだらしなく緩んでいる。

あの時、咄嗟に香織さんを呼び捨てにしたのがどうもツボに入ったらしい。

腕の傷を優子さんが手当てしている時もずっと香織さんはにやけていた。

「ねえ、優子さん、聞きました?真人さん、わたしを香織!って呼んだんですよ」

一方、香織さんの腕の傷を手当てしている優子さんは苦い顔だ。

「私だってほとんど呼び捨てなんかされた事ないのに~」

「イタッ!優子さん、ちょっと痛いです」

傷を消毒している優子さんを香織さんがつつく。

「少しぐらい、がまんしなさい!このっ!」

「いや、痛いです。痛すぎますよ!」

優子さんが香織さんの腕の傷をぐりぐり消毒?している。

香織さんの腕の傷は浅く幸い消毒するだけで大丈夫だそうだ。

優子さんが消毒する度に香織さんがのたうってるけど、ほんとにそれって消毒?


それを見ていたさとるさんが苦笑する。

「真人くんの回復力なら手は大丈夫でしょうが、しばらくはおとなしくしていてくださいね」

は~い。


「亡くなった方は残念でしたが、こちらに被害が無くて幸いでした」

さとるさん、オレの手は?

「それは自業自得でしょ」

マスターに後頭部を叩かれる。

さっきは優子さんに叩かれるし、今日は厄日か?


こちらには被害が無かったが、自警団には10名の犠牲者が出た。

もっとも、半分ほどはアキラに殺られたんだけどね。

犠牲者たちは森に埋葬し、代表で大先生が弔いをした。

「不幸にも道を違えた者たちの冥福を祈る」

でも、白いドラゴニュートの遺体だけはさとるさんが自分の研究室に運び込んだ。

どうしても研究したいそうだ。

まぁ、ドラゴニュートは珍しいし自分と同族だから気にはなるだろう。


翌日、オレたちは降伏した自警団団員の処遇を話し合う為にギルド長こと大先生の元に集まっている。

「降伏した者は事情を聞いたら解放していいじゃろうが、そのアキラくんとやらが問題じゃな」

そうなんだ。降伏した団員は解放しても問題はないだろう。

彼らがこちらを攻撃する可能性はないしね。

まぁ、町に戻ったらこれまでの行いに応じた目に合うだろうがそれは自業自得だ。

町にはギルドメンバーが同行するので殺される事がないようにだけは注意しとく。


問題はアキラとかいう大男だ。

両足が傷付いたあいつはすぐには解放できない。

傷付いた団員たちと一緒に基地で治療しているが、他の団員たちからの目もかなり厳しい。

どうもあの白いドラゴニュートとはプライベートでも深い関係だったらしく彼らの町では受け入れてくれないだろう。深い関係ってのはあまり想像したくないので放置!

そうなると傷が回復してからどうするのかが問題になる。

現在、刑務所なんて稼働していないので基地で拘束するしかないんだけど、監視が必要だったりして地味に負担が大きいんだよね。

かといって、周辺の集落に押し付ける訳にもいかない。

今さら殺すのもちょっとなぁ。

「傷の具合はどうなんです?」

治療したさとるさんに聞いてみるが、難しい顔で黙りこんでしまった。

「矢傷っていうより、むりやり矢を引き抜かれた時の傷がひどいのよ」

治療を手伝ったマスターが代わって説明してくれた。

あ~、纏めて引き抜かれてたもんなぁ。

「ひょっとすると、もう歩けないかもしれないの」

それはちょっとかわいそうな気がする。

だいいち、歩けないとこの世界で生きるのはかなり難しいんじゃないかな?

「変異しているので回復の可能性はあると思いますが・・・」

さとるさんが重いため息をつく。

ますます、難しい問題になっちゃったな。

「まぁ、アキラくんの事は傷が治ってから考えましょう」

回復するまでは基地で面倒をみるしかないね。

やれやれ。


「あの~、いいですか?」

開きっぱなしのドアから友美さんが顔をのぞかせる。

「どうしたんだね?まぁ、入りなさい」

大先生が優しく声をかける。

「いえ、たいした用じゃないんですけど、試作品が出来たので味見をお願いしようかと」

友美さんは持っていたトレイをこちらに見せる。

「わぁ、すご~い!」

優子さんたちが歓声をあげる。

友美さんが持っていたトレイの上にはカップに入ったスポンジケーキのような物が乗っている。

友美さんはお菓子の専門学校を出てケーキ屋さんで働いていたパティシエさんだったのだ。

そこで、これまでのお礼をかねて友美さんがケーキを作ってくれる事になった。

どうやら、その試作品が出来たようだ。

「う~ん、おいし~い、幸せ~」

「やっぱり、スイーツは必需品ですね~」

優子さんと香織さんがとろけそうになっている。

どれどれ?

オレもひとつ口に放り込む。

「どうですか?」

友美さんが不安そうな顔で聞いてくる。

「うん、柔らかくて甘いね」

友美さんがオレをじ~っと見ている。

「えっと、甘くて柔らかいね」

「・・・他には?」

友美さんが泣きそうになってしまった。

「はぁ、真人ちゃんにはスイーツを味わう資格が無いわね」

えっ、これ食べるのに資格がいるの?

「この甘味はさつまいもと蜂蜜で出しているのね?」

「そうです!裏ごししたさつまいもとさとるさんから頂いた蜂蜜で甘味をつけてみました!」

そういえば、森の中で妙な箱を見つけてつついたら蜂がわんさと出てきたな。

あのまま放置してたがさとるさんが取ってたのか。

「思わぬ才能に気づきましたよ」

さとるさんが自分の鱗を撫でる。

さとるさんなら蜂の攻撃なんて問題ないよね。

「ふむ。ナッツのような食感があるがこれはなんだね?」

た、田中さん!?

「はい!森で見つけた椎の実です!大先生から教えてもらいました!」

お、大先生まで!?

振り返って大先生を見るとにやりと笑っていた。

「いや、素晴らしいスイーツじゃ!友美くんが仲間になってくれてギルドのみなも喜ぶだろう」

うん、同感だ。でも、このままだとオレが味音痴みたいになるのでオレもなんか気の利いたコメントが言いたい!

そう思ってトレイに残っていた最後のケーキに手を伸ばすと横から小さな手にかっさらわれた。

「真人にいちゃんにこれの味は分かんないだろ」

そう言って子供が最後の一個を頬張る。


「待ちやがれ!このくそガキ!」

「うわっ!大人げねえぞ!」

部屋から走って逃げるくそガキを追いかける。

「てめぇ、最近、生意気なんだよ!名無しの権兵衛のくせに!」

こいつは結局、未だに名前を思い出していない。

本人はたいして気にしていないようなので、最近は名無しの権兵衛からゴンちゃんなどとお姉さんたちに呼ばれている。

それは構わないのだが反抗期とやらなのか、本性が現れたのか最近とみに生意気になってきている。

まぁ、元気なのが一番だけどね。

オレは逃げるゴンを廊下の隅に追い詰める。

オレから逃げるなんて百年早い!

「ふっふっふっ、どんなお仕置きをしてやろうか?」

素っ裸にひん剥いて女風呂に放り込んでやるかな?


「あっ、真人にいちゃん、後ろ!後ろ!」

「そんな古典的な手段に引っ掛かるか!」

オレの言葉にゴンは首をかしげる。

そっか、こいつの年だと知らないよな。

・・・という事は?

ゴンッ!

「会議中に遊んでるんじゃないの!」

おおう!頭が割れるように痛い!

後ろに立つ優子さんが持っていた棒を捨ててオレの耳を掴んで部屋まで引きずって行く。

優子さん、棒、折れてるよ。

「真人にいちゃん、また後でな!」

「おぉ、また後で遊んでやるよ」

バタバタして最近、構ってやる暇がなかったからなぁ~

ちょっと、反省だ。


「ゴンちゃん、元気でよかったですね」

部屋に戻ったオレの後頭部をさすりながら香織さんが笑う。

生意気なやつで申し訳ない。

「少し混乱したが今後の計画を決めておこう」

真剣な顔で大先生が言う。けど、大先生、口にケーキがついてますよ~

「まずは彼らを受け入れてくれる集落探し、それにさくや君の電気復活計画、耕作地の拡大、島との交易、やることは多いぞ」

田中さんの言葉にみんながうなずく。

どれも大変だがやらなくてはいけない事ばかりだ。

「まずは彼らの集落に行き今後の事を話し合いましょう」

「彼らが移住に反対したらどうします?」

香織さんの懸念ももっともだ。

彼らの移住計画はこちらが立てた計画だ。

「残念ですが彼らにそれほどの選択肢は残されていません。離散するか移住するぐらいしかないでしょう」

普通なら離散より移住を選択するだろう。

もし、離散を選ぶならそれはそれで仕方ない。彼らの人生だ。

彼らの集落にはさとるさんとマスターが行く事になった。

2人だけだとインパクトが強いので友美さんにも同行してもらう。

元住人の友美さんがいれば話しを聞いてくれるだろう。

その際、自警団の団員も連れていく。

住民の監視ではなく食料調達をしていた団員には協力をお願いする。

今回、捕虜?にした団員の中には友美さんに食料を何度か分けてくれていた人がいるのでその人から他の団員を説得してもらう事にする。

協力してくれるなら彼らにはこことあちらの食料輸送をお願いするつもりだ。


電気復活計画はさくやさん主導で京子さんたちが担当する。

参加メンバーが京子さんと同室のお姉さんばかりになったので、さくやさんにはいろいろがんばってもらいたい。

「ふっ、楽しい性活になりそうだね」

いや、京子さん、生活だからね。


島との交易には田中さんと香織さんたちが行く。

「まぁ、若社長と先生なら協力してくれるだろう」

島のみなさんにはご迷惑をかけて申し訳ない。

「なに、島にしても取引先が増えるんじゃからメリットも大きいだろう」

島には塩という強力な交易品がすでにあるからなぁ。


オレと優子さんは集落探しに参加する。

もっとも、オレと優子さんは一応幹部なので別々のパーティーになるんだけどね。

「浮気したら切り取るよ」

優子さんににっこり笑顔で釘を刺された。

オレにはそんな度胸はありませんのでご安心ください。


「なぁ、おれは?」

次々と任務が決まる中、ゴンが自分を指差す。

「お前は本部防衛だ。大先生と美咲ちゃんを頼むぞ」

オレの言葉にしっかりとうなずく。

最初の頃に比べて子供の体はかなり大きくなった。

充分な食事と成長期の相乗効果なのだろうが、ちょっと大きすぎないか?

まだ、10才にもなっていないはずなのに中学生ぐらいに見えるぞ。

まさかと思うがおまえもオーガだったりして?

まぁ、いずれ分かるか。


大先生はもちろん基地に待機しててもらう。

さとるさんとマスターも彼らの集落から戻ったら、そのまま基地と周辺集落の防衛につく。

そして、新しい集落を発見したら交渉に行ってもらう。

最近、集落からギルドに参加したメンバーも基地の防衛と周辺集落と協力して耕作地の拡大を行ってもらう。


オレはさとるさんたちが基地に戻ったら探索に出る。

その頃には傷もある程度は回復してるだろう。


「みな、大変だが未来の為にがんばろう。しかし、決して無理をしてはならん。無理はいずれ破綻する。自分を大事にするんじゃよ」

ギルド長である大先生の言葉にみんながうなずく。

そうだね。無理せずにがんばろう。




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