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サバイバル  作者: 伊右衛門


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対立編4

○自警団が攻めてくるまでオレたちは待機を命じられた。

予想では4日後のはずだが、なんらかの事情で早くなるかもしれないし、遅くなるかもしれない。

彼らを倒すまでは待機するしかないだろう。

あ~あ、電気復活計画とかあるのに残念だ。


「なんか大事になっちゃったね」

会議の後、食事を終えて優子さんと部屋に向かう。

周辺の集落に伝達に行く者と見張りに立つ者以外は全員待機だから優子さんも当然待機だ。

もちろん、香織さんも。

「香織も一緒に来ればいいのにね」

オレもそう思うけど、香織さんは食事が終わると1人で部屋に戻っていってしまった。

う~ん、なにか怒らせるような事したかな?

「急いでたけど怒ってはなかったよ」

そっか。それなら良かった。

オレは優子さんを愛しているが香織さんの事も大好きだ。

同じように愛する事は出来ないが、同じぐらい愛したいと思う。

「うん。真人は真人なりに私たちを愛してくれればいいよ」

オレの正直な気持ちを聞いた優子さんが微笑む。

こんな素晴らしい女性に好きになってもらえてオレは幸せだ。


「あれ?香織、どうしたの?」

オレたちの部屋の前で香織さんが待っていた。

どうしたんだろう?

「優子さん、お願いがあります!」

香織さんがいきなり優子さんの手を握り叫んだ。

「ど、どしたの?香織、なにか悩んでるの?」

いきなりお願いされた優子さんは目を白黒している。

「真人さんはすいませんが少しここで待ってて下さい」

香織さんは優子さんの手を引いて部屋に入っていく。


時折、室内から二人の声が漏れ聞こえてくる。


・・・えっ・・・・ふた・・・っしょ・・あり・・・ござ・・


「お待たせしました。真人さん」

少し顔を赤らめた香織さんがオレを部屋に招き入れてくれる。

部屋の中では優子さんも顔を赤らめてもじもじしている。


えっと、これはつまりそういう事なのかな?



この件に関してオレには発言権はない。

うん、分かってたよ。



○こちらに向かってゆっくり歩いてくる集団を基地から見下ろす。

人数はだいたい50人ってとこか。

「予想より多くない?」

予想では20人ぐらいの予定だったよね。

「たぶん、食料や武器を持つ輸送部隊を連れて来たんでしょ」

マスターが指差す後方を見ると荷車を引く人達がいる。

なるほど。戦闘の為の体力温存って事ね。

「それより楽したいだけなんじゃない?」

どっちかっていうとそっちが目的かもね。

基地に続く道の周辺には30センチほどの溝が縦横に掘られている。

別に彼ら用に掘ったのではなく、ゴブリンなどが基地に近付くのを防ぐ為の溝だ。

溝の底には釘を打ち込んだ材木が転がっており落ちるとかなり痛い。

田中さんの島で見た車止めの応用だ。これを作ってからゴブリンが基地に近付いた事はない。

それなりに有効なのに基地周辺全域に張り巡らしていないのは、

「飽きるのよね、あれ作るのって」

マスターの言葉にみんながうなずく。

穴を掘って木を切って持ってきて釘を打って転がす。

穴を掘って木を切って持ってきて釘を打って転がす。

これの連続はかなりこたえる。


見ていると白いのがこっちを指差してなんか叫んでいる。

叫んでいるのだが、興奮して叫んでいるのでいまいち不明瞭でなにを言ってるか分からない。

優子さんならはっきり聞こえるんだろうなぁ。


「卑怯者とか言っとるんだろうな」

まぁ、そんなとこだろうね。

今、オレの周囲にいるのはマスターや田中さん、京子さんたちお姉さんメンバーだ。

優子さんも香織さんもいない。さとるさんもここにはいない。

優子さんたちはさとるさんをリーダーに遊撃隊として森に待機している。

さとるさん率いる遊撃隊は弓の得意な者を中心に10名。

弓が苦手なオレは田中さんとマスターが率いるこちらの本隊に配属されてしまった。

「はぁ~」

オレは大きなため息をつく。

「うん?どうした?」

「気にしちゃダメよ。どうせ、優子ちゃんや香織ちゃんと一緒の部隊が良かっただけなんだから」

見抜かれてるなぁ。

・・・ん?優子さんはともかく香織さんも?

「な、なんで知ってるの?」

まだ、香織さんとも付き合っているのは香織さんと同室となったさくやさん以外のギルドメンバーには内緒のはずだ。

「はぁ」

今度はマスターがため息をつく。

「あのねぇ、あんだけあからさまに熱い視線を交わしてたら誰でも気付くわよ」

そ、そんな!こっそりしてたつもりなのに!

「まったく毎朝毎晩どんどんごんごんして。手加減しないと2人とも壊れるわよ!」

ビシッとマスターに指を突きつけられる。

が~ん!

そんな事までバレてたのか!

恥ずかしくて困っちゃう。

「まぁ、ワタシたちにとってはいい娯楽ですけどね」

後ろで話を聞いていた京子さんは笑顔でサムズアップしてる。

えっ!京子さんたちにもバレてるの?

っていうか娯楽ってなに?

「始まるとドアの前はけっこうな人だかりですよ。気が付きませんでした?」

慌てて京子さんの後ろのお姉さんたちを見るが全員から目を逸らされた。

全員かよ!


「仲がいいのは良い事だが、節度は持つんだぞ」

がっくり膝を付いたオレの肩を田中さんが優しく叩く。


「あの2人をまとめてあそこまで堕とすとはさすが真人さん」

反対の肩を京子さんがバシバシ叩きながら笑う。


もう、許して。立ち直れなくなっちゃう。

ヒュン!

森の中から放たれた1本の矢が京子さんの足の間を射抜いた。

「・・・みんな、真人さんたちの恋愛を全力で応援しよう!」

額から汗を吹き出しながら京子さんが振り返る。

後ろのお姉さんたち全員が思いっきりうなずいていた。


「はいはい、お遊びはここまで!全員、気合いをいれなさい!」

マスターから厳しい声がとぶ。

あんたが始めたんだ!


ちょっと理不尽なものを感じるが立ち上がって前を見る。

白いドラゴニュートを先頭に自警団たちがこちらにじりじり近付いて来ている。

「全員落ち着いて号令に従ってくれれば大丈夫だ」

「いい!狙うのは腹部よ!手足や頭は動きやすいから狙わないように!」

田中さんとマスターの声が響く。

京子さんたちがその声にうなずく。

う~ん、さっきまでのふざけた空気が一変したな。


「真人ちゃん、お願い」

マスターの指示でオレは基地の脇に用意された柵を持ち上げる。

待機中に作られた移動式の逆茂木だ。

これを基地前方に設置して敵の突撃を防ぐ。

こちらは強力な複合弓を使い遠距離から攻撃を加えたい。

相手に接近されると体力的に劣るお姉さんたちに不利になる。

設置された逆茂木の前側にオレとマスターが陣取り、田中さんが逆茂木後方から弓で狙う京子さんたちに指示を出す。

廃墟からの食料調達と住民の監視をしてきた自警団に弓を持った者はいない。

彼らが弓を作ってもこの短期間で弓を習得するのは不可能だ。

うまくすれば、一方的に攻撃し続ける事が出来る。

「相手が接近してきたら無理せずに基地内に撤退するのよ!」

相手に接近されるのが一番怖い。

そのため基地内にも逆茂木を植え込んで設置している。

さらにさとるさんが遊撃隊を率いて敵の横腹から攻撃する予定だ。

それでも白いドラゴニュートや大男は突破してくるかもしれない。

そのときはオレとマスターが相手をする。

相手は周辺に掘られた溝を警戒して道を進んでくる。


「おとなしく女を渡せば攻撃はせん!女を渡せ!」

基地に近付いてきた白いドラゴニュートがこちらに吠える。

「どアホウ!渡すつもりならこんな事をする訳がないだろうが!」

田中さんが海で鍛えられた蛮声で応じる。

それを聞いた白いドラゴニュートの顔が一瞬赤くなったように見えた。

う~ん、田中さん挑発してるな~。

これも作戦だ。相手が冷静になればこちらが不利になるかもしれない。

出来るだけ相手には理性を失ってもらった方がいい。

「あんたもいい年だろうにわざわざ負けに来るとは、無駄な努力が好きだな!」

田中さんが大笑いしながら言い放つ。

それを聞いた白いドラゴニュートがますます興奮する。

「この人さらいどもめ!総員突撃!」

興奮した白いドラゴニュートが後ろを振り返って大声で叫ぶ。

それを聞いたマスターがこけそうになってる。

「ただ突っ込むなんて、ア、アホなの?あいつ?」

後ろの人たちは突然の突撃命令に顔を見合わせて戸惑っていたが、何度も白いドラゴニュートが突撃と叫ぶのでしぶしぶといった感じでこちらに向かってくる。

もしかすると何らかの作戦があったのかもしれないが、田中さんの挑発で我を失った白いドラゴニュートは突撃と叫ぶばかりだ。

なんの策もなく自警団の人たちがこちらに向かってくる。

「やれやれだな」

挑発した田中さんもここまで効果があるとは思わなかったのだろう。

呆れている。

後ろからの声に押されるようにこちらに近付いてくる自警団たち。

目印としていた電柱を彼らが越えた時に田中さんが号令を出す。

「弓、構え!」

その号令を聞いた京子さんたちが弓を引き絞る。

それを確認して、次の号令が出される。

「敵、狙え!」

田中さんがこちらに向かう自警団の右手に持った短槍で示す。

京子さんたちはその短槍が示す方向に狙いを付ける。

「よし、放て!」

田中さんの号令で京子さんたちが一斉に弓を放つ!

ゴウ!

一固まりになった矢が音を立てて自警団に降り注ぐ。

ろくに盾も用意していなかった自警団に矢が突き刺さる。

ドンッ!ザクッ!

肉に矢の突き刺さる音と共に自警団の一部が倒れ込む。

「弓、構え!」

衝撃で歩みの止まった自警団に向かい田中さんが冷静に指示を出す。

「敵、狙え!」

田中さんの短槍が今度は自警団の中央を示す。

「よし、放て!」

田中さんの号令で放たれた矢が自警団の中央に降り注ぐ。

ドンッ!ドンッ!ドンッ!

足の止まった自警団に矢が降り注ぎ、先ほど以上の自警団が地に倒れ込む。

身を屈めたり伏せていた為に矢から逃れた自警団の生き残りがじりじりと後ずさる。

「なにをしとるか!突撃だ!」

やはりドラゴニュートには矢は通用しないようだ。

何本かの矢が当たったのに白いドラゴニュートは無傷だ。

一番後方に陣取っていた大男も狙いの範囲から外れているのでダメージは無い。


じりじりと後ずさっていた自警団の後方にいた人たちが後ろを向いて逃げ出しはじめた。

「貴様ら!」

「こんな事やってられっか!ただ、立ってれば相手は降伏するって言ったじゃねぇか!」

逃げ出した人たちが白いドラゴニュートに罵声を浴びせる。

彼らが弓の射程範囲から逃げだした瞬間、後方に立っていた大男が持っていた鉄の棒を振るった!

ゴン!グシャッ!

鈍い音の後に湿った音が辺りに響く。

やつが振るった鉄棒に当たった人間は吹き飛ばされ倒れている。

「逃げる者は許さん!団長に従い突撃せよ!」

大男が逃げ出した団員に命じる。

それでも何人かの団員が大男の鉄棒をかわして逃げようとするが、大男は外見を裏切る素早い動きで逃げる団員に鉄棒を振るう。

だが、前に進めば矢が降り注ぐ。

後ろに逃げようとすると大男が鉄棒を振るう。

どうしようもなくなった団員が地面にへたりこむ。

その時、自警団の右側から大男に矢が降り注ぐ。

さとるさんたち遊撃隊が大男に攻撃を開始したのだ。

大男の右半身に矢が突き刺さる!

優子さんをはじめとする弓の名手が揃っているので、大男の右半身は突き刺さった矢だらけになった。

しかし、大男は矢が刺さっているのに揺るぎもしない。

大男は矢が飛んできた森をにらみつけ、そちらに突進しようとした。

だが、突進しようとした大男に別の角度から矢が降り注ぐ。

大男が突進しようとする度に角度を変えて森から矢が降り注ぐ。

それも矢で大男を倒すのが難しいと見るや足元を中心に狙っている。

大男の両脚はすでに突き刺さった矢で針ネズミのようだ。

さすがにそこまで矢が刺さると大男もキツいらしく、大地に膝をつく。

「おぉ、アキラ!大丈夫か!」

白いドラゴニュートが大男、アキラに駆け寄る。

駆け寄った白いドラゴニュートが傷付いたアキラとやらを抱きしめる。

ん?あれは心配したんだよね?

白いドラゴニュートと大男以外の自警団の人たちは矢を恐れ、頭を抱えて地面に伏せている。

「武器を捨てて降伏しろ!」

田中さんが大声で自警団に降伏を勧める。

その声を待っていたかのように団員たちが武器を投げ捨てる。


「ぬぅぅ。裏切り者どもめ」

それを見た白いドラゴニュートが唸っているが、すでに勝敗は決したのだ。

こちらは逆茂木の向こうから田中さんの指示で正確な攻撃を加える本隊と森の中を移動しながら自由に攻撃する遊撃隊がある。

いくらドラゴニュートに矢が通じなくても団員たちに矢は脅威だ。

これ以上戦えば、ドラゴニュート以外は全滅してしまうだろう。


「降伏する者は頭の後ろで手を組んで地面に伏せなさい!」

オレとマスターが先行して自警団を無力化する。

自警団の団員はおとなしく指示に従って地面に伏せる。

まぁ、元々似たような姿勢だったからね。

しかし、白いドラゴニュートと大男は地面に伏せようとしない。

大男は足に矢が刺さっているので地面に伏せるのはキツいだろう。

白いドラゴニュートは傷付いた大男を抱き締め地面に伏せた団員たちをにらんでいる。

「くそっ!貴様らが指示に従っていれば勝てたのだ!」

「もう、あんたには付き合えねえよ」

「助けられた恩があるから我慢してたがあんたにはうんざりだ!」

地面に伏せた団員たちがドラゴニュートを罵る。

「貴様らにはなにも分かっておらんのだ!俺の作戦に黙って従えばいいんだ!」

「作戦なんかねえくせによく言うぜ」

「立っていれば相手が勝手に降参するってのが作戦か?」

団員たちがドラゴニュートをバカにしたように笑う。

いや、バカにしてるんだろうな。

「貴様らと違い俺は神に選ばれた種族だ!俺は偉大なる竜の一族だぞ!」

ん?こいつ、なにを言ってるんだ?

「あれはどういう意味だ?」

オレは伏せている団員に聞いてみる。

もしかして、ドラゴニュートの一族とかがいるのか?

そんな話し友美さんはなにも言ってなかったけど?

「はっ!あいつの妄想だ。なにが竜だ。中身はトカゲじゃねえか」

う~ん、敗北のショックでちょっとおかしくなったか?

「いや、前から竜の一族とか言ってたぞ」

あっ、元々おかしいのか。

別にドラゴニュートに変異したのは選ばれたからじゃないはずだ。

変異がどのような仕組みで起こるのかは、まだ調査中だが少なくても選ばれたからではない。


「あなたたちも伏せなさい!」

マスターが弓を突きつけ命じるが白いドラゴニュートは従わず座ったままだ。

「勝てたのだ。勝てたはずだ。俺は竜の一族なんだ。選ばれたんだ。世界を支配するはずだ」

マスターの声がすでに耳に入ってないらしい、ドラゴニュートはぶつぶつ呟いている。

「ダメね。もう、射っちゃう?」

マスターが冷たい笑みを浮かべる。

その冷笑を見た大男がドラゴニュートを伏せさせようとするが大男の姿も目に入らないようだ。

それを見てマスターも呆れて首を振る。


森の中からさとるさんたちが出てくる。

みんな無事で良かった。

オレはみんなに手を振る。

優子さんや香織さんが手を振り返してくれる。

うん、うん。2人とも無事だ。

先頭に立つさとるさんを白いドラゴニュートがじっと見ている。

「そうだ。お前も竜の一族だ。選ばれた一族だ」

白いドラゴニュートはさとるさんを見て、またぶつぶつ呟き始める。


オレとさとるさんが意味不明な事を呟き続けるドラゴニュートとそのドラゴニュートに抱き締められた大男、アキラを囲む。

マスターたちが降伏した自警団団員を拘束していく。

「おい、降伏したんだから殺さないでくれ」

「おとなしく指示に従えば殺したりしないから安心しなさい」

マスターの言葉を聞いて団員たちはおとなしく拘束されていく。


問題はこっちだな。

白いドラゴニュートは完全に壊れたようだ。

じっと一点を見つめてなにかを呟いている。

それをアキラは哀しそうに見ている。

う~ん、どうしよっか、これ?


「よし!こちらに着いて来るんだ!」

両手を固く縛られ足にも逃走防止用にロープを掛けられた団員たちが田中さんに従い基地に向かう。

彼らはこれから事情聴取をされ解放される予定だ。

まぁ、解放しても町の住民を監視していたグループはこれからキツい人生が待っているだろう。


彼らは自分で自分の顔に泥を塗ったのだ。誰にも見えないが、自分では決して落とせない泥を。

その泥は周りの人が落とすしかないのだが、周りの人たちが落としてくれるかはこれからの彼らの行動次第だ。

誇りを失い己の欲望で行動した者の報いだろう。


「しっかし、どうします?これ」

白いドラゴニュートを見てさとるさんに相談するがさとるさんも難しい顔だ。

「真人、私たちは先に基地に戻るね」

優子さんたちは団員たちを監視しなくてはいけない。

「うん、気をつけてね」

一応、拘束してるが油断はしない方がいい。

「真人さんたちも気をつけてくださいね」

香織さんがオレをじっと見つめて言う。

なるほど、これはバレてもしょうがないな。

折を見てみんなに香織さんとも付き合ってる事を報告しないとな。

・・・すでにみんなにはバレてるみたいだけど、けじめは必要だよね。


「貴様だ。貴様がいなければ・・・」

白いドラゴニュートはそう呟くと抱き締めていたアキラの足に突き刺さった矢を数本まとめて引き抜いた。

突き刺さっていた矢を強引に引き抜かれたアキラが後ろに倒れ痛みでのたうつ。

苦しむアキラを無視して白いドラゴニュートは引き抜いた矢を握りしめ思いきり投げつけた。

「ぬぉぉお!」

さとるさんが素早く動いて矢を自分の体で受け止める。

「きゃっ」

ほとんどの矢はさとるさんが体で防いでくれたがそれた1本の矢が香織さんを掠める。

「香織!」

「だ、大丈夫です」

幸い投げられた矢は勢いがなく香織さんの腕を少し傷つけただけだ。

香織さんの腕から血が流れる。


ゴンッ!

オレの拳が白いドラゴニュートを殴り倒す。

ドラゴニュートの頭部には角状の突起があるので拳に突き刺さり血が吹き出す。

「俺は選ばれたんだ。俺は選ばれたんだ」

地面に倒れても、まだ意味不明な事をドラゴニュートは呟き続けている。

すでに殴られた事も理解出来ていないようだ。

オレは倒れたドラゴニュートの首を掴んで引き起こす。

「俺は選ばれたんだ。俺は竜の一族なんだ。世界を支配するんだ」

白いドラゴニュートは笑いながら呟き続ける。

「選ぶのは自分で世界じゃねえんだよ!」

オレはやつの頭を両手で握り締める。


両手に力を込める。

メキメキッ!


やつの頭部の鱗が割れていく。

「俺は選ばれた」


徐々にやつの眼球が頭から出てくる。

メキメキメキッ!


やつの頭部が徐々にオレの両手に挟まれて変形していく。

「俺は 選ば れた んだ」

やつの舌が口から伸び呂律が怪しくなる。

メキメキメキメキッ!


「お れ は え ら ば れ た」

変形し砕けた鱗から血が吹き出す。

メキメキメキメキメキッ!


「おぉ れぇ はぁ えぇ らぁ ばぁ 」

メキメキメキメキメキメキッ!


グシャッ!


やつの頭部がオレの両手の間で潰れる。

オレは頭部を失ったやつの死骸を地面に投げ捨てる。


「最後までバカなやつだったわね」

マスターがオレの後ろで呟いた。




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