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サバイバル  作者: 伊右衛門


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冒険者編2

○オレと香織さんはのんびりと基地に戻っていく。

本当ははじめて依頼を達成したことを早くみんなに教えたいのだが、あまりはしゃいで帰るのもちょっと恥ずかしい。

出来るだけ、普段通りの感じで報告したい。

オレはそんな事を考えていたんだけど、香織さんに

「顔、にやけてますよ」

あっさり指摘された。

そんなににやけてるかな~

オレが顔をぐにぐにいじってるのを見て香織さんが笑いだしてしまった。


いい人だよね、香織さん。

村のお姉さんとは過去の事や怖がられている気がして、なかなかじっくりと話す機会がなかったんだけど、香織さんはお姉さんたちの代表格なのでこれまでも何度か話したことはある。

さっぱりとした気質の人で、弓の訓練や畑仕事にも積極的に参加してくれた。

おかげで、オレたちはかなり助けられたのだ。

村のお姉さんたちがいち早く立ち直り、自立出来たのは香織さんのおかげもあると思う。

香織さんは美人だしスタイルもいい。畑仕事で小麦色に焼けた肌は健康的で香織さんの魅力を引き立てている。

あとはいい人が早く見つかればいいよね~


オレがそんなことを考えながら香織さんの後ろを歩いていると、香織さんが真剣な表情で振り返った。

「これまでなかなか言う機会がなかったんですけど」

香織さんがじっとオレを見つめている。

え~と、これは、ひょっとして、あれな感じなのかな?

オレはどきどきというよりビクビクしながら、香織さんの次の言葉を待った。

「助けていただきありがとうございました」

香織さんは上体をきちんと折り頭を下げた。


びっくりした。

もしかしてあれなのかと思った。

以前、優子さんが変な事を言うから思い出して緊張してしまったじゃないか。


う~ん、今はなつかしの世紀末キャッホーから助けはしたけど、それ以降はみんな自身の努力の結果なだけでオレはたいした事してないんだよね。

みんなの将来の事を考えてくれたのはさとるさんだし、いろいろ教えてくれたのはマスター。ケアをしたのは優子さん。

オレは見回りぐらいしかしてないよ。


オレがそう言うと香織さんは大きく首を振った。

「最初に助けてくれたのは真人さんです。だから、今があるんです」

そうなのかな?

感謝してもらうのは素直にうれしいからオレもお礼を言う。

「ありがとう」

オレの言葉を聞いた香織さんはきょとんとしている。

なんで?


「あのわたしがお礼を言ってるんですが、どうして真人さんがありがとうなんですか?」

そんなに変な事言ったかな?

感謝されるのはうれしいし、みんなが元気になったのもうれしい。

だから、ありがとうなんだけどね。


「そうですか」

オレの言葉を聞いて香織さんが考え込んでしまった。

いや、そんなに考え込むほどの事じゃないよ。


「あの、真人さんはわたしたちが汚らわしいと思いますか?」

へっ?なんで、そうなんの?

香織さんが言うには、お姉さんたちは世紀末キャッホーに捕らえられている間にさまざまな事をされた。

それで自分が汚れてしまったと考えている者もいるそうだ。

なるほど。そういう考え方もあるのか。


男のオレからすれば、男の獣性や人間の残忍な一部の本性の犠牲になったお姉さんたちを汚れたと考えた事はない。

汚らわしいのはあいつらであってお姉さんはそれに巻き込まれただけだ。

汚れたといっても洗えば落ちる程度の事だろう。


オレはオレの考えをゆっくりと香織さんに説明した。

オレの考えというより一般男性の考えかな?

オレだけじゃなく、さとるさんやマスターも同じ考えだと思う。

香織さんはそれを聞くとすこし涙を流した。


「村のみんなにも話していいですか?」

恥ずかしいのでオレが言ったって内緒にしてくれたら構わないよ。

お姉さんたちがそんな風に考えているとは思わなかった。

香織さんをはじめとしてお姉さんたちには幸せになる権利がある。

山賊やキャッホーはそれを自分で捨てたのだ。

だから、オレはやつらを倒すことにも殺す事にも躊躇いは無い。

そんなオレ自身に幸せになる権利があるのかどうかは分からないが、少なくとも後悔はしていない。

まぁ、女性は女性ってだけで幸せになる権利があると思うけどね。

男は勝手に自分で幸せになってくれ。


そんな事を話していると基地にたどり着いた。

オレたちの声が聞こえたのだろう。

基地のバス製ゲートに優子さんが立っている。

基地で香織さんと別れ、オレは報告の為にみんなのところに行く。

香織さんは疲れただろうから休んでもらう。

報告ぐらいで二人も行く事はないだろう。

宿舎に入っていく香織さんが振り返った事にオレは気づいていなかった。


「真人くんには、こちらの配慮が足りなくて迷惑をかけてしまったな」

オレの報告を聞いた大先生は難しい顔だ。

大先生だけじゃなく、みんなも難しい顔になっている。

「最初の依頼なんですから仕方ありませんよ」

オレたちは素人冒険者の集団だ。

個々の能力は在っても冒険者としてはレベル1ってとこだ。

これから経験してレベルアップしていけばいい。


「・・・簡単に考えてしまいました。ごめんなさい」

美咲ちゃんがかなりへこんでしまった。

オレは美咲ちゃんの頭を撫でる。

ギルド長秘書もレベル1なんだからしょうがないよ。


「依頼に必要な装備は急いで決めとくわ」

基本的には最低限の必要な装備と各自が必要とする装備の両方がいるだろう。

だから、基本装備は出来るだけ少なくしたい。

不必要な装備は邪魔だし体力を奪う分こちらが不利になってしまう。

「そうなると、簡単な野営装備と携帯食ぐらいかしら?」

そんな感じでいいと思う。

それに討伐の証明はどうするのかも考えないといけない。

集落から離れた所で倒した場合集落の人がいちいち確認に行くのは無駄な手間と危険になる。

「・・・小説なんかだと耳とか体の特徴的な部分を切り取って持っていく事が多かったです」

「そうなると切り取る耳を右か左で決めておいた方がいいでしょうね」

「基本装備の中に切り取り用のナイフと切り取った部位を入れる袋かなんかもいるわね」

「切り取り用と野営に使うナイフは分けた方がいいと思う。共用するのは衛生的に問題があると思うの」

「なんだか冒険者ってのも大変だな」

「まぁ全てこれからじゃ、ひとつひとつみんなで考えていけばええ」

全員で知恵を出し合う。


依頼の相場は今回オレが採用したゴブリン1匹で基地の食料1日分となった。

ただし、あまり食料で受けすぎると集落が疲弊してしまうので食料以外にも役にたつ情報や労働奉仕での支払いも受け付ける。

オレたちも基地内で畑を作っているし、以前計画していた猪の家畜化にも挑戦してみる。

最低限、自給自足ぐらいは自分たちでやっておかないと依頼が無くなったら飢えてしまう。

依頼内容や集落の状況を見て依頼を達成した者が1割程度の値引きはしてもいい。

ただし、それ以上の値引きは不公平感を生むからギルドと直接交渉してもらう。

原則的に上乗せは禁止。みんなを信じない訳じゃないけどワイロになっちゃうからね。

重要な依頼内容の虚偽や食い違いがあった場合はギルド側で対応する。

依頼中の食事や宿泊は依頼者持ち。負担できない場合は依頼料に上乗せしてもらう。

たとえばトロールの集団が出たりして集落そのものが危険な場合はギルド側の負担で救出に向かう。

依頼料が払えない集落はギルドが一時肩代わりする場合もある。

でも、ちゃんと利子付きで取り立てさせてもらうし、払わない場合は払われるまで新しい依頼の引き受けは禁止。

依頼中に破損した基本装備はギルド側で保証する。各自の装備に関しては原則自己負担。

ただし、依頼を受けたらギルドが装備を貸し出すので安心してほしい。


決まった事が食堂でみんなに発表される。

みんなも考えておかしいと思った事は遠慮せずに言ってほしい。

我々は素人の集団だ。これから、より良くしていけばいい。




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