移住編6
○オレたちの基本方針を周辺の集落の代表に説明してみた。
おおむね受け入れてもらえたと思う。
これまでと違いイヤなら食料を渡さなくてもいいし、自分たちの手で負えない時だけ食料などを報酬にすれば守ってもらえるからね。
それに医師である大先生やさとるさんの存在も大きかったと思う。
少し不満が出たのは、やはりオレたちの事を警察や自衛隊のような感じで捉えている人もいたんだろう。
オレたちはそのどちらでもない。どちらかというと、独立愚連隊みたいなもんだ。
オレたちは予定通り元自衛隊の基地に移住する事にした。
でも、そうなると色々問題がある。
そもそも、オレたちは移住の為にここに来たんじゃない。
マスターたちを救出に来たんだ。だから、武器や食料は持って来ているけど、各人の私物は村に置きっぱなしになってる。
それを取りに行きたい。
しかし、ここを放っておくのも危険だ。
山賊が隠れていないとか武器が残ってないかとかは調べたけど、全ての施設を詳しく調べた訳じゃない。
そこでオレと田中さん、長時間の移動が負担になる子供が基地に残る事にした。
その間にみんなには私物や作物の種や苗を取って来てもらう。
オレと子供の私物は優子さんが持ってきてくれるし、田中さんは島から移住してきた関係で自分の私物は元々バックに纏めてあるので持ってくるのは簡単だ。
全ての荷物を移動させるには何度か往復しないといけなくなるかもしれないけど、どれも捨てるには惜しい。
それに家畜としているヌートリアはこっちでも飼いたい。ひそかにオレの好物なんだよね。
・・・オレのコレクション、優子さん、ちゃんと持って来てくれるかなぁ?
「それじゃ、みんなが戻るまでわしらも出来る事をするとしようか」
田中さんが子供の頭を撫でながら言う。
田中さん、子供好きだよね。もしかして、自身にもお子さんや奥さんが居たのかもしれない。田中さんの年齢なら居てもおかしくないだろう。
その人たちはどうしたんだろう?
これまでなにも言わないって事はそういう事なんだろうか?
オレの両親はオレが幼い頃に事故で死亡している。オレは祖父母に育ててもらった。
その二人もパニック以前に他界しているので、オレに家族は居ない。
今のオレの家族は優子さんであり、屋敷や村のみんなだ。
大事にしよう。
それからオレたちは、今後使用する宿舎の掃除をしたり、布団を洗って干したりした。
山賊が使ってた布団は全て焼却処分した。
ここが基地で良かった。布団は大量にある。
それから基地の周辺を歩き、フェンスに穴などが無いかを調べる。
これには子供が大いに役にたってくれた。
この子が入れない隙間なら安全だろう。
問題は入り口のゲートだ。
車が侵入出来ないように防止バーはあるが、これではゴブリンなどには意味が無い。
山賊たちは見張りで対応していたようだが、負担は出来るだけ軽くしたい。
そこでオレたちは近くに放置されていたバスを移動させて、バスを移動式ゲートにする事にした。
バスの下部の隙間を鉄板で覆えば、とりあえず門代わりになるだろう。
田中さんが島で使っていた釘付きの角材も作ってみた。
これでここに車で突入するのはかなり難しくなった。
そんな作業をしていると、みんなが戻ってきた。
オレたちは宿舎の一棟に全員で住む事にした。
村のお姉さんたちもここに住む。
その方がなにかあった時に安全だろう。
基本的に一部屋に2人で住む。
オレと優子さん、マスターとさとるさん、大先生と田中さん、美咲ちゃんと子供って感じだ。
オレは子供に少し注意しとく。美咲ちゃんは大人しいが静かに怒るので気をつけないとエライ事になるぞ。
子供は真剣な顔でこくこくうなずいていた。・・・お前、なんかやったな。
みんなで協力して持ってきた荷物を各人の部屋に運ぶ。
良かった。オレのコレクションもあった。渡される時に優子さんにじとっとした目で睨まれたけど・・・
みんなの荷物がある程度片付いたので、食堂で食事をしながら今後の事を話し合う。
まずは基地内に畑を作り自給自足体制を整える。
それに周辺の集落への挨拶まわりも行われる事になった。
今の時代、ご近所付き合いはかなり大事だと思うからね。
それに周辺の探索。ゴブリンぐらいなら大丈夫だけど、トロールやあんな感じの変異体がいると危険だ。
周辺の集落にどんな変異をした人がいるのかも、それとなく調べてみたい。
周辺の探索はオレと優子さんが中心になって行う。
集落への挨拶へは大先生とさとるさんが行く。
それぞれに村のお姉さんから2名ずつ交代で同行してもらう事にした。
4人で行動すれば安全性が高まるし、お姉さんに集落の人たちを見てもらいたい。
いい人がいるかもしれないからね。
うちのお姉さんたちは美人揃いだし、戦えるし畑を耕したり獣を捕まえたり出来るから人気が出るんじゃないだろうか?
マスターと田中さんは基地内の警備や畑作りの指導をしてもらう事になった。
やる事がたくさんあるが、村での経験があるので大丈夫だろう。
そして、大事なのが逃げた山賊のリーダー、金髪の捜索だ。
あいつ、どこに逃げたんだろう?
暗くなってきたので、そろそろ部屋に戻って休む事にする。
移動で疲れたみんなには休んでもらって、今日はオレが見張りに立つ事にする。
本当は二人一組ツーマンセルがいいんだけど、優子さんも疲れてるからね。
今後の事を考えて、見張りの順番も今度考えよう。
オレはゲート代わりのバスの中に入る。
基地周辺は鉄条網付きのフェンスに囲まれているので、入り口を重点的に見張れば大丈夫だ。
オレはこれからの事を考える。
マスターたちを助けに来ただけなのに移住するとは思わなかった。
しかし、生存者が集落を作ってたのには驚いた。
基地があったから集まって来たのなら、他の基地周辺にも集落があるのかもしれないな。
いや、基地以外にも人が集まりそうな施設ならそこに集落が作られているのかもしれない。
以前のように広範囲に人が住んでるんじゃなく、ポイントごとに集まって生活してるのだろうか?
ある程度の数が集まらないと生きるのは危険な世界になってるしね。
う~ん、さとるさんの都市国家成立説が本当になりそうな状況だな。
それにしても、あの金髪はどこに行ったんだろう。
村の代表の人に聞いてみたけど、あの金髪の顔を見た人はいないようだ。
そうなると集落に潜んでいるのか?
いくらなんでもそれは無いか。この時代によそから人が来れば警戒されるだろう。
そんな事を考えていると基地の方から小さな足音が聞こえる。
ん?静かだけど、なにかあったのか?
聞き覚えのある足音なのでバスのドアを開く。
やっぱり、優子さんだ。
「疲れてるのにどうしたの?」
優子さんは無言でバスの中に入ってくる。
月明かりに照らされる優子さんの表情がなんか微妙だ。
怒ってるような困ってるような?
「真人、これなに?」
優子さんが野外活動の時に羽織っているローブの下から現れたのは・・・
これには説明が必要だろう。
オレは以前、単独での探索中にまたラブホテルを見つけた。
なにもやましい事を考えたのでは無い。
もしかしたら生存者がいるかもしれないから調べなくてはいけなかったのだ。
あくまでそれが目的だったのだ。
オレはラブホテル内を探索して目的のブツを発見した。
オレは発見したブツを前に悩んだ。
きれいにパッケージングされたそれは、学生系の王道、セーラー服。異論は認めない。
一方はお仕事系の女王、OL制服。お仕事系の王道のナースはすでに体験済だ。
学生系としては体操服やスクール水着などもあったが、これらはあくまで変化球だ。
柔道着やレオタードなどもあるがこれは上級者向けだ。オレにはまだ早い。
お仕事系のレースクィーンやCAさんの制服にも心ひかれるがこういうのは段階を踏むべきだ。
恥ずかしながらも着てくれる。このバランスを見誤ってはいけない。
OL制服を着た優子さんはリアリティがある。スリムな優子さんに似合うだろう。
それはそれで素晴らしい。
しかし、セーラー服を着た優子さんにはリアリティは無い。当然だろう。
だが、あり得ないからこそのギャップがいい。
オレは悩んだ。両方とも持って帰る事も出来るが、それはいけない。
1ラブホ1コスチュームが基本だ。
なぜかわからないがそれが決まりなのだ。
おぉ、神よ。なぜこんな苦悩をオレに与えるのか。
その時、天啓がひらめいた。
おれはセーラー服を手にしていたのだ。
OL制服なら他でも見つけられるんじゃね?
神はそう言った。
生存者?そんなんはしらん。
という訳で今、オレの前にはセーラー服を手にした優子さんがいる。
「今回だけ特別だからね。今回だけだからね」
何度も念を押しながらも優子さんはオレの願いを叶えてくれた。ああ〜、優子さんあなたは女神だ。
「なにしてるの?」
早朝、起きてきたマスターとバスの前で会った。
「いや、見回りから戻ったとこ」
オレはそっとマスターから距離を取る。
「優子ちゃん、知らない?」
「どしたの?」
オレはじりじり距離を取りながらさりげなく聞いてみる。
「部屋に起こしに行ったんだけど居ないのよ」
「ん、あ~そういえばさっき基地の中を散歩するって」
オレは頬をかきながらごまかしてみる。
「指、どうしたの?」
「・・・ちょっとドアに挟んだだけ」
オレはそっと指を隠す。
「あたしが見てあげましょうか?」
「いや、あとで優子さんに見てもらうから大丈夫」
他の人に見せたらバレるだろうな、この歯形。
「優子ちゃん、遅いわね?」
「そうだね。マスターちょっと見てきてよ」
「そうね。真人ちゃんは?」
「オレまで行くと行き違いになるかもしれないから」
ウソで~す。
マスターに近づくとバレるかもしれない。
優子さんがバスの中に隠れてるのが・・・
あんたがこんな早朝に起きてくるから、優子さん部屋に戻れなくなったんだよ。
優子さんはまだあの服だ。行為後にオレが「似合う」「最高」「現役みたい」とか褒め称えたら優子さんは照れながらも結構、ノリノリで脱いだ服をもう一度着てくれたのだ。
このままでは、マスターにバレてしまう。
いや、あのあとにイチャイチャしてたオレたちが悪いんだけどね。
マスターが建物の角を曲がったのを確認してバスの窓を叩く。
優子さんは大慌てで元の服に着替え部屋に向かって走って行く。しっかりとあの服を抱えて・・・
・・・優子さんあの服、実は気に入ったな。




