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サバイバル  作者: 伊右衛門


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対立編3

○報告を聞いたギルド長の大先生は笑って田中さんの肩を叩いた。

「儂ならもっと早く交渉が決裂しとったよ。よくがまんしてくれた」

「いえ、あいつの話しを聞いとったらがまん出来なくなりましてな、申し訳ありません」

田中さんが頭を下げる。

それを見て大先生は優しい笑顔でうなずく。

う~ん、あいつと同じドラゴニュートなのに全然違うな。


「正義とはその者が思っとるような大それた事じゃないんじゃ。人に優しくする。約束を守る。自分と相手を大事にする。そんな当たり前の事の集まりなんじゃと儂は思う。そして、このギルドはそんな当たり前の事を大事にする集まりであってほしいと思う」

これからの事を話し合う会議の席の冒頭で大先生はみんなにそう言った。

その言葉に集まったギルドメンバーは全員がうなずく。


「私のせいでこんな事になってすいません」

こちらに移住というか亡命を希望した彼女が頭を下げる。

「いいのよ。あんなムカつくやつらなんだから、いずれ衝突してたわ。友美ちゃんのおかげで早く分かってありがたいぐらいよ」

マスターが彼女、友美さんにウインクする。

うん、やつらと仲良くするのは難しいと思う。


「やつらはどのぐらいで戻ってくるかな?」

一度、戻ったのは戦力を集める為と考えて間違いないだろう。

「そうねぇ。戻ってから戦力を集めて食料を集めて、こっちに来るのが最短で4日後ぐらいかしら」

マスターが友美さんに確認する。

「はい。それぐらいだと思います」

友美さんからの情報ではやつらの町にガソリンなどの燃料はほとんど残っていないそうだ。

なんでもやつらは市街地にバリケードを作って町を築いたのだが、市街地の為、耕作可能な土地がほとんど無い。家の庭などわずかな土地で畑を作ろうとしたが、あまり上手くいってない。

それでやつらは車に乗って近隣の廃墟から食料を集めているそうだ。

廃墟で食料を集める過程で生存者を発見すれば、自分達の町に連れて帰る。

それは偉いと思うけど、人数が増えると食料がもっと必要になる。

そうすると探索範囲を広げる。それで、また生存者を発見して連れ帰る。

そしてまた探索範囲を広げる。また生存者を発見する。必要な食料がさらに増える。

これの繰り返しだそうだ。

おかげで最初は100人ぐらいの人口だったのが、1000人ちかくまで膨れ上がったらしい。

最初の1人を助けたのでそれ以降も見捨てる事が出来ずに廃墟から食料を集める以上のスピードで人が増えた。


「なんで畑を作ったり動物を狩ったりせんのだ?」

廃墟から食料を集めるのはオレたちが早期に見切った方法だ。

供給されないからこの先減り続けるだけだ。

だから、オレたちは畑を作り獣を狩って生活している。

「最初は移住しようとの意見もあったんですが、人が増え続けて計画の練り直しが続いて実行できないみたいです」

オレたちは人口が増えるスピードと食料供給のバランスが取れているけど、彼らのそれはすでに破綻しているみたいだ。

それなのに食料調達の方法を変えないから、変なルールを増やしてその場その場で対応しているようだ。

「いい事から始まったのに悪い事になってしまい、対応出来ないんですね」

「はい、それに自警団がこのままの方法でもルールを守れば大丈夫だと考えているので・・・」

それで計画の変更が出来ない。計画の変更をしようとしても自警団が怖いので言い出せない。

う~ん、自分で自分の首を絞めてるのに気がついてないのか?

「彼らもこのままではいけないと感づいているんでしょうが、それを認めると自分たちの失策を認める事になるので認めたくないんでしょう」

しかし、手をこまねいている内に事態はどんどん悪化していき、すでに燃料も使いきり食料を探すのも徒歩で行っているそうだ。

そうなると探索範囲が狭まり発見できる食料も減る。

人口が増えた状態で発見される食料が激減したので配給は極端に減った。

そこでこれまである程度平等に配給されていた食料を町に対する貢献度によって区別するようになってしまったのだ。

「末期的だな」

腕組みした田中さんが唸るようにつぶやく。

「彼らはどうしたいんでしょう?」

香織さんの質問に誰も答えることが出来ない。

「自警団とやらはともかく、町の住民はなんとかしたいですな」

「こちらで受け入れるのは無理なんですか?」

優子さん、それは難しいと思うよ。

この周辺の人口は約500人。対してあちらの人口は約1000人。

しかも、食料に余裕が無い1000人だ。

移住して新たに畑を作っても収穫するまでの間に飢えてしまうだろう。

収穫出来るまで食料を援助できればいいのだが、こちらにも1000人もの人を数ヵ月飢えさせないだけの備蓄は無い。

オレたちは周辺の廃墟に充分な食料がある間に畑を作り収穫出来たからなんとかなってるが、周辺の廃墟の食料を食い潰した彼らにはもう手遅れだろう。

以前は人口が増えたらと思っていたが、いくらなんでも1000人もの人が一気に増えると収拾がつかない。

「じゃあ、見捨てるっていうの?」

優子さんがオレを泣きそうな目で見ている。

いや、唇が少し付きだされているから半分は怒ってるな。

オレもなんとかしてあげたいんだが、いい方法を思い付かない。

「島で受け入れるのは無理ですか?」

一縷の望みを託して田中さんに聞いてみる。

「・・・島でも人数が増えとった。受け入れるにしても100人ほど、がんばっても200人が限界だろうな」

そうだよな。

島の回りが豊かな海でも無制限に食料が湧いてくる訳じゃない。

200人の受け入れは島の人にもかなりキツいだろう。

「基地の食料ってどれぐらい余裕があるの?」

「依頼料は収穫時の支払いですから基地だけだとそんなに余裕はありません。受け入れられるのは50人ぐらいだと思います」

秘書の美咲ちゃんは基地の収支に一番詳しい。

美咲ちゃんがそういうなら基地での受け入れは50人だ。

「集落側で受け入れられる人数はどれぐらい?」

「そうですね。集落の人が了承してくれても500人が限界でしょう」

う~ん、ダメだ。最大でも800人弱しか受け入れられない。

200人以上の人を見捨てる事になる。


「いっその事、新しい受け入れ先を探した方が早いんじゃない?」

脳みそがパンクしそうなのでついぼやいてしまう。

「・・・なに?」

みんなの視線がオレに集中している。

「新しい受け入れ先ね」

いや、冗談だよ、マスター。

「彼らが収穫するまで数ヵ月では無く新しい集落を発見するまで、そうですね。1ヶ月と考えれば食料はなんとかなります」

「うむ、島でもそれぐらいならなんとか出せるじゃろう」

さとるさんと田中さんが真剣な顔で話し合ってる。

「いや、ただの冗談、思い付きだよ。新しい受け入れ先なんてあるかどうか分かんないじゃん」

新しい集落を探して1ヶ月旅をして見つからなかったら、どうすんの?

そこで飢え死にするよ!

「見つけるんです」

んな無茶な。それは無茶だよ。さとるさん。

「獅子のライカンスロープを覚えていますね」

もちろん、忘れる訳ないじゃん。

「彼もここでもあちらでもない集落から来たようでした。他にも集落があるのは確実です」

「でもどこにあるの?」

それが分からないとどうしようもないよ。

「だから、我々で探すんです。その間、彼らには待機してもらいます。島からも出来るだけ食料を供給してもらいます。全員は無理でも200名を受け入れてくれる集落を探すんです」

「200人をひとつの集落で受けれなくても分散して受け入れてくれればいいわ。その間に収穫出来るようになるから」

それでも無茶じゃないかな?

「幸い、彼ら自警団は周辺を探索済みです。彼らが探していない地域で集落がありそうなポイントを全て探します」

そんなポイント分かるの?

「水と耕作地があり周辺に大都市がある場所なら避難した生存者が集落を作っている可能性が高いでしょう」

「それに他の島もだな」

う~ん、それなら可能性あるかな?

「でも、受け入れてくれるかな?」

発見した集落に余裕が無ければ断られるんじゃない?

「こちらでも畑を拡大して増産します。最悪、冬の間だけでも受け入れてくれればいいんです」

呼び戻す前提なら受け入れてくれるかもしれないな。

人口の少ない集落は労働力が欲しいだろう。

一種の期間労働(でかせぎ)みたいな感じか。

う~ん、やるしかないか。

彼らがいやがったら諦めてもいいしね。

こちらがそこまでする義理はないだろう。


「ありがとうございましゅ」

オレたちの話を聞いていた友美さんが大きな声でお礼を言って泣き出してしまった。

・・・そういえば、オレたち自警団対策の会議をしてたんじゃなかったっけ?

なんで、彼らの町を助ける会議になってんの?

優子さんが彼らを受け入れようなんて言うから変な方向にいっちゃった。

オレは隣に座る優子さんを指でつつく。

「私じゃないもん。田中さんがなんとかしたいって言うから」

「いや、わしはなんとかと言っただけじゃよ。優子君が受け入れたいと言うから考えただけじゃ」

やっぱり~

オレはさらに指で優子さんをつつく。

「真人が新しい受け入れ先なんて思い付くからだよ」

あれ?オレのせいなの?

マスターやみんなの視線がじと~っとオレを見ている。

え~っと、すいませんでした。

「真人くんの提案は素晴らしいものでしたよ。他の集落の探索は必要でしたしね」

さすがさとるさんだ。分かってらっしゃる。

そうだよね~。他にも集落があるなら調べといた方がいいよね。

また、変な集落があるかもしれないもんね。


「はいはい。それじゃ、自警団対策に移るわよ」

マスターが手を叩いて会議を進める。

友美さんからの情報では自警団の規模はこちらより多い約100名。

人口の1割が自警団なのか。んじゃ、救うのは900人か?

「皆殺し前提で話さないの」

マスターにはたかれる。

「自警団の中にもいい人はいるんです」

泣いていた友美さんが慌てて自警団を庇う。

いや、冗談だからね。

「狙うのはあの白いのでいいかな?」

白いドラゴニュートが自警団団長なんだそうだ。

団長自ら最前線で友美さんを追っかけてたのか。

う~ん、アホなんじゃないのか?

自分ががんばっている姿を見せて部下を鼓舞していたのかもしれないが、指揮官が最前線に出てどうすんだろう。

自警団と名乗ってはいるがその仕事の内容は住民の監視だったそうだ。その合間に食料を探していたらしい。

食料を探してした人たちはまだまともな性格の人が多くて、こっそり食料を横流ししたりしてたそうだ。

「部下にも信用されてないのね」

マスターがため息をつく。

白いドラゴニュートとその取り巻きは食料を探す事は無く、ルールを作ったり住民の監視ばかりしていたそうだ。

だから自警団といっても監視部隊と食料調達班に別れている。

「新しい住人は信用出来ないと言って古くからいる人しか自警団にはいません」

助けられた人も助けられた恩があるので従っているが不満は多いそうだ。

う~ん、放っておいたら勝手に自滅してくれそうだな。

「じゃあ、あの白いドラゴニュートに従ってるのって何人ぐらい?」

「20人ぐらいだと思います」

全員で攻めてこられると厳しいが、それならなんとかなりそうだな。

「あたしが弓で攻撃したら片付くんじゃない?」

マスターが愛用している弓はさとるさんが作った複合弓なのでかなり強力だ。

「いえ、ドラゴニュートの鱗には通用しないでしょう」

さとるさんが自分の腕を見せながら説明してくれる。

ドラゴニュートの鱗は硬いだけじゃなく体表に沿って湾曲している。

矢が当たっても滑ったりはじいたりするので弓は効かないそうだ。

「ですから最後は接近戦になると思われます」

う~ん、さとるさんも見かけ以上に力があるし爪も鋭い。

接近されると危険だな。

「交渉の時にいたあの大きい男はどうなの?」

オレと同系統だと思うんだけどあれもオーガなのかな?

友美さんはあの大男とは話したことがないそうだ。

白いドラゴニュートといつも一緒に行動しているので右腕のような存在なのかな?

注意しないといけないだろうな。


彼らは友美さんを人さらいのオレたちから奪い返しに来るので、集落を攻撃する事はないと思うが万が一の事があってはいけないので、彼らがやってくる4日後は一時森や山に避難してもらう事にする。

集団で動けばゴブリンやホブゴブリンが襲ってくる事は無いので大丈夫だろう。

その事を集落に連絡したり、彼らの現状を説明して助けてくれるか聞いてみる。

多くの集落が出来る限りの協力を約束してくれた。ありがたい。




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