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サバイバル  作者: 伊右衛門


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冒険者編5

○オレたちと獅子男は竹ヤブの中で激しく闘い続けた。


香織さんが仕掛けた罠はワイヤーの先に長い竹を結びつけ、相手の動きを阻害する罠だ。

ワイヤーの先が固定してないので、一度かかると外すのは困難になっている。

ワイヤーに結びつけられた竹が引っかかり動きが鈍る。

すでにやつの四肢には数本のワイヤーが絡み付いている。

激しく動くのでワイヤーがやつの毛皮を切り裂き血がにじんでいる。

だが、それでもやつは優子さんたちが放つ矢をかわしオレたちの槍をとんでもない柔軟性でくぐり抜ける。

そして、信じられない体勢から鋭い爪でオレたちに襲いかかる。

やつの爪に切り裂かれ、オレの肉体からも血が吹き出す。

さとるさんは何度か爪を喰らっているがすべて鱗ではじいて無傷だ。

さとるさんの鱗、すげぇな。うらやましいぞ。

やつの首にまでワイヤーが絡み付いた。

これでやつの動きが目に見えて鈍り、数本の矢が刺さる。

香織さんが頭部を狙い気を逸らし、優子さんが動きの少ない腹部を狙っている。

オレたちはやつの脚を狙い動きを止めようと試みる。

この連続攻撃にやつの脚をさとるさんの槍がついに貫いた。

その瞬間、やつの右目に矢が突き刺さる。

動きの止まったやつの胸に槍を繰り出す。

オレの槍がやつの胸を背中まで貫通した。

やつの肉体がゆっくりと倒れていく。


大地に倒れたやつは荒い息でオレたちを睨んでいる。

「・・・お前もいずれ人に追われ女を奪われるだろうよ」

オレを睨みつけそう言い放つと、やつの瞳から光が失われていった。

・・・そんな事にはならねーよ。


オレたちはやつの遺体を竹ヤブ近くの森に埋葬した。

さとるさんがちょっと名残惜しそうにしていた。まぁ、はじめて見たライカンスロープ系の変異者だしね。

周囲の集落を襲った山賊のリーダーだしどうなっても自業自得だが、やつは埋葬してやりたい。

さとるさんも一緒にやつを埋葬してくれた。


あいつの過去になにがあったんだろう?


最後の言葉から想像するしかないが、いろいろな事があったんだろう。

いつもなら依頼を達成したらうれしいんだけど、今回はあんまり喜ぶ気にならない。

やつの遺体は埋葬してしまったし、討伐の証拠として耳を切り取る事もしなかった。

これでは依頼料は受け取れないが今回は無料にしているからいいだろう。

集落の人が不安に思うかもしれないが今後、やつが被害を及ぼす危険はないからそれで納得してもらおう。

オレたちは静かに団地集落に戻って行った。


集落に戻ったオレたちは村長さんをはじめとする集落の代表メンバーに事態を説明した。

あの足跡は山賊のリーダーのものだった事。やつを倒したが埋葬したので証明出来ない事。

それら全てをさとるさんが理性的に説明していく。

村長さんたちは静かに聞いてくれた。

少しぐらい非難される事を覚悟してたんだけど皆さんは静かなままだ。

「あの者がどこから来たのかは分からんがやつにはやつでつらい事があったんだろうな」

村長さんが呟く。


あの獅子男の言葉からやつは人に追われ女性を奪われたんだろうなぁ。

あいつの性格から女を奪った相手は皆殺しにしてそうだけどね。

あいつは一人で来たらしいのでさらわれた女性はどうしたのだろう?

助けた時には手遅れだったのか?もしかしたら、あいつの姿を見て女性もあいつを恐れたのだろうか?

もしそんな事になったら性格が歪んでも仕方ないような気がする。

オレだって優子さんになにかあれば相手を許したりは出来ないだろう。

オレの前を歩く優子さんの後ろ姿を見ながらそう思う。

あいつがオレに妙にこだわったのはオレと優子さんの姿があいつの過去を刺激したのかもしれないな。


オレたちは基地に向かって歩いていく。


団地集落の人たちはオレたちの行為を認めてくれた。

それどころかお礼を言われ定期的にゴブリン退治や武器の扱い方教室を頼まれた。

いい人たちだなぁ。あいつもこんな人たちと一緒なら歪まなかっただろう。


「さとるさん、いろいろ難しい事考えてたんですね」

さとるさんは本当に頭がいいよね。

「僕たちが人と違う外見をしているのは事実ですから、なにか対策を考えていたんです」

さとるさんにも最初、なかなかいい考えは浮かばなかったそうだ。

オレたちのような大きな変異をした者だけで集団を作ってしまうと、余計に人々を刺激して孤立してしまう。

しかし、美咲ちゃんが言った冒険者という言葉にひとつの可能性を感じたそうだ。

冒険者なら大きな変異をした者に生きる道を示す事が出来る。

それにギルドという国家ではないゆるい集団の在り方は変異の度合いに関わらず全ての者を受け入れる事が出来る。

そこで変異の大きな者と小さな者が協力している姿は周囲にいい影響を与えるだろう。

自分達と同じなんだという事をアピール出来るのだ。

う~ん、美咲ちゃんの思い付きはオレの想像以上にいい考えだったみたいだ。

「真人くんの考えが一番正しいと思います」

オレの考え?

「自分が人か化け物かは自分で決める。ですよ」

あぁ、そんな事も言ったね。

闘いの最中だったから忘れてたや。

あれは以前、大先生が言った言葉の影響だろう。

人と動物の差は誇りを持つかどうか。

オレとトロールの差はそこにあったと思う。

トロールに知性や理性は無かったけど、オレとトロールは同系統と言ってもいいだろう。

オレと同じような変異をした者もいるかもしれない。

もし、そいつが理性や知性を失い誇りを持たなかったらどうだろう?

それは同じ外見でも人とは言えないと思う。

オレが人であり続けられるのは優子さんやみんなのおかげだ。

オレは本当にいい人に恵まれたよ。


基地に戻ったオレたちはギルド長の大先生に報告に向かう。

「なるほどのう。あれはあれでなにかあったんじゃな」

「しかし、彼になにがあっても人を襲う理由にはなりませんから同情は出来ませんな」

田中さんが厳しい顔で注意する。

あまりあいつに同情するとあいつがやった行為までも正当化してしまいそうになるからね。

「うむ、彼は自業自得じゃ。それは間違いない。みなが無事でなによりじゃよ」

いえ、オレは結構傷だらけなんですよ。

手当てはしてもらったから大丈夫なんだけどね。

さとるさんは鱗でカバー出来るし、優子さんや香織さんはやつに近づかなかったから大きな傷は無い。

しかし、オレは敵に近づいて闘わないといけない。

そうなるとこういう傷は仕方ないけど、このままだとキツくなる事があるかもしれない。

敵が武器を持っていると筋肉でカバーするのも限界がある。

それに出血は体力を奪うから長期戦になると不利になってしまう。

鎧でも作ってみようかな?

鎧ってどうやって作るんだろ?

とりあえず、傷だらけのオレは明日は休養になったので考えてみようか。


オレは基地の中をうろうろしながら鎧に使えそうな物を考える。

動きを阻害するといけないし、柔らかな素材では意味がない。

う~ん、難しいなぁ。

結局、車のボンネットを適当に叩いて形を整え肉体を覆ってみる。

これでいいかな?でも、なんか不格好だ。

いや、格好なんてどうでもいいんだけどこれでは座る事が出来ないんじゃないか?

オレが悩んでいると香織さんを見つけた。

今日は近くの集落に武器の扱い方を教えに行ってたはずなので戻ってきたんだろう。

ちなみに優子さんはさとるさんについて別の集落に検診に行っている。

香織さんか。

優子さんの言葉を信じるなら香織さんはオレの事が好きなんだよね。

う~ん、信じられん。

変異してからモテ期とやらがやってきたのだろうか?

オレが香織さんをじっと見ていると向こうもオレに気づいたのかこちらにやって来てくれた。

「どうしたんですか?それ」

香織さんが小さく笑いながらオレの鎧もどきを指差す。

そんなにおかしいかな?

オレは香織さんに事情を説明してみる。

香織さんも一緒に考えてくれる事になった。

「わたしはこういったものを使ってますよ」

香織さんは着ているジャケットを脱いで、裏地を見せてくれる。

・・・香織さん、相変わらず胸が大きいね。

香織さんが着ていたジャケットの裏にはなにかが縫い付けられている。

なんだ、これ?

「猪や鹿の皮です。わたしたちでは上手く鞣したり出来ないので固くなってしまうんです」

固くなった皮を捨てるのももったいないのでなにかに利用出来ないかと考えて服の裏のバイタルの場所に縫い付けてみたそうだ。

これなら動きを阻害しないし軽いわりに固いから少しは防御出来るだろう。

今は香織さんや数人が試しに使っているだけだが、調子がよければみんなにも伝えるつもりだそうだ。

確かに全身を覆わなくてもいいよね。

「真人さんなら力も強いし金属で作ってもいいんじゃないですか?」

なるほど。金属の板を服の裏に付ければいいのか。

しかし、ここで大きな問題がある。

オレに針仕事は出来ない。オレの手がでかいから針が小さすぎて折れてしまうのだ。

「よろしければわたしが作ってみましょうか?」

でも、香織さんも疲れてるだろうし悪いよね。

オレが断ると香織さんは、

「わたしがお休みの日にやります。洋裁とかもやってましたから出来ると思います」

笑って引き受けてくれた。

ありがとうございます。

オレが最近着ているでかいジャケットを香織さんに渡す。


一瞬、香織さんがオレのジャケットの匂いを嗅いだように見えたけど目の錯覚だよね。





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