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崩壊した世界でみんなで楽しく生きていく〜サバイバル〜  作者: 伊右衛門


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対立編2

○オレたちは基地から少し離れたところに立つ10人程の集団を見ている。

「前もってあの子から聞いてはいたけど、似てるわね」

先頭に立っているやつの姿がさとるさんにそっくりだ。

鱗の色は白っぽいけど姿形はよく似ている。

「オレみたいなやつもいるよ。ほら」

オレが指差す先には大柄な男が立っている。

栄養不足の為か、やや細身だけどね。

「なに喜んでんのよ。おばか」

オレの後頭部をマスターが叩く。

「叩かなくてもいいじゃん」

オレとマスターがじゃれていると、2人揃って優子さんに叩かれた。

「2人とも静かに!」

優子さんに()()で注意されオレたちは静かにする。

オレたちが静かになったのを確認すると、すぐに優子さんは集団に注目した。

正確には注聴かな?


「どう?」

マスターにつつかれてオレはおそるおそる優子さんに聞いてみる。

「・・・彼女を返せの一点張りです」

彼らの前には交渉の為、さとるさんと田中さんが立っている。

彼女を返せと言われても、彼女はこちらへの移住を希望している。

一種の亡命者だ。それを渡すことは出来ないよね。

「あっ、戻ってきたわよ」

さとるさんたちがこちらに向かって歩いてくる。

彼らの集団も少しずつ基地から離れていく。

こっち、にらんでるけどね。

「どうなったの?」

オレの後ろから顔を出してマスターが聞く。

オレを盾にしないでほしいなぁ。

「物別れになっちゃった。2人に詳しい事聞こう」


「やれやれ、頭の固い連中だな」

基地に戻った田中さんが肩をすくめる。

交渉は上手くいかなかった。

彼らは彼女は罪を犯した者なので自分達に引き渡すように要求してきた。

しかし、ギルドとしてはそれは出来ない。

彼らの町が食料不足で困っているんなら彼女をこっちに渡してもいいと思うけどなぁ。

「僕たちもそれを提案したんですが、まったく聞き入れてくれませんでした」

「彼女を心配して追ってきた可能性はゼロなのね」

マスターも呆れている。

どうも彼らは彼女に罪を償わせる事だけが目的らしい。

「なんだか自分たちの正義に酔ってるような感じでしたよ」

なるほど。

「とりあえず、明日も交渉を続けてみましょう」

さとるさんはそう言うけど無駄じゃないかな~?

聞いた感じだと自分が正しいと信じちゃってるみたいだしね。

そういう人間に交渉は無理だと思うよ。

「真人さん、どういう事です?」

お茶を入れてきてくれた香織さんにオレの考えを説明する。

「う~ん、自分が正しいって考える人って自分と違う考えの人を邪魔者扱いすると思うんだよね」

自分は正しい。だから、自分に協力しないやつは悪いやつだ。

そして、自分たちは正しいからなにをしてもいいんだ。

そんな風に考えるんじゃないかな?

いつに間にか、みんながオレに注目していた。

「じゃあ、彼らはこちらを悪人だと思ってるの?」

優子さんが首をかしげる。

「たぶんだけどね」


その夜は厳戒体制で過ごす事になった。

彼らが女性を奪い返す為に基地に侵入するかもしれない。

基地の庭にかがり火を焚いてこちらが警戒している事を相手にアピールする。

警戒してればこちらに侵入しようとは思わないんじゃないかな?

オレもゲート代わりに使ってるバスの屋根の上で警戒する。

遠くの方でたき火の火が見える。

あそこで夜営してるのだろうか?

オレたちが依頼などで夜営する時はみんなで話したり結構楽しく夜営する。

彼らの夜営はどうなのだろう?

なにも声は聞こえない。なんかつまらない夜営をしてそうな感じがするなぁ。


「真人」

「真人さん」

後ろから優子さんと香織さんに声をかけられる。

「どしたの?2人とも。まだ交代まで時間あるよ?」

今夜は全員で交代しながら見張りをする事になった。1人あたりの見張り時間を短くして負担を減らす作戦だ。

だから、優子さんも香織さんも交代時間はもっと先のはずだ。

ふたりはオレが座るバスの上に登ってくる。

「真人、朝まで見張りするつもりでしょ」

優子さんがオレの顔を覗き込む。

「真人さんも休まないといけませんよ」

香織さんがオレの隣に座る。

「だから、香織と相談してここで交代で見張る事にしたの」

優子さんは香織さんの反対側に座る。

う~ん、見抜かれてるなぁ。


優子さんと香織さんがひとつの毛布にくるまって寝転ぶ。

「やっぱり香織のお胸、気持ちいいね」

「優子さんの胸も気持ちいいですよ」

・・・2人とも毛布の中でなにしてんの?

いや、寒いから抱き合ってるだけなんだけど、気になるなぁ。

「真人、どしたの?」

「寒いんなら毛布に入ってくださいね」

お気持ちは大変ありがたいんだけど、毛布に入ると見張りどころじゃなくなるのは目に見えている。

「いや、遠慮しとくよ」

オレはちょっと2人から距離を取る。

優子さんがいい匂いなのは知ってるけど、最近香織さんからもいい匂いがするんだよなぁ。

これも変異の影響か?


しばらくすると2人から寝息が聞こえてきた。

そっと、優子さんと香織さんの顔を覗き見る。

2人とも、タイプは違うけど美人だよなぁ。

それに優しいし、いろいろな事が出来る2人だ。

そんな2人がオレを想ってくれている。

つくづく幸せだ。そんな2人を護りたい。

その為にならオレはなんでもするだろう。


そう、たとえ人殺しだろうとも・・・


「もう、起こしてくれればいいのに」

優子さんの唇が少し尖る。

「交代で来たのにすいません」

香織さんはちょっとしょげてしまった。

2人の寝顔があまりに美しく、それを眺めるのがあまりにも幸せだったので起こせなかったんだよ。

2人の寝顔を見続けてオレの方は気力満タンだから問題はない。


昨夜は結局、侵入は無かった。

しかし、油断は禁物だろう。

自称自警団の連中がこちらに向かってくる。

「交渉を続けたいなら代表者を出せ!」

先頭に立つ白いドラゴニュートが大声を出す。


「えらそうなやつだなぁ」

オレは朝食代わりの焼いたシシ肉の固まりをかじる。

「交渉したくないなら帰ってもらっていいのにね」

隣で優子さんもシシ肉で朝ご飯だが、こちらは上品にナイフで削いで食べている。

しばらく香織さんがオレをじっと見ていたが諦めたみたいだ。優子さんと一緒にシシ肉を食べ始めた。


自警団と再度、交渉を行う事になった。

彼らが基地内に入るのを警戒した為、交渉は近くの廃屋で行われる。

交渉場所より半径50メートル以内には近づかない。

お互いに丸腰。参加者は双方4名までとする。

などの相手からの要求を受け入れる。

参加するのは昨日交渉したさとるさん、田中さんにオレとマスターが警護につく。

しかし、生存者に会えたのに全然うれしくならないとは思わなかったなぁ。


廃屋内の邪魔なものを軽く掃除して交渉が始まった。

向こうのメンバーも4人だ。白いドラゴニュート、オレに少し似た大男、神経質そうな細身の男に少し年長の男性だ。

・・・なんかこっちに合わせたような面子だな。

「あの女は食料を盗み、罪も償わないで逃げ出した罪人だ。こちらに引き渡してもらおう」

「昨日も言ったように彼女はこちらへの移住を希望しています。引き渡す事は出来ません」

白いドラゴニュートの要求をさとるさんが突っぱねる。

さとるさんはなんとか妥協点を見いだそうとし、田中さんはそれを静かに聞いている。

「そちらでは食料不足になっていると聞いています。彼女をこちらが引き取るのはそちらにもメリットになるはずですよ」

「引き渡すのはあの女が罪を償ってからだ。罪を償うまでは渡す事は出来ん」

それからも白いドラゴニュートは彼女を返せ、罪を償わせろの一点張りで交渉にならない。

さとるさんはなんとか妥協点を見いだそうとしているが、これって交渉決裂してんじゃない?


「罪を償わせろとあんたは言うがあの子になんの罪があるんだね?」

静かに交渉を聞いていた田中さんがドラゴニュートに質問する。

「あの女は町の食料を盗んだのだ。それが罪でなくてなんだと言うんだ!」

ドラゴニュートが大声で田中さんに迫るが、田中さんは涼しい顔で話を続ける。

「ふむ。あの子が食料を盗んだのが罪ならあの子を飢えさせた者の罪はどうなるんだね?」

「我々は全力で町の住人を守っている。耐えきれんあの女が悪いのだ」

「あんたたちの町では仕事に応じて食料を配給しとるそうだが、その配給する食料の量はだれが決めとるんだね?」

「住人の合意のもと、我々が決定している!」

「合意というがあの子は合意しとらんようだぞ」

「それはあの女がわがままだから悪いのだ!」

「飢え死にせずに生きたいというのがわがままなのかね?」

「仕事をすれば飢える事はない!」

「しかし、仕事をしても食料の量はあんたらが決めるんだろうが」

「他の住人は合意している!」

「あの子は合意できんからここに来たんだ。すでにあんたらの町の住人じゃない。よって、あんたらに引き渡す事は断じて出来ん!」

田中さんが机を叩いて宣言する。

「貴様ら、それでは人さらいではないか!」

「あの子は自らの意思でここに来た。すでに我々の仲間だ。それが全てだな」

田中さんが笑って答える。


さとるさんが小さくため息を吐く。


うん、オレにも分かった。

さとるさんは相手を攻めずに交渉しようとしていたが、田中さんは相手の問題点や矛盾を攻めている。

う~ん、これって交渉じゃなくケンカを売ってるよね。

そうなると、

「もはや、交渉もこれまでだ。力ずくでもあの女を連れ帰り罪を償わせる!」

うん、こうなるよね。


白いドラゴニュートが荒々しく扉を開いて仲間たちの元に戻っていく。

「すまなかったな。せっかく、さとる君ががんばっているのを無駄にしてしまって」

田中さんがさとるさんに頭を下げる。

「いえ、合意点も妥協点もありませんでしたから田中さんの決断に助けられました」

あいつ、全然妥協する気無かったよね。

「大先生の方にはわしから報告するよ。わしの短気で決裂してしまったからな」

・・・もしかして、田中さん、さとるさんをかばう為に自分で交渉を決裂させたのかな?

あいつとの交渉が上手くいく可能性は限りなくゼロに近かっただろう。

いずれ決裂するのなら自分の責任にした方がいい。

そう考えたんじゃないかな?

う~ん、(オトコ)だ。


怒った白いドラゴニュートがそのまま基地に突撃するのを少し期待していたが、さすがにそこまでバカじゃなかった。

交渉場所だった廃屋から出てきたオレたちを睨み付けると、

「貴様らを絶対に許しはせん!この人さらいども!」

そう叫びながらものすごい早さで基地から遠ざかって行った。

・・・それを言う為にオレたちが出てくるのをわざわざ待ってたのか?あいつ。

「・・・追っかけて襲っちゃわない?」

マスターの提案に思わずうなずきそうになる。


「・・・いや、報告が先だ」

「・・・そうですね。まずは報告しないといけませんね」

2人とも明らかに逡巡したよね~



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