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崩壊した世界でみんなで楽しく生きていく〜サバイバル〜  作者: 伊右衛門


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冒険者編7

○「なるほど、お話は分かりました」

田中さんからこれまでの詳しい説明を聞いた若社長はうなずいている。

「山賊が出るなんて、そちらもなかなか大変だったんだね。みなさんが無事で良かったよ」

若社長とこの島のみんなのリーダーを勤めている先生は山賊の話にかなりショックを受けたようだ。

「やはり島の外は危ないのかね?」

お話を伺うと現在この島ではみなさんの努力でほぼゴブリンを駆除する事が出来たそうだ。

「山賊のような集団がどれぐらいいるのかはわかりませんが、ゴブリン以外にもオレたちがトロールと呼ぶ大型の変異体モンスターが確認されました」

オレの言葉に先生だけじゃなく島の人たちも驚いている。


ライカンスロープの存在は人間不信を招く危険性があるので島の代表者以外には伝えない事にした。

ここの島の人たちは以前来た時には100名ぐらいだったが、現在は倍以上に増えている。

オレたちのように島なら安全ではないかと生存者がやって来ているのだ。

その中にライカンスロープが紛れ込んでいるかもと疑い出すと内部分裂してしまうかもしれない。

それにライカンスロープが即悪者ではないと思う。

少なくともあの獅子男は理性も知性もあった。いろいろあって性格がちょっと歪んでたけどね。

原因はライカンスロープに変異したことかもしれないが、ライカンスロープに変異しても平和的な者はいると思う。

そこはじっくりと見極めたい。

昨夜の宴会の後に若社長や先生たち島の主要メンバーににそう伝えるとみなわかってくれた。

まぁ、ライカンスロープはさとるさんや大先生ほど見た目のインパクトは無いし、マスターほど精神的なインパクトも無いからね。


トロールの話でちょっとざわざわしている島の人たちに質問してみる。

「ただ、オレたちも集落の住人に聞き取り調査をしてみましたがトロールを見た人はいませんでした。みなさんの中でそんな変異体モンスターを見た人はいませんか?」

島の人たちの中にもトロールを見た事がある人はいないようだ。

そうなるとあれはかなりレアな変異体モンスターなんだろうか?

その中の一人がおずぞずと手を挙げた。

「そのトロールってのじゃないと思うんですけど、変なのならちらっとだけ見たような気がします」

田中さんに視線で確認すると首を小さく振った。島外から来た人のようだ。

オレとほぼ同年代と思われるその男性はこの島を目指す途中の山の中で移動している時に木々の向こうを走る動物を見たそうだ。

「馬みたいな動物だと思うんですけど、かなり大きくて角があったように見えたんです」

男性は怖くなって急いでその場を離れたのでしっかりと確認した訳ではないそうだ。

ウイルスは人間以外に感染しないようだし、鹿かなにかだったのかな?

正体は不明だが、山の中だし恐怖心は対象を大きく見せる事が多いそうだ。

人間以外にも感染した例かもしれないので、気になるが今は確認するのは難しいだろう。

ユニコーンとかだったらオレたちには用無しだろうしね。


人類の数が激減して以来、山中では動物の数がかなり増えている。

猟友会に入りハンターもしていたマスターの話では日本でも数十万頭の猪や鹿が毎年駆除されていたそうだ。

それでも、農作物への被害が無くなる事は無かった。

現在はその増えた動物たちのおかげでオレたちは飢える事なく生活が出来ている。

島の外では野菜などより動物の肉の方がずっと容易に手に入る。

もっともそのせいでゴブリンなども生きる事が出来ているんだろうが。


「他になにか見た人はいませんか?」

ウイルスでどんな変異が起きるのか?

多くの場合はゴブリンになってしまうが、オレたちみたいに違う変異をする者もいる。

出来るだけ情報がほしい。


その後も何人かが不思議なものを見た事を教えてくれたが、どれもその姿をきちんと確認した人はいなかった。

無理もないだろう。彼らは生きるのに精一杯だったのだ。

なにか分からない存在を確認するのは危険すぎる。

それでもこの情報は他の変異の可能性を探る意味で貴重な情報だ。


「ふ~む、いろんな変異があるようだな」

田中さんが唸るように呟く。

「でも、それほど危険な変異体モンスターはこの付近にはいないようね」

うん、そんなに危険な変異者や変異体モンスターがいればここまで逃げて来る事は出来なかっただろうからね。

まぁ、危険な変異体モンスターに遭遇した人は逃げ切れなかった可能性もあるけど、そんな危険な変異体モンスターがこの付近に集団で存在している可能性は少ないだろう。


それからはここで塩を作ることをお願いしたり、オレたちがやっているギルドの説明をしたりした。

もちろん、さとるさん考案の排泄物を肥料化する施設の事も説明する。

ここでもトイレの事は問題になっていたので大変喜ばれた。

トイレって集団になればなるほど問題になるよね。臭いだけじゃなく病気の原因になったり地下水を汚染する可能性もある。

さとるさんの施設はそれを肥料にする事が出来るからたいしたものだ。

その施設や複合弓やクロスボウの作成方法も教えておく。

弓は離れたところから相手を攻撃できるので変異体モンスターに対して有効でかなり安全な攻撃方法だ。

それらを教えた事で島の人たちは塩の生産を引き受けてくれた。

もっとも、今も島の人たちは塩の生産はしているそうだ。彼ら自身にも必要だからね。

さとるさんと田中さんが考えた施設や方法はこれまでのやり方より効率がいいそうだ。

「これで安心ね」

「だが、車無しだと出来た塩や干物を運ぶのが大変だな」

干物はともかく塩ってかなり重いからね。

なにか方法を考えないといけないだろうなぁ。

最悪、定期的にオレが運ぶしか無いかな?


「船で運ぶのはどうでしょう?」

若社長が提案する。

船?でも船も燃料がいるんじゃないの?ガソリンとか軽油とかが。

オレの疑問を受けて若社長が説明してくれた。

若社長のいう船は昔の船。つまり、帆船や手漕ぎの船の事だった。

「でも、それって危なくないの?」

「アウトリガー付きのカヌーやダブルカヌーなら大丈夫です!」

え~と、それってなに?

オレの質問に若社長が嬉々として説明してくれた。その起源や有効性、作成効率などなど。

地面に絵を書いて熱心に説明してくれる。ちょっと怖い。

「若社長の道楽だ。あれにはまって若社長は大学に8年もおったんだ」

田中さんがこそっと教えてくれた。

若社長は仕事終わりや休日にそのカヌーを楽しんでいたそうだ。

なるほど、趣味な訳ね。

「でも、いい考えじゃない?」

堤防なんかがあるだろうから河を移動するのは無理でも近くの浜まで来てくれればかなり移動距離が短縮出来そうだ。

「まぁ、道楽だが役には立ちそうだな」

田中さん、なんかあったの?


それから今後の事を相談する。

塩自体はすぐにでも作れるが運搬用のカヌーの製作には少し時間が必要になる。

基本的にすべて人力で作らないといけないからね。

しかし、カヌーの操船を出来る人は若社長以外にも数人いるのでカヌーさえ出来てしまえばすぐにでも運送は出来るそうだ。

おおよそカヌーの製作に1ヶ月ぐらいと考えて、来月にもう一度島に来ることを約束する。

今後、1日や10日など毎月ある程度日を決めて定期的にカヌーを運行するようにすれば交流も簡単だ。

天候の影響もあるから、そのへんは今後の協議課題にする。

塩や干物を運んだカヌーで帰る時にはこちらで作った薫製肉や野菜などを運んでもらえばいい。

「原始的かも知れませんが交易の始まりですね」

若社長がうれしそうに言う。

まぁ、交易がうれしいというより自分の趣味が役に立つのがうれしいんだろうけど。

しかし、確かにこれは交易と考えていいだろう。

もしかすると、今後この交易専門に従事する人も出てくるかもしれないな。

今はお互いの好意と信頼に頼った物々交換だけど、なにか貨幣的な存在が出来るかもしれない。

そう考えるとなんかすごい事が始まったような感じがする。

これからも島の人の信頼を裏切らないようにがんばろう。




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