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崩壊した世界でみんなで楽しく生きていく〜サバイバル〜  作者: 伊右衛門


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冒険者編9

○オレは依頼を果たす為に近くの集落に向かっている。

最後尾を歩くオレの前には3人の女性が歩いている。

先頭を歩くのは香織さんだ。そのすぐ後ろを二人の女性が歩いている。

オレは香織さんの後ろ姿を見ながら、心の中でため息をつく。


香織さんの事が嫌いなのかと問われれば否と答えることが出来る。

では、好きなのかと問われても応と答えられる。

だが、愛しているのかと問われると今のオレは答える事は出来ない。


香織さんは優しいし礼儀正しく素敵な人だと思う。

香織さんを抱けるかと考えれば、オレも男なので抱くことは出来る。

香織さんの肉感的な肢体は素晴らしいと思う。

でも、これは欲情であって愛情では無いのではないだろうか?

ただの欲情で香織さんを抱けばそれは香織さんを道具として扱ったやつらと同類になってしまう。

それでは香織さんもオレも決して幸せにはなれない。

それがオレを躊躇わせているのだ。


そもそも香織さんがオレに好意を抱いているかすら正確には確かめた訳では無いのだ。

優子さんは間違いないって断言していたしオレ自身香織さんに嫌われているとは思えない。

でも、それは香織さんの優しさや感謝であって好意では無いのかもしれない。


優子さんにはがんばれって言われたけどどうすればいいのやら。

オレには優子さんがいるけど香織さんも好きだから付き合ってくださいって言うのか?

はぁ~

オレは内心で本日、何度目かのため息をつく。


先頭を歩く香織さんが立ち止まって地面を調べている。

罠が得意な香織さんは動物やゴブリンなど変異体(モンスター)の痕跡を見つけるのが得意だ。

なにか見つけたのだろう。

オレたちは周囲を警戒しながら香織さんの回りに集まる。

「これ、ゴブリンにしては大きいですよね」

香織さんが地面に薄く付いた足跡を指差す。

香織さん、こんなうっすらした足跡を歩きながらよく発見出来るな。

足跡を見てみると確かにゴブリンにしては大きすぎる。

しかし、トロールほどは大きくない。

「ホブゴブリンかな?」

「えぇ、その可能性が高いと思います」

かつて、オレたちがキャッホーと呼んでいたやつらは現在完全に変異してしまい、もはや人間だった面影は無い。

すでに知性もほとんど失い山野を徘徊している。


今回の依頼はゴブリンにしては大型の個体を見かけたので退治してほしいとの依頼だ。

どうやら、探していた目標を発見したようだ。

「香織さん、足跡を追える?」

オレの目には香織さんが指差している足跡しか見えない。

他の2人も同じようだ。

そうなると香織さんしか追跡する事は出来ない。

「はい。大丈夫です」

香織さんは微笑んでうなずいてくれた。


今度は香織さんを先頭にオレが右後方よりついていく。

2人のお姉さんたちは香織さんの左後方だ。

オレの槍は右から振るわれる事が多い。

そして弓は左側を射る方が容易だ。

この隊形なら対応がしやすい。これも経験から生み出された知恵だ。


オレたちは足跡を追跡する香織さんをカバーしながら歩いていく。

ゴブリンは数頭から10頭程度の群れを作って生きているが、ホブゴブリンは基本的に単独で行動する個体がほとんどだ。

群れていても精々2頭から3頭程度の群れしか作らない。

人間だった頃に身勝手に生きてきたやつらが多いので集団行動が苦手なのだろうか?

今回のホブゴブリンは単独で行動している個体のようだ。

ホブゴブリン1頭に4人は多いかもしれないが、ギルドの規則で依頼は最低でも4人で受ける事になっている。

4人で行動すればだれか1人になにかあってもカバーする事が出来る。

それにトロールなどの強力な変異体(モンスター)が相手でも4人いれば最悪逃げる事は出来ると考えての規則だ。

あまり大人数で行動するとゴブリンなどは逃げてしまってかえって探すのに時間がかかる。

少人数で行動するとなにかあった時が危険になる。

いろいろ考えた結果、4人での行動が最適だと分かった。

基本的に4人の中にはだれか幹部が1名以上入る事になっている。

今回は大きな個体との情報が事前にもたらされた事から、念のためにオレと香織さんの2人が入っている。


「やっぱりホブゴブリンは警戒心が強い個体が多いみたいですね」

山から流れる小川の前で香織さんがため息をつく。

ホブゴブリンは発見さえしてしまえば少数なので倒す事は難しくないのだが、ゴブリンに比べ警戒心が強く発見するまでの時間がかかる事が多い。

今回のホブゴブリンも警戒して小川の中を歩いて移動したようだ。

「また夜営する事になりそうだなぁ」

今回の獲物はホブゴブリンだと予想していたから依頼をした集落には夜営中の食事なども依頼料に上乗せしているのでオレたちに損は無いのだが、面倒くさくてうんざりする。

オレはやっぱりホブゴブリンは嫌いだ。


オレたちは山中の岩影で夜営する事にした。

周囲を岩で囲まれているので上を木の枝で適当に覆ってしまえば充分な寝床になる。

持ってきた燻製肉や野菜を使って香織さんやお姉さんたちが鍋のようなものを作ってくれた。

すごいなぁ。オレ1人だとこれをそのままかじるだけの食事になっただろう。

焚き火を囲んで談笑しながら美味しくごちそうになる。

相談してオレとお姉さんが先に休み、香織さんともう1人のお姉さんが後から休む事になった。

毛布にくるまり地面に横になり目を閉じる。

ふと、なにかを感じて目を開けると香織さんがこちらをじっと見ていた。

いきなり開いたオレの視線と香織さんの視線が絡み合う。

「おやすみなさい」

「はい、ゆっくり休んでくださいね」

オレは先ほど見た香織さんの瞳の事を考えながら眠りに落ちた。

あの目ってやっぱりそうなのかなぁ?


オレたちは夜半になって香織さんたちと交代した。

香織さんたちが眠りに落ちるまで静かに焚き火の番をする。

しばらくして香織さんたちから寝息がし始める。

眠れたようだ。

こういう夜営では眠れない人もいるので寝てくれて良かった。


「ねぇ、真人さん、今回えらく香織を見てません?」

一緒に見張りをしている京子さんに突っ込まれた。

「そうかな?」

そんなつもりは無いんだけど、無意識に視線で追ってるかもしれないな。

「まぁ、香織が真人さんを見てるのはいつもの事なんですけどね」

「そうなの?」

オレは全然気づいてないんだけど。

「えぇ、いつも見てますよ」

京子さんが深くうなずく。

京子さんはギルドのお姉さんたちの中で最も身長が高くスリムでスレンダーな人だ。

今後、幹部を増員する事になったら間違いなく選ばれるであろう人でもある。

結構、同じパーティーを組む事が多いので気軽に話す事が出来る人なんだよね。

「う~ん、それってやっぱりそうなのかなぁ?」

オレは頭をバリバリかきながら、京子さんに聞いてみる。

「いや、ワタシの口から言えませんけど間違いなくそうじゃないですか」

いや、京子さん、ほとんど言ってるよね、それ。

「でも、真人さんには優子さんがいるから香織もキツいですね」

京子さんは焚き火を弄りながら香織さんを見ている。

「う~ん、それが優子さん的にはありらしいんだよね」

オレは声をひそめて言ってみる。

これって第三者的にどうなん?

「あぁ、さすが優子さん。正妻の貫禄ですね」

感心したように京子さんがうなる。

「いや、そういうのとも違うみたいなんだけどね」

優子さんは正妻とか考えてないと思うよ。

「でも、優子さんがありならいいんじゃないですか?ワタシは優子さんに賛成しますよ」

「そうなん?2人と付き合うなんて反対なのかと思ったけど?」

普通なら反対するんじゃないだろうか?

「う~ん、全員が賛成するかどうかは分かりませんけど、ワタシはいい考えだと思いますよ」

そういうもんなのかなぁ?

「ワタシは愛情は増えると思っていますから」

あぁ、そういえば京子さんはピンク色の家に住んでたな、3人で。

「いや、ワタシは別に男性が絶対にダメって訳じゃないんですよ」

そこは個人の自由だと思うからいいけどね。

「でも、香織さんをどうすればいいのか分かんないよ」

このままじゃダメってのは分かっているんだけどね。

「真人さんは香織が嫌いなんですか?」

「そんな訳ないじゃん」

オレ、嫌いな人間に優しく出来るほど人間出来てないよ。

「んじゃ、いいんじゃないですか?」

京子さんが首をかしげる。

「いくらなんでも乱暴すぎない、その結論?」

嫌いじゃなければいいんじゃ、ギルドのメンバー全員が対象になっちゃうよ。

「真人さんはなにを悩んでるんですか?」

京子さんにオレの悩みを聞いてもらう。


「欲情で付き合ってもいいと思いますよ」

「いやいや、それはいくらなんでも香織さんに失礼だよ」

それじゃ香織さんを自分の快楽のために使うようなもんだと思う。

「香織が真人さんを愛してるんなら問題なしですよ。欲情で抱いても香織は喜ぶでしょうし、そこから愛情に発展するかどうかは香織次第だと思いますよ」

「確かに愛情に発展するかもしれないけどしなかったらどうすんの」

そしたら香織さんはツラいだけなんじゃないかな?

「それはむしろ香織に対して失礼ですよ」

どういう事?

オレの顔を見て京子さんが説明してくれる。

「真人さんから愛情を勝ち取れるかは香織の問題ですし、真人さんがそこを疑うのは香織の覚悟を甘く見すぎですよ」

う~む、そうなのだろうか?

でも、京子さんも結構変わった思考回路してるからなぁ。

どうなんだろ?

なんかこんがらがってきた。


空がだんだん白み始める。

「はぁ、京子さん、ちょっと頼める?」

オレは立ち上がる。

「どうしたんです?薪ならありますよ?」

オレはごそごそギルド支給の袋をあさってスコップを取り出す。

「あぁ、トイレですか」

京子さんはそれを見て察してくれたようだ。

「なんかいろいろ考えすぎたから吐き出してくる」

「ごゆっくりどうぞ」

手を振る京子さんに手を振り替えし、離れた藪に向かう。


「京子さ~ん、なんて事言うんですかぁ」

「タヌキ寝入りの上手いお嬢さんの気持ちを代弁してみただけだけど?」

ワタシは香織ににらまれるが肩をすくめてみる。

大丈夫、大丈夫。3人までなら同時に愛し合えるから。ワタシが保証する。




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