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崩壊した世界でみんなで楽しく生きていく〜サバイバル〜  作者: 伊右衛門


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対立編1

○現在、基地はちょっとした騒動に巻き込まれている。

ことの起こりは数日前の事だった。


「香織、ほんとにこっちに引っ越さないの?私に気を使わなくていいんだよ」

優子さんが香織さんに訊ねている。

「いいんです、隣ですしさくやさんを1人にするのもかわいそうですし」

「でも、真人と一緒にいたいでしょ?」

優子さんが香織さんをひき止めている。

オレも香織さんはこの部屋に住むと思っていたので離れるのはさびしい。

「ずっと一緒にいるとわたしダメになっちゃいますよ。絶対!」

香織さんが優子さんに笑いかける。

う~ん、その可能性は否定出来ないな。

「隣ですし部屋にいる時は毎朝必ず来ますから。ねっ、真人さん」

香織さんがオレを見てにっこり笑う。


「う~ん、それじゃ交互にこの部屋に泊まる事にしよっか?」

「いえ、わたしはまだ初心者なのでそれだと壊れてしまいますから、3回に1回でどうです?」

「それじゃ、私が壊されちゃうもん。2回に1回!」

なんかオレを押し付けあってない?

「真人、最近、手加減しなくなってるもん」

「あ~、分かります。あれはスゴすぎますよね」

2人が深くうなずきあっている。

「気持ちいいからイヤじゃないけど、私おかしくなっちゃうもん」

「わたしもおかしくなりました。わかりました。2回に1回、がんばってみます」

「やった。香織ありがとう」

優子さんが香織さんに抱きつく。

「でも、わたしがキツい時は優子さんが助けてくださいよ」

「うん。絶対助ける」

「あっでも、それなら2人でならなんとかなるんじゃ?」

「う、う~ん、恥ずかしいけど香織がいいなら私はいいよ」

「一度、試す価値はあると思います」

「そうだね、一度試してみようか?」

「試して有効そうなら2人の日と交互にしませんか?」

「そうだね、香織、頭いいね」

優子さんと香織さんが抱き合って喜んでいる。

なんか妙な感じにまとまってきたな。

「あの、すいません。オレに発言権は?」

オレは汚してしまった床を雑巾がけしながらそっと聞いてみる。

「あると思う?」

「ないと思いますよ」

速攻で否定された。

わかってたからいいんだ。

なんでだろう?とっても幸せなのにちょっと涙が出そうなのは?

うん。がんばろうな。オレ。

絶対に負けないぞ!


まぁ、そんな感じでオレたちの新しい生活がはじまった。

詳細はまた後日に説明するけど、もちろん騒動はこの事じゃない。


「するとパネルなどがあれば電気が使えるようになるんだね?」

田中さんがさくやさんに確認する。

「はい、大丈夫です~」

さくやさんがうなずく。

「でも、ここは広いので住宅用のパネルじゃなく工場なんかで使ってる大きなパネルが必要だと思いますよ~」

「そんなに大きな物を運ぶには大型のトラックが必要だな。燃料はどうかね?」

田中さんがマスターに確認する。

「う~ん、ガソリンは難しいけど軽油ならなんとかなると思うわ」

みんなで相談しているのはここにソーラーパネルを設置して電気を復活させる計画だ。

なんとなくのんびりした性格だから想像出来なかったけど、さくやさんは工業大学を優秀な成績で卒業した才媛だったのだ。

さくやさんは山中で1人で暮らしていた時も自分でパネルを設置して電気を使用していたそうだ。

だから、1人でも山で暮らす事が出来たのだ。

ギルドに加入してくれたさくやさんから基地にパネルを設置して電気を復活させる提案がなされた。

「わしらではなにが必要なのかが分からんな。さくやくんすまないが材料探しも協力してくれるかね?」

ギルドの実務面の責任者である田中さんがさくやさんにお願いする。

「もちろんです~」

さくやさんを中心に特別チームの編成がされた。

まずはリーダーのさくやさん、柄じゃないって言ってたけどね。

そして、さくやさんを護るのにオレとマスター、そして京子さんが選ばれた。

「真人ちゃんはともかく、なんであんたが一緒なのよ」

「高いとこに手が届くからじゃないですか?」

マスターと京子さんがにらみ合う。

京子さん、マスターより背が高いんだよね。スリムだからモデルさんみたいだ。

まぁ、加入したばかりのさくやさんを男だけでガードするのも問題だろうしね。

優子さんや香織さんを選んでもいいんだけどさすがに幹部3人が抜けると依頼達成に支障がでてしまう。

優子さんの弓の腕前は基地で一、二を争う腕だし看護師としての仕事もある。

香織さんは基地随一の罠の名手だ。香織さんも抜けるのが難しい。

そうなると、次期幹部候補の京子さんが一番だろう。

戦闘力の高いマスターに何事もそつなくこなす万能型の京子さん。

オレは荷物持ちってことか。


「さくやくんたちは電気の復活を最優先で行ってもらおう。それでいいですかな?」

田中さんがギルド長の大先生に確認する。

「みな、大変だろうが無理はしないでくれ。電気よりみなの方が大事なんじゃからな」

大先生の言葉に田中さんもうなずく。

「大丈夫よ。無理なんかしないわ」

「そうですね。無茶をするのは1人で充分ですしね」

2人の視線がオレに注がれる。

「オレ、無茶も無理もした事ないじゃん」

オレの言葉に2人だけじゃなく田中さんたちまでため息をつく。

なんで?


オレたちが今後の計画を相談していると外が騒がしくなってきた。

「大先生、大変な事になりました。こちらに来てください」

部屋に優子さんが駆け込んでくる。

優子さんはさとるさんたちと一緒に妊婦さんの定期検診に行っていた。

集落の人の検診もするので帰りは明日の予定のはずだ。

「妊婦さんになにかあったの?」

オレの質問に優子さんは首を振る。

「ううん、妊婦さんは母子ともに順調だよ」

良かった。妊婦さんになにかあったのかと思った。

「じゃあ、なにがあったのよ?」

マスターの質問に優子さんは困った顔だ。

どういう事だろう?

「とにかくみんな来て」

オレたちはみんなで大広間に向かう。


広間のソファのそばにさとるさんがひざまついてソファに座る女性を見ている。

ん?だれだろう?集落の人かな?なんかえらくやつれてるけど。

「あぁ、ギルド長、みなさん、少し困った事態になりそうです」

さとるさんが広間に集まったオレたちに説明してくれた。

「まずはこれを見てください。お願いできますか?」

さとるさんに声をかけられた女性がそっと自分の腕をオレたちに見せる。

そこには手錠がかけられていた。

「なんだね?これは」

田中さんがさとるさんに質問する。


さとるさんや優子さんはいつも通りに集落で検診をしていたそうだ。

検診そのものは特に問題なかった。

「少し、風邪気味な人がいたぐらいだったの」

その時、検診していたさとるさんたちのとこに数人が駆け込んできたそうだ。

その人たちは集落から少し離れた畑で作業していたそうだ。

そうすると森の方から、がさがさと音がした。

最初はゴブリンかと思ってさすまたと弓を準備して待ち構えたそうだ。形状的にさすまたと名付けているが内側に鋭く削った大きな釘を打ち込んだ凶悪な代物だ。

そのさすまたで押さえこんで弓で射れば集落の人でもゴブリンが少数なら相手ができる。

ギルドが教えたやり方だ。

彼らはそのまましばらく警戒したが、それ以降なんの音もしない。

逃げたのかと思って森の中を確認すると、さきほどの女性が倒れていたそうだ。

両手に手錠をかけられて。

さとるさんたちが検診に来ている事を知っていた彼らは大慌てで意識のない女性をさとるさんたちのもとに運んだのだ。

診断の結果、女性は過労で意識を失っているようだったので目が覚めるのを待った。

しばらくすると女性の意識が回復したのでさとるさんと優子さんが事情を聞いた。

さとるさんに姿にひどく怯える女性をなだめて聞いた事情は驚くべきものだった。

それで、さとるさんたちは検診を中止して急いで基地に戻って来たのだ。


「みなさんにもう一度説明してくれますか?」

さとるさんに声をかけられ、女性が事情を教えてくれた。

この女性はこの周辺の集落ではなく別のとこから逃げてきたそうだ。

別のとこの生存者ってだけでも驚いたけど、彼女の住む集落の話はもっと驚くべきものだった。

そこでは自警団によって食料などが完全に管理され仕事に応じて住民に配給されているそうだ。

しかし、特に技能が無く雑用のような仕事しか出来ない女性への配給は少なく生きるのも難しいほどだったらしい。

それで彼女は食料を盗んでしまったそうだ。もっとも、盗んだといってもオレたちからすれば1人前どころか半人前にも満たない量だ。

それを見つかった彼女は手錠をかけられた。

そして、そのまま仕事をするように命じられたのだ。

両手が自由でも充分な食事が出来なかった自分が手錠をされて生きていける訳がない。

そこで彼女は半ば自殺するような気持ちでその町から逃げ出したそうだ。

しかし、自警団は逃げた彼女を追いかけてきた。

途中で川を見つけた彼女は意を決して飛び込んだ。

学生時代に水泳部に所属していた彼女はなんとか溺れずに川を渡った。

山中をさまよい、ようやく人の姿を見つけ安心すると意識を失ってしまったそうだ。


「つまり、君は食料を少し盗んだだけでそんな手錠をされたのかね?」

田中さんが優しく女性に確認する。

「食料を盗む事は悪い事だと分かっていたんですが、空腹に耐えきれず思わず盗んでしまいました」

彼女は両手で顔を覆い泣き出す。

その時も手錠がじゃらじゃらと不快な音をたてる。


「まぁ、食料を管理するも配給制にするのも悪い事ではないんですが、住んでいる人が生きるのに不安になるほどの管理はやり過ぎです」

ギルドでも一応食料は管理してるし食事も食堂で配給するみたいなもんだけど、そことは全然違う。

もちろん我慢は必要だけど、ここではみんなが満足なだけ食べている。

「ワタシなんかギルド生活で太ったぐらいだよ」

京子さんが自分の脇腹を撫でながら独白する。

何人かのお姉さんたちがギクッとしたなぁ。

ここではお肉が主食みたいなもんだからね。

「私たちの町では仕事をしないと配給もありません」

「それでは休みも無いのですか?」

さとるさんの質問に彼女はうなずく。

う~ん、いやな町だなぁ。

「その自警団とやらは、完全に住民を管理したいようだな」

田中さんがあきれた声をだす。

「最初はそこまで厳しくなかったんですが、どんどん決まりが増えて厳しくなっていったんです」

女性が涙をぬぐいながら教えてくれる。

彼女の手が動く度に手錠が不快な音をたてる。

「あの手錠、じゃまだなぁ」

「うん、私たちもいろいろ試してみたんだけど、鍵が無いとどうしようもないみたいなの」

優子さんの言葉からあの手錠はおもちゃじゃなく本物みたいだな。

でも、鍵はいらないんじゃないかな?

オレは彼女に近づき手錠を指でそっとつまむ。

「あ、あの」

女性がオレの行動に戸惑う。

「これ、取ってもいいですか?」

「真人ちゃん、外せるの?」

マスターや優子さんが覗き込んでくる。

「たぶんね」

オレは指先に力を込めて慎重に手を広げていく。

手錠から奇妙な音がする。

バキンッ!

すると、手錠が引きちぎれた。

「あ~、力づくなのね」

優子さんが呆れた声を出す。

外れたから問題ないでしょ。

「真人ちゃん、また、力強くなったんじゃない?」

マスターがオレをつつく。

両手の手錠を引きちぎり女性を解放する。

「ありがとうございます」

女性は涙を流しながら頭を下げた。


「そんな生存者の集団がいるとは信じがたいな」

「ええ、そこまで住民を管理するのは異常ですね。おそらく、初期のゴブリン化の影響でしょう」

田中さんとさとるさんが話し合う。

女性は優子さんが食堂に連れていった。

まずは食事、それからお風呂に入ってもらう。

これ以上の話は彼女が落ち着いてからだ。

「でも、その自称自警団ってのの追っ手が気になるわね。どの程度追ってくるかしら?」

彼女が川に逃げ込んだ時点で諦めてくれてるといいけど、そうじゃなかったら面倒な事になるだろう。

「大先生、もし追っ手がここまで来たらどうしますか?」

田中さんが大先生に対応を確かめる。

「そんなの決まってるじゃん」

オレの発言にみんなの視線が集まる。

「彼女は悪い事なんてしてない。悪いのはそこまで追い詰めた方でしょ」

彼女が食料を盗んだのは飢え死にしない為だ。

それを罪というのは違うと思う。

「真人君の云う通りだ。彼女に罪はない」

大先生がオレの言葉にうなずいてくれる。

「それは追っ手が来てもですね?」

彼女を食堂に案内した優子さんが戻って来て大先生に確認する。

「もちろんじゃ。なんの罪もない女性を見捨てるつもりはないぞ」

大先生が優子さんの言葉にはっきりとうなずく。

「みなもそれでええかな?」

大先生の言葉に全員がうなずいた。


それから3日後、やつらがやって来たのだった。


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